('A`)が狭間で生きるようです

1: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 18:56:19.62 ID:Zss5ph8h0

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2: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 18:57:30.24 ID:Zss5ph8h0
第17話「プロローグ」







('A`)「な…!」

一体、何から驚けばいいのかすら分からなかった。
なんで、皆が林の中にいるのか。
ブーンがソードを操っていることか。
それとも、ニダーが貫かれていることか。

(#'A`)「ニダああああああああ!!!」

思わず叫ぶ。
ああ、何で何で何で。
何でお前がブーンに串刺しにされているんだ。

ドサ

<ヽ ∀ >「おや…ぶん…?」

倒れこむニダー。
その肩には風穴が空き、目には光が消えかけている。
それでも声は届いたようだった。



3: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 18:59:06.02 ID:Zss5ph8h0
<ヽ ∀ >「助けに…来てくれたニダか…」

そう呟くニダー。
違う、違うんだよ。
俺は死にに来たんだ。
助けになんて来ていないんだよ。

('A`)「ああ…もう大丈夫だよ…」

なのに口から出る言葉は出鱈目の励まし。
ちくしょう、何だってお前がこんなことに。

(;^ω^)「…ドクオ?」

ξ;゚听)ξ「…」

ブーン、お前がやったのか?
ツンがニダーのソードに捕らえられているのを見たよ。
ツン、お前がやらせたのか?
なあ、ブーン。
お前がやったのか!?



6: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:01:42.15 ID:Zss5ph8h0
('A`)「ブーン…」

一言呟く。
お前に会うのは久しぶりだな。
こんなことになるとは夢に思わなかったよ。
お前がソードに目覚めるなんて。
そして、あまつさえ俺の子分を殺しかけるなんて。

(;^ω^)「ドクオ…どういうことだお…。
そいつは女の子を…」

説明を求めるブーン。
ああ、お前もあれを見たのか。
説明をするのも面倒くさい。
お前が何をしたか、お前は後で後悔するんだろうな。

ξ;゚听)ξ「…」

呆けているツン。
その血にまみれた手はガラスで切ったのか。
ということはお前が向かっていったのか。
その持ち前の正義感で、女の子を救おうとしたのか。
さすがだよ、クソが。



7: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:02:32.57 ID:Zss5ph8h0
('A`)「大丈夫だ…こんな傷、なんてことは無い」

<ヽ ∀ >「ホルホル…」

ニダーに慰めの言葉をかけながらブーンを無視する。
お前にかまけている暇なんか無いんだ。
お前が行った結果の方が重要なんだ。
再会はもっとドラマティックに行いたかった。
だけど、その計画は難なく崩れてしまったな。

(;^ω^)「ドクオ…!」

俺を呼ぶブーン。
応えたい。
でも、どうやって?
自分の子分…ああ、子分だ。
俺の子分を殺したこいつに何て言えばいいんだよ。

*(;;)*「ニダーおにいちゃああん!!」

そんなことを思っていると、泣きながらニダーに駆け寄るヘリカル。
ヘリカル、お前の兄ちゃんはもうすぐいなくなるんだよ。



8: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:04:16.51 ID:Zss5ph8h0
(;^ω^)「な…!?」

ξ;゚听)ξ「え…?」

呆気にとられる二人。
状況が飲み込めていないだろうな。
それはそうだ。
この状況は誰が悪いのかな。

<ヽ ∀ >「ヘリ…カル…」

*(;;)*「ニダーおにいちゃああん!!」

ニダーが優しくヘリカルの頭を撫でる。
その手には自らの血がべっとりと付いている。
しかし、ヘリカルはその手を払おうとしない。
これが最後の抱擁だということを理解しているのだろうか。

*(;;)*「やだよう!! 死なないでよう!!」

子供が見ても分かる致命傷。
右肩に風穴が空いていて、おびただしい量の血液が流れている。
その傍らに潜むのは、民族衣装を着た小人。
ああ、これがブーンのソードか?
コロポックル、とでも言うのかな。
ブーン、貴様はレベル5か。



