( ФωФ)さとりごころのようです

27: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:13:30.18 ID:YitxL7qq0
    







      「さて、何を聞きたい?」








29: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:18:05.69 ID:YitxL7qq0
   



  三章 影法師


     五話 仄仄密談




30: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:22:06.35 ID:YitxL7qq0
日は昇り、沈む。
自然のサイクルは今日も変わらず順調だ。
変化を起こしたら、それはそれは厄介極りないが。
そんなわけで夜である。

( +ω+)「ん」

彼は与えられた部屋で寝ころんでくつろいでいる。
時刻は七時前で外はうす暗い。
隣室から物音がしない。シューはまだ帰ってきていなかった。
もうすぐ晩飯の時間なのにだ。

( Фω+)「お前はどう思うのだ?」

彼は天井を睨み、呟く。
その声に反応する者が一人。

('A`) ムズカシイナ

( +ω+)「や、お前に聞いたわけじゃないから。
        独り言だから受け流してくれ」

('A`) …ニイサン、ソリャナイヨ

半透明の男は悲しそうに口を動かした。



32: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:26:06.38 ID:YitxL7qq0
( Фω+)「それより私の視界に入らないでくれ。
        考え事が纏まらん」

('∀`) ムリッス

( +ω+)「……ふぅ」

男は音の出ない声で答えた。

彼は読唇術でなんとか霊の言わんとすることが分かる。
幽霊というものは孤独な存在で、寂しいということも分からないでもない。
だからというわけではないが、天井に浮いてまで視界に入ろうと努力しなくてもいいのに、と彼は思う。

でもまあ、無害なヒートのところでうろつかれるよりは精神衛生上良いのは確かなのだ。
ならばこれくらい我慢してやろうと彼は広い心で考え直した。



と、遠くで玄関の戸の開く音が聞こえた。
次いで鼓膜が一つの声を拾う、「ただいまー」
何故か、彼の心臓が大きな音を出し始めた。

遠くの声はヒートの声に軽く答えて、廊下を軋ませる足音はどんどん近付く。
すぐに足音は目的地にたどり着き、隣の部屋の襖を開ける音が聞こえた。



33: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:29:34.09 ID:YitxL7qq0
彼は起き上がり、シューの部屋へ続いている襖に手をかける。
彼女には聞きたいことがいくつかある。
心臓はいまだ音も速さも落ち着かない。

「よし、開けるぞ」、彼の心が体に命じて指に力を込めた。
しかし襖は彼の指の力を必要としなかった。
襖は勝手に開いた。

(;ФωФ)

lw´‐ _‐ノv



lw´‐ _‐ノv「のぞき?」

(;+ω+)「そんなわけないだろ」


シューは襖を開けた姿勢のまま、彼は襖を開けようとする姿勢のまま。
二人は数秒、動かなかった。



34: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:33:19.45 ID:YitxL7qq0
lw´‐ _‐ノv「まあいいや。入って入って」

(;+ω+)「む……じゃあお邪魔します」

('∀`) オジャマシマス

lw´‐ _‐ノv「そういうのはせめて声出していってほしい」

('A`) ムリデス


彼らはシューの部屋に入る。
とりあえず彼は畳の上に座り込む。
部屋は女の子の部屋というより、むしろ仕事部屋というイメージに近い。
あることを考えて彼は少々気持ち悪くなり、そしてそんな自分の感想にひどく嫌悪感を覚えた。

lw´‐ _‐ノv「部屋は個性を表す、ね。
       なかなかに真理をついてるね」

(;+ω+)「……」

また独り言か。
「いいかげん考えたことを言葉にする癖をなんとかしたいものだ」、そんな自分に彼はうんざりした。

シューは彼の考えに、特に意見することもなく自室の押し入れを開ける。
中は下段に布団と収納ケース、上段に衣服、ニット帽、下着などが積まれている。
彼は慌てて視線をそらす。
霊は食い入るように見つめてた。



36: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:37:08.32 ID:YitxL7qq0
lw´‐ _‐ノv「よっと」

