( ・∀・)悪魔戦争のようです
- 7: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:10:11.78 ID:8+SLNWmL0
- かつて無知な人間はこう問うた。
- 『悪魔と天使の違いとは何ぞや?』
- 悪魔はこう答えた。
- 『善い奴が悪魔、悪い奴が天使』
- 天使はこう答えた。
- 『悪い奴が悪魔、善い奴が天使』
- 無知な人間は考えた。
- 『お互いに自分こそが正しいと思っている』
- 『絶対の正義とは何ぞや?』
- 8: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:12:12.13 ID:8+SLNWmL0
- その問いに対する答えは、未だに、世界のどこにも存在しない。
- ( ・∀・)悪魔戦争のようです
- 第二話:【ミーニング】
- 10: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:14:49.63 ID:8+SLNWmL0
- 天使。
- 神の守護者であり世界の執政者。
- 兄者がその単語を口にした瞬間、遊戯室の中は水を打ったように静まり返った。
- 否、静まったのは生徒達の挙動だけで、部屋全体の震動は続いている。
- ( ´_ゝ`)「五年間停戦の約定があったはず……まだ失効してないよな?」
- ( "ゞ)「はい。約定は――まだ一年と三ヶ月の間有効です」
- 兄者が呟くと、眉根を寄せたデルタが答えた。
- ほとんどの生徒が呆然と立ち尽くしているなかで、冷静な思考を保っていられるのはデルタとモララーのみである。
- ( ・∀・)「お……揺れが収まってきた」
- ( "ゞ)「どうしてわかるんですか、兄者先生。天使が来たと」
- ( ´_ゝ`)「決まってるだろ。サムライの勘さ☆」
- ( ・∀・)(勘かよキメェ)
- ( "ゞ)(っていうかサムライって何だろう)
- 11: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:20:39.14 ID:8+SLNWmL0
- (´<_` )「嘘つくなよ、兄者」
- 兄者の身体の後ろからひょこりと、兄者にそっくりな男が顔を覗かせた。
- 服装から体格から声まで――全く兄者と見分けがつかないほどの精巧なコピー体。
- 唯一違う点はと言えば、片手に分厚い本を持っていることだけである。
- (´<_` )「俺が教えてやったからだろうが」
- ( ・∀・)「ああ、弟者。久しぶりー」
- 彼は『ソロモン72柱』が一柱、ダンタリオン。無数の姿を持つと言われている上級悪魔である。
- ただし、モララーを始めとする生徒達は、兄者の姿をとっている状態しか目にしたことがない。
- 兄者は彼に『弟者』という名をつけている。
- (;´_ゝ`)「こら弟者! 俺の教師としての威厳が無くなってしまうだろ!」
- ( "ゞ)「威厳……?」
- ( ´_ゝ`)「悲しい目をするんじゃない!」
- (´<_` )「虚偽によって得られる威厳がそんなに大切か? クズが」
- ( ´_ゝ`)「やめて俺の顔で罵らないで! なんか隠れた性癖が発言しちゃう!」
- ( ・∀・)(話進まねーなー)
- 12: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:22:21.69 ID:8+SLNWmL0
- さて、と前置きをして、弟者は話し始めた。
- (´<_` )「時間がないぞ。一体の上位天使と二体の中位天使、あと雑魚が大量にここに押し寄せてきてる」
- 手に持った書物をパラパラとめくり、深刻そうな表情で弟者が告げる。
- この本こそがダンタリオンの能力である。限定的な未来の事象が記されているのだ。
- ( ´_ゝ`)「そもそもさっきの揺れの時点でやばいって気付いてたわバーカバーカ!」
- (´<_` )「どうする、モララーにデルタ」
- ( ´_ゝ`)
- ( ・∀・)「迎撃だろ? 天使とかボッコボコにしてやろうぜ」
- ( "ゞ)「モララー君に同意するよ。そもそも、選択肢は残ってないしね」
- ( ´_ゝ`)
- (´<_` )「正しい返答だ。……このクラスは三回生だったな……。雑魚相手なら死なない、か」
- (´<_` )「では、今から名前を呼ぶ者は」
- ( ´_ゝ`)「ちょっと待てやゴルァこの悪魔風情が」
