('A`)が狭間で生きるようです

43: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:35:24.03 ID:MWBpUl+u0
第三話「望まない姿、望まない力」


テレビの男は柔和な顔をしながら、話を続ける。

【( ・∀・)】「また、【VIP】においてはソードを使えるものと使えないもので
ある程度の差別を行います」

なるほど、願ったり叶ったりだ。自ら吐露し、有無を言わせない。
他の皆は何を言われるのか不安な状況と、理不尽に対する怒りで複雑な顔をしている。
絶対服従か、それとも奴隷か。
どちらにせよ、もう覚悟は出来ている。
というよりも、昔から虐げられていただけだから慣れているだけなんだがな。

【( ・∀・)】「まず、ソードでないものには職業選択の自由がありません。
第一次産業に従事して頂きます」

ξ゚听)ξ「な…!!」

将来、検事を目指しているというツンは戸惑いを隠せないようだった。
たったそれだけのことに。



45: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:37:45.95 ID:MWBpUl+u0
【( ・∀・)】「しかし、これはソードを使えない人間にソードを使えるように
なって頂きたいがためなのです」

【( ・∀・)】「ソードが発現するのは一般的に高校生と言われています。
しかし、私どもの調べでは最高齢で45歳においてソードを発現させたものが
いることが分かりました」

【( ・∀・)】「そのため、ソードを使えない方々はまずソードを使えるようになってください。
また、一方的な搾取は行わず自由主義の元に行って頂くことを誓います」

【( ・∀・)】「以上でソードを使えない人達の差別を終わります。
次にソード使いの中でも暫定的なランクを決めさせて頂きます」

なんだって、差別がそれだけ?
まあ、どうせこれからだ。
力を持ったものは必ず暴走する。それも暴走している自分に気がつかずにな。



46: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:40:37.24 ID:MWBpUl+u0
【( ・∀・)】「ソードのランクは五種類に設定させて頂きます。
まず能力を持たず、幽体だけを発現させられる方をレベル1」

【( ・∀・)】「続いて何らかの付加的な能力を使える方をレベル2。
軽い念動力等の方がこれに当たります」

【( ・∀・)】「その付加的な能力が強力になった方、何らかの事象を操ること
が出来る方をレベル3とさせて頂きます。爆発や固定などを操れる方がこれに当たります」

【( ・∀・)】「レベル4は自然を操れる方です」

【( ・∀・)】「レベル5は、自然を操りその幽体の姿が神、精霊等を操れる方となります」

【( ・∀・)】「しかし、これは【心の在り方】についての強さです。
仮に争いになった時にはレベル1がレベル4を上回ることもあるでしょう」

【( ・∀・)】「しかし、レベル5には基本的に叶わないと覚えておいて下さい。
また国政に関われるのは基本的にレベル4からとなります」

【( ・∀・)】「最後に皆さん、私達は私利私欲のためにこのようなことをしているわけではありません。
平和のために、人類のレベルを上げたいのです。
そして、人と自然との共存からくる真の平和を実現するために。」

【( ・∀・)】「以上で放送を終わります。
それではみなさん、また明日から宜しくお願いします」



47: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:43:08.99 ID:MWBpUl+u0
ξ;゚听)ξ「…」

(;^ω^)「…」

(;´・ω・`)「…」

(;゚∀゚)「…」

('A`)「…」

放送が終わったあとは皆一様に同じ顔をしていた。
あまりに突然に現れた世界の変革。
あまりに突然の弱者への転落。
その絶望と怒りは、表面化するのにすら容易では無かった。

俺を除いての話だけどな。
妙に冷静な自分が恨めしいとさえ思える。



48: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:44:22.20 ID:MWBpUl+u0
(;´・ω・`)「今日のところは一旦これで解散しようか。
ブーンはツンを送っていって。ドクオとジョルジュは充分に気をつけてね」

一番冷静でいようとしたショボン先輩が口を開き、俺達は解散した。
理由は様々だろうか皆同じように、不安な顔をしていた。
職業選択の差別か。
自然とふれ合わせることでソウルを感じさせソードの発現率を高める。
最終的には人類全てをソードにするつもりか。

