( ФωФ)さとりごころのようです

422: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 22:26:23.95 ID:bk6Zvl/A0
   



  五章 異界の理


     異話 気



424: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 22:30:54.01 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「……ん」

皆と遊んだ翌朝。
私は誰よりも早く目が覚めた。

lw´‐ _‐ノv「二時間は寝られたかな?」

lw´‐卷v「ほぁ…………ぬあ〜」

軽く伸びをすると体のあちこちがパキポキ鳴った。
あくびもでる。でも頭はまだぼんやりしてるっぽい。
ぶっちゃけ寝不足である。

別に昨日、遊びすぎたわけではない。
ほとんど皆、零時あたりには寝たはずである。
ほとんど……というからには、例外が混じっているのだけど。

はい、私です。
一人で三時近くまで起きてました。
不良でごめんね。

lw´‐ _‐ノv「まあ、こんな状況じゃあ眠れんわな」

(* ー ) スゥ… スゥ…

(* ∀ ) クカー…

『 こんな状況 』 を再確認する。
私の部屋には椎名姉妹が寝ていた。



426: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 22:36:07.01 ID:bk6Zvl/A0
原因は昨日の怖い話だ。
なんか皆、帰れなくなったようなのだ。
だから泊めた。
私が皆を怖がらせた元凶でもあるわけだし。

ちなみに男連中は隣のロマさんの部屋を使わせてもらってる。
ヒー姉の携帯電話を通して、酔っ払いの居候から許可も取った。
『 お前の家だ、好きにすると……』と、そこまでは聞き取れた。
おそらくあのとき、ヒー姉あたりに絡まれたのだろう。


さて、そんなわけでこんな状況なのだが、私にとって非常にまずいわけで。
そもそも対人恐怖症気味の私が誰かと同じ部屋で眠れるはずがないわけで。


lw´‐ _‐ノv「修学旅行を思い出すわあ」

ま、当然そのときも寝不足になったわけだけど。
とりあえず皆寝ているので、こっそりと押入れの中から着替えを取りだす。
そして足音を殺して、いつもより布団の多い部屋を後にする。

廊下に出る。
夏なのでこの時間でも太陽はもう出ている。
ひぐらしや豆雉の声もちらほら聞こえてくる。


さて、外に出る準備でもするかな。



428: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 22:40:59.72 ID:bk6Zvl/A0
歯を磨く。
顔は簡単に洗う。
どうせ戻ってきたらお風呂に入るのだから。
寝てる時もたまにニット帽を被っているため、夏場は頭皮が心配なのだ。
抜け毛も実は心配。
……これって乙女としてどうなのよ?

戻ってすぐにお風呂に直行できるように、洗面所に服や下着、あとニット帽を置いておく。
彼女たちが寝てるところを起こすのは気が引けるし、ぼんやり頭で人に会うのはよろしくない。
途中、居間にヒー姉とロマが肩を並べて寝ているのがみえた。
無事帰ってこれたようだ。

lw´‐ _‐ノv「二人とも、今朝はもう無理っぽいね」

起きるのは昼過ぎになるだろうか。
朝食を作るのはいいけど、私たちの部屋で食べることになりそうだ。
ただようアルコール臭より、そう結論付ける。

lw´‐ _‐ノv「まあなんだ、悪さをするなよ?」

('A`) アイアイサー

玄関で靴をはいて戸に手をかける。
……っと、忘れてた。

lw´‐ _‐ノv「おはよう、今日もまあ、それなりによろしく」

('∀`) オハヨウ ! !



429: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 22:45:59.84 ID:bk6Zvl/A0
外に出て、家の裏のプレハブから竹刀をとってくる。
本当ならこの時間は、ヒー姉と一緒に神社の掃除をする。
しかし今日のヒー姉はダウンしているので、掃除は後回し。
昼過ぎにでもやればいいや。
暑いけど。

今の時間は軽く竹刀を振るっておく。
こういう訓練は勘を鈍らせないために必要だ。


私は合気道、ヒー姉は空手を習っていた。
お互い、習う武道にこだわりはなかった。
ただ、痛みを知るのが目的だったのでね。

人間、必死になればバキのような路上の喧嘩にも勝てる。
文字通りの必死……つまり命をかければ、という意味だが。
死んでも負けられない戦いならありかもしれない。
でもそういうのはほとんどなく、できるかぎり命がけは避けるべきだ。
人生一度きりだし。

だけど頭でっかちの素人は引き際を見誤る。
相手にどれだけダメージを与えたか分からないし、自分の限度も分かってない。
そこが理解できてないと、死んでから後悔する羽目になる。
だから私は竹刀を振るう、まだ未熟だと痛感しているから。
せめてヒー姉くらいになりたいな。


いつ、物理的にウツロを殺す日がくるのだろう?



