('A`)が狭間で生きるようです

7: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:24:44.40 ID:MWBpUl+u0
第一話 「友達と雷」



ジリリリリリ!!!

('A`)「おはようサンフランシスコ」

朝、目が覚めて誰も聞いていない目覚めの言葉を呟く。
昨日の夕飯の残り物と米を五分で腹に突っ込み、大学に行く準備を整えなくては。
ああ、なんだってこの時期のホロカードはこんなに寒いんだ。

('A`)「寒さに耐える服が無い」

ちくしょう、独り暮しの貧乏学生にコートを買う余裕なんてないんだよ。
しょうがなく、出来るだけの厚着をしながら申し訳程度にマフラーを締める。

全く、内地じゃこんな雪考えられねぇよ。

昨日のエロゲの影響も相まって、睡眠不足の体にはホロカードの寒さは酷く堪え
る。



8: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:26:39.11 ID:MWBpUl+u0
('A`)「行ってきマンコっと」

鍵を閉めて、家を出る。
大学までは徒歩十分とはいえ、その十分が内地生まれの自分には辛い。
早く大学に着いてくれと願いながら小走りで向かう。

('A`)「寒すぎるぜ!ホロカード!!」

ようやく大学に着いた俺は、遅刻寸前のために教室までまた小走りを強要させら
れることになった。

(;'A`)「ハア…ハア…一講目から七階とかまじ勘弁」

( ^ω^)「ドクオおいーっす。毎日ギリギリセーフなのは最早狙ってるとしか思えないお」

ξ゚听)ξ「なんで、出席とる前一分前が分かるのかしら」

二人は同じ学部の、同期のブーンとツンだ。
二人ともサークルで知り合った。
金が無いのに弓道部とか自分でも馬鹿だと思ったがやってみたかったのは仕方がない。
親には就職に有利という理由で許可してもらった。
「そんなんやるならソード使いにでもなりなさいよ」と言われたがそんなものに
なれるなら苦労はしない。



9: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:28:29.77 ID:MWBpUl+u0

('A`)「二次元が俺を寝かせてくれないだけだ」

( ^ω^) 「キメェ…」

ξ゚听)ξ「他の女子の前で言ったらあんたサークルに入れなくなるわよ?」

オタクだとこの二人にバレたのは約三ヶ月前。大学に入った5ヶ月後のことだった。
それからというもの、俺はこんなキャラになってしまった。

( ^ω^)「おっお、授業が始まるお」

('A`)「マンドクセ」

授業は退屈だが、大学は楽しい。
授業の合間時間にサークルの部室でダラダラする。
入った当初は勉強しようと考えていたのに夏休みを迎える前には駄目大学生になっていた。
大学生がダラけるのは前時代と変わらないと言う。
やっぱり人間の普遍的なものなのだろうな。
と、屁理屈をこねながら教授の講義に馬耳東風を決め込もうとする。



11: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:32:06.16 ID:MWBpUl+u0

(’e’)「前時代において、全面核戦争の引き金を引いたシーナ国はその後の時代、
つまり我々の時代だな。その時代において領土を広げた。」

(’e’)「つまり、前時代にはニーホーと呼ばれていた島国。このホロカードを含めた島国全域だ。
まあ、このホロカードにはシーナ民族はあまりいないからこんなことが言えるのだがな。」

人類史の教授は純血のニーホー民族であるらしく、講義中にときおりこんな話をする。
シーナ民族とニーホー民族の間に生まれた俺はその部分だけは割と熱心に聞いていた。
俺はそのどちらにもなれない半端者だ。そう毒づきながら。
しかし駄目だ、やっぱり寝不足が効いているらしい。
その後の講義は睡眠時間へとその姿を変えていた。

キンコンカンコーン

('A`)「あ―、やっと終わった。二人とも部室行くだろ?」

( ^ω^)「おっお、もちろんだお。ついでに少し弓引かないかお?」

ξ゚听)ξ「あ、私も少し練習したいかも。ていうかドクオ寝過ぎよ。」

('A`)「決まりだな。ショボン先輩に道場の鍵借りて行こうぜ」



12: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:35:29.69 ID:MWBpUl+u0
ブーン達と他愛も無い話をしている内に部室棟に着く。
どこぞの馬鹿でかい大学と違ってこの大学はこじんまりとしている。
五分も歩けばそれぞれの校舎や部室棟、生協、教授逹の研究棟に着く程度だ。

その中でも一番古くさい建物のが俺達のダラケ場所、オアシスでもある部室棟。
煙草臭い一階の廊下の中腹くらいに、弓道部の部室はある。

('A`)「こんにちはーす」

( ^ω^)「こんちわーっす」

ξ゚听)ξ「こんにちは。あ、ショボン先輩道場の鍵借りれます?」

(´・ω・`)「やあ、ようこそバ―ボ(略
いいよ、ほら鍵だ。僕もついでに練習しようかな」

ショボン先輩は三年生の先輩で部長だ。大抵部室にいるが、授業は出てるのかとたまに疑いたくなるが
本人曰く、「僕は器用だからね」と言っていた。

その後道場の更衣室で着替えた俺たちは袴姿で弓を構える。
弓を引くときに凛とする気持ちになるのは、俺もニーホーの血を引いているからなのだろうか。



13: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:38:48.70 ID:MWBpUl+u0
(;^ω^)「今日は調子が悪いみたいだお」

