( ФωФ)さとりごころのようです
- 3: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 16:57:39.73 ID:AkLWUr3d0
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- 六章 遥か彼方
- 一話 マッカロー
- 6: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:02:12.86 ID:AkLWUr3d0
- 祭りが終わって、二日後の昼過ぎ。
- ニット帽の少女とまぶたに痣のある男が建物を見上げる。
- lw´‐ _‐ノv「……あまりここには来たくなかったんだけどなあ」
- ( ФωФ)「せっかくお呼ばれしたのだからグチグチいうものではないぞ」
- 彼は今朝の電話の内容を思い出す。
- 電話の相手はシャキンだった。
- 『 昼過ぎに寺に来てくれないか 』 とお願いされて、了承したのだ。
- せっかくなのでシューも誘ってみたら、彼女は見慣れた無表情で彼に文句を投げつけた。
- それでもついてきてくれたので、こいつは意外とツンデレだったりと彼は思う。
- lw´‐ _‐ノv「そんなに私ツンデレしてる?」
- ( +ω+)「改めて聞かれると……ツンもデレも全然足りないな」
- ナチュラルに心を読むシュー。
- 隠し事はすでに彼に知られてしまったので、最近はむしろ隠そうとしなくなった。
- 嬉しい反面、会話が飛ぶので少々疲れるところがある。
- さて。
- そんなわけで寺に来たのだが、どうして呼ばれたか彼は知らない。
- 何かまずいことをしでかしたのだろうか。
- lw´‐ _‐ノv「私を見ながらそんなこと考えるなってば。
- 私はそんなに問題児じゃ……問題児じゃあ……。
- うーん?どうなんだろ?」
- 悩むなよ。
- 8: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:06:59.45 ID:AkLWUr3d0
- 寺の門をくぐるとシャキンとショボンが出迎えてくれた。
- (`・ω・´)「本日はお越しいただきありがとうございます」
- ( ФωФ)「いえいえ。
- ところで今日はどのような用件で?」
- (`・ω・´)「実はショボンに秘術を教えようと思ったのです。
- お二方にも、その秘術を知らせておいた方がよいかと思いまして」
- lw´‐ _‐ノv「秘術……というとアレのこと?」
- ( Фω+)「アレとはなんだ?」
- lw´‐ _‐ノv「ほら、前にちょこっとだけ話したの覚えてない?
- 結界でウツロを祓う方法があるって言ったじゃない」
- ( ФωФ)「ああ、あれか」
- 「……彼らの扱う結界の性質で、どうやって祓うことができるのか疑問だけどね」
- 以前、そう彼女は言っていたが。
- その後ショボンから結界について少し教えてもらった。
- それの性質は立ち入り禁止の看板に似ていて、結界内を行き来してはダメと教えるものらしい。
- 基本的に結界ができるのはウツロの隔離だけで、祓うことはできないのだ。
- だがショボンが言うには、秘伝の結界でウツロを祓えるらしい。
- 今日彼らに見せるのはおそらくその秘伝である。
- 9: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:12:04.08 ID:AkLWUr3d0
- シャキンはシューの言を肯定した。
- (`・ω・´)「ええ、その通りです。
- ヒトミさんには昔、私が見せましたが、お二人はまだですよね。
- だからいい機会だと思ったのです」
- ( +ω+)「ですが、そもそも私はシャキンさん方がいう結界というものを見たことがないです。
- 秘術だなんだといわれても、おそらく理解が及ばない気がするのですが」
- (`・ω・´)「……ああ、それでしたら結界について詳しくお教えしましょう」
- ( Фω+)「それに秘術なのに見させてもらってもいいのですか?」
- (´・ω・`)「……」
- (`・ω・´)「いいのです。
- むしろ砂尾家の方やロマネスクさんには知っておいてもらいたいですから。
- それにこの術はある意味危険なのです」
- だから知らせておいた方がいい、とシャキンは締める。
- どう危険なのだろうか?
