( ФωФ)さとりごころのようです

35: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:34:01.94 ID:AkLWUr3d0
   



  六章 遥か彼方


     二話 ゲシュタルト



36: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:37:19.62 ID:AkLWUr3d0
数時間後。
寺をお暇し、夕暮れの道を二人並んで歩く。
あの後、二人はずっと横になっていた。
彼らの共通の症状である “ 視界のブレ ” が治まったのはついさっきだ。
安全のため、今もシューはニット帽を被っていない。

ちなみにその間ショボンは何をしていたかというと、ひたすら坐禅と専用のお札の作り方を学んでいた。
お札の素材もそこに書かれる文字も特殊なものらしい。

lw´‐ _‐ノv「しかしひっどい目にあったよ」

( +ω+)「まあいいではないか。
        そのお詫びにこんなのもらったのだから」

彼の手には大きなビニール袋がぶら下がっている。
中身はハムだ、それも数点。
時期が時期だから、お中元のあまりか何かだろうか。

lw´‐ _‐ノv「ヒー姉が晩ご飯作ってなかったら、これでサラダ作ろう」

(*Фω+)「ほう?」

lw´‐ _‐ノv「食い意地張りすぎ」

(;ФωФ)「そ、そんなことないぞ?」

lw´‐ ,‐ノv「おほほ、私に嘘は通じませんよん」

( ФωФ)「……ボクっ娘のくせに」



37: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:41:32.93 ID:AkLWUr3d0
軽口を交わす。
彼らの影はさらに長く伸び、やがては夜闇に消えてゆくだろう。
黒くなりはじめた山が、カァーと鳴く。

lw´‐ ,‐ノv「ロマー」

( +ω+)「んー?」

時刻は六時過ぎ。
早い家ではもう晩ご飯の時間である。
田舎であるせいか、さきほどから誰ともすれ違わない。

二人っきりである。
彼はその点を意識する。
別にシューに対して恋心があるわけではない。
ただ、誰ともすれ違わないせいで、まるでこの世界に二人だけとり残された感覚をおぼえる。

lw´‐ _‐ノv「なぁーに寂しがっちゃってるのー?
       おねーさんにいってみー?」

( ФωФ)「とりあえず今はどこにもお姉さんなぞいないな。
        帰ったらヒートと話してみるか」

lw´‐ _‐ノv「私には?」

( ФωФ)「お前は絶対、お姉さんという役ではないだろ」

lw´‐ _‐ノv「言葉のあやだっつの」



39: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:46:15.31 ID:AkLWUr3d0
lw´‐ _‐ノv「まあロマが物寂しいのも分かるよ。
       だってこんなに綺麗な夕日だもん」

( +ω+)「夕日と私の感情が関係あるのか?」

lw´‐ _‐ノv「あるよ」

「はいはいそうですか」、彼はかるく流す。
そんな態度を前にし、シューもぼんやりと空を見上げて言葉を吐く。

lw´‐ _‐ノv「夕焼け空のこの時間は黄昏っていうんだよ」

( ФωФ)「知ってる」

lw´‐ _‐ノv「その由来も?」

( +ω+)「 “ 誰ぞ彼 ” ……彼は誰だろうという意味だな。
        辺りが陰りだし、相手の顔もはっきりしない時間帯だからな」


逢魔時とも呼ばれる。
日は沈みかけ、周りは半端に明るく半端に暗く。
だから人とすれ違えど、その顔がぼんやりとしか分からない。
例え魔に逢ったとしても、きっと誰も気付かないだろう。


シューは彼を横目にみる。
彼女の瞳は少しだけ悲しそうな光を灯した。



42: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 18:50:25.17 ID:AkLWUr3d0
lw´‐ _‐ノv「……魔、ね。
       私たちも……特に私は、その魔の範疇に含まれるだろうね」

( ФωФ)「お前が魔なら、私はなんなのだ?」

lw´‐ _‐ノv「魔王でしょ。
       まあロマの下半身の話はどうでもいいけどさ」

( +ω+) ブフッ ! !


「魔王が私のナニを指しているのなら、お前の魔はなにを指しているのだ?!」、彼は問い詰めたかった。
しかしいきなりの下ネタに面食らって追求できない。
さらにいえば、それを聞いてしまうと色々まずい気もする。
案の定、質問する前にシューに殴られた。

lw´‐ ,‐ノv「私でやらしい想像すんな」

(;+ω+)「ふったのはお前だろうが」

lw´‐ ,‐ノv「そうだけどさ。
       私を題材にしたやらしい妄想を向こうの人柱さん (仮名) に見せたくないの。
       味を覚えられて今後、そんな目で見られても困るんだよ」

( +ω+)「……大丈夫、それはない。
        胸も毛もないであろうガキンチョに人を惑わす色香はない。
        そんな容姿と体型なら男の娘でも通るから」

