( ФωФ)さとりごころのようです

212: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 03:27:11.69 ID:bk6Zvl/A0
   



  五章 異界の理


     一話 名




214: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 03:31:47.82 ID:bk6Zvl/A0
砂尾家妹恐怖劇場の翌日、お昼過ぎ。
二人は居間で麦茶を飲みながら、記憶を見る力について整理していた。

( +ω+)「……シューというものがよく分からない」

lw´‐ _‐ノv「私は国か?
       平和の象徴になりたいのなら、ユニセフ協会っぽいことでもすればいい」

( ФωФ)「協会のほうか」

一日たつと、シューの一人称が “ 私 ” に戻っていた。
ボクっ娘ですます口調も捨てがたいと思うのは、ちょっとした彼のささやかな欲望だったり。
そんなことを考えてるから、横からチョップが飛んできた。

lw´‐ ,‐ノv「いやらしいの」

( Фω+)「希少種は保護しなければならないと思うのだが。
        ボクといってる女の子には昨日初めてあったからな。
        リアルでもいたのだな」

lw´‐ _‐ノv「珍しいとは思うけどいないわけではないからねえ」

(*+ω+)「無理して取り繕う必要はないと思うのだが?」

lw´‐ _‐ノv「やかましい。
       人が必死でリカバリーしてるとこに必要ないとかいうな。
       大体、記憶の渦で溺れかけると色々不安定なんだよ。
       それなりの時間を 『 私 』 で過ごしてたから、普段は 『 ボク 』 なんて出てこないっつの」



216: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 03:37:26.50 ID:bk6Zvl/A0
シューは今、ニット帽を被っていない。
彼も今は感覚の目を開けている。

シューの様子を霊的な視点で観測中なのだ。
これによってシューが普段、どのように力を使っているかを知る。
若干、視界の端で変なのがいるが気にしない。

('A`) オフタリトモ、ナンカコワイヨ …

幽霊だからなおのこと、力を使う彼らに近づきたくないのだろう。
ちなみに世にも不思議な 『 体から湧く墨汁 』 現象はすでに止まっている。
なので例によって、おかしなプリントの T シャツを着ている。

( +ω+)「 『 聖人君子 』 ……か」

彼は己の意見はいわないでおく。
ただ、仮面少女のシューにはこれほど似合わない言葉はない。

lw´‐ _‐ノv「私ほど正直な奴はいないと思うけど?」

( ФωФ)「どの口がいってるのだ?」

lw´‐ ,‐ノv「演じるのも演じたいのも全て私の衝動だしー。
       あんな自分なんて大嫌いだしー。
       嘘じゃなくて演じてるだけだもーん」

( +ω+)「……屁理屈、ここに極まれり」



218: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 03:41:47.89 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「ま、正直なところ……嘘が本当になってくれればいいなとは思ってますね」

(*ФωФ)「お?」

lw´‐ _‐ノv「……」
  _, ._
lw´‐ _‐ノv「思ってるね」

昨日の今日だ、まだ不安定らしい。
しかし、なにも言い直さなくてもいいと思う。
仮面少女も大変だ。
というか、何も知らなければ皆騙されるだろう。
事実、彼も騙されてたわけだから。

lw´‐ _‐ノv「……、」

( Фω+)「?」

シューの挙動が一瞬固まった気がする。
普段通りに接していたなら、この動きは別に気にしないところだ。
しかし彼は今、霊視している。
そしてシューの周りで何か変化が起きた。
霊気の流れがおかしかったような……

玄関の方から戸を開く音が聞こえた。
同時に聞きなれた声もした。

     「ただいまーっ!!」



221: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 03:46:56.96 ID:bk6Zvl/A0
声の主はすぐに彼らの前に姿を現した。

ノハ;゚听)「ふひーぃ、っと、今日も暑いねえ」

lw´‐ _‐ノv「おか」

( ФωФ)「おかえり」

おそらくシューは何かを読みとった。
それは何なのかと彼は少し考えて、すぐ答えにたどり着く。
ヒートが冷蔵庫の麦茶を取りにいくタイミングで、彼はこっそり聞いてみた。

( ФωФ)(ヒートが帰ってきたのも読めるのか?)

lw´‐ _‐ノv(うん。
       この辺一帯の動植物の記憶を私の目が吸い寄せてるみたいだから。
       いつも何事かが私に辿りつく前に読みとれるよ)