- シューは聞いてみたが、「霊視できるなら見て理解した方がいい」と返された。
- そして質問はなくなり、ショボンを含めた三人はシャキンについてゆく。
- その間、ショボンは一言もしゃべらない。
- どうも緊張半分、シューに自身の見せたくない気持ちが半分であるらしい。
- ウツロが関係すると二人の仲はとても悪くなるらしい。
- 遠目からでは仲のよい兄妹にみえなくもないが。
- 11: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:17:12.51 ID:AkLWUr3d0
- 寺の本殿に入り、ひたすら中を進む。
- やがて畳の敷かれた部屋に通される。
- 全員が部屋に入り、襖を閉めたあと、シャキンは言った。
- (`・ω・´)「まず坐禅をしてもらいます。
- ショボンは強制参加ですが、お二方も参加しますか?」
- 彼らはいきなりのことで面食らった。
- まあ二人は自由参加のようなので、ここは黙って見学していた方がいい。
- そう思った彼は、しかしシューの言葉によって退路を断たれた。
- lw´‐ _‐ノv「オーケー、やろう」
- ( +ω+)「……まあいいでしょう」
- lw´‐ _‐ノv「ふっふっふっ、風見鶏は死んだ」
- (;+ω+)「……おまえな」
- (´・ω・`)「……」
- (`・ω・´)「分かりました。
- では坐禅の作法について説明します」
- 簡単に手順を教えてもらう。
- 今回はそこまで本格的にやらないようだ。
- なので彼らは座って、ただ精神鍛錬するだけでいいといわれた。
- 13: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:21:52.55 ID:AkLWUr3d0
- (´‐ω‐`)
- ( +ω+)
- lw´‐ _‐ノv
- (`・ω・´)
- 静寂が空間を支配する。
- そして彼らは己の内を空っぽにする。
- 自身を排除し、自身以外のモノを感じ取る。
- そうすることによって、普段と異なる視点で自身を見る。
- それが坐禅である。
- (;´‐ω‐)
- ( +ω+)
- lw´‐ _‐ノv
- (`・ω・´)
- 時折、肩を叩かれる音が聞こえる。
- 約三十分ほど続いた。
- 15: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:27:13.71 ID:AkLWUr3d0
- やがて鈴の音が鳴る。
- 事前に定めた終わりの合図だ。
- (;´・ω・)「ふぅ」
- ( ФωФ)「坐禅は久しぶりだったな」
- (;´‐ω‐)「でもどうして僕以外に警策がなかったんだろう?」
- (`・ω・´)「それは二人とも優秀だからです。
- ショボンはもっと精進しなさい」
- (;´‐ω‐)「はいはい」
- lw´‐ _‐ノv「……」
- ( Фω+)「まあ私はこれでも精神鍛錬は積んでいる方だから。
- 霊がみえるから当たり前なのだが。
- 首が不自然に折れ曲がった奴もいるから、平常心でいられるようにはな」
- (`・ω・´)「ロマネスクさんにはもっと本格的にやったほうがよろしかったでしょうか?」
- ( +ω+)「いえいえ。
- 私は坊さんに比べたら未熟者ですよ。
- 本格的にやったらビシバシ警策が入ったでしょう」
- ちなみに警策というのは、坐禅の時に肩を叩くあれを指す。
- 心や姿勢のゆるみを警めるために打つのだ。
- 彼は及第点をもらえたようだ。
- 16: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:32:04.83 ID:AkLWUr3d0
- lw´‐ _‐ノv「……」
- ( Фω+)「ん?
- シュー、もう終わったぞ」
- lw´‐ _‐ノv「……」
- (´・ω・`)「眠ってるんじゃないかな?」
- ( ФωФ)「だが目は ( 一応 ) 開いてるぞ?」
- (`・ω・´)「姿勢の乱れもありませんし」
- lw´‐ _‐ノv「……」
- 坐禅に集中しているのだろうか?
- それはそれであっているのか間違っているのか、彼は複雑な思いだった。
- と、ずっとシューを見ていて、彼はほんのわずかな違和を感じた。
- (`・ω・´)「仕方がないですね。
- 警策で目を覚まさせましょう」
- ( ФωФ)「シャキンさん、ちょっと待ってください」
- (`・ω・´)「……?
