('A`)が狭間で生きるようです

24: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:56:58.54 ID:MWBpUl+u0
第二話 「僕を置いていかずに、世界は変わる」


('A`)「昼か…」

昨日の途方もない雷を必要以上に恐れていた俺は、
一講目の授業があるにも関わらず昼まで寝てしまっていた。
出来ることなら起きたくなかったという、奇妙な不安感と共にいつも通りに
朝飯を食べて大学に行こうとする。
しかし、ブレーカーを上げるのを怠ったために米が炊けていないことに気がついた。

('A`)「米無しでカレーが食えるかよ…」

ああ、俺の馬鹿。
雷で怖がるなんて子供じゃないんだから。
こりゃ地震の時には俺は死んで悲劇か
助けられて美談のどちらかのお世話だろうな。
まあ、それも俺らしいか。



26: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 22:59:20.53 ID:MWBpUl+u0
('A`)「行ってきマンコっと」

カレーなのに米がない、昼なのに朝飯という2つのパラドックスをこなして大学に出掛けた。
どうせ講義には間に合わない。
そのまま足を部活棟に向けることにした。
どうせ、誰かいるだろう。大学生というのはそういうものだ。

('A`)「こんにちはーっす」

(´・ω・`)「ようドクオ。あれ?今授業じゃなかったっけ?」

('A`)「寝坊したんでサボっちゃいましたww」

(´・ω・`)「はは、ドクオも大分大学生らしくなったね」

ショボン先輩、あなたも授業ないんですかと訪ねたかったが、
どうせこの人ならうまくやる。
そう思って、俺はショボン先輩と他愛もない談笑をする。



27: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:01:04.01 ID:MWBpUl+u0
(´・ω・`)「ドクオはうまくなりたいなら、まず生活を改めるべきだね。
健康じゃなかったらどんなに練習してもうまくはならない」

('A`)「はい…でも帰って疲れてるとめんどくさくなっちゃって」

(´・ω・`)「なら僕の家に来て食べればいいよ。幸い僕は料理好きだし」

('A`)「なんか、それも申し訳ないなって」

(´・ω・`)「気にするな、材料費はドクオ持ちだから。
うん、今日は鍋をしよう。ツンとブーンも誘って見るか」

('A`)「えぇ!?あ、はい。分かりました」

厳しくも優しく、そして変なところでしっかりしているショボン先輩を
俺は尊敬していた。
クー先輩がショボン先輩と付き合っていると知ったときにも、
それならばとすぐ諦めがついたものだった。



28: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:03:47.51 ID:MWBpUl+u0
( ^ω^)「こんちはーっす。おっ、ドクオは授業サボって部室でダラダラかお?」

ξ゚听)ξ「こんにちは。全く、同期で留年とかやめてよ?」

この二人のことも、俺にとっては大切な仲間だ。

【(´・ω・`)「弓道なんざ、やりたいやつが勝手に入ってるから勧誘なんざしてないんだ。
やる気のない奴がいても邪魔だしね」】

ショボン先輩の部長方針により、今年度の新入部員は俺達三人だけ。
最初は三人で仲良かったが、後にブーンとツンが付き合った。
これでまた俺は一人かな、と軽い気持ちでそう考えていた。
慣れているからどうということはないだろう、と自分に嘯きながら。

だけど、この二人はそれでも三人で遊ぶように努めていた。
特にツンが恋人が出来た途端部活の集まりに顔を出さないようになるのを毛嫌いしているらしく、
部活でもその他の集まりでも他の部員と積極的に話している。



29: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:06:05.04 ID:MWBpUl+u0

ξ゚听)ξ「はい、ノート。テスト前にコピーしようとするとどれが無いか調べる
のが面倒くさくなるから、今コピーしときなさい」

('A`)「おお、サンキュー。助かるよ」

( ^ω^)「おっお、ドクオ。僕の分も頼むお」

ξ#゚听)ξ「あんたも一緒に行きなさい!!」

ドゴ!

( °ω゜)「モルスァ!!」

股間を蹴られ、変な汗を出しながら歩くブーンを連れてコピー機のある生協へ向かう。
しかし、ブーンとツンの付き合いとは一体どうなっているんだ。
ここまでされてもブーンがツンに怒ったところを見たことがない。



31: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:09:01.53 ID:MWBpUl+u0
('A`)「お前ら、いっつもあんな感じなの?」

