( ФωФ)さとりごころのようです

168: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 01:23:23.72 ID:bk6Zvl/A0
  


( ФωФ)「シュー?」


lw´‐ _‐ノv





lw´‐ _‐ノv「……ああ、ロマくんか」

(;ФωФ)



170: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 01:27:07.69 ID:bk6Zvl/A0
   



  四章 止水逆月


     五話 明鏡止水、されど逆月まやかしの如く



172: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 01:31:20.40 ID:bk6Zvl/A0
彼もシューと並んで石段に座った。
結論からいうと、シューはまだおかしかった。

lw´‐ _‐ノv「どうしたのだ?」

(;ФωФ)「いや、お前がどうした?」


口調が少しばかり渋くなった気がする。
それより、この町にきて初めて 『 くん 』 付けされて戸惑う。
しかもよりによって小人のシューに。

lw´‐ _‐ノv「小人のシューか。
       児童書のタイトルにできそうなネーミングだな」

(;Фω+)「大丈夫か?」


「もしかしてぶつけた力が強すぎたのだろうか?」、不安にかられる彼に、シューは「大丈夫」と返した。
そしてシューは少し言いづらそうに続ける。

lw´‐ _‐ノv「まあ、その、な。
       記憶の渦に溺れかけるといつもこうなのだ。
       許してほしい」

(;ФωФ)「こう、というと?」



173: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 01:34:12.62 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「口調がな。
       わしの言葉で説明すると、わしは様々な人生のワンシーンを見続けてたわけなのだ。
       ……いや、見たというのは正確ではないな。
       人生のワンシーンを “ 演劇 ” してたといったほうがいいかな?」


lw´‐ _‐ノv「記憶を脳……もしくは魂……に焼き付けているのだよ。
       だから彼らの記憶もわしの記憶であるのだよ。
       だから彼らの経験はわしの経験である。
       しかしリアルのわしは彼らと同じ経験はしていない。
       経験した記憶があるだけだ」


lw´‐ _‐ノv「リアルでないから、経験した記憶は所詮虚像。
       つまり演劇に通じるのだよ。
       だが記憶というのはやっかいで、それを持っているがゆえに後の人生に影響を与える。
       もっと簡潔にいうなら、記憶が人格を作り上げる。
      よってここにいるわしは 『 カーテンフォールしたのに役が抜けきれないシュー 』 というわけだ」


lw*‐ ,‐ノv「ほっほっほ」


(;+ω+)「あー、うん。言いたいことはなんとなくわかった」


何気に紳士くさいシューだった。



174: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 01:35:57.24 ID:bk6Zvl/A0
( ФωФ)「じゃあこれからジェントルマンで過ごすのか」

lw´‐ _‐ノv「そんなことはできるわけなかろう。
       わしにだってお国に仕える矜持がある。
       そんなことで家内に迷惑かけるわけにはいかぬわ」

( +ω+)「……そうだな、みんなびっくりするだろうからな」

「シューが妻を養ってるわけないしな」、というツっこみは飲み込む。
言わぬが花である。
無意味だったが。

lw´‐ ,‐ノv「おっと、しくじったか。
      まあこんなことがあるから、早めに元に戻らねばならんのだよ。
      多少は抵抗感があるだろうが、このままだと社会の和から弾き出されるからな。
      ……あと君はわしの力を忘れたのかな?」

「失念してただけだ」
「ジェントルマンなのだから、あまりいじめないでくれ」
彼は心の中で反論する。
敏感に読みとったシューは、「ほっほっほ」と笑うだけだ。



179: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 01:55:52.34 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「して、わし……いや、私を記憶の渦から引っ張り上げてどうしたいのだ?」

( +ω+)「うーん、まだ少しジェントルマンだな」

lw´‐ _‐ノv「……だから、さっきまでの状態とその後はあまり人と会いたくないのだよ。
       しかしナチュラルに話題をそらしてくれたな。
       わし……私は傷ついたぞ?」

