('A`)壊れてしまったようです

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:14:51.08 ID:/TzBoWdyO
 
結婚して12年目、娘は4度の流産の末にツンが産んでくれた宝物だった。 
フィレンクト先生の不妊治療をうけ自宅近くの、荒巻産婦人科で生まれた。
 
子供が生まれた日に

 
ξ^竸)ξ『私たちの願いを、神様がやっとかなえてくれたね』
 
嬉しそうな妻の言葉に、何度もうなずいて、
 
(;A;)『ありがとう、ありがとう』
 
と繰り返したのを、昨日の事のように覚えている。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:18:37.59 ID:/TzBoWdyO
 
娘の名前は、僕が悩みに悩んで「しぃ」と命名した。
 
美しい、可愛らしい、という言葉が似合う女の子になるようにと。
 
しぃがハイハイを始めたら、部屋じゅうの障害物をかたずけた。
 
かたことの言葉を話しだしたら、
 
('∀`)『パパと呼んでるよ』
 
とか、
 
ξ゚ー゚)ξ『ママといってるの!』 
なんて喧嘩なんかした。 
幼稚園の年長組になった頃に、
 
(*゚ー゚)『わたしパパと結婚する』
 
と言いだして、ツンがパパとは結婚出来ませんよ、ママと結婚してるからと、からかっていた。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:27:16.00 ID:/TzBoWdyO
 
小学校一年生の夏休みに理科の宿題が出されて、
朝顔の種を持ち帰り、ベランダで育てていた。
 
絵日記を毎朝書き、僕が会社に出勤する時間が来るまで朝顔の成長を自慢げに、報告してくれた。 
部屋の中は禁煙だったのでベランダでタバコを吸っていたが、
狭いベランダは朝顔としぃの場所になったので

朝目覚めてベランダで一服する習慣があった僕は、禁煙することになった。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:29:00.46 ID:/TzBoWdyO
 
 
 
何故こんな事になったんだろう。
 
交通事故に遭うなんて。 
事故の連絡はツンから受けた。
 
会社から30分ほどの大学病院に救急車で運ばれたとのことだった。
 
保険証と、付き添い用の着替えを持って来てほしいとツンにたのまれた。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:31:44.94 ID:/TzBoWdyO
 
午後からの会議には出席出来ない旨を上司に報告し、会社を飛び出した。 
会社の駐車場に向かいながら、ツンからのことづてを、忘れないように手帳に書き込んだ。
 
車に乗り込もうとして、鍵を机の上に忘れたことに気付き、
会社に取りに帰るか、タクシーに乗るか迷っていると、
 
('、`;川『鬱田さん、車の鍵忘れていますよ』
 
同僚の伊藤さんが、小走りで近づいてきた。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:36:29.05 ID:/TzBoWdyO
 
('、`*川『ご心配でしょうが落ち着いて運転してくださいね』
 
(;'A`)『ありがとう伊藤さん』
 
彼女の言葉を聞き、自分がかなり動揺していることに気が付いた。
 
深い呼吸を三度繰り返し、車に乗り込んだ。
 
自宅に着き着替えはすぐに準備出来たが、保険証が何処に置いてあるか探すのに手間どってしまった。
 
はやる気持ちを押さえながら車に乗り病院にむかった。
 
病院の地下駐車場に車を止め、足早に階段を駆け下りた。一階にある総合受け付けで、鬱田しぃの父親ですと話すと、
 
ハハ ロ -ロ)ハ『応急治療室から三階の集中治療室へ移されています』
 
と案内された。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:40:28.99 ID:/TzBoWdyO
 
三階へつき、エレベーターを降りてすぐ左手に集中治療室を見つけた。
 
廊下に制服すがたの警察官が二名いて、ツンと話をしている。
 
ξ;;)ξ『ドクオ…』
 
ツンの短い呼びかけと表情で、しぃの様態が深刻なもどだと悟った。
 
警察官は、事故の詳しい様子をツンに何度も尋ねていた。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:44:30.29 ID:/TzBoWdyO
ツンの説明によると、運転席に男性、助手席に初老の女性が乗っていて、
助手席の女性がすぐに下りてきて救急車を呼んでくれたと話していた。
 
警察官は、車には二人で乗っていたんですねと、念を押すように聴いていた。
 
(#'A`)『おまわりさん、いい加減に同じ事ばかり聴くのはやめてもらえないか。
妻と早く娘の側に行きたいんだよ。詳しい話は、明日でもいいだろう』
 
思わず大声をだしてしまった。
 
自分の声が病院の廊下に響きわたった。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:48:19.68 ID:/TzBoWdyO
 
ξつ;)ξ『ドクオ、しぃは手術がおわったばかりなの』
 
('A`)『そうか、わかった。しぃの側に行ってくる』
 
テレビでしか見たことのない光景だった。
 
心電図が規則正しく、ピッピッピッと鳴り、呼吸器が、
 
シューゴー シューゴー 
と動いていた。
 
呆然と立ちすくむ僕の横にツンが来てくれた。
 
左手に握りしめていた紙袋をツンに手渡そうとしたが、
強く握り締め過ぎていたようで、なかなか手を離すことが出来なかった。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:53:04.89 ID:/TzBoWdyO
 
ツンが紙袋の着替えなどを確認し終わったころに、
 
川д川『手術を担当した医師からご両親にお話があります』
 
と看護士さんから告げられた。
診察室に通され、レントゲンを医師が指差しながら容態の説明をしてくれた。
 
淡々とした説明が終わり、
 
(‘_L’)『他に会わせたいご親族がいらっしゃるなら、早めにご連絡して下さい』
 
と締めくくった。
 
ツンに、
 
ξ゚―゚)ξ『少しでも長くしぃの側にいたいの。ドクオ、私の両親に連絡して』
 
と頼まれた。
 
僕は病室の近くにある待合室の公衆電話から、僕の妹夫婦とツンの両親に連絡した。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/05(月) 23:58:17.63 ID:/TzBoWdyO
 
妹夫婦は小さな会社をやっており、終わりしだい二人で来るとのことだった。
 
(;'A`)『なるべく早くきてくれ』
 
義弟のギコ君にそう話した。
 
ふと腕時計に目をやると6時近くになっていた。
ツンの両親に連絡を入れ早めに来てくださいと頼んだ。
 
電話をおえ病室へ戻ると廊下が騒がしくなっていた。
急いで病室へ戻るとツンが、
 
ξ;;)ξ『しぃちゃん、しぃちゃん』
 
と娘の名前をよんでいた。
 
ピッピッ
 
と鳴っていた心電図が止まろうとしていた。
 
(;A;)『しぃ、しぃ』
 
と僕も娘の名前を呼んだ。
僕とツンがしぃ、と呼掛けると、返事をするように心電図が
 
ピッピッ
 
と動いた。
やがて、呼掛けても返事がかえってこなくなった。



戻る