ξ゚听)ξ「―――」

黙々と弓を引くツンの横でブーンが呟く。
かくいう俺も今日は調子が悪いらしく、少しばかり疲れてしまった。

( ´・ω・`)「ブーンは体幹がまだ甘いね。
ドクオはいつもより集中力が無いよ、睡眠不足か何かかい?」

自分の練習をこなしながらも的確なアドバイスをするショボン先輩を見て、
やっぱりこの人は器用だなと思ってしまう。



16: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:45:48.40 ID:MWBpUl+u0
(´・ω・`)「まあ、疲れたしこれくらいにしておこう。
お昼だし学食にでも行こうか」

(*^ω^)「おっお、賛成ですお」

ξ゚听)ξ「あんたは少し痩せなさいよ?」

('A`)「あ、俺金無いんで生協で買ってから行きますね」

(´・ω・`)「ドクオはまたカップ麺かい?しょうがない、今日は僕が奢ってやるよ」

('A`)「えぇ!いいですよ。ショボン先輩も一人暮らしじゃないですか」

(´・ω・`)「来年、君が先輩になったら後輩に還してくれればいいさ。
体育会系ってそんなものだよ」

('A`)「でも…」

ξ゚听)ξ「奢ってもらいなさいよ、部活中に倒れられても困るしね」

( ^ω^)「そうだお。この前もツンは家にいるときにドクオの心配をしてたお!」

ξ#゚听)ξ「余計なことを言うな!!」

照れ隠しなのか、それとも本気で怒っているのかツンは思いきりブーンの股間を
蹴り上げた。

( °ω゜)「モルスァ!!」



17: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:48:28.46 ID:MWBpUl+u0

悶絶するブーンを見ながら、やっぱりこの大学に来て良かったと思う。

ただでさえ、前時代の流れから民族的な価値を重視している時代に父がシーナ、
母がニーホーと両方の民族だ。
そのどちらでもも無い俺は内地では肩身が狭かった。
もちろん、シーナ国である以上シーナ国民ではあるのだろうけど。
だからなのか、こんな風に優しくされるとたまに疑ってしまう。
蔑まされるのに慣れているせいなのか優しさまで嘲笑いの裏返しかと思ってしまい、
そんな自分に反吐が出そうになるのを押さえながら好意を受けとる。

('A`)「それじゃあ、すいません。ご馳走になります」

(´・ω・`)「うん、好きなものを350円以内でなんでも頼んでいいからね」

…やっぱりこの人は器用だ。俺は改めてそう思った。
午後の授業も済ませ、放課後の練習。そして、帰宅へと一連の流れをすませる。
ブーンとツンは地下鉄のため別れて、ショボン先輩は家が別方向のために別れることになる。
つまるところ一人で帰る俺は、帰り道につい色々なことを考える。



19: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:50:35.35 ID:MWBpUl+u0
('A`)「ブーンはツンっていう彼女がいていいなあ。
ショボン先輩もなんだかんだでクー先輩と続いてるし…はあ…」

独り身を嘆くものの二次元に走っている時点で自分には望みが無いことは分かっている。
そんなことを考えながら家に到着。
晩御飯を軽く済ませて一日最後の行事に入る。

('A`)「今日はどの嫁で抜こうかな」

嫁選びは大切だ。
終わり良ければ全て良し。一日の出来不出来がこの一瞬で決まる。
つまりオナニーは単なる性処理ではない。人生そのものと言い換えてもいいと俺
は思っている。
セックス?あれは都市伝説だ。

('A`)「よし、君に決めた!」

パソコンをつけてDVDを差し込む。
めくるめく世界の扉が俺を待っている!
さあ、いざゆかん!冒険の旅へ!(性的な意味で)



21: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:52:34.50 ID:MWBpUl+u0




刹那、一目が瞬眩むような光が窓から入り込み、その後にブレーカーが落ちた。
雷かとも思ったが、あまりに光が大きすぎる。
まさか、今のが前時代の忌むべき兵器である核爆弾!?
一瞬の内に思考がぐるぐると脳内を駆け巡る。
対処法が無い絶望に身を任せていたその時、耳をつんざくような爆音が聞こえた。

(;'A`)「うわあああああああ!!!!」

雷!?
いや、確かに雷だ。だけど規模がでかすぎる。
なんなんだ、一体。
恐怖に襲われた俺は、ブレーカーを上げることもせずにベッドに潜り込み
現実から逃げるように夢の中へと走った。

(;'A`)「落ち着け、あれはただの雷だ。ただの雷なんだ。」

自分に必死でそう呟く。
でも、なぜだろう。
俺は、その雷が普通じゃないことをなぜか確信していた。

第一話 「友達と雷」 終



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