(;+ω+)(真性だなあ……いつもそうやって人の心を読んでるのか)

lw´‐ _‐ノv(戦場では憶病なくらいがちょうどいいからね。
       つーか同じ読みとりでも、ちょっと前の過去の事象とリアルタイムで変わる心とでは難易度違うよ。
       読心っていうのはそんなに簡単じゃないから、ロマ以外に頻繁に使ったりしないっつの)


ノハ*゚听)「お?おお?なに内緒話してるん?」

( ФωФ)「いや、シューは面の皮が厚いなあと」

臆病少女ゆえに、なのだがな。



222: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 03:51:47.46 ID:bk6Zvl/A0
ノハ*゚听)「んで、ロマさん。
      シューについて何か分かった?」

( ФωФ)「まあ大体は」

lw´‐ ,‐ノv「え?私、まだなにも聞いてないよ?」

( +ω+)「言ってないからな」

lw´‐ _‐ノv「……なんだろう、この胸のざわめき。
       これが恋なんだろうか?
       ただロマの顔を二倍に膨らませたい欲求なんだろうか?」

(;+ω+)「拳を握りしめながらにじり寄ってくるな」

ノハ*゚听)「おー、やれ、やっちまえー。
      お姉ちゃんはシューの味方だぜー」



……小休止。



225: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 03:56:48.26 ID:bk6Zvl/A0
軽くじゃれあった後、シューが何事もなかったかのように聞いてきた。
それが少しだけ気に食わなかったから、彼も同じ態度で答えた。

lw´‐ _‐ノv「で、何が分かったの?」

( Фω+)「ああ、お前の力が千里眼の一種だってことだな」

ノパ听)「千里眼?
     あの遠くまでバビューンと見ちゃうやつ?」

( ФωФ)「ああ、それだ」

lw´‐ _‐ノv「でも私の力って距離あまり関係ないんだけどね」

ノパ听)「話を聞いた限りじゃ千里も見るって感じじゃないもんね」

( Фω+)「ちょっと詳しく説明すると……」


千里眼。
透視とも呼ばれる。
だが何も、遠くの事象をみたり物体を透かすのだけがそう呼ばれるわけではない。


重要なのは『事象を素早く知る』の一点のみだ。



226: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:01:21.38 ID:bk6Zvl/A0
もし、遠くで大事故が起こっても、人から伝わるより早く知ることができれば。
それは未来の出来事であったり。
事故現場までの障害をまとめて透かして見たり。
人から話が伝わるよりも早く、誰かの記憶を読みとったり。

……まるでその事故を直接みてきたように、知ることができれば。


( Фω+)「そういう力は全て千里眼といっていいものだからな。
        だからシューのような過去視も千里眼に含まれる。
        普段通りに誰が口にするよりも、早く物事を知りえるのだからな」

ノハ*゚听)「……ほえー。
      たしかにシューにできそうな芸風だね。
      シューが記憶見ながら話してると、ごく稀に会話が飛ぶからね」

lw´‐ _‐ノv「しかし、近代化のおかげで千里眼マジ要らない子。
       今では地球の裏側のフェニックスとか知ることできちゃうご時世だし」

(;ФωФ)「おまえの力だろう?
        要らない子扱いしてやるな、ボクおんな」

lw´‐ ,‐ノv「まだいじるか」



シューをいじれる機会なんてそうそうなさそうなので。



227: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:06:56.34 ID:bk6Zvl/A0
ノハ;゚听)「あれ?もしかして昨日、ボクっ娘になってたの?」

lw´‐ _‐ノv「うん。
       またんき君にも見られてロマにも見られた。
       何という男運の悪さ、もう泣きたい」

(;+ω+)「男運とは違うだろう?」

「それってたしか恋愛運みたいなものだろう?」、思ったが彼は口に出さないでおいた。
これはシューに言わないでおこうという配慮より、ヒートのあらぬ妄想への危惧からだ。
砂尾家の姉さまは、そういう話で何度かやらかしているのである。
“ 恋愛 ” なんて禁句でいいほどに。

