('A`)が狭間で生きるようです
- 57: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:39:33.35 ID:GPH/+m570
- え!? ドクオ本当にリア充になったの!?
驚きのあまり、皆の声が揃ってしまった。
さっきまで、怒っていたツンとクー先輩までも呆気にとられている。
从;'ー'从「なになに〜?」
慌てている渡辺さん。
いやいや、慌てたいのはこっちですよ。
川 ;゚ -゚)「いや〜、なんかびっくりしちゃったな」
ξ;゚听)ξ「本当ですね…」
(;^ω^)「奇跡ってあるんですおね…」
ドクオに対して容赦なの無い言葉を浴びせる僕たち。
だけど、本当に驚いた。
ドクオがこんなかわいい人と…。
まあ、僕らを殺しかけた人なんですけどね。
从;'ー'从「ドッくんってそういうキャラだったんだ…」
渡辺さんもある程度状況を察したようだった。
しかしながら、渡辺さん。
そもそもあなたは本当に何をしにここに来たんですか?
- 59: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:41:36.57 ID:GPH/+m570
- ( ^ω^)「あの〜…本当に渡辺さんは何をしに来たんですかお?」
从'ー'从「え〜? 本当にドッくんの友達を見に来ただけだよ〜」
本当にそれだけなんだ…。
てっきり、ドクオの近況でも聞かせてもらえるとでも思ったのに。
川 ゚ -゚)「ほう、それで感想は?」
从'ー'从「感想〜?」
あくまで、物怖じしないクー先輩はやはりさすがだと思う。
僕たちを見た感想を本人に聞くなんてなかなかできやしない。
質問を投げかけられた渡辺さん自身きょとんとしている。
从'ー'从「え〜とね」
言葉を捜している渡辺さん。
本当にドクオが好きそうなタイプだなあ。
ドクオの能力って二次元から嫁を出す能力だっけ?
从'ー'从「がっかりしたかな〜」
- 61: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:42:54.77 ID:GPH/+m570
- え?
そんなことを考えていると、渡辺さんが辛辣な一言を言い放った。
がっかり。
その意味するところが分からない。
なんで、僕らがあなたにがっかりされなきゃいけないんですか。
川 #゚ -゚)「どういう意味だ…!」
その言葉に一番に反応したのがクー先輩だった。
从'ー'从「だって、なんでドッくんがこんな人たちを守ろうとしたのか分からないもの〜」
川 #゚ -゚)「貴様に何が分かる!」
激昂するクー先輩。
僕だって今の言葉には少しばかりの怒りが湧き上がる。
そもそも、僕たちを殺そうとした渡辺さんになんで「こんな人」と言われなきゃいけないんだ。
( ^ω^)「なんでですかお」
僕も渡辺さんに問いかける。
ドクオの友達であることを否定されるのは正直癪に障る。
僕らだって、ドクオのことを思っているのに。
- 63: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:45:22.33 ID:GPH/+m570
- 从'ー'从「え〜? 窓の外を見てみなよ」
( ^ω^)「窓の外…?」
そう言われて五人全員が立ち上がり、窓に向かう。
その窓から見える光景に僕らは絶句した。
「いやあああああああ!!!!!!!!!!」
「ウェ〜ハッハ! 待つニダ〜!!」
少女が泣き叫びながら走っている。
その後ろでニタニタ笑いながら走る男から逃げるように。
(;^ω^)「おっ…」
川 #゚ -゚)「クズが…」
ξ#゚听)ξ「…!!」
(;´・ω・`)「ひどい…」
(;゚∀゚)「…」
全員が息を呑む。
この光景が何を表しているかをみんな察している。
- 65: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:47:21.82 ID:GPH/+m570
- 「捕まえたニダ〜! さあ、お部屋でお仕置きニダ〜!」
「やだあああああああああ!!!!!!」
少女が捕まり、男がその少女を抱える。
周りにいるレジスタンスもやれやれまたか、といった顔をしている。
非常識が常識な世界。
それがこのちっぽけな部屋の外には広がっていた。
(;^ω^)「こんな、ひどいお…」
从'ー'从「ひどいよね〜。 でも、ここではこれが当たり前だよ〜」
ξ#゚听)ξ「当たり前だなんて間違っているわよ!」
渡辺さんの言葉に反旗を翻すツン。
僕も、この光景が当たり前だなんて思えない。
从'ー'从「間違っている〜?」
ξ#゚听)ξ「当たり前じゃない!