くだらないな。
そうまでして得たい平和か、合理的だな。
全く合理的だ。
なのに、なのにこんなにも憎い。
奴等の出現のタイミング、政策、存在全てが憎々しい。

('A`)「くそ…ソードが偉いのか…」

('A`)「シーナ人が偉い時代と何が変わるんだよ…!」



49: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:47:07.06 ID:MWBpUl+u0
まあ、いい。
あいつらは心から世界平和を願っているようだった。
どうせ、ソードの奴等のことだ。
きっとうまくやる、俺を除いての話だけどな。
いや、もう皆にもソードは発動しないだろうから俺達か。

歪んだ笑顔が顔に張り付く。歪んだ連帯感を望む心。
ここなら変われると思ったのに、普通の仲間に囲まれてると思ったのに。
きっとその関係は壊れる。
皆はソード同盟に逆らうかもしれない。
だけれど俺は必ず逆らわない。

―父さん、僕は何で生きているんだろう―



51: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:49:02.48 ID:MWBpUl+u0
('父`)「ドクオ、父さんと母さんは民族が違う。だからお前は何者にも属さない。
お前が虐められたり嫌がらせをされるとしたらそれが理由だ」

('A`)「とうさん、よくわからないよ」

('父`)「いいかい、ドクオ。人間は違うものを排除する。お前は人と違うんだ」

('A`)「ぼくがわるいってこと?」

('父`)「そうじゃない。正しい悪いんじゃないんだ。
みんな自分が正しいと思っている。もちろん私もだ。」

('父`)「だけどね、ドクオ。
他の正しさが出てくると人はまるで自分が正しくないと思ってしまうんだ。」

('A`)「ぼくはみんなとちがうの?」

('父`)「そうだ、ドクオ。だけどね、本当はみんな全員違うんだ。
なのに安心したいから、必死で同じになろうとするんだよ。何の根拠も無いのにね」

( ;A;)「ぼくはひとりぼっちなの?」

('父`)「それも違う、ドクオ!」

('父`)「みんな違う。みんな別々の正しさを持っている。
だけど人間は本来それを受け入れることが出来るんだよ」



52: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:50:56.17 ID:MWBpUl+u0
父はそう言い、幼い俺を抱き締めた。
シーナ人とニーホー人は、争いこそ起こさないものの互いに憎みあっていた。
前時代において、世界が壊滅するきっかけを作ったシーナ人。
復興の際にその人口の多さから、ニーホーの地を助け、そして我が物とした民族シーナ人。

ニーホー人はそんなシーナ人を憎んだ。
しかし、最初に助けてもらった恩があるから強くも言えない。
ニーホー人にはそういうところがあった。

そんな二つの民族の壁を乗り越えて父と母は結ばれた。
そして、俺が生まれた。
しかしながら、友達は出来なかった。
ニーホー人からは憎まれシーナ人からは疎まれた。

父は同族から何を考えていると蔑まれ、母も裏切り者と罵られた。
しかし、父と母は挫けなかった。
民族は関係無い。人はそんなに浅はかなものじゃない。
そう言い続けながら二人は生きていた。

父が死ぬ日までは俺は、例え自分が一人ぼっちでも
この両親の背中を見て生きていこうと思っていた。



53: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:52:55.12 ID:MWBpUl+u0

('父`)「ド…オ…」

('A`)「父さん、死なないで!なんだってこんな目に…!」

('父`)「ちが…ドク…。私…やり…か…が…まち…ってい…た。」

('A`)「父さん…!」

夜二人繁華街の居酒屋でのシーナ人とニーホー人が喧嘩をしていた。
血の気の多い若者同士だったらしく、
どちらかが死ぬまで気がつかないような喧嘩だったらしい。
周りのギャラリーが二つの民族に分かれ、争いを煽っているところに
父がそれを止めようとしたらしい。
両民族は、そんな茶々を入れた父を矛先に変えた。
殴る蹴る、そして殺す。
簡単な話だった。

('父`)「…」

('A`)「父さん…!」



54: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:54:31.28 ID:MWBpUl+u0
最後まで、人間を信じて死んだ父。
それでも挫けなかった母。
母がいなければ、今頃大学になんて行けていなかった。