( ФωФ)「もうわしでいいんじゃね?」

lw´‐ _‐ノv「だから話をそらすなと言うとるのに。
       わ、たしのことは放っておいてもそのうち浮かんできてたぞ。
       今、引っ張り上げる必要性は皆無だと思うのだが?」

( +ω+)「悪いな。
        見ていてつらかったから、つい」

lw´‐ ,‐ノv「ほほう?
       『 つらそうに見えたから 』 ではなく 『 見ていてつらかった 』 ときたか。
      あまりに自己的発言だな」

( Фω+)「嘘はつけないしな。
        私の都合で起こしてしまってすまなかったな」

lw´‐ _‐ノv「いやいや、こちらの意見のほうが好感が持てる。
       同情されるよりはよほどいい。
       わ、私が同じ立場であったなら、やはり己の内なる感情に突き動かされただろう」



180: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:00:16.52 ID:bk6Zvl/A0
( +ω+)「……ふむ。
        では、己の内なる感情に突き動かされて一つ言わせてもらおうか」

lw´‐ _‐ノv「なんだ?いってみたまえ」

( +ω+)「もうその力は使うな」

lw´‐ _‐ノv「無理だな」


即答だった。
拒絶といってもいい。
この意見はただの火種で、もちろん彼自身、これが通るなんて考えていない。
他者に対して鈍感で、本物の変人だったから力を使う。
以前、彼女自身が話してくれた理由だ。

人がそのとき思ったことを理解し、人と合わせられれば、確かに一般的な人に見えるだろう。
性格が多少おかしくても、マイペース程度に受け止められるだろう。
だけどそれで失うものがあることも、彼は知っている。

lw´‐ _‐ノv「失うというと寿命のことかな?
       生憎、無駄にダラダラ生きるよりは凝縮した濃密な生を送りたいと考えておるから」

( +ω+)「空気を読んでくれてるみたいで助かるな」

実際に読んでるのは記憶だが。
彼があの居間で話したことは、すでにシューも知っているようだ。
もとより、シューの部屋から玄関に出るには居間を通り過ぎる必要がある。
おそらくその時に力で見たのだろう。



181: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:05:01.30 ID:bk6Zvl/A0
今回のように力を暴走させ続けていけば、年をとった後が大変だ。
最悪、早死にする場合も考えられる。
だからシューの言い当てたことは正解である。
半分だけは。

もう一つ理由があることを彼女は知らない。
それはシューが初めて力を説明し、力を使う理由を話してくれた日。
あのときからの懸念であった。

そして黒いシューと話して彼は確信した。


lw´‐ _‐ノv「じゃあ他に何を失うというのだね?」

( Фω+)「お前自身だよ」

lw´‐ _‐ノv「……それは別に失っても構わんな。
       そもそもそんな私が嫌いだから、力を使うと明言したはずだがな」

( +ω+)「だから自分が作り上げた “ 私 ” を演じるのか?
        誰にも本心を見せず、仮面をつけて舞うと?」


lw´‐ _‐ノv「……」



184: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:09:57.60 ID:bk6Zvl/A0
彼は出会う前の彼女を知らないはずだ。
だから彼女は彼に見抜かれたことに驚いた。
が、そこはシューというべきか。
内心驚きつつも、表情は変えなかった。

……彼女にはどう変えればいいのか分からなかった。

( +ω+)「普通でありたいと思う心は分からなくもない。
        私だって思ったことがある。『 どうして私だけが…… 』 とな。
        普通に振る舞えるよう努力するのもいい」


( +ω+)「そのために自分を偽るのもいい。
        人間誰しも嘘はつく。嘘つきは泥棒の始まりなんて真っ赤な嘘だ。
        仮面を被るのだって悪くない。
        皆、他人の目を気にし、そしてよく見られたいからな」


lw´‐ _‐ノv「……」


( ФωФ)「でもお前は少しやりすぎだ。
        ……力を使うな、とは思っても口にだすものじゃないな。そこはすまん。
        だが、もっと使用頻度を抑えるべきだと私は思う」


