( ФωФ)さとりごころのようです

275: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 07:25:07.09 ID:bk6Zvl/A0
   



  五章 異界の理


     三話 力




276: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 07:29:58.17 ID:bk6Zvl/A0
居間はしばらくの間、蝉の鳴き声だけが響いていた。

彼らは何も話さない。
それも当然のことで、彼が話そうとするたびにシューの言葉が上に被さる。
結果、彼は何を話せばいいか分からなくなってしまった。
シューの力の訓練であることを考えると、沈黙はあまり良くないのだが。


彼がそんなことを思っていたせいか。
シューはなにかに気付いたようで、挙手して報告してきた。


lw´‐ _‐ノv「先生、大変ですっ。
       霊丸がでませんっ」

( +ω+)「出るわけなかろう、馬鹿者」

ツっこみは速かった。
そもそも霊能力とは戦闘力みたいに鍛えれば強くなるものではないのだ。
いや、どこかに霊ガンみたいな力を持ってる人はいるかもしれない。
だが残念なことに、彼はそういう輩をみたことはない。

lw´‐ _‐ノv「そういえばさ、私たちの力ってなんなんだろうね?」

(;+ω+)「いまさらそれを聞くのか?」

lw´‐ ,‐ノv「だって厳密に考えたことなかったんだもん。
       誰も知らないようだったし」

( Фω+)「……ああ、それもそうだな」



277: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 07:35:01.55 ID:bk6Zvl/A0
「ならば説明してやろう」と思ったが、彼はどう話すべきか迷った。
なにしろ霊能力は、よく分からない力なのだ。
彼の感覚、経験から導き出された答えが正しいと決まっていない。

lw´‐ _‐ノv「それでも自分の力を考察するには役立ってくれるって。
       ロマの経験知に期待しているぜぃ」

( +ω+)「……んー。
        それなら今から話す内容は、あくまで一つの考えとして聞いてくれ」

lw´‐ _‐ノv「おk おk 」


( ФωФ)「さて、霊能力というものがどんなものか?
        まあ端的にいえばよく分からない力ではあるな。
        が、私の考えは少し違う」

lw´‐ _‐ノv「どう違うの?」

( +ω+)「ずれ、だな」

lw´‐ ,‐ノv「……」

彼は少し苦めに言葉をこぼした。
そしてシューもその一言で全てを理解できた。
だからだろう、彼女は一瞬、呼吸を止めてしまった。



278: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 07:40:52.44 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「認識のずれ、ね。
       たしかに自分が周りと違っているとは自覚してるけど」

( ФωФ)「お前のような障碍持ちや人格によるずれも要因にはあるだろう。
        だが私がいいたいのはそれだけでは……」

lw´‐ _‐ノv「分かってる。
       私たちがどれだけあの世に近いか、もだよね?」

( +ω+)「……流石、よく見ていらっしゃる」

全ては、“ ずれ ” に収束される。
彼らの魂がどれだけあの世に近いのか、どれだけこの世から離れているか。
昔、死にかけたことがあったかもしれない。
または初めから生まれるべき子ではなかったかもしれない。

魂がこの世の他の者たちとは違い、あの世の事象に敏感なのだ。
だから認識もずれる。見えないモノも見えてしまう。
それはまさに今、天寿を全うするものにだけ現れる、三途の川のようで。

( Фω+)「霊気なんて所詮、どれだけずれてるかの尺度に過ぎん。
        ……と私は思っている」

lw´‐ _‐ノv「じゃあさ、私たちは今すぐポックリ逝っちゃうってことなん?」

( ФωФ)「それはないな。
        お互い、昔は違ったかもしれんが、今は元気な体だ。
        ただ、タナトスに魅入られるとそれだけ危険が多いとは思う 」



280: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 07:45:16.97 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ ,‐ノv「……クレイモアの半覚醒みたいなものかな?
       どうせ皆いつか死ぬわけだけど、私たちだけ生きていながら半分死んでる。
       魂のどこかが死んでるから、幽霊みたいな霊障もどきを扱える。
       ってことかな?」

( Фω+)「死んでるとまでは言わんが、誰よりもあの世の理に近いのだろうな。
        ただ、これは証明しろといわれても無理だからな。
        憶測だけの物言いになるのは勘弁してくれ」


