('A`)壊れてしまったようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:40:39.41 ID:/TzBoWdyO
 
 
 
 
 
あいつの為に俺は人生を、
 
いや人間として生きること捨てた。
 
 
 
 
―――('A`)壊れてしまったようです



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:43:52.18 ID:/TzBoWdyO
 
 
( A )思い出すんだ、
残忍な手口で、まるで子供が虫をもてあそぶように、
無残に殺された娘のことを。
 
 
あいつにも味あわせてやる。
じわじわと追い詰められて、絶望のその先までみてしまった娘の気持ちを。
 
苦しくて、殺してくれと泣き叫べ!死ぬことも許さない。
永遠の悪夢に閉じ込めてやる。
あいつにも、両親がいるだろう、その両親に俺と同じ思いをさせてやる。 
 
俺は良心を消した悪魔になった。
あいつを憎むことで、いままで生きてきた。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:45:34.07 ID:/TzBoWdyO
 
妻は娘の死を受けとめられずにいた。
 
小さな骨壺を抱いたまま、俺に哀願するように呟き続けた。
 
あの子が、寂しがっているの、私を呼んでいるわ。
 
だから、お願い
 
 
 
 
ξ )ξ『私も殺して』
 
 
 
 
そして妻は、精神科の隔離病棟に入ることになった。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:48:20.09 ID:/TzBoWdyO
 
隔離病棟で何年も、何年も同じ言葉を繰り返した。
 
 
 
ξ )ξ『あの子が呼んでいるわ、私も殺して』 
 
 
俺は出来るかぎり、妻をいたわり、その呪いの呪文に耳を貸さない様努めたが、限界が来てしまった。
苦しまないように、全身の力を腕にこめ、細く透き通るような、妻の首を絞めた
 
 
 
( ∀ )『もうすぐ娘に会えるよ』
 
 
 
妻は病院のベッドで、小さな骨壺を抱えたまま、
私も殺してくれるのね、ありがとうと、呟いた。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:50:02.96 ID:/TzBoWdyO
 
あの吸い込まれるように美しい妻の瞳から、命の光が消えていく。
 
 
( A )
 
 
とうとう俺は、妻を絞め殺してしまった。
 
妻を殺し娘を殺された男の怒りと悲しみがどれほど深いか、あいつに思い知らせてやる。
 
悪夢から覚めることが、出来ない俺のすべてを。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:51:38.39 ID:/TzBoWdyO
 
 
 
凶器が憑いた。
 
体の芯に痛みが残る、この特別な凶器であいつに思い知らせてやる。
 
 
( ∀ )



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:53:36.09 ID:/TzBoWdyO
 
( A )『いた、あいつだ』 
いつかこの日がくることを覚悟はしていた。
 
行動に移すのは簡単に思えたが、身の毛がよだつ程の形相で睨まれ、
息を吸うことが出来なくなった。
 
あいつは嬉しそうに、体を震わせている。
 
( ∀ )『妻を殺した気分はどうだ』
 
 
蚊が耳元を飛び回る、羽音に似た声だった。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:57:04.74 ID:/TzBoWdyO
 
何故か聞き覚えのある声。 
止まっていた呼吸をする変わりに、俺は大声で吠えていた。
 
(# A )『――――――ッ!』
 
足の裏から、頭の先までの怒りが口から飛び出していた。
 
あいつは、その怒りの塊を受けとめたに違いない。 
体の震えが止まり、ピクリとも動かない。
 
いましかないと思い、一歩踏み出した。
 
あいつも近づいてきた、楽しそうな笑みまで浮かべている。
 
スローモーションのように俺の右手の鋭い凶器が突き刺さる。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 22:59:06.83 ID:/TzBoWdyO
 
 
 
 
鈍い音がした。
 
 
 
何故かあいつは、目の前で
 
       
 
 
砕 け 散 っ た



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:01:38.97 ID:/TzBoWdyO
 
しばらく呆然としていたが何が起きたかやっと理解した。
 
鏡に映る俺が砕けたんだ。
 
鈍い音は、凶器が折れた音だった。
 
精神科の隔離病棟にいたのは、俺だった。
 
 
床に砕けた鏡に、あいつが映っている。
 
クククと笑っている
 
クククと泣いている
 
耳障りな蚊の羽音が、頭の中で鳴り響いた。
 
ククク



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:03:49.63 ID:/TzBoWdyO
 
(* ー )娘よりパパへ
 
パパなぜそんなに、怒っているの?
 
ごはんのピーマン残したからなの?
 
それとも、お洋服をあそんでいて汚したから?
 
私がわるいこだから、怒っているのね。
 
ごめんなさい、ごめんなさい。
 
苦しいけど、しかたないわね、
苦しいのがおわったらまた、公園につれていってね…パパ



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:07:13.96 ID:/TzBoWdyO
 
( A )パパより、妻と娘へ
 
凶器は、俺の狂気だった。
 

 
俺は取り返しのつかない事をしてしまった。
 
早くこの悪夢から目覚めたい。
 
いつか、また会えることを、祈っている。
 
 
 
 
 
プロローグ 終了



戻る第一話