シューもひどい言い草だが彼の方もひどかった。



48: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 19:39:31.08 ID:AkLWUr3d0
lw´‐ ,‐ノv「……ここでどんな反論しても墓穴掘りそうなんですけど。
       でもむかつく、この気持ちどうしよう?」

( ФωФ)「家にいるあの霊で発散すればいい」

lw´‐ _‐ノv「おk、わかった」



駄弁りながらゆっくり歩いていると、大きな影が二人を飲み込んだ。
ふとシューが立ち止り目線をあげると、この町の中心に位置する一本杉が見下ろしていた。
彼もその場に停止して、彼女と同じく一本杉を見上げる。

ぼそりと彼女は言う。
「昔の大衆的な考えでは、黄昏時に会う “ 良くないモノ ” は化け物なんだろうね」、と。
そしてほんのちょっぴり言いづらそうに続けた。


lw´‐ _‐ノv「それは私のような奴や、もっとひどい奇形児なんかも含むんでしょうね」

(;ФωФ)「む」


シューの言い分はある意味ただしく、それ故彼には否定できなかった。

昔の日本人の感覚でいえば、そういう子は祟られたと考えられていた。
だから日の高いうちは、隠されていたとも考えられる。
ならばその子らは外で遊んでいる子をみて、羨ましく思ったに違いない。
そして誰もいなくなる時間帯になって、外に出て遊んだであろう。



49: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 19:44:44.20 ID:AkLWUr3d0
lw´‐ _‐ノv「『 昨日、河童と遊んだ 』 と子供が言ったとしよう。
       それは本物のソレなんだろうか?
       それとも本物っぽいナニカなんだろうか?」

( +ω+)「……」

lw´‐ _‐ノv「どちらにせよ、彼らから言わせれば私は魔なんだよ。
       頭はおかしいし、神通力めいた力が使える」


「だから」と彼女は区切る。
彼女はいつの間にか彼に目を向けていた。
顔のパターンが理解できないからか、それとも口に出しづらい話題だったからか。
そうして、まるで生徒に解答をおしえる教師のように言う。

lw´‐ _‐ノv「綺麗な夕日があると、とっても悲しくて寂しいんでしょうね。
       だってこんなにもネガティブな記憶がただよっているのだから。
       きっとロマはあてられたんだよ」

( Фω+)「何にあてられたというのだ?」

lw´‐ _‐ノv「空気」

( +ω+)「……かもな」

きっと彼女は語られた河童のような幼少期を過ごしたのだろう。
人の顔が見えず、代わりに霊が見えていた。
そのせいで怖がりな彼女が出来てしまったわけだが、それでも寂しかったのだろう。



51: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 19:48:26.06 ID:AkLWUr3d0
lw´‐ _‐ノv「ロマは小さい頃、どんなふうに過ごしたの?」

( ФωФ)「昼間に外で遊んでたぞ。
        そのかわり夕方、夜は絶対外に出なかったな」

lw´‐ _‐ノv「ありゃま、私と逆じゃん」

( Фω+)「……そのニット帽のおかげじゃないのか?
        霊がみえるからそんなの被るようになったんだろう?」

ニット帽の裏に貼ってあるお札は洒落にならないらしい。
彼は、ヒートがそんなことをいっていたのを思い出す。
その言葉をシューは否定する。

lw´‐ _‐ノv「ニット帽にお札効果が付加したのは神隠し以降よ。
       昔はお守りでなんとかなってたわけだしね」

ニット帽の役目は強すぎる力を抑えるのと、まずい霊が寄ってこないようにするためのものらしい。
「力を使わせないようにしたかったみたいだけど、抑えるのが関の山らしいよ」、シューは言った。

まあどうやら、今話にでてきたお守りが夕方に遊べる環境を作ったようである。
ある意味彼の推察は当たっていた。

( +ω+)「私がそういうのに頼ったのはもっと後になってからだな。
        夕、夜は幽霊やら妖怪やらがワラワラ湧き出てたと思ってたしな」

lw´‐ _‐ノv「うん、実際そういうのってけっこうあるよね」



52: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 19:51:34.00 ID:AkLWUr3d0
黄昏は昼と夜の境である。
そういった時間の隙間に霊が出没するのを彼らはみてきた。
だから逢魔時 ( 大禍時 ) といわれてきたのだろう。
彼は言う。