11: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:05:43.24 ID:Zss5ph8h0
(;^ω^)「え…? そんな…」

ξ;゚听)ξ「そんな…だって…」

少女に慕われているニダーを見て戸惑いの声を上げるブーン。
自分たちが間違っていたことに気づいている。
だけども認めたくない気持ち。
ああ、分かるよブーン。
勘違いで人を殺したなんて洒落にならないものな。

('A`)「ブーン、お前がやったのか…?」

そう思っているのに、俺の口は意地悪く開く。
誰がやったのかなんて明白なのに。
俺はブーンの心に枷をはめようとしている。
そう、枷をはめようとしているんだ。
こいつに、煌びやかなこいつに枷をはめようとしている。



13: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:06:36.32 ID:Zss5ph8h0
(;^ω^)「あ…う…それは…」

言葉を濁すブーン。
分かっているんだ、お前がやったってことなんて。
何せ、この目で見たからな。
これでお前も俺と同じ立ち位置か。
人殺し。
ようこそ、こちら側へ。

ξ;゚听)ξ「ち、違うのよ…ドクオ
ブーンは私を守ろうとして…」

ブーンの代わりにそう言うツン。
そうだよな、子供を守るという大義名分が無くなったものな。
後はお前を守ろうとしたぐらいしか理由が無いものな。
だけど、お前の性格なら殺人は認めないんじゃないのかな。
今は、そんなことはどうでもいいけど。

('A`)「そうか…」

納得した振りをする俺。
クソ、そんな言葉なんかで納得できるわけが無いだろう。
さっきまでは死のうとしていた。
だけど、今は憤りが激しくなってきた。
よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも。
よくも、俺の子分を殺してくれたものだな!!



14: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:07:57.86 ID:Zss5ph8h0
(#'A`)「そうか…!」

怒りを露にしながらもう一度呟く。
よくも、ニダーを…。
ニダーを?
子分を?

いや、違う。
殺されたのは俺だ。

理不尽な状況の中、それでも優しくなれる。
どの民族にも属さないままに、他者を守ることが出来る。
俺が成りたかった俺が殺されているんだよ!

(;^ω^)「ド…クオ…」

気圧されるブーン。
自分が何をしたかを理解したのだろう。
言葉が出ていない。
ああ、そんなものだよな。
人を殺すときなんてのはそんなものだよな。
相手の背景なんて関係無い。
自分に危機が迫って、力があればそりゃ殺すだろうさ。



17: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:09:15.56 ID:Zss5ph8h0
( ;ω;)「僕は…僕は…」

そして、泣き出すブーン。
泣く位ならやるなよ。
そう、心のどこかで呟くがすぐそれを否定する。
その過ちを犯したのは自分も同じなのだから。
でもな。

俺はお前にはそうなって欲しくなかったんだよ。

*(;;)*「あああああああああああ!!!」

泣き叫び続けるヘリカル。
うるさい、黙れ。
俺はお前にかまけている余裕は無いぞ。

<ヽ ∀ >「おや…ぶん…」

('A`)「どうした…!?」



18: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:10:17.17 ID:Zss5ph8h0
最低なことを考えていると、ニダーが俺を呼ぶ。
最後に何を俺に言う気だ。
おい、まさか。
まさかだろ。
やめてくれ、やめてくれ。
俺は今の今まで死のうとしていた人間だぞ。

<ヽ ∀ >「ヘリカルを…」

やめてくれ、やめてくれ。
やめてくれ!!!
俺はさっきまで死のうとしていた人間なんだよ!
お前に何か頼まれる資格なんざ、これっぽっちも無いんだよ!