彼は思う。
大体、私はこんなおチビさんと付き合うわけがない。


lw´‐ o‐ノv「エド〜、ロマで賢者の石でも作ろうぜ〜」

( ФωФ)「そっちも禁句だったな、そういえば」

しかし今日に限って、『 チビ 』 にそんなに怒っている感じがみえない。
おそらく本当の彼女は、身長や胸が小さいことを気にしてないのだろう。
……キャラ付けも大変だ。本性みた後だがら、なおさらそう思う。


lw´‐ _‐ノv「……やっぱり殴った方が私らしいかしらん?」

(;ФωФ)「殴らない方がお前らしいと思うよっ」



229: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:11:07.43 ID:bk6Zvl/A0
ノハ;゚听)「うわぁ……ボクっ娘になったところに遭遇とは大変だったね」

lw´‐ _‐ノv「ホント災難だったみたいだね、ロマ」

( +ω+)「災難なのはお前がだろう?」

ノハ*゚听)「二人ともだよ!」

( Фω+)「私はそうでもなかったがな。
        ところでなんでこいつの一人称はボクだったのだ?
        女なら普通、わたしとかあたしになるものじゃないのか?」

ノハ*゚听)「それは多分ショボン君の影響だろうね。
      昔はよくあの子の真似してたからさ」

lw´‐ _‐ノv「そしてあのハゲのせいで、今では羞恥プレイ状態。
       ちくしょう、ハゲなんて皆牢屋に閉じ込めとけばいいのに」

高校球児や可哀そうなお父さんがいるから、やめてほしい。
そしてショボン、よくやった。
本当によくやってくれた。
グッジョブ。

lw´‐ ,‐ノv「はは、こやつめwww」

(;ФωФ)「すまん、本当にすまんっ!
       お願いだから怒りを鎮めてくれっ!」

シューは無表情で笑うという、かなり器用なことをしでかした。
ぶっちゃけ怖い。



230: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:17:19.98 ID:bk6Zvl/A0
( Фω+)「あ、それと昨日のシューについてだが。
        ザックリ言ってしまえばトランス状態になってたと思う」

lw´‐ _‐ノv「ああ、なるほど。
       アルケンの異性体か。
       シス型よりも安定してるみたいだけど、私って今けっこう不安定よ?」

(;+ω+)「……流すぞ。
        不安定になって、記憶をみる力の大本を感じやすくなった。
        その結果あの墨汁現象であり、霊気爆発であったり、呪文だったりするのだ。
        だから正直、そんな状態を何度も体験していながら今まで憑かれなかったのが驚きだ」

思うに。
憑かれなかったのは、その記憶をみる目のせいだと思う。
彼の考えていることが正しいのなら、おそらく……。

ノパ听)「呪文ってもしかしてあのすんごい独り言のこと?
     意味が分かりそうで、とっても違和感な?」

lw´‐ _‐ノv「あーあー、あれかあ。
       実際、そのときの私、トんじゃってるから覚えてないんだよねえ。
       で、どうして憑かれなかったのはこの力のせいだと思うの?」

なにもかも知られてしまったせいか、シューさんバリバリ読んでます。
隠し事を隠す必要のない人間の強さを目の当たりにしました。
でも読まれても困るので彼は誤魔化した。

(*Фω+)「ひ ・ み ・ つ 、うふっ♪」

親の仇を見つけたような殺気を感じた。



231: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:21:59.19 ID:bk6Zvl/A0
(;+ω+)「ま、まあなんだ。
        とりあえずシューの力が安定すれば万事解決ってわけだ。
        だからこれからシューの力に名前をつける」

lw´‐ _‐ノv「……ほう?」

ノパ听)「へえ、名前をつけただけでどうにかなるんだ?」

( Фω+)「ああ、もちろん」

言葉で表現できないものはこの世にない。
表現できなかったとしても新たに名前がつけられる。
だから言葉は世界のすべてを内包している。

もちろん、言葉にすることのできないもの、言葉でしか表現できないものも存在するだろう。
外国語を翻訳しきれなかったり、 『 四角い三角 』 のような矛盾を孕む言葉がいい例だろう。
そして彼らの力も、現実では翻訳しきれないものの一種である。

それ故、名付けで認識 ・ 区別することが必要なのだ。


lw´‐ ,‐ノv「……なるほどねえ」

ノハ;゚听)「え?シュー、今の説明で分かったの?」

「絶対、力で読んだだろうこの豆は……」、彼は呆れたが、文句を言うのは諦めた。
だが、シューが理解できてもヒートはまだ理解してない。
説明も途中なので無理矢理続けた。