( Фω+)「案外、そこらへんも信仰が関わってたりするかもな。
        生前そういう話を聞いて、死んでからその話を思い出して……。
        で、数多の霊たちが既成事実をつくってたりしてな」

lw´‐ _‐ノv「そんなことってあるの?」

( +ω+)「ありえなくはないだろ。
        臨死体験すると三途の川がみえると聞くだろう?
        実のところ、それは民族による差異があるらしい。
        あるいは神が現れた、あるいは花畑がみえた、あるいは体から飛びでた……。
        同じ民族、同じ文化圏でも個々人で違いがみられると記録されてたぞ」

lw´‐ ,‐ノv「実はあの世がなかったりしてね」

( Фω+)「まあ、それもありだろう。
        全てが幻覚で片がつくわけだしな」

霊がみえたとしても、それであの世の存在を証明できるわけではない。
死んだら霊になると確定したわけでもない。
だけど人はそれらを信じる。
人が霊をそういうものだと信じたなら、霊にだって霊の在り方を信じられるだろう。


まあ、答えなど出るわけないのだが。



54: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 19:56:15.08 ID:AkLWUr3d0
そうして彼らは再び歩きだす。
一本杉はゆっくり後方へ流れていった。

lw´‐ _‐ノv「そうそう、ロマに頼みごとがあるんだけどさ。
       ちょっと離れて歩いてくれない?」

( ФωФ)「なんでだ?」

lw´‐ _‐ノv「危ないから」

不審に思った彼はすぐさま言われたとおりにできなかった。
なのでシューのほうから距離を開ける。

lw´‐ _‐ノv「しかしまあ、百歩譲って石投げるのは許すとしてだ」

シューは首を傾ぐ。
彼女が何をいってるか分からなかったが、彼はすぐ気付いた。
後ろから、さっきまで頭があった位置に石つぶてが飛んできたからだ。

彼女は自然な流れで背後を振りかえる。
そこには一人の少年が立っていた。


lw´‐ ,‐ノv「頭は狙うな、洒落にならん」

(,,゚Д゚)「……」



56: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 20:01:56.00 ID:AkLWUr3d0
まだ幼さがのこる少年の顔は、険しくなっていた。
いきなり現れたようにみえたのは、おそらく一本杉の影に隠れていたからだろう。

彼は少年をみる。
もしかしたらこの少年とシューには因縁めいたなにかがあるのかもしれない。
だが、それで投石した事実を肯定できるわけがない。
彼は注意しようとする。
が、それより早く少年は言った。

(,,゚Д゚)「……しぃたちに何をする気だ?」

lw´‐ _‐ノv「あなたの考えてるようなことは何もしないよ」

( ФωФ)「それより少年、お前な……」

lw*‐ _‐ノv「ちょいさー」

(;ФωФ)「 ゲフッッ ! ! 」

彼が何かを話す前に、シューの貫手が横腹を突く。
一瞬、横隔膜がひっぱられたように感じ、彼はうずくまる。
「黙れ」という彼女なりの意思表示らしい。

(,,゚Д゚)「信じられねえよ」

lw´‐ ,‐ノv「そりゃあ私の言葉は何一つ信じないでしょう、貴方は」

(#゚Д゚)「てめえの、そういうところが、気に食わねえっっ!!」



57: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 20:04:40.29 ID:AkLWUr3d0
少年が突進してくる。
それを認めてシューは一言。

lw´‐ _‐ノv「ばーか」

吐き捨てられたその言葉には、少年が何一つ正解を手にしてないことを証明していた。
そんなことなど知らぬとばかりに少年は拳を突き出す。
シューは殴りかける腕の外側へ、体を進めて避ける。

次いで少年の突き出された方の腕を掴む。
と同時に少年の T シャツの襟元も掴む。


それだけで二人の動きは止まった。


(#゚Д゚)「ぐ……ぅ……」

lw´‐ _‐ノv「これ以上、私からはしぃちゃんたちに何もしないよ。
       まあ別に信じなくてもいいよ。
       ……とりあえずギコくん、今は歯を食いしばれ」

(;゚Д゚)「っ!!」



61: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 20:08:51.46 ID:AkLWUr3d0
シューが少年の腕をひっぱる。
少年もその動きに逆らわなかった。
もしかしたら逆らえないのかもしれない。
二人はシューを中心に、独楽のようにぐるりと二回転して、

lw´‐ ,‐ノv「よっ」

(;゚Д゚)「うおっ!」


襟元を掴んでいた彼女の手が離され、代わりに少年の顎を軽く押した。
二人の喧嘩を遠目で見ていた彼にはそう感じた。
しかしそれだけで少年は背中から倒れた。

(,, Д )「 ガッ ! ! 」

lw´‐ _‐ノv「……ぬるぽ?」

地面はアスファルト。
畳じゃないため、投げ技はすごく痛いはずだ。
案の定、少年は呼吸を乱していた。
シューが加減したからか、頭からは落ちなかったようだ。

地面に横たわる彼に背中をむけ、シューは言った。

lw´‐ _‐ノv「さ、ロマ、帰ろうか」

(;ФωФ)「あれは放っておいていいのか」

lw´‐ _‐ノv「あの子なら勝手にするでしょうよ」



62: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 20:13:25.92 ID:AkLWUr3d0
冷たい言葉だった。
信頼しているといってもいいのだろうか。
シューに促され、彼もその場から離れる。
少年は追ってこなかった。