434: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 23:05:51.86 ID:bk6Zvl/A0
lw;‐ ,‐ノv「ほっ、はっ、ふっ……っと。
       今日はこれくらいでいいかな?」

朝の冷たい空気とじんわり熱い光の中。
私は竹刀を置く。
日の高さと体内時計で、おおよその時間を知る。
そろそろ六時だ。

竹刀を片づけ、家の中に入る。
そのままお風呂に直行することにした。
洗面所の戸を開け、そこから続くお風呂の間へいくために服に手をかけ、


('A`) オマチシテオリマシタ


lw#‐ _‐ノv≡つ)A ) 、 ; ' . ・



わりと全力で殴った。






……あれ?



437: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 23:11:23.39 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「……触れることが、できる?」

(#)A`) ウエーン

今まで見ることしかできなかったはずなのに、今、私殴ったよね?
どういうことだろう?

lw´‐ _‐ノv「……」

(#)A`) …

lw´‐ _‐ノv「もう一発殴れば分かるかな?」

(#)A`;) ! !


lw´‐ _‐ノvつ(#)A`;) オカサレルー


まあ待て、逃げるなよ。
あと人聞き悪いこと言うなよ。
そんなこと言う子はお仕置きですよ?


lw#‐ _‐ノv≡つ)A ) 、 ; ' . ・



441: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 23:15:49.51 ID:bk6Zvl/A0
lw´‐ _‐ノv「うーん?」


(#)∀メ) ナンダカカイカンニナッテキタ


こうして変態が生まれた。
もう死んでるけど。

霊に触れられる現象は偶然じゃなかったようだ。
てっきり、トンネル効果の壁抜け並の確率で触れられただけかと思ったけど。
となると、この現象で一番考えられる要因はあれかな?

lw´‐ _‐ノv「訓練成果が出ているのかな?」

名前をつけて自己暗示。
ロマに教えてもらった力のコントロール法だ。
私の力はよく暴走するので、教えてもらってから毎日自己暗示の時間を作っている。
だけど私の力の名前は “ 千里眼 ・ 覚 ” なんだよなあ。

lw´‐ _‐ノv「千里眼の範疇、超えてる気がするんだけど?」


原因はおそらく、私の力への考え方だろうな。
“ 千里眼 ” というより “ サトリ ” に重きを置いてイメトレしているわけだし。
サトリを調べて、その記載を見て、私は嬉しく思っただろうから。


……空気のようになりたかった。



443: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 23:21:39.81 ID:bk6Zvl/A0
昔は自分の居場所なんて、どこにもないと思っていた。
皆、顔がみえないから。

記憶を見る力をもち、皆がみえるようになってきた。
それでも自分は弱かった。

強い私に為りたかった。
全然目標に追いつかないのだけど。

暴れん坊に成りたいわけではない。
しなやかに受け答えして、誰かのそばにいたかった。


雨にも負けず、風にも負けず
雪にも、夏の暑さにも負けぬ、丈夫な体を持ち
欲はなく、決して怒らず
いつも静かに笑っている

あらゆることを
自分を勘定に入れずに、よく見聞きし、分かり、そして忘れず

みんなにデクノボーと呼ばれ
ほめられもせず、苦にもされず
そういうものに、私はなりたい


lw´‐ _‐ノv「……宮澤賢治は偉大だね」



444: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 23:26:06.27 ID:bk6Zvl/A0
空気は誰にもみえない。
だけど皆のそばにいて、皆は空気を必要としている。
だから私はサトリになろうと努力している。

lw´‐ _‐ノv「……」

しかし、昨日あたりから疑問に思うことがある。
それは 『 空気は皆をどう思っているのか 』 である。
これがなかなか難しい。
この答えが分からない限り、私はサトリになれないだろう。

lw´‐ _‐ノv「そういえば」

('A`) ?

lw´‐ _‐ノv「あなたが覗きに来たの、今日が初めてだね」

('∀`) イエス、マム ! !

lw´‐ _‐ノv「……私の力の変化を感じ取ってたの?」

('A`) ソレハナイナ


lw´‐ _‐ノv「怪しい」

(;'A`) エ ?

この霊の心を見てみよう。



445: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/30(木) 23:31:55.65 ID:bk6Zvl/A0
(;'A`) イッケネエ、トッツァンダ

(;'∀`) ニッゲロー

lw´‐ _‐ノv「あ」


さすが、霊なだけはある。
私の力を敏感に察知したみたいだ。
ならばこの力の変化を把握していた可能性は充分に考えられる。

だからといって、なにもお風呂のタイミングで現れなくてもいいのに。

lw´‐ _‐ノv「……そうそう、お風呂だ」


洗面所に誰もいなくなったので、私は遠慮なく服を脱いだ。
お風呂からあがったら、ご飯作らなきゃ。







戻る次のページ