あんな小さい子に…あんな小さい子が犠牲になるなって間違っているに決まっているわ!」
从'ー'从「…」
- 67: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:48:11.79 ID:GPH/+m570
- ツンの言葉に黙り込む渡辺さん。
だけど、ツンの言葉に感化されたものじゃない。
何か哀れむかのような目にすら見える。
从'ー'从「でも、あなたたちが今笑っていられるのはドッくんがその間違った場所にいるからだよ〜?」
川 #゚ -゚)「そんなこと言われなくても分かっている!」
渡辺さんの言葉に反論をする女性陣。
そうだ、分かっている。
ドクオがその中にいるのは僕たちのせい。
そんなこと分かっている。
そのことについては、僕らは話し合って乗り越えたんだ!
从'ー'从「分かっているのに、そうやって笑っていられるんだ…」
少しばかり呆れたような顔でそう言う渡辺さん。
( ^ω^)「笑いあうことが悪いことなのですかお」
(´・ω・`)「僕たちはドクオの犠牲の上に笑いあっている。確かにそれはそうだ。
だけど、僕らはドクオを仲間じゃないと思ったことなど無い。
むしろ、一緒に泥をすする覚悟だって出来ている」
- 68: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:49:10.66 ID:GPH/+m570
- 女性陣だけじゃなく、男性陣も反論する。
女性陣ほど感情的には成れない分、理性的に反論する。
从'ー'从「そういうことじゃなくてね…」
しかし、渡辺さんは言葉を返してきた。
僕たちがドクオを仲間と認めていないと思ったわけじゃない?
僕たちが覚悟を決めていないと思ったわけじゃない?
渡辺さんが何を考えているのか、分からなくなった。
川 #゚ -゚)「どういうことだ、言ってみろ」
煮え切らない渡辺さんの態度にクー先輩が怒っている。
でも、僕も聞きたい。
なんで、僕らはがっかりされなきゃいけないのか。
ドクオの友達でいることをがっかりされなきゃいけないのか。
从'ー'从「ドッくんは笑わないよ」
川 #゚ -゚)「…?」
ξ#゚听)ξ「…?」
( ^ω^)「…?」
(´・ω・`)「…?」
( ゚∀゚)「…」
- 70: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:51:27.07 ID:GPH/+m570
- 一瞬全員が黙った。
ドクオが笑わない?
それは悲しいことだけど、だけどなんでそれが理由になるんですか。
从'ー'从「ドッくんも皆と同じだよ、この状況が間違っていると思っている。
だけど、ドッくんはそれを全部受け止めている。」
从'ー'从「だから、辛くて辛くてどんどん自分を追い詰めている。
壊れそうだよ、今のドッくんは」
从'ー'从「だけどね、ドッくんはそれでも私を傷つけようとはしない」
从'ー'从「だから、ドッくんの友達もそういう人だと思っていた。
だけど、実際はこの状況を他人のせいにしているだけ。
自分たちには関係ないものと思っている。」
从'ー'从「だから、笑えるんでしょ?」
从'ー'从「自分たちが弱いから、何も出来ないから自分たちは傷つけていないと思っているでしょ?