しばらくして、彼は聞いてみた。


(;+ω+)「なあ、シューよ」

lw´‐ _‐ノv「ん?……ああ、そのことか。
       あれは入り身投げだよ。
       普通に構えをとっていたとしても、後ろ足のかかと方面へ押すとバランスが崩れるの。
       それを利用した合気道の投げ技だね。
       ……本当はこういう喧嘩に使っちゃまずいから、みんなにはナイショだよ」

(;+ω+)「いや、そっちじゃない」

lw´‐ _‐ノv「分かってる、ギコくんのことでしょ?」

(;Фω+)「……分かっててはぐらかしたのか」

lw´‐ ,‐ノv「豊かな会話は豊かな人生をつくりあげるのでぃす」

ギコと呼ばれた少年はなんだったのか。
彼はあの現場に居合わせていたが、何が起こったのかさっぱり分からない。
シューが疲れた声で言った。

lw´‐ _‐ノv「簡単にいえば恨まれてるんだよね、私」



63: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 20:18:08.52 ID:AkLWUr3d0
シューはそれだけでこの会話を終わらせようとしたのだろう。
雰囲気で彼は察した。
彼女にとって都合の悪い話だったらしい。
それともあの少年にとって都合が悪いのだろうか。

lw´‐ _‐ノv「しっかしギコくんもたいしたもんだよね。
       この暑い中、けっこう歩き回ったみたいよ?
       私たちが寺にいってることを知ると、一本杉で待ち伏せしてさ。
       本当、ばかだよあの子は」

( ФωФ)「見たのか?」

lw´‐ _‐ノv「見たさ。
       そこらじゅうにギコくんの足跡がみえるよ」

寺でのアクシデントのため、彼女は今、ニット帽を被っていないのだ。
だから記憶がよくみえるのだろう。
むしろ見ていなければ、対処も難しいところだったと彼は思う。

lw´‐ _‐ノv「対処は難しいだろうけど、まあ私だし」

(;+ω+)「なんだそれは?」

lw´‐ _‐ノv「私、天才」

( ФωФ)「そう言う輩は馬鹿が多いのだぞ」

天才だからといって、災難を避けられるものではないだろう。
記憶をみなければ背後からの投石はもちろんのこと、合気道の投げ技も決まらなかったはずだ。



66: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 20:21:54.26 ID:AkLWUr3d0
lw´‐ _‐ノv「そうだね、心を見ないと決まらない技ではあるね。
       合気道なんて段もってても実戦で使える人はほとんどいないでしょうし。
       実戦使用が目的じゃないし……まあ、昔なら違ってたかもしれないけど」

( Фω+)「実戦使用が目的じゃないのか」

敢えて合気道について、彼らは駄弁る。
あの少年には触れないようにしているのだ。
それを意識して彼は話す。
シューも彼と同じ考えであろう。

lw´‐ ,‐ノv「んー……難しいところだけど今は実戦目的じゃないね。
       道場には警察官とか自衛隊の人とかいるから、一概にはいえないだろうけど。
       ま、あの人たちだって人を殺す気まんまんじゃないんだし、やっぱ実戦使用はなしかな?」

(;+ω+)「まて、なにか物騒なこといわなかったか?」

殺すとはなんなのだろう、彼は視線で問う。
シューは説明する。


lw´‐ _‐ノv「『 投げた相手は見なくていい。
        なぜならそいつはもう死んでるから 』
       ……これが師範代の言葉だよ」

(;ФωФ)「そんな危ないものだったのか?」



69: ◆pGlVEGQMPE :2010/12/31(金) 20:26:18.80 ID:AkLWUr3d0
lw´‐ ,‐ノv「地面に投げたらダメージでかいから、頭からおちたら重傷確定よ。
       それに合気道ってどんな技でも、当て身を入れれる間があるんだ。
       しかも、基本的に体勢を崩す武道だからね。
       筋肉の防御も薄くなって、そこにうまく当てれば骨くらい折れるっぽいよ」

もちろん今はそんなことしない、とシューは付け足す。
それから彼女は空手や柔道の説明をする。
どうも、今はどの武道もそこまで要求しない、と伝えたいようだった。

lw´‐ _‐ノv「この時代に殺しを要求する武道、武術なんてない方がいいんだ。
       特に平和な日本では、一般国民に習わせない方がいいんだ」

( +ω+)「だな」

lw´‐ _‐ノv「……だからやっぱり私は魔なんだ。
       どの視点でみても、私は外道を歩いているから」

( +ω+)「……話を戻すなよ」


紅く静かな時刻に、彼女の声はよく透った。

「あれは人みたいなナニカを殺すのに必要な武術だからね」、と。






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