- 14: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:24:24.17 ID:8+SLNWmL0
- (#´_ゝ`)「調子こいてんじゃねーぞ使い魔! 何仕切ってやがんだヴォケ!」
- (#´_ゝ`)「お前の契約主はこのオ・レ! 立場をわきまえろ!」
- (#´_ゝ`)「ちょっとカッコイイからって昨日も女子生徒からプレゼント貰いやがって!」
- (#´_ゝ`)「だいたいお前俺と同じ顔じゃねーか! 何で俺よりモテるんだ!」
- (#´_ゝ`)「ウボアアアアアアアアアア!! 湧き上がる憎しみの炎オオオオオオオオオ!!」
- (´<_` )「モララー、デルタ、あとヒッキー。お前らは戦闘要員」
- (´<_` )「残りは構内で逃げ遅れてる者を助けろ。大職員室まで行けば安全だ」
- (-_-)「僕も……ですか……?」
- 遊戯室の隅で頭を抱えガタガタと震えていたその生徒は、自分の名が呼ばれた事に驚き、顔を上げた。
- 彼の名はヒッキー=ディフォー。小柄な身体と顔色の悪さが特徴である。
- (´<_` )「お前もだ。魔法が一番使えるのはお前だ」
- ( "ゞ)「大丈夫だよ、ヒッキー。僕がサポートするから」
- ( ´_ゝ`)「そうか無視か。そうだよね、俺ってそういうキャラだもんね」
- 15: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:26:49.41 ID:8+SLNWmL0
- (´<_` )「俺と兄者は先に行く。中位以上は生徒にゃ荷が重い、片付けておく」
- ( ´_ゝ`)「器具室の奥に武器庫へ通じる通路がある。開錠コードは『ローカ・アローカ』だ」
- ( ´_ゝ`)「だが、武器に頼ろうとすんなよ。魔法か召喚術じゃねえと天使には勝てん。単独行動は慎め」
- ( ´_ゝ`)「よし、決まった! かっけえ俺! アデュー!」
- それだけ言い残し、兄者と弟者は連れ立って遊戯室を後にした。
- 生徒の内でもモララー達三人を除く大半は既に行動を始めている。
- ( "ゞ)「『ローカ・アローカ』――何やってるのモララー君、行くよ?」
- ( ・∀・)「あ? ああ……」
- 暗い器具室内でデルタがコードを口にすると、魔法によって閉ざされていた壁が真っ二つに裂ける。
- 通路――というより、洞窟に近い雰囲気の空間がぽっかりと口を開ける。
- (-_-)「早く行こう……」
- ( ・∀・)「ん……やっぱお前ら二人で行け」
- (;"ゞ)(:-_-)「はあ!?」
- 16: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:29:02.07 ID:8+SLNWmL0
- ( ・∀・)「いやさ、どうせ俺ナックル以外の武器使わねえし」
- ( ・∀・)「武器庫まで行ってる暇あるんなら、さっさと討って出たほうが良くないか?」
- ( ・∀・)「どうだ?」
- (#"ゞ)「どうだじゃないよ! 君は兄者先生の言う事を聞いていたのか!?」
- (-_-)「固まって動いたほうが……安全……」
- ( ・∀・)「俺のことなら心配すんな。信用してくれよ、デルタ」
- そう言ってモララーは踵を返し、遊戯室の出口へと歩いていく。
- 扉を開け、廊下に出る。
- 仲間に向けて背中越しに手を振り、モララーは駆けていった。
- (-_-)「行っちゃった……どうする……?」
- ( "ゞ)「全く――どうしようもないね。協調性の無さは相変わらずだな」
- 諦めたように肩をすくめたデルタは、親指を立てて暗い通路を示す。
- ( "ゞ)「立ち止まってはいられないよ。僕達は僕達に出来ることをしよう」
- 18: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:31:18.36 ID:8+SLNWmL0
- 息を整えつつ、持続可能なペースで走り続ける。
- 革靴で石畳を蹴る度に乾いた音が無人の廊下に響き渡り、時折そこに震動を伴う轟音が混じっていた。
- 言うまでも無く――天使による攻撃の気配である。
- ( ・∀・)「とりあえず外に……っと、おお?」
- 角を曲がった辺りでとんとん、とリズムを抑え、足を止めるモララー。
- 拳を固め半身に構える。その視線の先には、奇妙な形の生命体が立ち塞がっていた。
- | ^o^ |
- ( ・∀・)「天使……だよな。うん……そうだよな? 少なくとも人間じゃないよな?」