でも、ドッくんはそんなあなたたちのせいで今にも壊れそうなんだよ」
そう言った渡辺さん。
反論したいことはある。
だけど、うまく言葉が出てこない。
ドクオが苦しんでいる、僕らのために。
だけど…ちくしょう。
僕たちだって、ドクオのことは思っているのに。
- 71: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:52:26.70 ID:GPH/+m570
- ( ^ω^)「…僕らが自己嫌悪に苛まされていれば満足だって言うんですかお…」
それが僕の精一杯の言葉だった。
だけど、この言葉が正しいとは僕も思えない。
当たり前だ、ただの皮肉なのだから。
从'ー'从「そういうことね。
結局、あなたたちが笑っているのが気に食わないだけだもの」
その皮肉をあっさりと肯定する渡辺さん。
だめだ、僕にはもう否定すら出来ない。
川 #゚ -゚)「ずいぶんと、ドクオが気に入ったようだな…」
クー先輩が渡辺さんにそう言った。
確かに、それは僕も気になっていた。
たかだか、会って数日。
それも一時は殺されかけたのに、なんで渡辺さんはこんなにドクオのことを思うのだろう。
从'ー'从「当たり前だよ」
川 #゚ -゚)「なに?」
从'ー'从「ドッくんは、私を殺さない、犯さない。
それが出来る力を持っているのに。
私にはそれだけで充分なの。」
- 72: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:54:22.18 ID:GPH/+m570
- 川 ゚ -゚)「…」
クー先輩が黙る。
渡辺さんの身の上を考えたのだろう。
僕も黙る。
渡辺さんの身の上を考えてしまったから。
从'ー'从「それだけだよ、ごめんね。
多分、私はあなたたちに嫉妬しているだけだね。
あなたたちがドッくんを大切にしているのは分かるよ。」
从'ー'从「それじゃあ」
そう言って渡辺さんは出て行った。
何がしたかったのだろう。
何が言いたかったのだろう。
僕たちは渡辺さんの心の内がよく分からなかった。
( ^ω^)「なんだか、頭がこんがらがってきましたお…」
(´・ω・`)「ああ、僕もだ。だけど、確かに渡辺さんが言ったことは一理あるかもな」
川 ゚ -゚)「悔しいがな…。
弱さを言い訳に、簡単に笑っていたのは事実だ」
ξ゚听)ξ「ドクオ…今頃何をしているんでしょうね…」
- 74: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:55:54.55 ID:GPH/+m570
- 僕たちはそう言って、自分たちのふがいなさを反省していた。
ドクオが苦しんでいる。
でも、何も出来ない。
それなのに笑っていた。それは事実なのだから。
( ゚∀゚)「いやいや、待ってくださいよ」
だけど、そんな空気に待ったを入れたのがジョルジュ先輩だった。
( ゚∀゚)「笑うのが悪いだなんて、おかしいんですよ」
(´・ω・`)「ジョルジュ、違うだろ。
ドクオが苦しんでいるのに笑っているのが問題なんだろう?」
( ゚∀゚)「違いますよ、ショボン先輩。」
(´・ω・`)「どういうことだ?」
ジョルジュ先輩が何を言おうとしているのか。
僕には正直分からなかった。
でも、今の意見を否定してくれるのは僕には正直ありがたかった。
( ゚∀゚)「ドクオは俺たちを守った。
だから、俺たちは笑ってなきゃいけないんですよ。
ドクオが守ったものを俺たち自身の手で壊すのはおかしいんですよ」
(´・ω・`)「だけどな、ジョルジュ…
ドクオの今の現状を知ってなお笑えるか?」
- 78: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:57:57.97 ID:GPH/+m570
- ( ゚∀゚)「だから…それを認めた上で笑うんですよ!」
(´・ω・`)「…!?」
ジョルジュ先輩がひときわ大きな声でそう言った。
だから、笑う。
その意味するところを僕はまだ分からなかった。
( ゚∀゚)「ドクオの苦しみは分かります。
でも、同時にドクオが俺たちを守ろうとしたことを認めるんです。
そうしたら、選択肢は一つじゃないですか」
( ゚∀゚)「俺たちは笑って、あいつを受け入れる。
俺たちが笑っていなかったら、余計にドクオが苦しみますよ」
(´・ω・`)「…」
川 ゚ -゚)「…」
ξ゚听)ξ「…」
( ^ω^)「…」
全員が黙る。
ジョルジュ先輩がまじめなことを言うのすら珍しいのに。
こんな仲間思いなところを前面に押し出すなんて。
- 80: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 20:59:29.66 ID:GPH/+m570