シューの手にはいくつかのニット帽が握られていた。
それを畳の上に置くと、彼と面を合わせて座る。
彼は軽く呼吸を整えてシューを見る。

彼には聞きたいことがある。
だがシューにも話したい事柄があるはずだ。
そうでなければ襖を自分から開けないだろうから。
だから彼女の話を静聴しようと彼は思う。
己の質問は最後でいい。

そのように考えているため、彼は無言でシューが話し出すのを待っている。

lw´‐ _‐ノv「……」

にも関わらず、シューも黙り込んでいる。
何か話しにくいことだろうか、と彼が思ったとき、


lw´‐ _‐ノv「聞きたいことがあるんでしょ?」


シューの言葉に彼はさらに心音のテンポを速めた。



37: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:40:37.08 ID:YitxL7qq0
( +ω+)「……どうして知っているのだ?」

lw´‐ _‐ノv「ヒー姉から電話貰った。
       んで、できるだけ早く帰ってきて説明しなさいって言われた」

( ФωФ)「なるほど」

シューの矛盾の話はまだ彼女自身に話していない。
それでもその件を知っていたことに驚いたが、ネタが分かってしまえばどうということはない。
「ま、それでも話すべきか迷ったけどね」、彼女は自嘲の言葉を吐く。
迷いは時間に表れていたことを彼は知る。

シューは言った、「さて、何を聞きたい?」
どうやら自分から全てを話す気はない様子だ。
彼の疑問だけに答えていこうという腹らしい。

( +ω+)「なら、まずは……」

知らず、まぶたの上の痣を指でなぞる。
彼は思考を吟味し、疑問を一つずつ投げてみた。



38: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:43:29.90 ID:YitxL7qq0
( Фω+)「お前は人の顔を見ることができない。それは本当か?」

lw´‐ _‐ノv「イエス」

( Фω+)「お前は幽霊を見ることのできる霊視能力者、と考えていいか?」

lw´‐ _‐ノv「イエス」

( +ω+)「ガナーちゃんを遺影で確認できた。本当か?」

lw´‐ _‐ノv「……イエス」

( +ω+)「お前の目には何が映っているのだ?」

lw´‐ _‐ノv「……」


lw´‐ _‐ノv「なにが映ってると思う?」

(;+ω+)「正直想像がつかん」

とはいうものの、シューには何かが見えていることだけは確かだろう。
嘘で塗り固めていないのなら、矛盾を消す重要な要因がある。
顔が見えないはずのシューが、ウツロのガナーちゃんを識別できた何かが。

lw´‐ _‐ノv「嘘はついてないよ」

( Фω+)「そうか」



39: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:49:10.49 ID:YitxL7qq0
lw´‐ _‐ノv「ただ……ここからの話は変人の空想で通るレベルのものだよ。
       信じるも信じないもロマ次第。
       それでもいいのなら話すけど」

( +ω+)「構わない」

lw´‐ _‐ノv「詮索屋は嫌われるとか思わないんだ?」

シューにしては厳しい意見だった。
思えば彼は砂尾家の人柄に甘えてたかもしれない。
彼女らは基本的にオープンで、一たび疑問を覚えれば相談に乗ってくれた。
その砂尾の姓のシューに注意されるまで、彼は己の失点に気づかなかっただろう。

反省し、同時に思う。
彼がシューの秘密を聞きたいと思うのは、なにも興味本位だからではない。
シャキンさんと会う前にヒートが言った言葉が心に沁み込んでいた。

      『こういうことは話しておいた方がシューのためなのにね。
      まあ、簡単に言えることでもないんだけど』

彼女らには世話になりっぱなしだ。
できることなら彼女らの力になりたい。
私に打ち明けてもらうだけでシューのためになるのなら、進んで汚れ役にでもなろうではないか。
そう考えている彼は重い口を開く。