修験道というものがある。
山籠りし、厳しい修行の果てに “ 験力 ” を得ることを目的とする。
それは図らずともシューの在り様を指している。

だが、例えばシューと同じ道を辿ったとしても、誰もが験を得るわけではない。
何度死にかけても霊がみえないことだってある。
一生、心霊現象に縁がないことだってある。


彼らは逆だった。
単純にいってしまえば、お互い貧乏くじを引いたのだ。
死にかけて霊に敏感になってしまった彼女。
生まれたころからあの世の理に関わざるを得なかった彼。
魂はこの世からあの世に向かってゆくせいか、一度見えると治すこともできない。


どうしようもない。
だから彼らは異状である。



282: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 07:50:21.27 ID:bk6Zvl/A0
まあ、でも。

( +ω+)「健康といえるか微妙だが、とりあえず元気な体があるのだ。
        だから異状だろうがなんだろうが、私たちには問題ない。
        大切なのはこれから先どう過ごしたいか、なのだから」

lw´‐ _‐ノv「先生、普通の女の子になるにはどうしたらいいですかっ?」


シューはどうやら普通の女の子として過ごしたいらしい。
「強い “ 私 ” になりたかった」といっていた気がするのだが。
そんな彼の疑問をシューは読みとって言う、「普通ってのは民主的に強い概念だよ?」
まだ十五のくせに、何気に辛辣だった。

( ФωФ)「ところでお前のいう普通ってどんな感じなのだ?」

lw´‐ _‐ノv「みんなにデクノボーと呼ばれ。
       ほめられもせず、苦にもされず。
       そういうものに、私はなりたい」

(;+ω+)「……普通とかそれ以前の問題だ。
        時代が違うからそういうものになれんだろう?」

lw´‐ _‐ノv「えー?
       結構気に入ってるのにー」


彼女の考えには呆れてしまう。



283: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 07:55:02.02 ID:bk6Zvl/A0
( Фω+)「ま、お前はもうちょい肩の力を抜け。
        仮面をつけるのではなくて、自分の欠点を直せるようになればいい」

もっと自分の感情に素直になればいいのだ。
周りと合わせる器量はすでに彼女に備わっているのだから。
あまりガチガチに己を作りすぎると、いつか作ったものに潰されるだろう。

シューがこのまま変われないのなら。
もし本当につらいことが起こったら、自力では立ち上がれまい。
後の人生、全てが逃げになってしまうだろう。

lw´‐ _‐ノv「逃げてもいいんじゃない?」

(;+ω+)「逃げてばかりじゃ駄目だろ」

lw*‐ ,‐ノv「おほほほほ。
       いつか現実から逃げれるようになるのが夢なのです」

( ФωФ)「……そういえば微笑むくらいならできるんだな」

lw´‐ _‐ノv「唇の端を持ち上げればいいだけでしょ?」

シューは眼が細いわけでもないのに薄目しているから、それだけで微笑んでみえる。
ただ、そうみせるためにかなり努力しただろう。

それより彼女の薄目はもしかして。
昔から霊が見え、さらに顔が分からないせいで、とても怖がりだから。
あまり物を見ないようにしていた名残かもしれない。

lw´‐ _‐ノv「いやまあ、その通りだけどさ」



286: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 08:39:05.60 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「……やっべ。
       話題尽きちゃった」

なんだかんだで、ここまで話の種を蒔いていたのはシューだった。
会話がなければ力を使おうが、先読みできたか確認できない。
彼からの話題がないので、彼女は頑張ってきたのだが。

(;+ω+)「ぬう、すまんな。
        本来なら私から語りかけなければ駄目なのだがな」

lw´‐ _‐ノv「まったくだ」

(;ФωФ)「とはいっても、先読みされるから何も言えなくなってしまうのだが」

lw´‐ _‐ノv「んー…………あ、そうだ。
       じゃあさ、ロマに質問。
       本物の妖怪や神を見たことあるかい?」

( ФωФ)「ないな」

lw´‐ _‐ノv「即答スか」

そもそも本当にそんなのがいるのか、と彼は思う。
妖怪じみた幽霊や人は彼の人生の中でそれなりにいた。
現に目の前の少女も “ それなり ” の範疇に入る。

妖怪じみた幽霊は、己が念を肥大化させた結果である。
彼らは強い念でこの世にとどまるのだ。
この念というものがやっかいで、他者の畏れなども霊を霊として存在させる力となる。