<ヽ ∀ >「頼むニダ…」

('A`)「…」



19: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:11:49.08 ID:Zss5ph8h0
ああ、ああ、嗚呼。
やめてくれ…。
俺に生きる意味を与えないでくれ。
俺に生きる意味を与えないでくれ。
死にたかったんだ。
死にたかったんだ。
だけど、お前にそんなことを言われたら断れないじゃないか。
お前にそんなことを言われたら…。

*(;;)*「うわあああああ!!!!」

ヘリカル。
ニダー。
お前らが俺の新しい生きるための枷か。
そんな、そんな…。
それはお前にしか出来やしないよ。
俺になんて出来やしないよ。
俺がどんな人間か知っているのか?
俺がどんな人間か知っているのか?
俺は自分のことしか考えていない人間だぞ。

('A`)「任せろ…」

<ヽ ∀ >「ニダ…」



21: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:13:44.45 ID:Zss5ph8h0
ニダーの手を握り締めながら、そう言う。
偽善者だ、最低の偽善者だ。
くそ、くそ、くそ。
嫌だ嫌だ嫌だ。
自分が良いことをするなんて嫌だ。
誰かの意思を受け継ぐなんて真っ平ごめんだ。
俺の手は汚れているのに。
お前の想いを受け継ぐには汚れすぎているのに。

('A`)「ニダー…」

だけどもやらなくてはいけない。
ヘリカルを守らなくてはいけない。
平気で約束を違えるほど外道にもなれない。
卑怯者よりも偽善者を選ぶ、弱い心。
自分に反吐を吐けたらどれほどに楽だろうか。
覚悟を決めずに、流されることしか出来ないのか。
いつだって、「〜しなきゃいけない」としか言えない俺に、
運命はいつだって辛い選択しかさせない。

( ;ω;)「おっ…おおおおおおおおおお!!!!!!!」

泣き叫び始めたブーン。
自分のしたことについての後悔が押し寄せてきたのだろう。
覚えがあるよ、俺にも。
こんなことになるのならばと、俺も思ったさ。
だけど、これが現実なんだ。



22: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:14:56.00 ID:Zss5ph8h0

( ;ω;)「おおおおおお!!!! おおおおお!!!」

頭を抱えながら泣き叫ぶブーン。
それは堰を切ったように止まらない。
子供が癇癪を起こしたようだ。
見ていて哀れになるぐらいに。
ブーンのこんな姿を見るのは初めてだった。

('A`)「ブーン…」

ちくり、と胸が痛む。
良心が今更ながらに蠢いているのか?
元はと言えば俺がお前を守りに直ぐに行けば良かったのかな。
そんな、想いが心のどこかで囁く。
俺のせいか?
お前が殺したのは俺のせいか?



23: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:16:47.51 ID:Zss5ph8h0
ξ;凵G)ξ「ブーン…」

( ;ω;)「こんな…こんな…。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

いや、違う。
俺のせいなんて話があるはずがない。
ソード同盟やレジスタンスのせい。
そもそも誤解されることをしたこいつらが悪いのか。
いや、違う。
誰も悪くなんかないはずなのに。

( ;ω;)「おおおおおおおおおお!!!!!!!」

('A`)「…」

そうだよな、俺とお前は違うよな。
子供を守るため、ツンを守るために殺そうとしたお前とは違うよな。
ああ、分かっているよ。
お前は優しい男だもの。
ちくしょう、なんでこんなにも憎らしいんだ。



26: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:20:49.07 ID:Zss5ph8h0
もう一人の俺が語りかける。
そんな甘っちょろい貴様に何が分かる。
人を殺したくて、復讐したかった俺の何が分かる。
人を殺したことで俺と同じ立場で語りかけてくるのか?
そんなのは真っ平ごめんだ。

二人の俺が意見を交わす中、俺は自分の気持ちが分からくなっていた。
でも、一つだけはっきりしている。
お前を人殺しになんかさせやしない。
ブーン。
お前を俺と同じになんてさせてたまるか。

('A`)「ニダー…」

<ヽ ∀ >「おやぶん、ヘリカルを…」

分かった、分かったよ。
ヘリカルは守る。
いや、守ろうとはするからさ。
最後に、ひとつだけ俺の願いを聞いておくれ。



27: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:22:49.42 ID:Zss5ph8h0
('A`)「分かったから…今、楽にしてやる…」