( +ω+)「たしかに思う。が、それでも力になりたいからな」

lw´‐ _‐ノv「……」



40: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:52:06.69 ID:YitxL7qq0
シューは少し驚いたようで、薄く開いたまぶたを僅かに開けて黙る。
そして彼は緊張しているのを自覚する。
嫌われてもいいから話してほしいと言ったのだ。
それでもやはり嫌われるのは嫌なのだ。
シューもヒートもとてもいい人なのだから。

lw´‐ _‐ノv「ロマってもしかしてひねくれてるの?」

(;Фω+)「……どこをどう思ってそんな感想が出たのだ?」

lw´‐ _‐ノv「もしくはよほど自分に酔ってるとか?」

(;+ω+)「……さきほどの回答のことか?
       一応本心だぞ」

lw*‐ _‐ノv「んなこと分かってるわい。素でそんなこと考えてる人なんだから」

そういったシューは軽く苦笑いした。
「リラックスしなよ」と彼にいうと、彼女は思い出すようにゆっくり話しだした。

lw´‐ _‐ノv「まずは……そうだねぇ。
       私の人生における大事件でも話していこうか」



41: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 22:55:54.83 ID:YitxL7qq0
lw´‐ _‐ノv「とりあえずはじめに言っておく。
       私は生まれてから今日までの間、二回ほど死にかけたことがあるんだ」

(;ФωФ)「……それって多くないか?」

lw´‐ _‐ノv「それでもそういう星の下に生まれる人はいるでしょうよ」

十五年間で二回。
昨今の平和な日本では多い方だと彼は思う。
しかしシューのいうとおり、そのような道を辿った人も確かにいるだろう。
だから彼女は「特別なことじゃない」と暗に伝え、その言に彼も納得はした。

lw´‐ _‐ノv「順を追って話すよ。
       まず頭の怪我。
       これのおかげで幼少のころの私は輝いていた、頭がね。
       で、これが全ての引き金で元凶だったと思う」

( ФωФ)「人の顔が見えなくなったのだろう?」

lw´‐ _‐ノv「そうだよ。
       そして表情が見えない代わりに、良くないものが見えるようになったんだ」

( ФωФ)「こういうのか?」

lw´‐ _‐ノv「そうそう、こういうの」

('A`)

彼が指さす先には一匹、良くないものがいた。



44: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 23:02:37.36 ID:YitxL7qq0
その可能性は考えなかったわけではない。
ただ考えたくなかっただけだ。
彼は知っている、霊が見えるだけでも厄介事だということを。
そして第六感が鋭くなり、霊能力と呼べるものになってしまったら厄ネタが厄ネタを背負いこんでくるほどだ。
霊も無視できなくなり、結果、とり憑かれやすくなったりする。彼にも経験がある。

“見える”ということは“見られる”のと同義だ。
現世で霊を見ることができ、霊の処遇を決められる存在がいたとするなら、霊たちは何を思うだろう。
どういう精神状態であったとしても何らかのアクションは起こすだろう。
助けを求めるにせよ、気になって寄ってくるにせよ、危惧して祟るにせよ。

lw´‐ _‐ノv「だから憐れむなっつの。
       そんな感情持ってこられても正直対処に困る」

(;+ω+)「……すまんな」

lw´‐ _‐ノv「話を続けるね。
       結論からいうけど私の霊感はある事件を境にアップグレードされたんだ。
       それが二回目に死にかけた事件よ」

(;+ω+)「……」

lw´‐ _‐ノv「簡単にいうと神隠しにあった」

(;+ω+)「……」



(;ФωФ)「…………いや、いやいや、ちょっと待った」



45: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 23:06:58.19 ID:YitxL7qq0
(;ФωФ)「神隠し?」

lw´‐ _‐ノv「うん」

(;ФωФ)「マジ?」

lw´‐ _‐ノv「うん」

シューと話すとまるでファンタジーの世界に迷い込んだ感覚になる。
はっきりいって嘘くさく感じる。変人の空想とはよく言ったものだ。
だが彼女はこうも言ったのだ、「信じるも信じないもロマ次第」
結論を出すのは全て聞いてからでも遅くない。
仮に彼女が彼を煙に巻こうとも、それは人柄を信じてもらえない己が悪いのだ、と彼は考える。
そして「具体的にお願いします」、と話の先を促す。

lw´‐ _‐ノv「おk…………といいたいけど私も神隠しされた実感がないんだよね。
       母者山に入ったことは覚えているけど、そこから記憶が曖昧なんだ。
       そうして気を失って、次に目覚めたのは真白な病室なわけで。
       ちなみに目覚めた時は母者山に入ってから二週間は経ってたね」

