( ^ω^)それでも僕は変わらないようです
- 5: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:05:01.22 ID:4WJGsA160
第四話「変わる想い、それぞれの思惑」
- 7: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:06:53.56 ID:4WJGsA160
逃げたい。と
お前がそう望むのなら、好きにすればいい。
だが、逃げてもどうにもならない。そんなの分かってるはずだろ?
『お前自身』がそう言ってるんだからな。
――俺は、お前を止めるよ。
誰よりも、お前を理解する俺が。
- 8: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:07:55.20 ID:4WJGsA160
―――――――……・・・・・・ ・ ・ ・ ・
( ^ω^)「…ここは、何処なんですかお?」
僕――内藤ホライゾンは、どこまで続くとも知れない階段を上り続けていた。
壁や天井は漆黒の石で造られていて、手で触れるとひんやりとした石独特の冷たさが伝わってくる。
( <●><●>)「そうですね…さっきまでいた世界の裏といったところでしょうか。
舞台のセットの裏側って言えば分かりやすいですかね」
(;^ω^)「なんかそれだと世界が張りぼてなイメージになりますお」
そんなものですよ、と呟いて少年は歩を進める。
僕はそれについていく形で黒い段を踏みしめていく。
先ほど
――とは言ってもどれだけ経ったのかは分からないけれど。
この“しもべ”についていく事を決意すると、すぐに例の白い光に包まれた。
いつものような、自分が溶けて再構成されるような気分。
すると、いつの間にかこの階段今現在いる地点のはるか下、つまりは一段目に立っていたというわけだ。
( <●><●>)「ここは、世界ではない世界。だから貴方の姿も戻っている。お気づきでしょう?」
そうなのだ。
”しもべ”の言うことはよくわからないが、いつの間にか僕は「流石 兄者」から「内藤 ホライゾン」へと戻っていたのだ。
- 10: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:09:44.31 ID:4WJGsA160
( ^ω^)「…『兄者さん』は今、さっきの世界にはいないのですかお?」
( <●><●>)「そうなりますね。貴方が一日演じるはずだった『兄者』はいなくなります。
しかし他の人が代わりになることはありません。皆さんはすでに違う人間になってるわけですから」
( ^ω^)「…その場合どうなるんですかお?」
( <●><●>)「どうなる、とは?」
( ^ω^)「家族とか、仕事とか、周りに与える影響ですお」
( <●><●>)「…行方不明扱いになるんだと思います。主は気のまわる人間ではないですし」
行方不明。
今の僕も、元の世界では行方不明になっているんだろうか。
親にも何も言えずに来てしまった。
- 11: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:13:42.97 ID:4WJGsA160
( ^ω^)「…可哀想ですおね、兄者さんの家族も、兄者さんも」
( <●><●>)「…どういう事ですか?」
( ^ω^)「…他人が送っていたとはいえ、一人の人生が僕の手で終わるんですお。
家族だってきっと心配してますお。だから…」
ついつい自分を重ね合わせてしまう。
僕の悪い癖だ。
頭の悪い僕にどうして他人の事なんかわかるだろう。
たとえ、僕がその人になったとしても。
( <●><●>)「…貴方は、優しいんですね」
(;^ω^)「そんなことはないですお」
そんなことはないですよ、
同じ事をオウム返しのように呟いて、少年は尚も歩を進める。
(;^ω^)「…どうでもいいですけど、この階段どこまで続くんですお?」
ぴたり、と足を止めた少年は振り向きざまにシルクハットちょっとずらして口を開く。
( <●><●>)「あぁ、この階段は無限ですから、そろそろ出ましょうか」
(;^ω^)「え、じゃあなんのためn…」
そこまで言ったところで、僕は再び白い光に包まれていった――
- 12: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:16:32.55 ID:4WJGsA160
―――――――……・・・・・・ ・ ・ ・ ・
(;^ω^)「なんで、さっきはずっと階段を上ってたんですかお…」
僕は今、白い柱の立ち並ぶ神殿のようなところに立っている。