- どうしたのですか?」
- 彼は答えない。
- 代わりに行動で示す。
- 17: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:38:23.00 ID:AkLWUr3d0
- ( Фω+)
- 感覚の目を開く。
- 白は紅く、灰色は黄色く、黒は緑に。
- 色は混ざり、そして分かれ、滲み、点在する。
- まるでこの世の全ての色彩を以ってそこらじゅうに塗装したように感じられる。
- 感覚の目を開けた彼は、いつもそう思う。
- いつだってそう思ってきた。
- (;Фω+)
- なのに今回だけは少し違った。
- 彼はシューを見る。
- 彼女の周りだけ極端に色がうすく感じられた。
- (;Фω+)( まさか仏教にある一つの境地に辿りついたとかか? )
- 考えられなくもない。
- 仏教には悟りや無、空の境地がある。
- “ サトリ ” やら “ 空 ” 気の妖怪やらを言霊思想などで解釈し、さらに仏教思想と融合させたのだろうか。
- もちろんそんなことができるかどうか、彼は知らない。
- しかし彼女は自他共に認める変人である。
- 奇抜な発想をする変人が偉業を達成する例は、全世界のいたるところにある。
- ならば彼女が新たな法則を導くことも十二分に考えられる。
- 18: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:42:59.43 ID:AkLWUr3d0
- (;Фω+)「お待たせしてすみませんシャキンさん。
- そろそろ起こしますね」
- 彼が何かをみているのをシャキンは分かったのだろう、特に文句をいわずに頷いた。
- そして彼は感覚の目を閉じ、シューの背後に近付き、肩を揺する。
- しばらく揺すりつづけていると、彼女はふいに背後を振り向く。
- lw;‐ _‐ノv「、……どうしたの?」
- (;+ω+)「坐禅の時間は終わったぞ。
- それよりお前、なにしてたのだ?」
- lw´‐ _‐ノv「あー、坐禅?」
- (;ФωФ)「いや、それは分かるのだが……。
- 何か様子がおかしかったからな。
- 仏教のなんらかの境地にたどりついたのか?」
- 彼は恐る恐るきいてみた。
- 彼女は何事もなかったかのように答えた。
- lw´‐ _‐ノv「ううん、それはない。
- ただ時間があったからイメトレしてた」
- ( +ω+)「……ていっ」
- lw´‐ ,‐ノv「あぅ」
- 彼は思わずチョップを入れた。
- 妖怪のイメトレは坐禅といえるのか?
- 19: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:47:54.44 ID:AkLWUr3d0
- ( ФωФ)「ところでなぜ坐禅をしたのです?」
- ジト目で頭を押さえるシューを無視し、彼はシャキンに訊ねる。
- ちなみに先ほどのチョップの強さは、せいぜい肩を叩くのと同程度。
- 一応、頭に傷があるので加減はした。
- 何かあると怖いし。
- シャキンは答える。
- (`・ω・´)「ロマネスクさんが精神鍛錬を積んだのと一緒の理由ですよ。
- 今回ショボンに教えるのは、いわば禁術の一つと言ってもいいくらいですから。
- 多用したらまずいですし、 『 もしものとき 』 の解決手段の一つなので」
- もしものとき、というのは砂尾家だけでは対処しきれないウツロのことだろう。
- だが彼はその点を気にしない。
- それよりもとある単語に不吉さを感じる。
- ( +ω+)「禁術ですか。
- 詳細を説明していただいても?」
- (`・ω・´)「もちろん」
- 頷いたシャキンは不意に袖からお札を四枚取りだす。
- そしてちょうど四角形になるよう、屈んでそれらを畳に置く。
- 準備が終わったらしい。
- 22: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:51:17.33 ID:AkLWUr3d0
- シャキンは立ち上がり、一言。
- (`・ω・´)「結」
- 瞬間、彼の感覚の目が無理やり開かれた。
- そうして目の前の異変を認める。
- ( Фω+)「これが結界というやつですか」
- (`・ω・´)「そう、これが結界というやつです。
- なにか分かりますか?」
- ( Фω+)「はい」
- お札で区切られた四角形を底面として、天井まで届く長方体が生まれた。
- ただし、側面は半透明の壁のようになっている。
- シャキンやショボンには見えないであろう理の壁だ。
- シューならこの変化に気づけるだろう。
- (´・ω・`)「でも、それっていつもの結界だよね。
- 秘術じゃないよね」
- (`・ω・´)「ロマネスクさんが結界をみたことがないとおっしゃられたので。
- だから順を追って説明させてもらいます」