- (´・ω・`)「…まったく、何がなんだかさっぱりだよ」
川 ゚ -゚)「…ああ、本当だな」
ξ゚听)ξ「だけど…ドクオが守ってくれた命ですものね」
( ^ω^)「ブーンたちが元気に生きなきゃ申し訳ないですお!」
( ゚∀゚)「そういうことですよね」
僕たちの中で新たな価値観が芽生えつつあった。
ドクオの殺人は認めない。
だけど、ドクオは認める。
ドクオが守ってくれた命だから笑う。
ドクオが苦しんでいることを知りながらも。
色々な狭間に立たされて僕たちは今ここにいる。
だけども、それでも僕たちは笑う。
悶々とした気持ちのままに僕たちはその日は眠りについた。
次の日に惨劇が待っていることも知らずに。
- 82: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:01:47.64 ID:GPH/+m570
- ( ^ω^)「おはようございますだお」
(´・ω・`)「ああ、おはよう」
ξ゚听)ξ「おはようございます」
川 ゚ -゚)「おはよう」
( ゚∀゚)「おっぱいよう!」
朝になり全員が目を覚ます。
いつも通りの日常が始まるはずだった。
不自由に囲まれた生活。
その繰り返しが始まるだけのはずだったのに。
( ^ω^)「今日は朝ごはんが遅いですおね」
ξ゚听)ξ「そうね」
(´・ω・`)「まあ、そんな時もあるだろうさ」
お腹を鳴らしながら、朝ごはんを待つ。
だけども、来る気配は一向に無い。
おかしいな、何かあったのかな。
- 84: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:03:28.75 ID:GPH/+m570
- ドカン
その「何か」が不意に訪れた。
爆音。
安全の終わりを告げる鐘。
そして、絶望を呼び覚ます。
(;^ω^)「おっお! なんだお!」
(;´・ω・`)「外だ!」
慌てふためく僕。
状況を冷静に判断しようとするショボン先輩。
その声に全員が外を見る。
ξ;゚听)ξ「何…あれ…」
(;゚∀゚)「火柱…?」
川;゚ -゚)「にしては大きすぎるだろう…」
広がっていた光景。
それは、火柱と呼ぶには大きすぎる火炎の帯。
それが、地面か生えては消えていく光景。
なんだ、あれは。
慌てる光景の中に思い浮かぶ答えは一つだけ。
この場所は、危険になってしまった。
- 86: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:04:52.98 ID:GPH/+m570
- (;´・ω・`)「落ち着け! 多分、ソード同盟だ!」
ショボン先輩がそう言う。
ソード同盟。そういえばそうだ。
このレジスタンスに対抗できる勢力といえばそれしか思い浮かばない。
だけど、こんなにも強力なんて思いもしなかった。
(;^ω^)「てことは、僕たちには危害は無いはずですお…?」
川;゚ -゚)「理屈の上ではな…。しかし、あの力。
巻き添えを食わないとは言えない…」
ξ;゚听)ξ「どうしましょう、逃げるべきでしょうか…!」
混乱していく意見。
逃げる、留まる。
命がけの選択肢を迫られている。
(;´・ω・`)「下手に動くのは逆に危険だ…
だが、あの火柱がこっちにきたら最悪逃げるしか…」
- 88: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:06:39.85 ID:GPH/+m570
- ドカン
ショボン先輩がそういい掛けた瞬間に、また火柱が落ちた。
それもさっきよりも近くに。
パリン
その余波だろうか。
窓ガラスが割れた。
混乱はさらに広がっていく。
(;゚∀゚)「逃げましょう!
少なくとも、ここにいたら多分俺らは死にますよ!」
(;´・ω・`)「ああ! それしかないようだ!」
ξ;゚听)ξ「でも、逃げるってどこに!?」
川;゚ -゚)「裏の林ででもいいだろう!」
(;^ω^)「とにかく急ぐお!」
僕たちは、すぐさま外に飛び出した。
駆ける駆ける。
運動不足にも関わらず、足早に前へ進む。
アドレナリンでも出ているのだろうか。
とにかく、ひたすらに僕らは走っていた。
- 89: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:09:49.26 ID:GPH/+m570
- ξ;゚听)ξ「はあはあ…!!」
(;´・ω・`)「急げ!!」
川;゚ -゚)「急かすな!」
ショボン先輩が先頭に立ち、ツンとクー先輩が続く。
僕とジョルジュ先輩は、最後尾。
怖いけれども、誰かを欠くことの方が怖かった。