奥の方まで通路が続いていて、向こう側何かあるのは分かるが、米粒のような大きさに見える。
その通路を挟んで立ち並ぶ白い柱は、高さ4,5メートルほどで、天辺に美しい装飾がされている。
ロココ調、というやつだろうか。
( <●><●>)「もう一人来るはずなので、ただ立って待っているのも暇かと思いまして」
(;^ω^)(だからって無限階段はないと思うお…)
( <●><●>)「さっきの場所は、閉ざされた空間。『ある人』の心の具現空間。
あのような場所は世界の裏には結構多くあるのですよ。それを教えておきたかったというのもあります」
( ^ω^)「なんでですかお?」
少年が答えを言う前に、目の前に光の塊が出現する。
さっきは自分が包まれていた、光が。
( <●><●>)「やっと来たようですね」
――瞬間。
僕は、少年の大きな瞳の奥に火が灯ったのを見た気がした。
- 13: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:21:37.16 ID:4WJGsA160
―――――――……・・・・・・ ・ ・ ・ ・
ノパ听)「ξ゚听)ξ で、何処に行くのよ」
半ば強引に連れ出されて、町の石畳の道を歩く。
“しもべ”の足は人気のない方へと向かっていく。
周りの空気も、活気のある商店街から暗くじめっとした空気へと代わっている。
(*‘ω‘ *)「これから主のところに行くっぽ。
とりあえずこの辺で。ちょっとそこに立ってくれっぽ」
ノハ;゚听)「ξ;゚听)ξ え?主って『カウンター』?」
(*‘ω‘ *)「まぁ、そういう事っぽ。まぁ行けばなんとかなるから私は説明しないっぽ。めんどいし」
ノハ;゚听)「ξ;゚听)ξ ちょっと!何するかぐらい!っていうかいきなり『カウンター』のところ!?」
私の叫びを無視してぼそぼそと何かを呟いたかと思うと、私の身体は白い光に包まれて溶けてく。
(*‘ω‘ *)「…主、ねぇ。本当はh…」
完全に光に同化する寸前、“しもべ”が何か呟いた気がしたが、聞きとることは出来なかった。
- 15: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:24:58.05 ID:4WJGsA160
―――――――……・・・・・・ ・ ・ ・ ・
ξ゚听)ξ「…で、ここどこよ?」
光に包まれたかと思うと、廃墟の一室にいた。
民家だったと推測できる程度の家具の残骸がある以外は、誰もいない。
窓から見える景色はどこまで見渡しても灰色の雲が広がっているだけ。
地面も灰色で、やはり今いる廃墟以外は地平線まで同じ色に染まっていた。
「はろー」
ξ;゚听)ξ「ひゃ!?」
突如、後ろから声が聞こえた。
振り返ると、朝に見た顔が後ろにあった。
从 ゚∀从「アロー。また会ったなw
まぁ本当は会うつもりはなかったが、ちんぽっぽの野郎があまりに適当すぎるんでな」
ξ;゚听)ξ「おかげさまで何が何だかサッパリよ」
从 ゚∀从「だろうな」
ハインは胸ポケットから煙草を取り出すと、マッチで火をつける。
美味そうに煙を吐き出すと、話を始める。
- 18: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:27:22.86 ID:4WJGsA160
从 ゚∀从「さて。どこから話せばいいか俺にも分からん」
ξ゚听)ξ「とりあえずアンタ何者?」
从 ゚∀从「え?あぁ。『カウンター』」
ξ;゚听)ξ「そんなわけないでしょうが」
从 ゚∀从「『裏番長』『裏カウンター』まぁ、この辺がしっくりくるかな」
ますます訳が分からない。
ξ;゚听)ξ「じゃあ質問を変えるわ。アンタはこの世界に何の関係があるの?」
从 ゚∀从「…それはここで話すべきことではないな」
ξ;゚听)ξ「じゃあ何を聞けばいいのよ…」
こちらにも何を聞けばいいかわからないのだから、最早どうしようもない。
从 ゚∀从「“しもべ”を焚きつけたのは俺だ。
そうだな、あとは『カウンター』はお前らに興味を持って、手元に置こうとしてる」
俺から話せるのはこれくらいだな。
そう呟き煙を燻らせる。
ξ゚听)ξ「…じゃあアンタは反『カウンター』ってこと?」
- 20: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:29:42.36 ID:4WJGsA160
从 ゚∀从「…『反』ではないな、むしろ『親』と言える。だが、『反』にもなりえる」
煙草を落とし、足で踏み消す。
ξ;゚听)ξ「…余計訳分からないんだけど」
从 ゚∀从「じゃあ俺から再びの助言だ『“しもべ”は信頼してもいいが信頼しすぎるな』」
以上!