- (`・ω・´)「さて、これが結界です。
- この世の者なら特に影響なく結界内を出入りできます。
- ただ、このまま放置すると中が淀んでしまうので、役目を終えたら回収します」
- 23: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 17:56:54.20 ID:AkLWUr3d0
- ( Фω+)「淀む、というと?」
- (`・ω・´)「平たく言ってしまうなら、霊が好む土壌ができてしまうのです。
- 一応結界ですから、彼らは中には入り込めません。
- しかし、結界の周りに霊が寄ってくるでしょう」
- まるで魚の餌だ、と彼は思う。
- シャキンは注意点を述べて、霊が寄ってこないようすぐにお札を剥がす。
- そして説明を続ける。
- (`・ω・´)「 『 結 』 の掛け声によって結界は作られます。
- そしてその掛け声をかけた時から、結界は作りだされた形を維持しようとします。
- ちなみにこの結界は、お札を一枚でも剥がせば維持できなくなります」
- (`・ω・´)「これがいつも私たちが扱う結界です。
- そして今回ショボンに教えるのは、 “ ヨモツヒラサカ ” と呼ばれる結界です」
- ( Фω+)「…… “ ヨモツヒラサカ ” だと?」
- 彼は奇妙な声をあげた。
- それも当然であり、シャキンにしてみれば想定内の反応である。
- ショボンは唖然としていて、シューは訝しげな眼差しをシャキンに送っていた。
- 黄泉比良坂 ( ヨモツヒラサカ ) 。
- それは日本神話に出てくる黄泉路の名である。
- ちなみにその黄泉へと続く道は出雲にあるとされている。
- もちろんこの町は出雲ではない。
- ならばシューの力のように、名を借りただけだろうか。
- 25: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:00:57.16 ID:AkLWUr3d0
- その妖怪の名を借りた少女はシャキンを見て、呟く。
- lw´‐ _‐ノv「ふむ。
- 読みは同じでも、日本神話の黄泉比良坂とは別物、と。
- …………この世を没する、と。
- 随分とおもしろい名前だね」
- ( ФωФ)「この世を没する?」
- シューの言により、黄泉比良坂そのものではないと確定したもよう。
- 記憶を見る力で読みとれば、他者への疑問がすぐに解決するので便利である。
- シャキンは頷いた。
- (`・ω・´)「そうです。
- これは正式な黄泉路ではありませんので。
- だから読みが同じでも字が微妙に違うのです。
- ヨモツを黄泉とは書きません。
- この世を没する、と書いてヨモツと読みます」
- つまり “ 黄泉比良坂 ” ならぬ、 “ 世没比良坂 ” 。
- シャキンの説明によると、お札で区切った空間に門を開けるものらしい。
- (`・ω・´)「その門にウツロを落とせば彼らも消滅します。
- これは一時的にですが、あの世とこの世を繋げます。
- 感受性の高い子供には、その門がみえてしまうことすらありますね」
- 名前も恐ろしいものなら、その効果も何気におそろしいものだった。
- 26: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:06:14.34 ID:AkLWUr3d0
- シャキンが紫のお札を畳に貼る。
- ただし先ほどのお札よりも存在感がある気がする。
- デモンストレーションを行うようだ。
- ( Фω+)「シュー、ニット帽を脱げ」
- lw´‐ _‐ノv「?」
- ( +ω+)「ずれるぞ」
- lw´‐ _‐ノv「……む」
- 短い会話で彼らは意思疎通を図る。
- シューはなにも言わずにニット帽を脱いだ。
- 以前、彼は霊能力はずれだと表現した。
- ほかの者より魂があの世に近く、ゆえに霊障に似た力がその正体だろ言った。
- 世没比良坂があの世への門を開くものなら、霊能力が使える彼らにだって影響はある。
- あの世から幽霊が飛び出してこないとも限らないが、それから護るのがシューのニット帽の役割である。
- が、おそらく幽霊よりも早く、あの世自体の影響が彼らに降り注ぐだろう。
- 最悪、力の暴走もありうる。
- 彼の師にも黄泉路を開ける力があったので、数秒後の自分たちを彼は予想できた。
- だから彼はシューにニット帽を脱ぐように指示した。
- 気を引き締めろとは彼はいわない。
- おそらく読みとっているだろうから。
- 27: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:11:16.58 ID:AkLWUr3d0
- お札を張り終えたシャキン。
- 正五角形に切り取られた畳を見て、背後にいる三人に声をかけた。
- (`・ω・´)「……いきます」