(;^ω^)「二人でいるときは全然違うお。みんなといるときだけああなるお。
正直、股間がそろそろ限界だお…」

ああ、ツンデレか。
攻略方法はばっちりだ。ただし二次元の話だが。
しかしながら、股間が限界って色々な意味でアウトだろよブーン。

(;^ω^)「ドクオはなんでツンがああなるか、心当たりないかお?
たまに本当に好かれているか不安になるときが…

('A`)「ああ、ごめん。その話もういいや」

Σ(;^ω^)「ドクオからふったのに!?」

こいつは良いやつなんだな。だからこそ不安になるのだろう。
いや、ツンもショボン先輩も良い人だ。
シーナ人があまりいないこのホロカード。
第一次産業が盛んなこの地域にシーナ人が興味を示さなかったためだと聞いている。
良くも悪くも差別だとかいう人権問題には疎い奴等だ。



32: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:11:51.37 ID:MWBpUl+u0
だからこそ、不安になる自分に嫌悪感を覚える。
こいつらは、自分の優越感を満足させるために俺に優しくしたり、
自分の勝手な主義主張で俺と付き合っているんじゃないかと。
俺だって、人を裁けるような綺麗な人間じゃないのに。
最低だ。

( ^ω^)「早くコピーとって部室に戻るお!
上着を置いてきたから寒くてたまらないお」

('A`)「全くもってその通りだ。早いとこ帰ろうぜ」

('A`)「ああ、そう言えばブーンとツンは今日空いてるか?
ショボン先輩が鍋やろうってさ」

(*^ω^)「おっお、大丈夫!是非とも参加させてもらうお!」

('A`)「決まりだね。何鍋にしようか…」

(*^ω^)「ちゃんこでも、みそちゃんこでも、キムチちゃんこでも、カレーちゃんこでも何でもいいお!」

('A`)「とりあえずちゃんこ鍋ね」

今日の鍋の話をしながら、俺達は部室棟に戻っていった。
ツンとショボン先輩、そしていつの間にいたのかジョルジュ先輩もそこにいた。



33: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:16:17.66 ID:MWBpUl+u0
('A`)「あ、ジョルジュ先輩こんにちはっす」

( ^ω^)「こんちはっす」

( ゚∀゚) 「おう、お前ら。今日も良いおっぱい日和だな」

(;^ω^)「昼間から下ネタトークは勘弁ですお…ツンもいるし」

ξ゚听)ξ「ジョルジュ先輩、胸ってどうやったら大きくなるんですか?」

(;^ω^)「えぇ!?ツンさん!?」

( ゚∀゚) 「人は生きているだけで価値がある、おっぱいもそれと同じだ。
大小ではなく、そこにあることが何よりも大事なんだよ」

Σ(;^ω^)「ちょっ!ジョルジュ先輩も何哲学的なマジレスをしてるんすか!」

ξ゚听)ξ「でも…やっぱり男の人は大きいのが好きだって…」

Σ(;^ω^)「続けるのこの話!?ツンさん!?
ていうか僕はツンの胸なら小さくても…」

ξ#゚听)ξ「あんたは黙ってろ!!」

ドゴ!!

( °ω°)「モルスァ!!」



35: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:19:12.63 ID:MWBpUl+u0

ブーンはツンに股間を蹴られ、またもやうずくまっている。
こいつら本当に見てて飽きない。

―その時の出来事を後にブーンはこう話している―

( ^ω^)「理不尽って言葉があるじゃないですか。
ええ、僕はその時言葉の意味を【頭】ではなく【心】で分かりました。え?股間ですか?
片玉の方が精力が強くなると聞いてからは一個くら潰れてもいいいかなって気分でしたよ、はは」

―雑誌インタビュー「世界を変えた七人のニーホー人」から引用―

('A`)「ショボン先輩、ジョルジュ先輩も鍋に誘いましょうよ」

(´・ω・`)「うん、そうだね。ジョルジュも今日うちに鍋しに来なよ」

( ゚∀゚)「あ、ありがとうございます。遠慮なく上がらせてもらいますね」

こうして俺達四人は放課後、ショボン先輩の家に鍋することとなった。
高校の頃には考えられなかった遊び方。正直、楽しい。



36: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:20:44.71 ID:MWBpUl+u0
ショボン先輩は準備があるからと先に家に帰り、
俺達は買い出しのために近くのスーパーに寄っていた。

( ^ω^)「お肉に野菜に、お肉にお肉〜♪」

ξ゚听)ξ「ブーン、ちゃんと魚も入れなさいよ!」

ブーンにツッコミを入れながら、カゴに品物を入れていく二人。
というかツンのツッコミは合ってるの?教えてエロイ人。

('A`)「ジョルジュ先輩は結構ショボン先輩の家に行くんですか?」

( ゚∀゚)「そうだな―、結構あの人面倒見がいいからちょくちょく行くな」

('A`)「やっぱり面倒見いいですよね。自分もあんな先輩になれるか心配ですよ」

( ゚∀゚)「なんだかんだ言って先輩になったら、なんとかなるもんさ」

そう言ったジョルジュ先輩は料金の半分を負担してくれた。
やっぱり二年とはいえこの人も先輩なんだな。
そう思いお礼を言って、ショボン先輩の家に向かう。
家についたらショボン先輩は、コタツの上にコンロと鍋を用意して待っていた。
そこまで広くない1LDKのアパート。
だけども綺麗に掃除がしてあり、
清潔感が漂うその部屋には五人ぐらいだと広いくらいに感じた。