違う、そんな言葉で濁したくは無いんだ。
今だけは嘘をつきたくないのに。

<ヽ ∀ >「…ニダ?」

('A`)「影法師…」

ニダーの手を握りながら、影法師を出す。
その手に持つものは闇に塗れた刀。
安心しろ、お前を消したりなんかしやしない。
ただ、その生きることを死ぬことに変えるだけだから。

*(;;)*「やだ! やだ! 何する気なの!?」

('A`)「どけ、ヘリカル…」

<ヽ ∀ >「…」

ニダーの胸に覆いかぶさりながらヘリカルが邪魔をする。
どいてくれ、ヘリカル。
間に合わなくなる。
早くしないと、ニダーが死ぬ。
その前に俺はニダーを殺さなくちゃならないんだよ。
だから、言わなくちゃ。



29: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:25:57.81 ID:Zss5ph8h0
('A`)「殺させてくれ…」

<ヽ ∀ >「…」

嘘偽りの無い言葉。
混濁する意識の中、ニダーは何を思ったのだろうか。
状況を察したのか。
それとも、ただ単に諦めたのか。
一度だけ俺の手を強く握り
そして
離す


*(;;)*「やああああああああ!!!!!」

ヘリカルを両手で抱える。
そして
ニダーの胸に
刃を突き立てる。

胸に垂直に刀を下ろしながらも、影法師はその笑みを変えなかった。

<ヽ ∀ >「−」

言葉じゃない息がニダーから漏れる。
奪った、その命を。
俺が、「俺」が奪った。



31: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:27:17.07 ID:Zss5ph8h0
*(;;)*「ああああああああああああ!!!!!」

('A`)「…」

両目から流れる涙。
腕の中で暴れるヘリカル。
正しいとは言えない選択。

ξ;凵G)ξ「ドクオ…?」

( ;ω;)「ド…ク…オ…」

呆ける二人。
虚無感に満ちた心。
それでも、生きなきゃならない。
嫌だ嫌だ嫌だ。
今更ながらにニダーを自分の手で殺したことに疑問を持つ。
こいつが、殺したことにすればいいのに。
何だって、自ら自分のちっぽけなプライドを守るために
俺は、自分の心を汚すんだ。

この世は闇じゃない。
時々、光が顔を覗かせる。
だからこそ絶望の顔がはっきりと見えるんだよ。



32: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:31:23.13 ID:Zss5ph8h0
('A`)「行くぞ…」

捻り出すように吐き出す言葉。

ξ;凵G)ξ「え…?」

( ;ω;)「…」

戸惑う二人。
この場で泣き崩れていたいのか。
ああ、俺もそうしたい。
俺だって死ぬつもりだったよ。
だけどな。

(#'A`)「行くぞ!」

行かなきゃいけないらしいんだよ。
流される理由が出来てしまったんだ。
生きる理由が出来てしまったんだ。
そして、それを心のどこかで安堵している卑怯な俺がいるんだよ。



35: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:32:27.51 ID:Zss5ph8h0
(#'A`)「先輩たちも早く!」

(;´・ω・`)「あ、ああ!」

川 ;゚ -゚)「分かった…」

( ゚∀゚)「…」

ヘリカルを両腕に抱えたまま、走り出す。
相変わらず暴れている。
そして、ひ弱なソードで俺を殴る。
痛くない。
なのに、ひどく痛む。

ブーンは未だに泣いている。
ツンも泣いている。
先輩たちは、どうしていいか分からない顔をしている。
俺だけが焦っている。

( A )「…」

どこへ向かう。
どくへ行く。
どこに行けば楽になれるのか。
そんなことばかりを考えていた。



38: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:33:58.30 ID:Zss5ph8h0
その答えに解は無い。
だから、自分の頭の中を変えなきゃいけない。
でも、そのための材料が無い。
殺して殺して殺して殺して。
俺の頭の中には赤いどろどろがいっぱいさ。