J('ー`)し「ドクオあんた大学はホロカードね」

('A`)「え!?何勝手に決めてんの!?」

J(#'ー`)し「だまらっしゃい!
まったくあんたは父さんが死んでから友達も作らず毎日毎日パソコンばっかり!」

J(#'ー`)し「民族差別が無縁な土地で、とっとと友達作って来なさい!」

('A`)「は、はい!!!」

そうして俺は大学はホロカードに行くことになった。
そこで素晴らしい友達を見つけて、母の期待には答えられたと思う。

だけど、人間を信じられない自分。
人間を信じていた父とその父に付いていった母。
二人と俺はこんなにも違う。
そのくせ、時折よぎる父と母への憐憫の目。
愚かなものを見るかのような、父と母への思い。
自分を心底嫌いになる瞬間だ。


―父さん、僕は何のために生きているんだろう―



55: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/02/28(土) 23:58:01.07 ID:MWBpUl+u0

('A`)「寝るか…」

明日からは世界がきっと変わってる。
明日じゃなくても近いうちに。
ソードの奴等は特権意識を甘く見ている。
どうせ、差別が始まるさ。

次の日になって、目が覚めた瞬間にはまだ世界は変わっていなかった。
学校に行っても何も変わっていなかった。
部室に行っても何も変わっていなかった。

ξ゚听)ξ「ほら、今日の授業のノートよ」

( ^ω^)「おっお、助かるお。ドクオもコピーするかお?

('A`)「おう、生協にいくか」

ご多分に漏れずに俺もいつも通りを装った。
皆々、甘く見ている。見えるものを見ないように。
ちくしょう。



56: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:00:14.64 ID:TK5dDeGy0
( ^ω^)「ドクオ、僕と君はお互い違ってしまっても友達だお?」

生協に行く途中、ブーンは不意にそんなことを言った。

('A`)「ああ、友達だ」

意味を察した俺は、そう答えた。
さようなら、ブーン。君は僕と違ってしまったんだね。

(*^ω^)「おっお、嬉しいお」

無邪気にはしゃぐブーン。
顔に笑顔を張り付かせて、心を冷やしつかせる。
友達ってそういえば、どうなれば友達なんだろうな。

それから何日かたっても、世界は特に変わらなかった。
奴等の政策はどうやら外交が収まってから始めるらしい。
シーナ国との決着を着けてから、国内のことに従事するらしい。
段取りが悪いと思ったが世界規約により10人以上で集まること、
警察の許可なく能力を使えなかったソード達には仕方が無いのだろう。



58: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:03:57.40 ID:TK5dDeGy0
もう何日か経つ内に、陰鬱な気分は少し晴れてきた。世界は何も変わらない。
ひょっとしたら、このまま何も変わらないのかも。
ブーンがどうなろうと、俺達は友達でいれるような気がした。

ξ#゚听)ξ「死ね!氏ねじゃなくて死ね!」

ドゴ!

( °ω°)「モルスァ!!」

この光景を見ているうちは大丈夫だと思える。
自分の卑屈な汚い心を恥じる内はまだ、大丈夫。
ソード同盟が来てもきっと変わらないさ。
そう、信じかけていた時だった。

だけど、現実って奴はこんな時にだけ小説のように展開するんだよ。

(´ー`)「袴姿って萌えるよな」

放課後に道場に行くと、知らない男がそこに立っていた。
大学の部室棟で見た気もしたが知り合いではない。
意味不明…では無いが唐突な言葉を吐き、男はにやけた顔でそこに立っていた。
嫌な予感がするな。
こいつは、危ない。なんとなくそう思えた。



61: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:11:03.67 ID:TK5dDeGy0
( ´ー`) 「あ、きたきた。
ツンさんとクーさんだっけ?君達今日から俺のものね」

来た、とうとう来た。
しかも、最初から超ド級の馬鹿が。
勝手に膝が震える。いつかはこんな日が来るとは想像していたけど怖いものは怖い。
しかも、なんだって今日に限っていつもはサボりがちなクー先輩までいるんだよ。

ξ゚听)ξ「はあ!?」

川 ゚ -゚) 「理解に苦しむな。
君は一体何の権利があってそんなことを言っているのだ?」

( ´ー`) 「シラネーヨ、ソードじゃない奴ががたがた言うなっての」

差別意識に満ちた声で男はそう言い、小さな声で呟いた。

( ´ー`) 「壊せマッド・ピエロ」

男が呟いた瞬間に、体調約四メートル。
筋肉隆々としたピエロのようなものが姿を表した。
おちゃらけた動きをし、醜い笑顔のマスクをつけながら道場を壊していく。

川 #゚ -゚) 「止めろ!!」

激昂したクー先輩がそう叫ぶと男は下品な顔をしながら、
悪く言えば発情した顔を浮かべながら叫んだ。



62: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:16:39.30 ID:TK5dDeGy0
(*´ー`) 「たまらねぇな!!その顔が俺のものなるんだ!」