232: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:27:44.97 ID:bk6Zvl/A0
(;+ω+)「コホン……シューの力は今、水みたいな状態なんだよ。
        力を受け入れる器があっても、水を遮る壁がシューの中にはない。
        まあ……力は一応、結界でも封じ込められるから、それが壁役となってるのか。
        でもこいつ自身が自制できない限り、何度でも暴走するだろう」

ノパ听)「だから名付ける?」

( Фω+)「まあな。
        霊的な力を抑えるための名付けだが、カラクリは単純だ。
        要は力を意識させ、こういう力だと思い込ませる暗示に近い。
        そのため、名付けはシューのイメージに合わせる必要があるがな」

方向性が決まれば、川だって流れてくれる。
あの世の理である霊能力というのは、もとよりこの世で形と成ってくれない。
幽霊と同じで、蜃気楼のようにとても曖昧なのだ。
だから、イメージしてできること ・ できないことを明確に決める。
決めた後は「決めたことしかできない」と、力に形を与えるのだ。

( +ω+)「だから暗示。
        世の中には自己暗示とかプラシーボ効果とかあるからできないわけじゃない」

ノパ听)「でも TV に出てる人の霊能力には名前ついてる人、みたことないよ?」

( ФωФ)「それはエセかその程度の力なだけだ。
        そもそも 『 霊能力 』 や 『 浄霊 』 でも立派な名前だからな。
        シューの場合、そいつらを飛び越えて神通力レベルになってるから性質が悪い。
        生まれる時代が違ったら、天狗呼ばわりされてもおかしくないわけで」

lw´‐ ,‐ノv「はいはい天狗の仕業、天狗の仕業」



234: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:32:18.83 ID:bk6Zvl/A0
ノハ*゚听)「神通力っていわれると、そっちのほうではけっこう名前ある奴多いね。
      それをイメージトレーニングで制御しようって腹か。
      ……ところでシューの力はロマさん的にどれくらいの強さなの?」

( +ω+)「そうだなあ。
        万物に対する感知力は凄まじいが、霊に対する耐性がほとんどない。
        浄霊する力でもないから、悪霊が現れたらやばいだろうな。
        まあ私の知っている他の霊能力者と比べると、シューは一点特化型だ。
        こいつは霊だけでなく人の記憶も知ることができるのだからな」

ノパ听)「霊能力者は霊の記憶をみることができるの?」

( ФωФ)「さすがにシューと比べるとお粗末レベルだがな。
        “ 記憶 ” ときくと違和感を覚えるなら、 “ 念 ” と置き換えて考えてみろ。
        聞かないか?心霊写真みて、こういう念を感じとれると言ってる奴らを」

「なるほどー」、うんうん唸りながらヒートは理解の色を深めていく。
それでも人の記憶を読むのは大抵の霊能者は無理で、それができるシューの力は優れている。
ただし記憶の全てを読みとれるわけでもなく、他者へ影響をあたえない力なので、優れているが弱い。
そんなことを考えていると、シューはなぜか彼のことをじっと見つめている。

lw´‐ _‐ノv「……もちろん神通力レベルのロマには名前、あるんだよね?」

(;ФωФ)

lw´‐ _‐ノv「参考までに教えてちょ?」

ノハ*゚听)「へえ?ロマさんの力にも名前があるんだ?」

あるにはあるのだが、あまりにアレなので彼はいいたくないのである。



235: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:37:05.51 ID:bk6Zvl/A0
彼はしばらく沈黙を通した。
二人はしばらく彼を待っていたので、彼は苦しげに一言。

(;+ω+)「絶対言わん」

lw´‐ _‐ノv「……私を目の前にしてよくいったものだ」

気のせいかシューの目がきらりと光った気がした。
こういう流れになるのは予想できた。
しかし彼は本心で、どうしても、絶対に、言いたくなかったのだ。

ノハ*゚听)「シュー、ガンバッ!!」

lw´‐ _‐ノv「うぃ。では質問でぃす。
       ロマが恥ずかしがってる理由はなんだい?
       ものすごく恥ずかしい名前とか?」

(;+ω+)「……」

lw´‐ _‐ノv「もしかして邪鬼眼スレにあるような名前?」

(;+ω+)「……」


lw´‐ _‐ノv「なるほど、厨二なのかー」

(;ФωФ)「おいっ!!」


厨二ではない…………と思いたい。



237: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:41:58.21 ID:bk6Zvl/A0
ヒートは少し考えて、それから感嘆した。