( +ω+)「そのように演じる目的に使うのであればな」



188: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:14:57.06 ID:bk6Zvl/A0
一通り話し終え、彼はシューの出方を待つ。
その彼女はというと、石段の下方に広がる闇をぼんやり見ている。
やがて、ぽつりと疑問を投げかけてきた。

lw´‐ _‐ノv「……どうして気付いた?」

その疑問に彼は何と言ったらいいか整理できていなかった。
ただ、そこまでに至る要因があったのは確かだ。
彼女は十歳前後で神隠しに逢って、記憶をみる力を持ったといっていた。
彼女は鈍感だったから、記憶をみて人とのコミュニケーションをカバーしているといっていた。


では今年で十六になるであろう少女が、それまでの間にどう変わったか?
そしてどのように変われば、一番摩擦が少ないか?


答えは彼の体験の中にもあった。
彼は 『 話しやすい人 』 を目指した。
人に恐れを抱かせるものはなるべく隠し、人との会話に合わせれば、衝突は少なくて済む。
…………まあその結果、彼は痛い目をみたのだが。

そして、ここでの会話だ。
他者の人生のワンシーンを演劇できるのなら、自分の人生だって演劇できるはずだ。
その証拠が、今さっきまでのジェントルマンな口調だ。……なんかいつのまにか直してたが。

人格というのは見えないからこそ、掴みづらい。
ましてや自分の人格だ。掴めないのは当たり前だ。
もし掴んだとしても、それは進学や就活などの自己 PR みたいなデタラメだろう。
人間、鏡がなければ己の顔すら見ることが難しいのだから。



191: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:20:00.80 ID:bk6Zvl/A0
それにたとえ掴めたデタラメだろうが、見えないのでやはり無理がでてくる。
さらに他人の人生を演劇した後だ。
作り上げた自分がどんなものだったか、ひどく混乱するだろう。

だから口調もおかしくなる。
どちらも己ではない役に変わりないのだから。
彼女は他人の記憶を元に自分を作り上げてるのだから。


( +ω+)「よし、整理できた」

lw´‐ _‐ノv「……なるほど。
       あとは本人の反応で確認か」

(;ФωФ)「おい、喋らせろよ」

lw´‐ ,‐ノv「見ましたので」



lw´‐ _‐ノv「では次の質問。
       どうして使用頻度を抑えるべきだと思ってるんです?」

( ФωФ)「ああ、それなら簡単に説明できるぞ」

lw´‐ _‐ノv「なるほどなるほど」

(;+ω+)「おい、だから」



193: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:24:50.56 ID:bk6Zvl/A0
( +ω+)「……いや、読まれたなら諦めるしかないか。
        まあそんな具合だ」


( ФωФ)「だからあえて聞かせてもらいたい。
        お前は作り上げた仮面に集う出来事と本心のズレに苦しまなかったのか?」

彼には力を使いたくない時があった。
だが彼が作り上げたもののために、使わなければならなかった。
それが後悔という形で、未だ胸の奥にしこりが残っている。

lw´‐ _‐ノv「ええ、ええ。ありますとも、ありますとも」

( ФωФ)「だったら力に頼って演劇せずに、もっと自分を磨いてだな……」

lw´‐ _‐ノv「でもね。
       こうするしかなかったの。
       こういう “ 私 ” になるしかなかったんだ」

( Фω+)「?」


lw´‐ _‐ノv「己の内なる感情に突き動かされた結果なんですよ」



194: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:29:55.67 ID:bk6Zvl/A0
シューは立ち上がり、くるりと一回転してから彼を見つめる。
愛くるしい仕草だと思う。彼もそう思っただろう。
そんな黒い少女から、穏やかな口調で、



lw´‐ _‐ノv「ロマのこと、本当は嫌いなんだ」



(;ФωФ)「え?」



いきなりの一言が飛んできた。



197: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:34:54.83 ID:bk6Zvl/A0
(;+ω+)「それは、なんというか……すまなかったな」