288: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 08:45:09.91 ID:bk6Zvl/A0
そして体がない。つまり脳がない。
ゆえに、物事を秩序立てて考えることはほとんどない。
感情の赴くままうろついているか、その念によって思考が極化している場合が殆どである。
それが行動に表れると、心霊現象が起こる。

lw´‐ _‐ノv「でもさ、無害な浮遊霊もいるよね?」

(;+ω+)「いるにはいる。
        そういうのは大抵、こちらに興味がないか死んですぐの奴だな。
        死んですぐの方は、しばらくするとあの世に消えるが……」

lw´‐ _‐ノv「どうしたの?」

(;ФωФ)「いや、少し混乱しただけだ。
        思考を明確にしないと、いきなりすぎてついていけないからな」

ぼんやり考えていようものなら、何の話をしているのか分からなくなりそうだ。
なので今の幽霊話に集中しよう、と彼は決意する。

lw´‐ _‐ノv「しかし理性的な幽霊はいないのか。
       やっぱり脳って偉大だねえ。
       再確認させられたよ」

( +ω+)「……まあ、お前はそうだよな」

シューは脳の傷のせいで顔を見ることができない。
だからだろうか、言葉に力がこもっていた気がする。
なんでもないかのように彼女は言った、「しんみりされても困るんだけど?」。



289: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 08:50:09.85 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ ,‐ノv「ところでさらに聞きたいことが二つほど出てきたんだけど、ええかい?」

( ФωФ)「ええよ」

lw´‐ _‐ノv「んじゃ一つ目。
       記憶と念ってどこか違うの?」

( +ω+)「んー」

答えづらい質問が来た。
念という言葉にはいろんな意味がある。
想いや考え、注意などの一般的なものから心霊的な意味のものまで。
それら二つの意味は似ているが微妙に異なっている。
なんと答えればいいか迷っていると、得心がいったように彼女は言う。

lw´‐ ,‐ノv「ああ、合気道でいうところの “ 気 ” みたいなものか」

( Фω+)「そういえば以前、合気道やってると言ってたな」

lw´‐ _‐ノv「最近は顔出してないけど。
       ていうかもうやめてもいいけどね」

( ФωФ)「どうして?」

lw´‐ _‐ノv「何かと戦うのなら、痛みを知らないと加減が分からないものだからね。
       もうある程度分かっちゃったから、今は特に通う理由ないんだよ。
       でも同じ道場のシャキンさんがやめさせてくれないんだよ。
       『 アキちゃんは筋がいい 』 って言ってね」

……まあ励んでくれ。



290: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 08:55:01.08 ID:bk6Zvl/A0
( ФωФ)「で、合気道でいうところの “ 気 ” とはどういう意味なのだ?」

lw´‐ _‐ノv「……人によって解釈の違いがあるね。
       私は気合いと気配が混じったものだと思っているよ。
       はじめのころは 『 気を出せ! 』 って先輩方にいわれてたなあ。
       誰もどういう意味なのか教えてくれなかったから、すぐには理解できなかったよ」

気はずいぶん複雑な意味をもっていた。
「念もそういうものでしょ?」とシューの視線が尋ねていた。
彼は彼女の視線の問いを肯定し、言葉での問いに答える。

( +ω+)「そうだな。
        ここでいう念も複雑な意味をもっているな。
        簡単に、想いと想いの力と解釈してくれていい。
        記憶が誰かの想いで刻み込まれるなら、念とイコールで結ばれるだろう」


( ФωФ)「あえて違う点をあげるとするなら、それらが力となりえるかどうかだな。
        念は霊障を引き起こす素だが、記憶は経験にしかならない。
        もし霊が念を溜め、且つそれを鎮める信仰がなければ危険だな」

lw´‐ _‐ノv「念は魔力で、記憶は体力……みたいなものかな?
       いや、最近は体力消費で技を出すゲームもあるか」

おかしな例えだが、ある意味で的を射ている。
彼の “ 念 ” や “ 魂 ” の概念は彼の師の受け売りである。
この町に来たときに魂の定義を教えてもらったが、しかしそれは師の解釈と微妙に違っていた。
シューも師も本質を見究めているが、お互い、視点が微妙に異なるだけなのだ。

彼女なりに内容を飲み込んで、次の質問をする。



292: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 09:00:08.48 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ ,‐ノv「せんせー、もう一つ聞いてもよかですかー?」

( ФωФ)「よかですよー」

lw´‐ _‐ノv「せんせーは本物の妖怪や神はみたことないといいましたー。
       それじゃあ 『 アヤカシの理をちょろっと 』 どうするのですかー?」

(;+ω+)「う」

あの混乱時につい出てしまった言葉について聞かれた。
アヤカシなんて妖怪を指す言葉なわけで。
神も妖怪もみていないのなら、その言葉はおかしいわけで。
ついでに厨二と言われたので答えづらいわけで。

