( ^ω^)のグミ・チョコレート・パイン グミ編
- 2: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:05:28.92 ID:3ZtaHYazO
第1章 「GORO」
五千四百七十八回。
これは、内藤ホライゾン(ブーン)が生まれてから十七年間に行なった、ある行為の回数である。
ある行為とは、俗にマスターベーション、訳すなら自慰、つまりオナニーのことである。
彼が最初にその行為を「発見」したのは、今からちょうど五年前、まだポコチンに一本の毛もはえぬ…小学六年生の頃だ。彼もまた多くの少年たち同様、「偶然」という名の恐るべき必然に導かれてその行為を発見した。
- 3: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:08:11.43 ID:3ZtaHYazO
- その頃、幼き内藤ホライゾンのヘソ下三寸、その内部三寸のあたりに、ポチンと赤く光る球体が息吹きを始めていた。
それこそがリビドー、性欲、つまりはスケベーの目覚めだったのである。
そいつはブーンが性的刺激を受けるとあたかもウルトラマンのカラータイマーのごとく、ピコピコと点滅を始め、ダイレクトにその刺激を彼の脳髄とポコチンに送り込むのだ。
- 4: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:10:35.96 ID:3ZtaHYazO
- そうなるともう彼はいかんともしがたく、それが自宅であったならスッ飛んで「勉強部屋」と名づけられた、物置を改造した一畳半の彼のアジトへ駆け入り、燃えるゴミの日に廃品回収場所からひそかに拾ってきた、捨てられてあった平凡パンチを火の点くほど見つめるのだ。
- 5: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:11:46.76 ID:3ZtaHYazO
- ( ^ω^)「…飽きたお」
スケベーにではない。いつも見ている平凡パンチにだ。ガツーン!とくるものを求めて棚の上から秘蔵の少年マガジンを抜き出した。
( ^ω^)「やっぱこれだお!」
- 6: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:13:32.95 ID:3ZtaHYazO
- ブーンはその少年マガジンに掲載している新人アイドルに夢中だった。まだ幼さ残る、といっても小学生のブーンにとっては十分に大人な彼女の水着写真は、飽きることなく彼を幻惑させる魔法の数ページだった。何度開いても、彼を深きエロスの世界へと誘うのだ。
- 7: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:14:51.60 ID:3ZtaHYazO
- だからこのマガジンはブーンにとっては神聖な存在であり、宝物なのである。聖なるマガジンを開き、ポテトチップを食べようとブーンは再び腰を上げた。
その時……だ。
偶然……いや、やはり必然にして彼のポコチンのあたりが彼の使っているスタディデスクの角っこにあたったのだ。
- 9: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:16:15.42 ID:3ZtaHYazO
- ( ^ω^)「あ、なんか……いいお。あれ?」
偶然……いや完全に自発的に彼は腰を動かし、角っこにポコチンをスリスリしてみた。
(*^ω^)「あ……あれ……いい……いいお」
今や甘美なる赤き花がボカーンと燃えて、ブーンのポコチンをポコポコチンチンと、快感という名の下に支配していた。
- 10: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:17:21.58 ID:3ZtaHYazO
- (*>ω<)「あぅあううう」
( ゚ω゚)「アッー!」
……失禁してしまった……ブーンはそう思った。快感が極まった瞬間、今までに体験したことのない、爆発のような感覚がポコチンに本体を襲ったのだ。脳の奥、そして全身にゆっくりと広がった謎の超感覚は、まったく初めてのものだった。
- 11: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:18:22.33 ID:3ZtaHYazO
- しいていえば、こらえにこらえた末の「おもらし」の感じによく似ていた。それで彼は、快感のあまり自分で失禁してしまったと思ったわけだ。
(;^ω^)「もうじき中学生だっつーのにこの僕はおもらしをしちまったお!」
深く悔い、ポコチンのあたりを触れてみれば、意外にも湿ってはいなかった。
- 12: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:20:36.06 ID:3ZtaHYazO
- ( ^ω^)「これは一体…!?」
まだじんわり残る快感の波動に身を震わせながら、真昼の幽霊にでもあったように、ブーンはしばらく呆然としたのであった。
真昼の幽霊の正体を「それはエクスタシーというものだ」と教えてくれる者はいなかった。なにしろ彼は超感覚について誰にも語らなかった。説明しようがなかった。自分だけの秘密にもしておきたかったし、もしかしら病気なのかも…という不安もあった。
- 14: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:21:58.36 ID:3ZtaHYazO
- いずれにしろ、超感覚「真昼の幽霊」がヒジョーに気持ちがいいということだけは事実として認識した。
それからブーンは超感覚を再体験すべく、アインシュタイン、ホーキング以上にストイックであろうごとく、貧欲に研究した。
- 15: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:24:02.40 ID:3ZtaHYazO