そう、言うことしかできなかった。
今まで過ごした中で何がいけなかったのか、彼には分からなかった。
面と言われて怯んだせいもある。
上手く言葉が出てこなかった。

だが、続く言葉にはさらに衝撃が走った。


lw´‐ _‐ノv「ショボンも嫌いだし、ヒー姉ももちろん嫌い」

(;ФωФ)「え?ちょっとお待ちになって?」


「あんなに仲が良かったのにか!?」、内心でそう思いながらもうまく言葉が出ない。
いろいろショックだった。
だからこの後に続く台詞も黙って聞くしかなかった。

lw´‐ _‐ノv「シャキンさんも嫌い。
       しぃちゃんもつーちゃんもまたんきくんもモナーさんも出田さんも嫌い。
       幽霊やウツロはやっぱり嫌い。
       皆、皆大嫌いです」


lw´‐ ,‐ノv「だって皆、顔が見えないんですよ?
       何を考えてるか分からないんですよ。
       ……幽霊と同じなんです。
       幽霊は顔が見えないうえに襲ってきます。
       他の人にいつ襲われるのか、小さい頃はいつもビクビクしてました」



198: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:40:05.07 ID:bk6Zvl/A0
(;Фω+)「?」

話し方が……おかしくなってないか?
今度は違う紳士を演じているのだろうか?
でも、話している内容は本当のことのように思えるだが。
何故、そう思えるのだろう?


lw´ , ノv「怖いんですよ。
      顔の見えない人たちが怖いから嫌いなんです。
      そのくせ理解不能なことばかり話しかけてきます」

……なるほど。
これはおそらく、今日までシューが彼に見せてこなかった顔だ。
そして、おおよそ本能の大本に直結してるであろう感情。


いわゆる恐怖というやつだ。

lw´ , ノv「喜んでそうな顔ってなんですか?
       怒ってそうな顔ってなんですか?
       悲しそうな顔ってなんですか?
       楽しそうな顔ってなんですか?
       ……表情ってなんですか?
       誰にも笑いかけてあげられないのは駄目なんでしょうか?
       心が冷たいって言われましたけど、彼らがいう心はボクにあるのですか?
       この世にはボクとボク以外の影しかいないのですか?」

( +ω+)「シュー、もういい」



200: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:44:52.56 ID:bk6Zvl/A0
シューが立ち上がったせいで、彼女の表情が見えない。
でもおそらく表情は変わっていないだろう。
にも関わらず、彼女が怯えているのがはっきり分かる。
少し……ほんの少しだけ彼と彼女の距離が開いていた。

lw´ , ノv「皆怖いから嫌いです。
       そしてこんな弱虫なボク自身も嫌いです。
       だから惨めな “ ボク ” を捨てて、あの人のように強い “ 私 ” になりたかったのです。
       生まれ変わったなら……生まれ変わるつもりならどんなものにも怖がってはいけません。
       弱い部分は要りません。ボクなんて要りません。
       なのに」

( +ω+)「……」

彼も立ち上がり、開いた距離を詰める。
多分、彼女は止まれない。
言葉も届かないだろう。


lw´ , ノv「どうしてボクは怖がりが治らないのでしょう?どうしてカッコいい私になれないのでしょう。
       どうして?…………どうして」


( ФωФ)「シュー」

だから呼びとめる。
肩に手を置こうとする。



203: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:49:47.55 ID:bk6Zvl/A0
lw´ , ノv「っ」

その手から逃げるようにさらに距離を置き、シューのようやく言葉が止まる。
彼も近づいて初めて分かったことだが、彼女はかすかに震えていた。
男に近づかれて緊張している等の理由なら、彼としても嬉しいところではあるが。
現実の壁は厚く、妄想の立ち入る隙間がなかった。
むしろ男に近づかれて怖がってる可能性のほうが高そうだ。


( +ω+)「そんなに怖かったか?」

lw´ , ノv「……うん。
       強がって強がって、どんなに強がってもスカルミリョーネ倒せそうにないです。
       なにもかもが怖いのに、怖くないふりを維持するのは苦しかったです」