( +ω+)「どうして神隠しだと思うんだ?」

lw´‐ _‐ノv「母者山の神隠しの話はヒー姉から聞いてるよね?
       あと発見のされ方が異常だったらしい。
       また、十歳前後の女の子が整備されてない山で遭難して生き残れるかってのもあるね」

( Фω+)「たしかに。整備されてない山は海原みたいなものだからな」

lw´‐ _‐ノv「……言い得て妙だね」



46: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 23:11:50.84 ID:YitxL7qq0
山は小さいものでもなかなか侮れない。
木が生い茂り、方向感覚が狂いやすい。
自然のままの状態の山は一度迷うと、死の危険があるのだ。
そして捜索する方も遭難者を発見できるか分らない。
砂漠の中の針を探す作業……は言い過ぎかもしれないが、それに通じるものがある。
小さい山でもそうなのだ、大きい山ならなおのことだ。

(;+ω+)「……で、だ」

lw´‐ _‐ノv「?」

(;ФωФ)「どのようにアップグレードされたのだ」

lw´‐ _‐ノv「……本当はなんとなく気付いているでしょう?」

そこで何故呆れるのだろう。
今までの話の中でもうヒントが出ているのだろうか。
シューはやれやれと軽く首を振り、仕方ないと言いたげに答える。

lw´‐ _‐ノv「今の私は昔の私と比べると格段に見えるようになっている。
       そして霊以外のものも見えるようになってしまった。
       ……ガナーちゃんも霊以外のものをみて判別したんだよ」

(;ФωФ)「何が見えるのだ?」

lw´‐ _‐ノv「それはね」


彼女は三文字の単語を口にする、「きおく」と。



47: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 23:18:56.34 ID:YitxL7qq0
(;ФωФ)「記憶とは?」

lw´‐ _‐ノv「簡単にいえばサイコメトリー。
       物に宿った記憶なら大体見えるんだ。
       正直これ超能力じゃね、って意見は却下ね。
       一応そこの幽霊は見えてるわけだし」

('∀`) ユーレイデス

(;+ω+)「……」


(;ФωФ)「えすぱーしゅ「黙れおっさん」lw´‐ _‐ノv


どうやら砂尾家の姉妹はこういうギャグが嫌いな様子。
「脳が熱を持ち始めたから、ギャグで小休止しようと思ったのに」、彼は嘆く。
小説の中ならともかく、リアルでこうもぶっとんだ話はなかなか聞けないだろう。

(;Фω+)「……ん」

片方のまぶたを閉じ、その上の痣をなぞる。
一つずつシューから与えられた情報を整理しようと、彼は思考の海にダイブする。

シューがここまでなった経緯は後で考えることにする。
今は彼女が見えているものについて考えよう。
『顔』が見えないシュー、『記憶』が見えるシュー。
この条件を仮定すると、顔を知らなくても遺影でガナーちゃんを知ることができるかもしれない。
ただ、今の話を盲信するほど彼は人ができていないと自覚している。



49: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 23:23:50.87 ID:YitxL7qq0
lw´‐ _‐ノv「つまり証拠がほしいんでしょ?」

彼は思考を中断し、シューの言葉に頷く。
その返事にシューは自分の手元にあったものを彼に渡す。ニット帽だ。

lw´‐ _‐ノv「もともと私はロマみたいに力をコントロールすることはできないんだよ。
       ロマみたいに普段力を使わないようにセーブできないんだよ。
       開けっ放しの蛇口みたいなものなんだ。
       だからこんなのに頼らなければいけないんだ」