37: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:23:49.85 ID:MWBpUl+u0
(´・ω・`)「じゃあ、下ごしらえをやっておくからとりあえずくつろいでいてくれよ」

ξ゚听)ξ「あ、私も手伝います」

(´・ω・`)「おう、頼むよ」

料理の下ごしらえを二人に任せて、
男三人は談笑(主におっぱい関係)をすることにした。

( ^ω^)「女の子はなんであんなに胸にこだわるんですかお?」

( ゚∀゚)「それは、人が自分がなぜこうなのだと悩むのと一緒だ。
まずは自分を受け入れる、そして自分のおっぱいを受け入れること。
大きくしようとするのはそれからだ」

('A`)「おっぱいって単語が無かったら、それ凄い良い話ですよね」

卑猥ながらも哲学的なジョルジュ先輩の話を聞いているうちに鍋の準備が完了した。
そうなれば後は食べるだけ。みんな一斉に箸を持つ。

「「「いただきま―す!!!」」」



38: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:26:28.83 ID:MWBpUl+u0
(*^ω^)「ハムッ!ハフッ!ハフッショッチョフラ!!」

('A`)「うわあ…」

ξ゚听)ξ「うわあ…」

( ゚∀゚)「うわあ…」

(*´・ω・`)「はは、良い食べっぷりだね。僕らも急がなきゃなくなってしまうよ!」

ブーンに釣られて俺達も、鍋をがっつく。

うまい!
ショボン先輩の料理のうまさは折り紙つきだなこりゃ。

('A`)「もう、食えねえ…」

ξ゚听)ξ「あたしもお腹一杯」

( ゚∀゚)「おっぱいならあと二杯はいけるのに…」

(*^ω^)「ジュルジュルジュル」

皆が満足していた時に、ブーンは一人鍋の汁をすすっていた。
こいつ何人前食ったんだ?

(´・ω・`) 「はあ、結構食べたね。テレビでもつけようか」



40: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:28:13.00 ID:MWBpUl+u0
そう言ってショボン先輩がテレビをつけた。
しかし、おかしい。
どの局にしても、番組終了の七色の画面しか出てこない。
電波事故か?おかしいな、ソウル放送完全移行にはまだ二年ほど必要なはずなのに。

その時、不意に昨日の雷を見たときの不安が襲ってきた。
何かがおかしい、怖い、恐い。
鍋を食べたためとは別の汗が俺の頬を伝う。

ξ゚听)ξ「あ、映ったわよ」

ツンがそう言うと、テレビにはニュース映像なようなものが映っていた。
おかしいのは、どの局にザッピングしても同じところ。
しばらくザッピングしていると、一人の男がそこに映った。



41: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:30:39.34 ID:MWBpUl+u0
【( ・∀・)】「みなさん、こんにちは。ソード同盟リーダーのモララーです」

【( ・∀・)】「お騒がせして、申し訳ございません。
しかし、大切なことなのでこのように公共の電波を使わせて頂きました」

あくまでも低姿勢を崩さないこの男に、俺は恐怖を隠せなかった。
嫌な予感がする。
差別されてきた俺の勘がそう告げていた。

【( ・∀・)】「明日を持ってこのホロカードはシーナ国から独立します。
不遇の時を経た私たちソード使い、自然と対話が出来る私達がこの国を治めます」

【( ・∀・)】「明日からこの島国は、ホロカードではありません。
特別な国という意味を込めて【VIP】として生まれ変わります。
議会制ですので独裁などはありません。みなさんご安心ください。」

【( ・∀・)】「しかし、ソード使いで無いかたは早めに申し出るようにお願いします。
書類上の関係がありますので」



42: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:31:54.33 ID:MWBpUl+u0
モララーと名乗るその男の話を聞きながら俺は思った。
ああ、またここでも差別が始まるのか。
だけど今度は一人じゃない。周りのソードを使えないこいつらも同じだ。
歪んだ笑顔が湧き出そうなのを押さえ、皆と同じように不安な顔を作る。

―ざまあみろ―

この異常な状況に呟いた心の声は、紛れも無い己の本音だった。




第二話「僕を置いていかずに、世界は変わる」 終



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