( +ω+)「それ、四天王一の雑魚らしいぞ、一応」

壁が厚かったのはシューの方も同じであった。
彼女の目には、現実がひどく歪んで映ってたのだろう。
気分はホラーゲームに迷い込んだ女子高生といったところ。
ゾンビやクリーチャーとお友達になるため、彼女は強靭な精神を以て変装するしかなかった、という具合か?

lw´ , ノv「ヒー姉までゾンビ扱いしないでください……」

( ФωФ)「やはりヒートのこと好いてるではないか」

lw´ , ノv「これでも昔は苦手だったんです。
      今でもたまにビクリとしちゃいます」



205: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:55:11.88 ID:bk6Zvl/A0
そして変装するためのツールが記憶を見る力であった。
この力を使って、シューの世界は一気に広がったのだろう。

( +ω+)「とはいえ、弱さを克服するにはお前自身が強くなるしかないのだがな。
        それも本質的な意味でな。
        力に頼るのは勝手だが、あれは良くないモノも引き寄せる。
        なるべく使わない方向で強くなれ」

lw´ , ノv「どうやって?」

とりあえずは信頼できる奴に頼ればいい。
ヒートあたりなら、弱いシューでも護ってくれるだろう。

lw´ , ノv「でもヒー姉はボクと違って立派な人だよ。
       おかしなボクのことなんて少しも理解できないかもしれないよ」

それでもこの世に残ってる、シューのただ一人の家族だろう。
理解できなくとも弱音くらい受け止める度量はあるはずだ。
ヒートはたしかに立派な姉だから。

lw´ , ノv「それで強くなれるの?
       それで怖くなくなるの?」

ああ。
人は人とつながって強くなれるものなのだ
少なくとも彼がそうだった。

lw´ , ノv「愛は地球を救うってことですか?」



206: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 02:59:47.37 ID:bk6Zvl/A0
シューはじっと彼の顔をみる。
彼女の目はいつもと同じで、感情の色を映していなかった。
それが嬉しいと感じればいいのか、悲しいと感じればいいのか、彼には分からない。

lw´‐ _‐ノv「嬉しいと感じちゃっていいんじゃないんですか?
       ボクとしては、とりあえず今の言葉を信用してますので」

(;+ω+)「しかし、なんか違和感があるなあ。
        というか今日のお前はマジシャン並の変わりようだな」

lw´‐ _‐ノv「わしから始まり、私と続いて、最後がボクですからね。
       ボクはマジックでビックリするくらいならお帰り願いますが。
       まあ、明日からまた私に戻るわけですけどね」

シューがそう決めたのなら仕方がない。彼も応援しておこう。
推定五年は続けたであろう仮面を簡単に壊してしまったら、周りも戸惑うしな。
今のこの場での弱さくらいは受け止めよう、と彼は思う。
ふと、彼は今思いついた疑問をぶつけてみた。

( Фω+)「スカルミリョーネ倒せるのか?」

lw*‐ _‐ノv「カイナッツォならおそらく余裕です」


まだ倒せそうにないようだ。
そして彼女は告げる。


lw´‐ _‐ノv「……そう、まだ倒せません。
       だから今のボクには近づかないでください」



207: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 03:04:47.77 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ ,‐ノv「見えないと何もかもが怖いのです。
       でも逆に見えすぎても、やっぱり怖いのです。
       どこにでも誰かの歴史があるから、楽しい記憶もあれば嬉しい記憶もあるでしょう。
       でも、どんなに見てもそんなの、おそらく本当のボクには分からないのでしょう」

もしシューが本当に理解できる記憶があるのなら。
もし感情の未熟な子でも、受け取ることのできるものがあるのなら。
それはきっと、おそらく、

lw´‐ ,‐ノv「痛いのです、苦しいのです、恐ろしいのです。
       私はそれだけしかちゃんと知ることができません」


lw´ , ノv「……だから今のは一人にさせてください。
       明日になれば、いつものシューに戻ってみせますから」

( +ω+)「……」


彼はもう、何も言えなかった。



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