川 #゚ -゚) 「ふざけ…!!」

クー先輩が叫ぼうとした瞬間、
マッド・ピエロと呼ばれたそれは両手でクー先輩とツンを掴んだ。

(*´ー`)「じゃあな、もう用はネーヨ」

男がそう言い立ち去ろうとした時、猛然と果敢に挑もうとする二人がいた。

(#`ω´)「ツンをはなせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

(#´・ω・`) 「クーに触るな、このカスが!!!」

そうだ、ブーン。お前はソードなんだろう?
蹴散らしてしまえ、そんなやつを。俺はここで見ているから。
お前が決定的に俺と違うのを見ているから。

怯えながらそんな下衆な考えを巡らせていた俺。
信じられない光景が目の前に入ってきたのはすぐだった。



64: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:21:46.18 ID:TK5dDeGy0
(#´ー`)「ウゼーヨ」

男が怒気を禍々しく発した瞬間に、
ツンとクー先輩を掴んだままマッド・ピエロはブーンとショボン先輩を吹き飛ばした。
吹き飛ばしたんだ。

(# ω )「ぐああ…」

(;´・ω・`)「が……」

おい待てよ、ブーン。
お前はソードだったんじゃないのか?
ただ本当に俺と友情を確かめたかっただけなのか?
なら、なんだってあんな紛らわしいことを言うんだよ。

それじゃあ、俺はただの最低じゃないか。
どうすればいい、どうすればいい。
このままじゃ、ツンとクー先輩が。

ξ;;)ξ「ブーン……」

川 - )「ショボン…」

二人が拐われる。
汚される想像なんてあまりにも容易過ぎて笑えない。
ちくしょう、どうすればいい。
答えなんか無い。
答えなんか無いんだよ。



65: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:23:42.67 ID:TK5dDeGy0
(#´ー`)「男付きだったのかよ…クソ…」

男は明らかな嫌悪感を示しながらもソードの手を緩める素振りを見せない。
がたがた震える歯と膝。あいつの瞳にはもう俺は映っていなかった。

(#´ー`)「コロス…」

男はブーンとショボン先輩を見ながらそう呟いた。
殺される?
止めてくれ、そこまでいったら差別とかそういう問題じゃないだろう。
単なる犯罪じゃないか!

( ;A;)「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

ぐしゃぐしゃに顔を涙で歪めながら、俺は男に向かって行った。
勇気なんかじゃない、ただ現実を受け入れることが出来なかっただけだ。

(#´ー`)「ウゼーって言ってんだろ!」

バキッ

( ;A;)「ゲホッ!!」



68: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:29:04.03 ID:TK5dDeGy0
ほら、マッド・ピエロに殴られた俺はもう一言も何も言わない。
意識はまだある、体もぎりぎり動く。
なにもしない。
自分の役目は果たしたから。「守ろう」とはしたから。
後は気を失うだけだ。後は誰かがなんとか…

…してくれる分けがない。
嫌だ嫌だ。
こんなのは嫌だ。
あの二人が傷つくなんて嫌だ、二人の恋人が悲しむのも嫌だ。

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
いやだいやだいやだいやだ





ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!

一体どうすればいいって言うんだよ!?
差別された経験なんざ何の役にも立たないんだよ!!



70: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:32:52.42 ID:TK5dDeGy0
―殺せばいいだろ―

(;'A`)「ひっ…!」

一瞬だけ聞こえた声。どこからか聞こえたか分からがないはっきりとした声。
重厚な声で、俺を威圧するかのようにその声は言葉を続ける。

―だから殺せばいいだろ、馬鹿かお前は―

(;'A`)「だれ…?なに…?」

子供のように怯えた俺は、その声の主を探そうと必死に辺りを見回していた。
そうこうしている内にマッド・ピエロは二人を殺そうとしている。

―情けない質問だ、俺はお前と世界の化身―

そう言った後、重厚な声は突然けたたましい嘲りの声に変わった。

―おめでとう、ソード使い。君は選ばれました、汚い俺に選ばれました!君のソードは心底暗いソードです!―

―受け入れるか、俺を!?汚い自分を受け入れるか!?出来ないだろう?さあ、そのまま寝ていろ下衆が―

(;'A`)「…」



72: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:37:11.59 ID:TK5dDeGy0
はっきりと分かった。
こいつは俺の心だ、俺のソードだ。
こいつを受け入れることが出来たら、四人を救えるかもしれない。