- そしてブーンは最初にその体験したときのように、スタディデスクの角っこにポコチンをこすりつける方法から、自らのポコチンをたたいて超感覚を味わう方法に進歩した。
- 16: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:24:30.74 ID:3ZtaHYazO
- そこからまたポコチンの包皮をつまみ、グイッねじる方法に変わり、そしてついに「手」を用い、ポコチン本体を上下に摩擦する「正攻法」を発見した。
- 17: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:25:22.73 ID:3ZtaHYazO
- こうして独学で正調オナニーを手に入れたブーンは中学入学とほぼ同時に精通も始まり、それから高校二年の今日に至まで一日三回、一年で一千九十五回、かけることの五年。うるう年を入れて、合わせて五千四百七十八回、超感覚を味わうために日夜ポコチンと共に戦ってきたのだ。
- 18: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:26:57.47 ID:3ZtaHYazO
- そんな内藤ホライゾンの日々はオナニストとして王道を行くものであった。つらくわびしく、そしてさみしかった。彼の場合、そんな言葉を使うのももったいないかもしれない。
さえない。
その一語ですんでしまう。
- 19: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:27:56.04 ID:3ZtaHYazO
- 学生として、大半を学校で過ごす。それは半強制的なわけで楽しいわけがない。少年少女たちはそれでも何とか楽しみを見つけようと友達をつくり、運がよければ彼氏彼女を捜し出す。
- 20: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:29:11.34 ID:3ZtaHYazO
- 友達にしろ恋人にしろ、必要なのは共通の趣味だ。しかし彼はマンガ、映画、小説というよくある趣味を持つにもかかわらず、同胞さえも見つけることができなかった。
- 21: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:29:51.48 ID:3ZtaHYazO
- 校内のマンガ好きの者は何故かみな太っていて、眼鏡をかけたジメーッとした人たちで気味が悪いので友人にはなれない。
- 22: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:30:38.09 ID:3ZtaHYazO
- 映画好きも小説好きだという者もいたが、彼らの上げる作品はみなその年の売り上げトップ10に入るようなメジャーなものばかりで、ブーンはがっくりした。興味のベクトルが別方向だ、ダメだこりゃと思った。
- 23: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:32:11.31 ID:3ZtaHYazO
- ブーンはおかしなプライドがあった。自分は人とは違う、何か違った能力があり、いつかは世に出るものなのだ、と。
それなのに学校では人並みにもなれず、学業成績はすこぶる悪く、運動もできず、ただ単にさえない野郎だ。彼はこの矛盾を思うと、ひどくやりきれない気持ちになる。
- 24: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:32:49.58 ID:3ZtaHYazO
- そのうえ……と心でつけ足し思う。
( ^ω^)「そのうえ僕は女としゃべることもできんお」
数千回のオナニーで訓練さえた彼のポコチンの最大の弱点は、制御がきかぬことである。十代前半から三十代後半までの女性を前にすると、容姿人柄職業問わず、おっ立っちまうんだよこいつのポコチンは!……ったく。
- 25: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:33:37.98 ID:3ZtaHYazO
- クラスの中で存在感のない、いてもいなくてもわからないブーンに率先して語りかけてくる女子などいなかった。たまに事務的な用事で話す者はあった。
少女たちは当たり前だが何恥じることなくブーンに声かける。
- 26: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:34:29.79 ID:3ZtaHYazO
- そうすると瞬時にしてヘソ下ヘソ中三寸に鎮座ましました彼のファイヤーボールがうなりをあげポコチンがボッキーンといきり立ってしまう。
ブーンは一人でパニクって、わけわかんなくなっちまうのだ。
- 27: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:34:56.62 ID:3ZtaHYazO
- その混乱は純情なんていう優しいものではなく、もっとドロドロとした吹き出ものじみた人間の汚い部分によるものだと彼は自覚していた。
プライドばかり高く、そのくせ人並みにすらなれない自分のダメな部分が、すべて性欲という形であふれてくるのだ。
そう思っていた。
- 28: VIP皇帝 :2006/11/23(木) 02:35:21.78 ID:3ZtaHYazO
- 学校がおわるとブーンはオバチャリと呼ばれる婦人用自転車で三十分程かけて家に帰る。クラッカーにバターをぬって紅茶で流し込むと、再びオバチャリにまたがり夕暮れの街へ出かけてゆく。
- 30: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:35:49.66 ID:3ZtaHYazO
- 彼はだんだんと暮れていく街が好きだ。
街に灯りが点く前の、ほんの一時の、暗くなり初め、人も電柱も犬も自転車も実体のないものになりかける一瞬が好きだった。全てが闇のなかに消えていくような錯覚を覚えるからだ。