(;+ω+)「話さないとだめか?」

lw´‐ _‐ノv「教えてくれると嬉しい」

すでにシューは、彼にも神通力じみた力があるのを知っている。
記憶の渦に溺れてたところを彼に引き上げてもらったから。
黒い少女だった彼女は、少なくとも己の力と同等以上なのを察している。
だから少し前に、彼の力の名を聞いたのだ。

彼としてはこれ以上詳しく話したくないところであったが、

lw´‐ _‐ノv「ロマの力って漠然としすぎててよく分からんよ。
       私の力はおもいっきり知られてるのに、なんかずるい」

話さないと駄目な空気にされた。



293: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 09:06:07.95 ID:bk6Zvl/A0
( +ω+)「……平たくいうと、私の力はバンリを統べるのだよ」

彼の一言。
聞いていたシューは首を傾ぐ。

lw´‐ _‐ノv「万里?
       すっごく長そうな力だね。
       …………いや、違うか」

彼女の力は記憶をみる。
そのおかげで心が読めるので、理解力は人より遥かに高い。
すぐに言葉の意味を把握した。
普段はそれで、周りの空気をうまく ( ? ) 読んでいるのだろう。

lw´‐ ,‐ノv「よろずの理を統べる力、ねえ。
       ぶっちゃけ規格外じゃない?」

( ФωФ)「私の師がそんな感じに言ってたことはあるがな。
        シューのような一点特化はともかくとして、基本的な霊能力なら大体使える。
        この世の物理法則や熱力学を操ることなど不可能だがな」

そう、だから “ 万理 ” なのだ。
これは彼の力の名ではないが、彼の力の性質をよく表わしてくれる言葉だ。
あの世の全てを知る力で、あの世の全てを統べることができる。
……少なくとも彼はそう教えられ、力にとある名をつけられた。

故に浄霊もできるし、心霊現象への耐性も強い。
もし存在するなら、アヤカシや神ですら相手にできるかもしれない。



295: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 09:10:51.40 ID:bk6Zvl/A0
( +ω+)「まあ性質上、昼と夜とで力に強弱がつくがな。
        もちろん力が強いのは夜の方だが」

lw´‐ _‐ノv「私のような力はともかく、ということはロマは私の力は使えないの?
       話を聞く限りでは、なんでもできそうな気がするけど」

( ФωФ)「……読んでみろよ」

lw´‐ ,‐ノv「……わかってて言ってるでしょ?」

己の核を知られないように、彼の力の耐性がシューの読心を阻む。
彼女は考える。おそらくロマの力については耐性が働く、と。
そしてその考えは正解である。

彼は……何故か安堵したような……ため息をついて、疑問点の解説をする。


( +ω+)「シューの足元には届くかもしれない。
        が、おそらくそこ止まりだろう。
        万理といえば聞こえはいいが、実際は器用貧乏なのだよ。
        それでもこの力自体強い部類に入るらしいから、多少の無茶はできるがな」

lw´‐ _‐ノv「ふーん」

「器用貧乏で、私の一点特化の力を抑え込むのか?」、思ったが彼女は口に出さない。
多少の無茶でどうにかできるものだろうかも思い、その説明に彼女は少し納得がいかなかった。
しかし、彼もあまり話したくない内容なのだ。
なのでこれ以上、万里の力への質問はしないでおいた。



296: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 09:16:03.22 ID:bk6Zvl/A0
したがって話題はスライドする。

lw´‐ _‐ノv「ロマにも師がいたんだね」

( ФωФ)「いけ好かないババアだったがな」

lw´‐ _‐ノv「ロマって何気にこっち方面の話題に明るいよね。
       その人にいろいろ教えてもらったの、床の間で?」

(;+ω+)「床の間では教えてもらってない。
        冗談でもそんな怖いこといわないでくれ」

顔ももう覚えていない師の姿を思い出す。
そして床の間へ入るところを想像して…………彼はすぐ思考を中断した。
そんなことなど知らないと言いたげに、シューは続けて聞いてくる。

lw´‐ _‐ノv「その人も神通力レベルの霊能力者だったり?」

( Фω+)「ああ、そうだ。
        私には真似のできない力だな。
        通しの力……と言ってたな。
        『 ケツ 』 という言葉を軸にして、霊を追っぱらってたよ」

lw´‐ ,‐ノv「自分のことはあまり知られたくないのに、人のことをすぐ教えるなんて……。
       それで、ケツ?お尻のこと?」

「それじゃあ霊能力にならんだろ」、彼は呆れた。
言霊をあつかう砂尾家の者が、そんなのでいいのだろうか?