ソード同盟から逃げ切れるのか?
そういえばワカッテマスはどうしたのかな。
なんだかんだ言って渡辺が心配だ。
でも、何よりも早いとこここから逃げて自己嫌悪に陥りたい。
そして、それでもヘリカルのために生きなきゃと思いながら、号泣して自分を慰めるんだよ。
ああ、最低だ。

('A`)「!」

しかしながら、妄想の時間すらソード同盟はとらせてくれない。
俺たちは、このやたらと広いホロカード大学の出口に向かっていた。
走って走って走って。
その結果、その出口が炎の壁に囲まれていた。
なんてこった。



39: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:34:51.84 ID:Zss5ph8h0
(;´・ω・`)「こんな…」

川 ;゚ -゚)「まさか…」

( ゚∀゚)「逃げ場が無いってことですか…」

口を開くことが出来る三人が、そう言う。
俺のソードなら消せるかな。
しかしながら、レベル5の力に叶うものなのかな。

('A`)「消すか…」」

そう、呟いた瞬間に待てよと思った。
この炎もソードの一種。
ということは、これを消したら相手に気づかれる。
俺の影法師の影と同じようなものかもしれない。
消せないな。

( ;ω;)「ドクオ…僕がやるお…!」

泣きながらそう言うブーン。
ああ、勘違いをありがとう。
だけど、今はお前の力は何一つ必要としていないんだ。



42: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:37:00.99 ID:Zss5ph8h0
('A`)「やめろ…! 相手に気づかれる」

( ;ω;)「なら、相手もやっつけるお!」

('A`)「な…!?」

どうやら、自暴自棄になっているブーン。
まあ、それも一興だ。
圧倒的な力に屈する。
元々の目的がそれだった。
その結果ヘリカルが死んでも、ニダーは文句を…
言わないわけねえだろ、ちくしょう!

('A`)「やめろ!」

( ;ω;)「コロポックル!!」

ブーンが叫んだ。
民族衣装を着た小人。
まるで、炎の場所にだけに吹雪が降り注ぐかのような冷気。
なんて、力だ。
俺のソードとは桁違いの強さだ。
さすがだよ。



43: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:37:54.94 ID:Zss5ph8h0
(;´・ω・`)「すごい…」

( ゚∀゚)「…」

一瞬にして、炎の壁を凍らせた。
そして、氷柱をぶつけて砕く。
あれほどに、絶望的だった壁が口を開いている。
これなら逃げれるかな。

('A`)「行くか…」

駆け出そうとした。
その壁に向かって走り出そうとした。
希望に向かって一直線。
だけど、そうは問屋が卸さない。

ドズン!

空中から一直線に人が降りてきた。
誰かは分かる。
ソード同盟の一人だ。
とうとうのお出ましか。
いざ、対峙すると恐怖も何も無い。
ただただ、頭が真っ白だ。



44: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:40:18.22 ID:Zss5ph8h0
( ,,゚Д゚) 「やれやれ…」

現れたのは、体格が良く無精ひげを生やした男。
面倒くさそうにこの場に現れた。
一瞬で、空から。
それも一瞬で。
どうやって来たのかも想像がつかないよ。
クソみたいに、圧倒的な力だな。

( ,,゚Д゚) 「まさか、あの壁を壊せる奴がいたとはな」

少しばかりの驚きを表す男。
本当に少しばかり。

(;´・ω・`)「待ってください! 僕等はレジスタンスじゃありません!」

ショボン先輩が、そう言う。
ああ、確かにあなたはレジスタンスじゃありませんよね。
でも、その一言は俺とは袂を別つ言葉だと知っていますか。
僕はレジスタンスなんですよ。



46: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:41:44.78 ID:Zss5ph8h0
( ,,゚Д゚) 「だろうな、お前からはソウルを感じないよ」