叫ぶと、ぶつぶつと何か呟き始める。
さっきの“しもべ”と同じように。
ξ;゚听)ξ「ちょっと!?まだ分からない事が…」
从 ゚∀从「百聞は一見にしかずだ!見て、判断するのだ!」
またもや訳のわからない事を叫ぶハインだったが、その姿はだんだん遠ざかっていく。
光に包まれて、今度は何処へと運ばれるのか。
いいだろう。ならば見てやろう。
ξ゚听)ξ「面白いじゃないの。そこまで言うなら自分で判断してやるわよ」
- 21: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:32:19.47 ID:4WJGsA160
―――――――……・・・・・・ ・ ・ ・ ・
从 ゚∀从「…さて、あいつは行ったか」
巻き毛の少女が光となって視界から消えるのを見届けてから、廃墟から出る。
从 ゚∀从(あの女にちんぽっぽを行かせたのが間違いだったな。やっぱワカッテマスの方が良かったな)
本当は朝もっと早く行って時間をかけて説得をするつもりだったが、『しもべ』の行動が異常に早かった。
あとでちょっとヤキを入れてやろう。
从 ゚∀从(まぁ、なるべく早く行けと言ったのは俺だが)
从 ゚∀从「…計画は順調っと」
一人呟き白衣を翻すと、光に混ざり去って行く。
後に残ったのは、何処にも通じることのない空間に佇む廃墟だけだった。
- 22: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:38:12.17 ID:4WJGsA160
―――――――……・・・・・・ ・ ・ ・ ・
( <●><●>)「…なんで貴女が一人で来るんですか?」
(*‘ω‘ *) 「知らんっぽ。『貴人』も一緒に光でここに送ったはずだっぽ」
(;^ω^)「えーっと」
ここに来てもう20分くらい経っただろうか。
僕の前では、“しもべ”二人が言い争っている。
もう一人誰か来る予定の人が来ないらしい。
(*‘ω‘ *) 「いないといえばビロはどうしたっぽ!アイツだって来てないっぽ!」
( <●><●>)「彼はもう着いて主のところまで行ってますよ」
どうやら、『カウンター』のところに行くらしいのだが。
こんなところで言い争っていていいものだろうか。
- 23: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:39:20.88 ID:4WJGsA160
――と、光がちょうど“しもべ”二人の中間地点あたりに降りてくる。
その中から現れたのは、先日出会った少女、『ツン』だった。
ξ;゚听)ξ「…えーっと?」
(*‘ω‘ *) 「ほら、来たじゃねーかっぽ」
( <●><●>)「なんで先に送って後から来るんですか」
(*‘ω‘ *) 「知るかっぽ。渋滞でもしてたんじゃないかっぽ」
(#<●><●>)「そんなことありえないのは分かってます」
- 25: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:40:53.19 ID:4WJGsA160
(;^ω^)「とりあえず、僕はどうしたら…」
ξ;゚听)ξ「私にもよく分からないんだけど…」
僕が声をあげると、ツンも同じ事を思っていたらしい。
相変わらず口論をしていた“しもべ”達は、はっとしたようにこちらに向き直る。
(;<●><●>)「…危なく本来の目的を忘れるところでした」
(*‘ω‘ *) 「誰のせいだっぽ」
( <●><●>)「どう考えても貴女のせいなのも分かってます」
(*‘ω‘ *) 「いやいやだから私はちゃんとここに来るようにしたはずだっぽ」
ξ;゚听)ξ「あの…だからどうすれば…」
再び口論が始まりそうな空気に、ツンが口をはさむ。
僕じゃあ怖くて出来ない。
- 26: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:43:01.13 ID:4WJGsA160
( <●><●>)「失礼しました。では、一応簡単にやっていただくことの説明をいたします」
(*‘ω‘ *) 「ワカッテマスの説明はいつも長いっぽ。今回は簡潔にしろっぽ」
ξ;゚听)ξ(アンタは説明しなさすぎでしょ…)
ワカッテマスと呼ばれた少年は、少し“しもべ”の少女を睨みつけた後、口を開く。
(#<●><●>)「では、簡潔に話させていただきます。『主』に会って少し話をしていただく。それだけで結構です」
ξ;゚听)ξ「え?」
(;^ω^)「それだけでいいんですかお!?」
正直驚いた。
ツンも驚きを隠せないようだ。
(*‘ω‘ *) 「簡単だっぽ?ガキでもできるっぽ」
確かに、会って話すだけならば誰でもできる。
しかし、
ξ゚听)ξ「…それが、『カウンター』に対抗するための何に役立つの?」
もっともだ。
もっと戦ったり、作戦があったり、っていうのを想像していた。
話すだけじゃ何も解決にはなりそうにもない。
- 27: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:44:23.27 ID:4WJGsA160
( <●><●>)「…それは、後々分かります」
少年―ワカッテマスは、それだけ言うと僕らに背を向けて歩きだす。
巨大な柱の奥のほうへと。
( <●><●>)「それでは行きましょうか」
(;^ω^)(…説明それだけかお?)