だけど、嫌だ。
こいつは汚い、暗い、何より辛い。
見たくなかった自分の心。認めなくなかった、卑しい心。
今まで培ってきた、自分の膿。環境のせいにして好き勝手に増やしてきた想い。
こいつは途方もなく暗い!
俺にはこいつを受け入れるなんて出来やしないよ。



73: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:40:33.82 ID:TK5dDeGy0
諦めて、絶望して時をやり過ごそうと思ったときだった。
それは、まるで時間が止まったようだった。

( ω )「ドクオ…たの…む…」

ブーンの呟きがはっきりと聞こえた。
まさか、お前気がついていたのか…?
俺がソードになるのに気がついていたのか?
あの時の質問は純粋に俺との友情の確認…?

不意に親父の姿が頭の中に甦った。

ドクン

何かが俺の体に満ちていく。
暗い、汚い心が満ちていく。

―( ゚∀゚)「それは、人が自分がなぜこうなのだと悩むのと一緒だ。
まずは自分を受け入れる、そして自分のおっぱいを受け入れること。
大きくしようとするのはそれからだ」―

ああ、その通りですねジョルジュ先輩。

('A`)「受け入れる。早く姿を現せ…」




(#'A`)「【影法師】!!!」



75: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:43:14.76 ID:TK5dDeGy0
瞬間、それは現れた。
約二メートル、歪んだ笑い顔のようなドクロと白骨。
うす黒いぼろぼろの布を纏い、骨だけの手には人の身の丈ほどの日本刀を携えている。
体からは黒い霧のようなものが溢れている。
薄暗い光沢を放つ日本刀の切っ先を男に向けて、はっきりとした声で言う。

(#'A`)「殺してやる…」

男は未だ薄ら笑いを浮かべているが、顔には余裕が無くなっている。

(;´ー`)「テメーもソードかよ…だけど忘れるな、こっちにはお前の仲間が―」

(#'A`)「広がれ」

そう呟いた瞬間に、影法師の身に纏った布から影が溢れだす。
道場周辺全域に瞬く間に広がり、視界を全くの無にする。

( A )「切り裂け」

完全なる無の世界の中で、影法師が刀を上に上げ袈裟に切り裂いたのを感じた。



76: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:45:10.98 ID:TK5dDeGy0
「ぎゃああああああ!!!!!」

見えはしない、だけどその声で充分だ。
お前にはまだまだ足りないけどな!!

(#'A`)「まただ!影法師!!!」

返す刀で、今度は上に切り上げる。
これで奴のマッド・ピエロの両腕は胴体とは繋がっていない。
後はなぶり殺しにするだけだ。

(#'A`)「戻れ」

影を布にしまい、男に近づく。

(;´ー`)「ひぃぃぃいいい!!!」

転びながら腕を全く動かさずに、張って逃げていく。
なるほど、ソードを切り裂くとその部位が動かなくなるのか。
無様だな。調子に乗ってこの様か。
馬鹿が、お前はここで死ぬんだよ。
そういう運命なんだ。



78: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/01(日) 00:48:13.46 ID:TK5dDeGy0
(#'A`)「突き刺…」

そう言おうとした瞬間に体から力が抜けるのを感じる。
そして、強烈な頭痛。
分かる、これは負担だ。ソウルが頭を駆け巡っている負担が来やがったんだ。

(#'A`)「クソ…!」

男が逃げるのを確認した後に俺は倒れながら全員の無事を確認する。
良かった、全員生きてはいる。
それ以上の確認は、薄れる意識の中で指一本動かせなくなった俺には無理だった。

ふと、ブーンが視界に入る。
ありがとうブーン。お前のお陰で俺はソードになれた。
最後まで人を信じるその様が親父と重なって見えた瞬間に、
俺は自分を受け入れることが出来た。

俺がなれなかった親父に。

ありがとう、ブーン。

これでお前を

心起きなく憎めるよ


第三話「望まなかった姿と、望まなかった力」 終



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