- やたらと大きい顔に不恰好な手足が直接くっついた、生理的に嫌悪感を抱きそうな生き物。
- 顔の各パーツも無駄に大きく、ソレは異様な笑顔を形作っていた。
- | ^o^ |「にんげん みつけました」
- | ^o^ |「かみに さからう おろかもの」
- | ^o^ |「ちまつりに あげてやります」
- ( ・∀・)「名乗らないってことは、お前、下位天使か」
- 中位以上の天使は己の名を大事にする。敵に対峙した際には名乗りを上げるのが慣習となっているのだ。
- それは悪魔にとっても同じことで、自分の名前を憎むモララーには信じられない事実であった。
- 20: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:33:39.10 ID:8+SLNWmL0
- 実際のところ、モララーが天使と対峙するのはこれが初めてである。
- 主に天使と戦争をしている連合国軍に志願できるのは成年のみであったし、魔術士養成所の生徒は準戦闘兵として扱われるものの、モララーが入所した時には既に停戦状態となっていた。
- ( ・∀・)「んじゃ、まずは雑魚を倒して景気付けと行きますか?」
- 自分の身体が発火しそうに熱い――そんな錯覚に陥るほどの興奮を、モララーは覚えていた。
- 口元には不敵な笑みを。拳には溢れる闘気を。
- ともすれば怯えに変わってしまいそうな高揚を全力で意思に従わせ、モララーはナックルダスターを敵に向ける。
- ( ・∀・)「主人公らしく、何かかっこいい決め台詞でも言いたいとこだな」
- | ^o^ |「めたなことを いうな」
- モララーは数秒間悩み、そして、全くかっこいい台詞が出てこない自分の頭脳に絶望した。
- ( ・∀・)「…………」
- ( ・∀・)「ボッコボコにしてやんよ」
- | ^o^ |「じごくで かみに ざんげしな」
- ――誰が聞いても、主人公よりも敵の台詞の方がかっこよかった。
- 21: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:35:43.78 ID:8+SLNWmL0
- 同刻、ウォルクシア国立魔術士養成所・武器庫。
- (-_-)「ねえ……デルタ君……」
- ( "ゞ)「なんだい? ヒッキー君」
- デルタ、そしてヒッキー。二人は薄暗く狭い武器庫の中、手早く武具を選別していた。
- (-_-)「どうして……モララー君は、弟者さんに選ばれたのかな……?」
- 遠慮がちにヒッキーがそう呟いたのを聞き、デルタは手の上のトンファーから視線を上げた。
- (-_-)「だって……召喚術は一つも使えないし……魔法だって……」
- ( "ゞ)「魔法だって成績は下の下。確かにね」
- ( "ゞ)「それに友達は少ないし、馬鹿だし、短気だし、馬鹿だし、性格悪いし、モテないし、部屋は汚いし、馬鹿だね」
- (;-_-)「…………」
- ( "ゞ)「……嘘だけどね」
- 小さく笑い、再びトンファーの品定めに戻るデルタ。
- ( "ゞ)「あれでも、喧嘩だけは強いんだよ、彼は――きっと、弟者もそれを買ってるんだ」
- 23: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:38:05.20 ID:8+SLNWmL0
- (-_-)「どうして……止めなかったの?」
- ( "ゞ)「何が?」
- (-_-)「さっき……遊戯室で……モララー君を」
- ( "ゞ)「ああ。君も止めなかったじゃないか?」
- (-_-)「僕は……僕よりデルタ君のほうが頭がいいから……デルタ君に任せようと思って」
- ( "ゞ)「いやいやそんな、お世辞を言わないでくれよ。僕なんてまだまだ、いやいやいやいや」
- ( "ゞ)「嘘だけどね」
- (-_-)(うわぁ……)
- ( "ゞ)「彼なら心配しなくていいさ。僕は一切心配していないよ」
- 24: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:40:03.28 ID:8+SLNWmL0
- 選定した武具を麻袋に詰め、二人はその大きな袋を担ぐ。
- 自分達の分だけではない。一人でも多く闘うために、余剰分も持っていくことにしたのだ。
- ( "ゞ)「よ、っと」
- (;-_-)「う……重い……」
- ( "ゞ)「魔法を使えばいいんじゃない?」
- (-_-)「いや……できるだけ、魔力の消耗は抑えたい……自分で担ぐよ」