男がそう言う。
そう言うのも分かるものなのか。
ああ、でも俺も分かるよな。
ソードを持たない人間は、なんだか弱弱しい

( ,,゚Д゚) 「だけどな…」

( ,,゚Д゚) 「そこの三人は違うだろ?」

そう言って、男は俺とブーン、そして俺の腕の中のヘリカルを見る。
バレた。
出来ることなら、ショボン先輩の口車に乗ってこの場を脱出したかった。
まあ、そううまくいかないのは分かってはいるんだけどね。

( ,,゚Д゚) 「お前らはレジスタンスか?」

その質問はやめてくれ。
どちらにも嘘になるんだよ。
俺はレジスタンスだ。
だけど、レジスタンスのようにソード同盟に逆らう気は無いんだよ。
俺は、ただただお前等のせいでこの状況になったって喚きたいだけなんだ。



49: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:45:47.97 ID:Zss5ph8h0
('A`)「…」

( ;ω;)「違うお! 僕はレジスタンスじゃないお!」

ブーンはそう答えた。
仲間、ってなんだろうな。
追い詰められたときの答えが本音だと言うよな。

( ,,゚Д゚) 「へえ…、違うのか
じゃあ、何でソードを持っているんだ?」

さすがに背景までは分からないのか。
それはそうか、ワカッテマスじゃないんだからな。
面倒くさい。

('A`)「レジスタンスは俺だけだ。
そいつは、さっきソードに目覚めたばかりだよ」

( ,,゚Д゚) 「ほう…」

あくまで冷静な男。
その目は半信半疑といったところか。
半分でも信じてくれれば儲けものだ。



52: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:46:42.77 ID:Zss5ph8h0
( ,,゚Д゚) 「じゃあ、お前を滅すれば良いわけだな」

('A`)「そう簡単にやられるつもりはないんだけどな」

凄いな、ハッタリがすらすらと出る。
人間追い込まれれば、何とかなるものだ。

( ;ω;)「ドクオをやらせはしないお!」

これから、どうやって逃げようか考えていたときにブーンがそう言った。
おいおい、お前の行動は分からない。
だけど、その気持ちだけは受け取っておくよ。

( ,,゚Д゚) 「訳が分からないな…
だが、そういうことなら二人とも滅するだけだ」

( ;ω;)「やれるものならやってみるお!」

ヒートアップする二人。
相変わらず部外者の俺。
ああ、ああ。
なんだかまた空しくなってきたぜ。



54: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:48:34.17 ID:Zss5ph8h0

ギュ

*(;;)*「…」

そう思っていると、ヘリカルが俺の服を掴んだ。
何かを察したのか、それともただ単に怖いのか。
だけど、俺はこの子を守らなければいけないんだよな。
さっき起きたことなのに、もう忘れていたよ。
だけど、思い出した。
俺の運命はもう決まっているはずったのにね。

('A`)「クー先輩」

川 ゚ -゚)「なんだ…」

この状況で一番落ち着いているクー先輩。
その人に、ヘリカルを預ける。
さあ戦いだ、戦いだ。
俺が好きな殺し合いだ。
俺が好きな殺され合いだ。

('A`)「頼みます」

川 ゚ -゚)「分かった…」



58: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :2009/05/12(火) 19:50:55.33 ID:Zss5ph8h0
ヘリカルをクー先輩に預ける。
俺が死んでも、この人なら育てるだろう。
そういう言葉を今、吐いたから。
だけどな、ニダー。
お前の頼みは出来るだけ、俺が守ろうとはするよ。

( ,,゚Д゚) 「行くぞ」

( ;ω;)「来いお!」

二人が少年漫画のように、熱い言葉を交わしている。
この中に混ざるのか。
レベル5同士の戦いに
俺が混ざるのか。
中途半端だな。
だけど、それでいいよ。

('A`)「いくか…」

二人に聞こえないように呟く。
俺も参戦するよ。
この戦いに。
何も持たないまま。

さあ、行くか。


第17話「プロローグ」 終



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