(;^ω^)「おっお!!」
(;゚∀゚)「はあ…!!」
とにかく裏の林まで逃げる僕たち。
ガラスの破片がここまで落ちてきている。
どれだけ、強力なソードなのだろう。
混乱しながら、とにかく駆ける。
(;´・ω・`)「とりあえず、ここで様子を見よう!」
林について茂みに隠れる。
幸い、次の火柱はまだ立っていない。
ひと時の静寂の中に身を任せる。
がくがくと震える体、笑う膝。
恐怖に満ちる顔。
どうしようもない絶望感と、僅かな期待だけが体を支配する、
- 92: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:13:05.65 ID:GPH/+m570
- (;^ω^)「ドクオ…」
思わず呟く。
助けてくれ、と心の中で願ってしまう。
身勝手な思いかもしれないけども、今はドクオに頼りたかった。
ξ;゚听)ξ「…」
川;゚ -゚)「…」
(;゚∀゚)「…」
(;´・ω・`)「…」
(;^ω^)「…」
茂みに隠れて時を待つ。
もう一生分の緊張感を強いられている。
実際には五分も経っていないのだろうに。
油断していた。
何とか成ると思っていた。
僕たちは弱いままだったのに。
渡辺さんの言う通りだ。
何で、僕たちは今まで無神経に笑っていられたんだろう。
- 93: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:14:46.92 ID:GPH/+m570
- ξ;゚听)ξ「…」
川;゚ -゚)「…」
(;゚∀゚)「…」
(;´・ω・`)「…」
(;^ω^)「…」
黙々と時を刻む。
ただ、ただ、耐えるだけ。
草食動物のように。
絶対的な力の前に文字通り平伏している。
ξ;゚听)ξ「…」
川;゚ -゚)「…」
(;゚∀゚)「…」
(;´・ω・`)「…」
(;^ω^)「…」
この状況がいつまで続くのだろう。
早く、解決して欲しい。
自分が無力であることを改めて感じていた。
その時に、右手から悲鳴が聞こえてきた。
- 95: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:15:50.71 ID:GPH/+m570
- 「いやああああああ!!!!!!!!」
昨日、聞いた声。
聞き覚えのある声。
まさか、まさか、こんな時に。
*(;;)*「いやあああああああ!!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「大人しくするニダ!」
あの男だ。
こんな時にまで、何をしているんだ。
こんな時にまで、あんたは何をしているんだ!
ξ; )ξ「…」
川;゚ -゚)「…」
(;゚∀゚)「…」
(;´・ω・`)「…」
(;^ω^)「…」
全員が無言だった。
あの子を助ける?
まさか、そんなことが出来るはずが無い。
だけど、この状況を見逃すのか?
- 97: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:17:45.59 ID:GPH/+m570
- *(;;)*「むぐう!」
<ヽ;`∀´>「ほら、大人しくこっちに来るニダ!」
男が女の子の口を押さえて、どこかに連れて行こうとする。
「義を見てせざるは勇無きなり」
ああ、なんだって今こんな言葉を思い浮かぶんだ。
あの男はソードだ。
僕はソードじゃない。
だけど、隙を突くことが出来たなら…。
震える膝に力を入れようとする。
ξ; )ξ「…」
川;゚ -゚)「…」
(;゚∀゚)「…」
(;´・ω・`)「…」
(;^ω^)「…」
誰も動こうとはしない。
当たり前だ。
あの男のソードで殺されるかもしれない。
僕らが出来ることなんて無いはずなんだ。
そのはずなのに、なんで僕は何かしようとしているんだ。
- 98: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:19:24.97 ID:GPH/+m570
- *(;;)*「ぐう! うぐう!」
<ヽ;`∀´>「早く行くニダ!」
男が無理やり女の子を連れて行く。
ああ、だめだ。
あと少しなのに体が動かない。
ξ; )ξ「許せない…」
僕が、何も出来ないときにツンはそう呟いた。
嫌な予感がした。
これから起きることが予想できた。
そして、僕がこれからすべきことも。
ξ#゚听)ξ「やめなさい!!」
ツンが茂みから飛び出した。
その手に割れたガラスの破片を手にしながら。
あのガラスで対抗する気なのか。
ツン、やめてくれ。
(;^ω^)「ツン!!!」
僕は叫ぶ。
だけど、まだ体は動かない。
ああ、やめてくれ。
ツン!