- ( Фω+)「はい」
- lw´‐ _‐ノv「うぃ」
- (;´・ω・)「……」
- (`・ω・´)「 『 青 ・ 白 ・ 朱 ・ 玄 ・ 勾 ・ 帝 ・ 文 ・ 三 ・ 玉 』 」
- (`・ω・´)「…… 『 彼の者の名より、今、ここに門を開けることを命ずる 』 」
- (`・ω・´)「 『 結、世没比良坂っ!!』 」
- ――――‐ 瞬間、目の前の映像が乱れた。
- 29: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:15:05.86 ID:AkLWUr3d0
- …………。
- ……。
- (;+ω+)
- _,
- lw;‐ _冂v
- (;´‐ω‐)
- (`・ω・´)「皆さん大丈夫ですか?」
- (;´‐ω‐)「……なんか結界張ってた時、すごく寒気がした」
- (;+ω+)「……わたしはなんとか」
- _,
- lw;‐ _冂v「あたまいたい、せかいもまわってるしきもちわるい」
- (;Фω+)「あー、ちょっと待ってろ」
- シャキン以外はぼろぼろになっていた。
- あの世への道を開いた途端、皆が体調不良を訴えた。
- なのでシャキンはすぐに結界を崩した。
- ショボンは寒気を訴えた。
- 霊能力なんてまるで縁のない人間にも影響を与えたようだ。
- ならばもちろん霊能力のある彼とシューは、より影響が出ただろう。
- 30: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:19:18.32 ID:AkLWUr3d0
- 彼は感覚の乱れを感じた。
- 視覚はもちろんのこと、聴覚や平衡感覚にも影響が出た。
- 持ち前の耐性によりなんとか難を逃れたが、胃からこみあげる気持ち悪さはぬぐえない。
- シューは左目の奥より痛みを感じた。
- 自身の力を使いすぎてこうなることはあっても、外的要因でなったことはない。
- 彼の手当てによりある程度の痛みは消えた。
- しかし、小さい痛みはまだ目玉の後ろを刺激している。
- 結論。
- 黄泉路怖い。
- (`・ω・´)「……すみません。
- アキちゃんの訓練が上手くいってると聞いたもので。
- お二人は呼ばなかった方がよろしかったですね」
- (;+ω+)「まあ。
- でも砂尾家の者には知っておいてもらいたかったんでしょう?」
- (`・ω・´)「もちろんそうではありますが」
- lw;‐ _‐ノv「私からは文句ないよ。
- ヒー姉も 『 特殊な結界みせてもらったーっ 』 って以前話してたし。
- あの人たちに近づけるなら問題ない」
- (;´・ω・)「……僕は全くの無視ですかそうですか」
- (`・ω・´)「もともとお前に教えるためのものだからな」
- 31: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:23:03.19 ID:AkLWUr3d0
- (;+ω+)「でも少し横にならせてもらえると嬉しいです」
- lw;‐ _‐ノv「わたしも」
- (`・ω・´)「なら隣の部屋で休んでいてください。
- 座布団だしますので。
- ショボンはもう一度坐禅な」
- (;´・ω・)「はいはい」
- シャキンの案内により、襖越しに隣接する部屋に通させる。
- そして座布団を数枚寄こし、シャキンは立ち去る。
- ショボンの坐禅をみるためだろう。
- 彼とシューだけがこの部屋に残された。
- lw;‐ ,‐ノv「ふひぃ〜。
- ありゃあ無理ですわ、死にますわ。
- なんでシャキンさんとかショボンは平気なんだろ?」
- (;+ω+)「私たちの魂はあの世の理に近いのだから、より黄泉路に引っ張られたのでは?
- だから普通の人には寒気程度で済んでるのだろうよ。
- 生きてる人間が死後の世界に歓迎されるわけないからな」
- lw;‐ ,‐ノv「私たちにとってみればあの結界、文字通りの鬼門じゃんか」
- 合図したかのように同時に倒れ込む二人。
- 座布団を枕代わりにして横になった。
- 32: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:27:08.88 ID:AkLWUr3d0
- lw;‐ _‐ノv「あ゛ー。
- まだ視界がおかしいよ゛ー」
- (;+ω+)「私もだ」
- 彼は己の存在の揺れを自覚できた。
- なのでいつもの浄霊と逆のことをした。
- 分解するイメージじゃなく、固化するイメージを以って。
- 霊ではなく、己に。
- 自身の体に力を送った。
- (;+ω+)「……ましにはなったが」
- それでも視界の揺れはひどい。
- しばらくこの状態が続くだろうと、彼はうんざりした。
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