ニット帽を手に取った彼はそれを観察する。
こんなのに頼らなければいけない、とはどういうことだろうか。
疑問に思った彼だが、すぐに彼女の言わんとすることが分かった。
思わず握っていたものを離す。ニット帽は無感情に畳の上に落ちる。

lw´‐ _‐ノv「気持ち悪かったかい?
       ま、分からないでもないけどね。
       内側にお札がびっしり縫いつけられた帽子なんて縁起でもないからね」

(;+ω+)「……すまん」

lw´‐ _‐ノv「いいよ。私も最初は気持ち悪かったから」

手放したニット帽の裏から布製のそれが見える。
短冊上のそれにはよく分からない文字らしきものが書かれており、それがおそらく十数枚。
毛糸の布地が見えなくなるくらい、ニット帽の裏側は埋め尽くされていた。



52: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 23:28:07.78 ID:YitxL7qq0
lw´‐ _‐ノv「そして」

シューは今被っているニット帽を脱ぎ、そして今着ているTシャツに手をかける。
彼はまさかと思ったが、予想にたがわず彼女は脱いだ。
乱雑にTシャツを投げた彼女の上半身は、スポーツブラのみ。
流石に面喰った彼は視線をそらし注意しようとするが、

lw´‐ _‐ノv「こっち見ろバカちん。
       ……そこのアホ幽霊は食い入るように見んな」

先に注意されてしまったので、しぶしぶ視線を戻す。
顔が赤くなっているだろうと彼は思う。事実赤くなっていた。
だがへそのあたりを見てそんな浮かれ気分も吹っ飛んだ。
よく分からない文字がへそを囲むように四文字描かれている。
そしてシューはゆっくりと背中を見せて……瞬間、彼は血の気が引いた。

(;ФωФ)「……それ、は?」

lw´‐ _‐ノv「お札だけじゃ足りなかったみたいなんだ。
       だから耳なし法一して、さらに力を抑える必要があった。
       ちなみに刺青よん」

そこにも細かく、またも読めない文字が幾何学的に書かれている。
それも背中一面に。
彼女は言った、「伊達や酔狂だけでこんなことできないよ」

ああ、たしかにその通りだ。



54: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 23:32:25.74 ID:YitxL7qq0
背中を見せた後、彼女はすぐ脱ぎ捨てたTシャツを着てニット帽を被る。
男の前で服を脱いだせいなのか、彼女の頬は先ほどより若干赤みを帯びていた。
やはり恥ずかしかったらしい。

lw*‐ _‐ノv「信じてもらえた?」
      
(;+ω+)「……」

彼は何もいわない。
シューに見せつけられた異常に戸惑っていた。
お札のニット帽に、文字だらけの刺青。
「傷跡が染みるから」とニット帽を被っていた理由を以前聞いたが、それは建前なのだろうか。

シューは記憶が見える。少なくとも彼女自身はそう信じている。
そうでなければ札や刺青を自分に施さないだろう。
しかし……

lw´‐ _‐ノv「半信半疑、てところかな?言いたいことは分かるよ。
       たしかにこんなの見ただけでは証拠になりはしないしね。
       私が過去を出鱈目に言ってるだけかもしれない。
       記憶が見えるといっても、観測者は私一人なわけだし。
       今の話が嘘か真かなんて誰も分からないもんさ」

( +ω+)「……」

lw´‐ _‐ノv「だから分かるようにロマを見てるじゃない」

( Фω+)「……なんだと?」



56: ◆pGlVEGQMPE :2009/09/17(木) 23:36:25.54 ID:YitxL7qq0
lw´‐ _‐ノv「そしてあなたは気づいている。
       それなのに私を憐れんであえて視線をそらしているのかな?
       『そんなの認められない』って言いたげにね」

( Фω+)「……」

lw´‐ _‐ノv「大変なお人好しだね」


シューはふぅ、と息を吐く。
そして彼はお人好しの意味を知る。
彼女はこう言っているのだ、「ちゃんと見ておくれ、この鈍感」と。









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