ノハ;゚听)「でも厨二ってことはすごく強いってことだよね?
      うはー、すごいね。
      そんな名前つけなきゃいけないほどだったんだ?」

(;+ω+)「うん、まあ、制御できなかったくらいには強かったな」

ノハ;゚听)「で、どういうイメージでその名をつけたの?」

(;+ω+)「あ、うん、アヤカシの理をちょろっとな」

ノハ;゚听)「へえ」

彼とヒートのテンションは正反対だ。
その間のテンションの少女は、彼に一言。

lw´‐ _‐ノv「若さゆえの過ちなんて誰にでもあるから気にすんなよ」

(;+ω+)「ぐ」

こうかはばつぐんだ。
一応彼の名誉のためにいっておくが、名前は別に『おれツヨス』でつけたわけではない。
対処法を間違えたか、と彼は強く後悔した。



239: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 04:46:58.12 ID:bk6Zvl/A0
(;ФωФ)「わ、私のことなどどうでもいい。
        とりあえずシューの力に名前をつけよう、そうしようっ」

lw*‐ ,‐ノv「慌てちゃって……可愛いの」

(;+ω+)「頼むから黙ってくれ」

これ以上ダメージを受けたら、瀕死になりそうだった。
なので多少強引に話を進ませる。
「さっき私がいじったからか?」、言葉にしなかった彼だがこの話題にしてくれた彼女を少し恨む。

lw´‐ _‐ノv「んー?
       名付けてくれっていきなり言われてもいい名、思い浮かばんよ」

ノハ*゚听)「かっくいいのにしようっ!!」

lw´‐ _‐ノv「となると私も厨二のほうがいいのかな?」

厨二いうな。
厨二いうな。

(;+ω+)「…………厨二いうな」

lw;‐ _‐ノv「分かったから、泣くな」

(;ФωФ)「泣いてないっ!」

心がとてもとても痛むだけだ。



241: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 05:05:12.86 ID:bk6Zvl/A0
(;+ω+)「……別に強そうなのとかっこいいのにこだわる必要はないからな」

念のため注意しておく。
さきほど彼もいったが、 力 = 名前 となるようにイメージが合わなきゃ意味がない。
「お前は自分の力にどんなイメージを持ってるのだ?」、彼の疑問にシューは即答した。

lw´‐ _‐ノv「サトリ」

( Фω+)「悟り……坊さんが修行して得られるとかいうアレか?」

lw´‐ _‐ノv「ちがう、第三の目を持ってる方」

妖怪のほうらしい。
彼は少し考えてから、ためらいがちに言った。

( +ω+)「イメージトレーニングして力をサトリと考えないようにする必要あるかもな」

lw´‐ ,‐ノv「無理っす」

否定の声は早かった。
力が力だから、その妖怪にシューは強く共感しているのだろう。
とはいえ、彼も何も考えないでこんなことを言ったわけではないのだ。

(;ФωФ)「だってなあ、それってかなり大変だぞ?
        神仏や妖怪などに繋がる名前は、必要以上に力を引き出させる可能性すらあるから」

lw´‐ ,‐ノv「でもさ、できなくはないんでしょ?」

正解ではある。



242: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 05:09:53.16 ID:bk6Zvl/A0
妖怪の名前どころではない。
彼は神の名を借りてる奴を一人、知っている。

正直、厳しいことになるかもしれない。
だがすでに定着してしまったイメージは簡単に剥がせないものなのだ。
「……仕方がないか」、どうせ自分が無理をすればいいだけだと彼は思うことにした。
彼は気を取り直してシューと向かい合う。

( ФωФ)「んじゃ命名。
        『 千里眼 ・ 覚 ( サトリ ) 』 でいこう」

ノハ*゚听)「おおおおおおおおおおおおっっ!!」

興奮したヒートの雄叫びの影でシューはぼそりと呟く。
それも、当てが外れた風な様子で。


lw´‐ _‐ノv「安易すぎじゃない?」



……イメージしやすいからいいではないか、と思うのだが。




戻る次のページ