- ヒッキーは重い足取りでデルタに並び、共に出口へ向かう。
- ( "ゞ)「『ローカ・アローカ』」
- 戦場へと赴く直前、ヒッキーは問うた。
- (-_-)「どうして……モララー君を信用できるの?」
- ( "ゞ)「信用してるんじゃない。信頼してるのさ……嘘だけどね」
- (-_-)「……本当に、嘘?」
- ( "ゞ)「あるいはこれも嘘――なのかも、ね」
- 25: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:42:20.98 ID:8+SLNWmL0
- 同刻、魔術士養成所・正面玄関前。
- 二人の教師が門番として立ち塞がっていた。
- ( ><)
- ( ´_ゝ`)
- その二人の眼に映るは――視界を埋め尽くす、下位天使の群れ。
- | ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ |
- (;><)「気持ち悪いんです……」
- ( ´_ゝ`)「異形のものが群れてるっていうのは、人間の生理的不快感を引き起こすらしいな」
- 魔術士養成所はウォルクシア王国の首都・ハイアの郊外に位置しており、半径500メートル以内には一つの建物もない。ただ荒れた草原が広がっているのみだ。
- 砂糖菓子に群がる蟻のように――天使達は、魔術士養成所を包囲していた。
- ( ´_ゝ`)「横や上には魔法防御壁があるが、正面と裏門はがら空きだからな」
- ( ><)「何ですか急に説明的になって。誰と喋ってるんですか」
- ( ´_ゝ`)「だから上級悪魔と契約してる俺やビロード=デス先生が迎撃に割り当てられたのさ」
- ( ><)「知ってるんです。ついにイカレたんですか?」
- 27: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:44:34.06 ID:8+SLNWmL0
- | ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ |
- 醜い天使は徐々に、ゆっくりと距離を詰めてくる。
- ( ´_ゝ`)「裏門にはダイオード先生とモナー先生が詰めている。安心だな!」
- 腰に佩いた大太刀『星駆』を抜き放ち、兄者は上段に構えた。
- (´<_` )「だから誰に説明してるんだ――中位天使と上位天使はまだ顕現してないな。好都合だが」
- 弟者が姿を現し、兄者に寄り添い立つ。
- ( ><)「ワカッテマス、出番なんです」
- ( <●><●>)「御意。貴女には傷一つ付かないことはワカッテマス」
- 宵闇色をした鎧の巨人。ワカッテマスはビロードを護るように前方へ槍を向ける。
- | ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ || ^o^ |
- (´<_` )「何匹か構内に侵入しているようだぞ」
- ( ´_ゝ`)「我等が愛しの生徒達なら大丈夫さ」
- ( ><)「来ますよ――――!」
- 28: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:46:19.28 ID:8+SLNWmL0
- 同刻、何処か。
- 白い衣を纏ったいくつかの影が互いに向かい合っている。
- 「状況は?」
- 煙草を加えた者が訊いた。
- 「何度か砲撃を加えましたが、魔法防御壁に防がれました」
- 「威嚇には有効ですので続けさせています」
- 二人が交互に答えた。
- 「堅いねえ。流石にウォルクシアの魔技術力だよ」
- 「しかし――逆に言えば?」
- 「ここを潰せるならば、長期に渡る我々の有利は約束されているということですね」
- 「その通り。この悪魔戦争の終焉も見えてくるのだよ」
- 三人。あるいはこの三人が、弟者が予見した上位天使と中位天使であろうか。
- 29: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:48:06.57 ID:8+SLNWmL0
- 「そろそろ次の状況を開始したいと思います」
- 「許可をお願いします」
- 「いいよ。私の権限において許可する」
- 「ありがとうございます。失礼します」
- 敬語を使っていた二人の姿が薄れ、消えた。
- 残った一人は口から煙を吐いて独白する。
- 「さて……勝利は二の次三の次、なんだよ。今作戦の目的はもっと深い位置にある」