( ´ω`)「このまま僕の性欲も消えちまえばいいのに」
( ´ω`)「それよか僕そのものが闇に消えちまえばいいんだお」
- 31: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:36:13.98 ID:3ZtaHYazO
- 彼の住むその街は、古本屋が多くあった。これは読書好きの、そしてオナニストブーンにとってとてもうれしいことだ。ほぼ毎日する古本屋巡りが、映画館に通うのと並んで彼の唯一の楽しみだ。
彼は数ある古本屋を巡り、たっぷり時間をかけて本を選ぶのが好きなのだ。
- 32: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:36:40.03 ID:3ZtaHYazO
- じっくり吟味し、安い文庫本を選ぶ。それを棚のわかりやすいところに一旦入れ直し、次に今夜のオナペット…オナニーの聖書たりうる「もの」を探すのだ。
彼には歴然としたヌードより女は薄物をまとっている方がよい、マンガは邪道、グラビアは安っぽいざらつく紙質がよいなどいろいろなこばわりがある。
- 33: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:37:21.67 ID:3ZtaHYazO
- それらを踏まえた上で、まむしのようにネチっこく、今はすでにとっぷりと暮れた商店街のはずれで、少年は一人、オナニーのための一冊を真剣勝負で選ぶのだ。
二冊候補にとまった今夜の友を小一時間悩んだのち、さっき見えやすいところにおいた文庫本と共に、結局二冊とも買って家へ帰った。
- 34: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:38:06.75 ID:3ZtaHYazO
- 家ではすでに食事の用意ができていた。
グツグツと鍋が煮え、よい香が漂っていた。「遅いぞ」と父親はブーンに言い、それきり黙って酒を飲んだ。
( ^ω^)「……」
ブーンは何も答えなかった。
- 35: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:38:58.77 ID:3ZtaHYazO
- 学校で存在感のない彼は、家では自ら存在感をなくそうと思い、家族の者とは極力口をきかないようにしていた。家庭は学校以上に自分のいる場所ではない、親とはたまたま血がつながってしまっただけなのだ。
- 36: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:39:30.29 ID:3ZtaHYazO
- 彼はそう思い、反抗するわけでもなく、波風立てず、他人のように接したい、と思っていた。
- 37: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:41:03.02 ID:3ZtaHYazO
- 母は父に比べて多弁な人だ。しかし、いつもはブーンがいくら透明人間として家族に接しようとしても、何かどうでもいいような話題を無理矢理持ってきては一人で語っていたりする母が今日はその様子もなく、どこかぎこちなかった。
- 38: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:41:43.86 ID:3ZtaHYazO
- 不審な母の態度にも家庭内透明人間の彼はあまり気にとめず、二階にある四畳半の自室に向かった。
扉を開けた瞬間
(;^ω^)「アッ!」
と息を飲んだ。母の奇怪な態度の意味を知る恐るべき事件が発生していた。
- 39: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:42:12.06 ID:3ZtaHYazO
部屋の万年床の上に、青いスポーツ・バックがボテッと置かれてあった。
人気ブランドのまがいもののロゴが入ったそのバッグは、ブーンにとって恥ずべきものであり、何より人目に触れてはならぬものであった。
- 40: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:43:54.03 ID:3ZtaHYazO
- バックの中身は、あまたの雑誌から切り抜いたセクシー・グラビアをファイルした濃厚な内容のバインダー・ブックが少なくとも十冊、
そしてエロの妄想をブーンが「イラスト」「ショートストーリー仕立ての小説」にしたとっても恥ずかしいノートが少なくとも六冊、ドーンと詰まっているのだ。
- 41: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:44:25.68 ID:3ZtaHYazO
- いつもは押し入れの奥に冬眠するがごとくしまわれたバックが、何故?今日は布団の上にあるのだ、お前は!?
(#^ω^)「かーさんだお」
- 42: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:45:38.51 ID:3ZtaHYazO
- おそらく母は何かの拍子にこのバックを見つけ、部屋の真ん中でそれを開け、驚きと情けなさのあまり声をなくしその場に置きざりにしたのだ。
呆然としながら食事の支度をし、何も知らず帰宅した性欲の人、わが息子に平静を取りつくろうとしていたのだ。
- 43: VIP将軍 :2006/11/23(木) 02:46:40.92 ID:3ZtaHYazO
- ブーンは母を呪い、スポーツ・バックを呪い、自分の性欲を呪い、そして自分自身を呪った。
( ´ω`)「やっぱり僕なんて消えちまえばいいんだお」とその夜思いながら、でもしっかり五千七百九回目のマスターベーションはした。
今日古本屋で購入した夜の友に掲載されていたブーンのお気に入りのアイドルのグラビアの瞳がとても哀しげには見えたのだけれど。
戻る/第2章