- 101: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:20:20.02 ID:GPH/+m570
- ξ#゚听)ξ「うわああああああ!!!!」
叫びながら男に向かっていくツン。
駄目だ、駄目だよ。
(;^ω^)「ツンンンンン!!!!」
その時になって僕の体はようやく動いた。
だけど、ツンはもう男の目の前にまで近づいている。
<ヽ;`∀´>「な!?」
男が慌てた様子でこちらを見る。
目の前には、ガラスをナイフのように向けているツン。
男がとる行動は一つだった。
<ヽ;`∀´>「テポドン三号!」
ミサイルに手足が生えたようなソードが姿を現した。
体長約3メートル。
そして、その手がツンを捕まえた。
ξ;゚听)ξ「きゃああああ!!!!」
ガラスで切れたのだろうか。
その手を血に染めたツンが宙ぶらりんになっている。
ツンが危ない。
- 105: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:22:09.14 ID:GPH/+m570
- ( #^ω^)「ツン!!」
<ヽ;`∀´>「なんなんニダ、お前らは!!」
男がそう言う。
僕たちを明らかな邪魔者として見ている。
ちくしょう、全部お前らのせいなのに。
お前が、こんなことをしなければ僕たちだって何もしなかったのに!
( #^ω^)「ツンを離すお!」
<ヽ;`∀´>「うるさいニダ!!」
男がそう言う。
僕たちを明らかな邪魔者として見ている。
ちくしょう、なんで僕はこんなにも無力なんだ…。
ツンを傷つけるあの男がこんなにも憎いのに!
ドクン
( #^ω^)「…お?」
そう思ったときに、胸が高鳴った。
ツンを離せと思ったとき?
違う、あの男を呪ったときだ。
- 106: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:23:17.97 ID:GPH/+m570
- ドクン
( #^ω^)「お…!?」
体に力が満ちていく。
少しだけれども、この感覚には覚えがある。
なぜだか、明日の天気が雪だと分かったときの感覚。
まるで、自然が僕に語りかけてくるかのような感覚。
ドクン
( #^ω^)「…」
あの時、実は微かに感じていた。
まさか自分にもソードの素質があるんじゃないかと。
だけど、僕は逃げていた。
ドクン
( #^ω^)「…」
ドクオが守ってくれているからと。
何かの勘違いでは無いかと。
だけども今は感じる。
僕のソードが僕に語りかけるのを。
- 109: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:24:57.97 ID:GPH/+m570
- ドクン
( #^ω^)「お…!!!」
自然が語りかけてくる。
このホロカードの土地が語りかけてくる。
それど同時に、人の想いみたいなものが流れ込んでくる。
幾重にも重ねられていた人の想いが。
これが…ソウル?
ドクン
( #^ω^)「これは…」
その根底にあるもの…これは、呪う気持ち?
聞いたことがある。
このホロカードの精霊、その正体はアイヌ民族に土地を奪われた少数民族だと。
ドクン
( #^ω^)「それでもツンを救えるなら…」
その少数民族がいつしか伝承の中で精霊と化した。
その少数民族の想い、語り継いできた人の想い。
そして、このホロカードの自然と溶け合ったソウル…。
感覚が教えてくれる。
これが、精霊の力だと。
- 111: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:27:07.59 ID:GPH/+m570
- ドクン
( #^ω^)「姿を表すお!」
力が手に入る。
ツンを救える。
僕がソードになることによって。
それがどういう意味なのかは分からない。
だけど、今はそれをするしかない。
ドクン
( #^ω^)「コロポックル!!」
瞬間、民族衣装を着た小人が現れる。
憂いを帯びた目を男に向けながら。
まるでこの世の無常を嘆くかのように。
見た目には非力そうなこの小人。
しかし、感じるソウルは男のソードなど問題にならなかった。
<ヽ;`∀´>「な…!? レベル5!?」
男が驚いている。
僕も驚いている。
小人は驚いている僕たち二人を尻目に、手をかざす。
- 114: ('A`)が狭間で生きるようです ◆9hxXX2kPHI :投稿日: 2009/05/09(土) 21:29:10.17 ID:GPH/+m570
- その瞬間、つららと呼ぶには太すぎる氷の柱が男を突き刺した。
<ヽ; ∀ >「ニダああああ!?」
その氷柱は、男の右肩を貫いていた。
即死ではない。
しゃべる余裕はあるだろう。
だけど、あの傷は…致命傷だろう。
嗚呼。
ツンを救える。
だけど、僕は人を殺す。
人を殺してしまう。
ツンが最も嫌う、人を殺した男になってしまう。
僕らはどうなってしまうのだろう。
僕はどうなってしまうのだろう。
そう思った心の奥底で、これで僕もドクオと同じ場所に立てるのだな。
と、誰かが呟いた。
ガサ、と音を立てて茂みが揺れたのは丁度その時だった。
第16話「切ない未来」sideブーン 終
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