- 「果たして幾人がそれに気付くかな? 悪魔、そして人間諸君よ」
- 爪'ー`)y‐「私の戦争を――止められるかな?」
- 33: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:50:57.59 ID:8+SLNWmL0
- 同刻、魔術士養成所・保健室。
- 幾つか並べられたベッドの一つに、一人の女生徒が横たわっていた。
- ξ--)ξ
- 彼女は体調不良を理由に早朝から保健室で休んでおり、睡眠中により現在の騒動のことを何も知らない。
- 保健教師であるダイオード=メタルは裏門の迎撃に駆り出されている。
- ダイオードは生来の忘れっぽい性格を完璧に発揮し、女生徒を起こすことを忘れたまま出掛けてしまったのだ。
- ξ--)ξ
- この保健室を使う者は少ない。ある程度の怪我・病気ならば魔法や召喚術での治癒が可能だからだ。
- 故に、ほとんどの生徒や教師は保健室の存在を忘却している。
- ダイオードまでもが忘却してしまったので、彼女を助けに来る者はいなかった。
- ξ--)ξ「ん……」
- ξ゚听)ξパチリ
- ξ゚听)ξ「……なんか、騒がしいわね」
- 彼女の名をツン=D=パキッシュという。魔法学科の三回生である。
- 34: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:53:08.14 ID:8+SLNWmL0
- 彼女が目を覚ました瞬間、微かな震動が保健室全体を襲った。
- ξ;゚听)ξ「わわっ! 地震?」
- この保健室は構内のほぼ中央に位置している。
- そのためか、モララー達が体験した揺れに比べれば、小規模なものであった。
- ξ゚听)ξ「ダイオード先生、今の何ですか?」
- 手を伸ばして天蓋のようなカーテンを引き、机に向かっているはずの教師に話しかけるツン。
- 当然ながらそこには誰もいない。ツンは小首を傾げた。
- ξ゚听)ξ「いない……先生が外出なんて、珍しいわね」
- パラパラと天井から埃が落ちてきた。一分間に一回か二回、断続的な震動が部屋を揺らしている。
- ξ゚听)ξ「何か実験でもやってるのかしら? 見に行ってみようっと」
- 上半身を起こして、ベッドから降りる。
- 壁に掛けてあった毛皮のコートを着込み、厚い手袋を嵌め、毛糸の帽子を被る。
- 季節は初夏であるというのに――真冬にしても過剰なほどの衣装を纏い、ツンは保健室を出た。
- 35: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:55:12.89 ID:8+SLNWmL0
- ξ;゚听)ξ「え……?」
- 自分の目を疑った。
- 廊下には『何か』の死体が累々と転がっていたのだ。
- ξ;゚听)ξ「これは……天使?」
- | ^/ /o^ | ショウユ オイシイデス
- 白い肌。大きな胴体。手足。赤い水溜り。
- バラバラに解体された『何か』は犬の糞さながらにぞんざいな放置をされており、まるで不法投棄現場のようだった。
- ξ;゚听)ξ「いったい何が……というか、誰が……?」
- グロテスクな光景に臆することもなく、ツンは一つの肉片を拾い上げる。
- 断面は非常に粗い。少なくとも刃物による傷ではない。魔法でもないだろう。
- 鈍器か――あるいは、素手か。
- よくわからないが――状況は、把握した。
- ξ;゚听)ξ「戦争、か」
- 死骸の山はある地点から始まり、長い道となって続いている。
- 単純に考えて、道の向こうには、この所業をやってのけた者がいるはずだ。
- ツンは紅い痕跡を辿り始めた。
- 39: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:57:07.10 ID:8+SLNWmL0
- 正門で、裏門で、構内で。
- 天使が、悪魔が、人間が。
- 忠義を、信念を、存在を――護るための、戦いを。
- 戦うための、争いを。
- 始めようと――していた。
- 41: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/12(日) 17:59:24.02 ID:8+SLNWmL0
- 悪魔戦争。
- それは、傍観者の存在しない、永遠の悪夢である。
- 第二話:【ミーニング】 了
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