297: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 09:21:58.37 ID:bk6Zvl/A0
( ФωФ)「欠けると書いてケツと読み、
        穴と書いてケツと読み、
        結ぶと書いてケツと読む」

( Фω+)「この世に強い未練をのこした霊の念を欠けさせてあの世へ送る。
        それが無理ならば、穴をあけて霊を追いだす。
        それすらできなかった場合、界を結んで封印する」


lw´‐ _‐ノv「……想像しにくいんだけど」

( +ω+)「あれだ。
        ギルガメッ手と救世手と、しまっちゃうおじさんを足し合わせた力だと思えばいい」


(;+ω+)「…………特にしまっちゃうおじさんの方のレベルは半端じゃないぞ
        ショボンのところは結界を扱うらしいが、多分、あのババアの方が数段上だろう。
        機嫌を損ねたやつは皆、生きていようが関係なく封印されてたしな。
        かくいう私も、一度閉じ込められたことがある」


今思い出してみても、あの人の力は凄かったと思う。
そんな人に規格外と似た意味の言葉をもらった彼としては、喜んでいいものか。
彼から言わせてもらえば、師のほうがよほど規格外に思われる。
シューは驚き半分、呆れ半分でぽつりと。

lw;‐ _‐ノv「野生のピッコロくらい倒せそうだね」

(;+ω+)「うん、まあ……ラスボスじみたキャラなのは認める」



299: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 09:27:05.12 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「その人がロマの基礎を作ったといってもいいんだよね?」

( Фω+)「ん、まあな。
        力に名前をつけたり、霊の対処の仕方などはあのババアに教わったな。
        これらはほとんどババアのオリジナルといっていいかもしれない。
        自身は誰にも教わらずに、自力で対処したらしいからな」

lw;‐ _‐ノv「……自力で対処なんてできるものなの?」

(;+ω+)「私も教わった身だからよく分からんが、まあできないと思うな」

ただ、その理論の参考になるものはそこら辺に転がっていたと思う。
だからあとはただ一つの閃きが必要だっただろう。
その閃きが舞い降りてくるのは、殆どないだろうが。

lw´‐ _‐ノv「ひらめき?」

( Фω+)「ああ、読んだのか」


( ФωФ)「お前も分かっていると思うが。
        力に目覚める切っ掛けについて、はっきりしたことは分からん。
        だが、目覚めた力をどうコントロールするかはすでに答えを提示したよな?」

lw´‐ _‐ノv「自己暗示だね」

( ФωФ)「その通り。
        魂の在り方を己の好きな型にする必要がある。
        ちなみにこの方法は特別なことでなく、古来より人々が行ってきたことでもある。
        古来より行ってきたこと……読まなくとも分かるだろう、神社の子よ」



300: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 09:32:33.95 ID:bk6Zvl/A0
まあ読まれてしまうだろうな、とすでに諦め気味な彼だが。
でも少し勘のいい子なら、今の言葉だけで理解できるだろう。
シューはすぐに正解を引いた。

lw´‐ ,‐ノv「なるほど、宗教か」

その通り。
宗教で語られる話には、どこにでも神通力の持ち主が出てくる。
その登場人物たちの実体は、嘘か真か、今ではもう分からない。
全てが虚偽なのかもしれない。

だが、宗教と神通力は密接に関係している。
ならば異状者はそこから答えが導き出せるかもしれない。
結論をいえば、彼の師は答えを手繰り寄せることに成功した。

( +ω+)「いってしまえば宗教は、神を信仰することだからな。
        信仰とは強力な暗示であって、そこは誰にも否定できないだろう。
        あのババアは己の在り方を全力で信仰したのだよ」

lw´‐ _‐ノv「信仰」

目の前の少女は、強く言葉を沁み込ませる。
彼としては、彼女が師のようになってほしくないと切に願う。
なぜなら彼女の力につけた名は妖怪のそれであり、信仰しすぎると危ないのだ。

lw´‐ ,‐ノv「なら私も……」

(;+ω+)「こら」

続くであろう言葉が理解できてしまった。



302: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 09:36:58.40 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「……まだ何も言ってないのに」

(;+ω+)「人の懸念を実行されても困るのだよ」


「私も」ってなんなのだろうな。
本当にやめてほしい。
シューがあのババアのようになったら、彼は泣いてしまうだろう。

……さて、気を取り直そう。
今はシューのことのみ考えればいい。
あのババアのことなど考えるな、と彼は強く念じる。

( Фω+)「で、力に慣れてきたか?」

lw´‐ _‐ノv「まだよくわからないね。
       でももうちょいで何か掴めそうな気がする」

( Фω+)「ふむ」


ならば待ち続けよう。
彼女が手綱を握るまで。





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