(*‘ω‘ *) 「ほれ!さっさと行くっぽ」
少し躊躇うが、後ろからもう一人の“しもべ”に小突かれて歩きだす。
思考がまとまらない。
『カウンター』に対抗するために協力してくれと“しもべ”達は言う。
しかし、肝心なことは何一つ教えようとしない。
ツンはなにか考えでもあるのかさっきの質問以来黙ったままだ。
――せめてもっと時間がほしい。
ただでさえ頭の回転が遅い僕なのだから、考える時間が。
しかしそんな僕の想いとは裏腹に、“しもべ”の少女が後ろから僕に進むように促す。
( ^ω^)(これは、もうだめかもわからんね)
なるようにしかならない。そんなもんなのだろう。
- 28: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:47:36.08 ID:4WJGsA160
ξ゚听)ξ「(ちょっと!ちょっと聞きなさい!)」
諦めモードに入っていた僕をツンの声が現実に引き戻す。
“しもべ”に聞こえないくらいの小声で話しかけてきている。
( ^ω^)「(お!?なんだお?)」
ξ゚听)ξ「(ここに来る途中になんか変な人に会ったのよ)」
( ^ω^)「(…変質者ですかお?)」
真面目に答えるが、拳が背中にめり込んだ。
( ゚ω゚)「(ボウフッ!?)」
ξ#゚听)ξ「(真面目に聞きなさい。重要なことだから)」
咳きこんだら“しもべ”にバレてしまうのではないだろうか。
そう思い、必死に耐える。
というか僕はなにか間違ったことを言っただろうか
ξ゚听)ξ「(『しもべは信頼してもいいが信頼しすぎるな』って言われたのよ)」
( ^ω^)「(あー。なんか今の話の流れからしてなんとなく納得できますお。なんか怪しすぎて信頼とか出来ない気がしますお)」
ξ゚听)ξ「(だから…)」
- 29: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:49:46.46 ID:4WJGsA160
―――――――……・・・・・・ ・ ・ ・
―もうすぐ“しもべ”達が『貴人』を連れてくるらしい。
さっきから私の隣に控えている“しもべ”「ビロード」が興奮した様子で伝えてきた。
( ><)「ワカッテマスとちんぽっぽが今着いたようなので、もうすぐ来るんです」
正直に言えば、興味はない。
『カウンター』としての、正直な感想だった。
从'ー'从「そっかー、良かったねー来てくれる『貴人』が見つかって」
( ><)「ハイなんです、これでやっと…」
“しもべ”達が何を考えているかなんて事は分かっている。
そもそも今回の出来事の元は私なのだから。
从'ー'从(それにしても、ご苦労様としか言いようがないよねー)
内心が顔に出ていたようで、ビロードが私の表情を見て微笑んでいる。
貴人を連れてきたことで私が喜んでいるとでも思っているのだろう。
しかし、彼は知らない。
从 ー 从(…もう、いいよね?新しいおもちゃが手に入るんだし)
- 30: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:51:49.65 ID:4WJGsA160
嗚呼、本当に頬が緩むのを止められない。
何も考えていない愚かな“しもべ”達は、私の目論見など知ることもないだろう。
从'ー'从「…ねぇ、ビロード?」
振り返る少年の表情は、嬉しそうな笑顔。
从^ー^从「今まで、御苦労さま」
最初は意味を取り違えたのか、微笑んで頷く。
しかし、私の手がパソコンにかかった瞬間、困惑したような表情に変わった少年は、すぐに言葉の意味に気付く。
一瞬にして少年が恐怖に凍っていくのを、私はうっとりと網膜に焼き付ける。
そして、パソコンの〔Del〕と書かれたキーを押した。
―少年がその形を失っていき、空気に溶けていく。
从'ー'从「…今度は頭のいい子だといいなー」
その場に残されたのは、『カウンター』と呼ばれる少女。
そして、巨大な石柱の道から聞こえてくる足音だけだった。
- 31: ◆j0VQcv9RTo :2009/07/11(土) 18:54:32.97 ID:4WJGsA160
第四話 ―了―
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