( ^ω^)ブーンがギアスを手に入れたようです(クー編)

  
12: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 17:40:00.15 ID:qO+pJhj60
  
「私はツンデレ。そして貴方はクー」

突然呼びかけられ、クーは驚きながらもゆっくりと振り向く。
どうして自分の名前を知っているのか。彼女は疑問に思い、口に出す。

「暇そうだね。私も暇なんだ。だからさ、少し遊ぼうよ。時間ならいくらでもあるから」

しかし彼女の問いかけには全く応じず、話し続けるツンと名乗る女。
何を言ってるんだ、とクーがツンデレの肩に手を掛ける。

その瞬間だった。

彼女の脳内に何かが流れ込んでくる。
止め処なく、知らないものが次々と。彼女に抗う術は無く、ただただ受け入れるほか無かった。

意識が薄れる。そう思ったときには既に彼女はその場に倒れていた。

ξ゚ー゚)ξ「……嫌になるほどね」



  
15: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 17:53:27.56 ID:qO+pJhj60
  
気がつくと、彼女は先ほどと同じ道に立っていた。
なんだったのだろう、今のは。そう思いながら家路に着く。

家に帰ってからは何てことの無い、いつも通りの一日。
全てを終え、就寝前に今日一日のことを思い出す。

川 ゚ -゚)「あの女……。気付けばいなくなっていた。どういうことだ? 私は疲れているのか?」

ならば早く寝よう。そう思い、電気を消すとすぐにまぶたを閉じる。
視界は真っ暗、何も見えない。色々と考えながらも、徐々に意識が薄れる。

川 - )「(そういえば、あの女と会ったときもこんな感じで意識が……)」

夢の世界は、すぐに訪れた。



  
17: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 18:41:05.80 ID:qO+pJhj60
  
川 ゚ -゚)「…………」

起床すると共に、嫌な夢だったなと思った。
事細かに夢の内容を覚えているわけではないため、何故そう思ったか彼女は分からなかったが、
とにかくこの不快感が教えてくれる。

嫌な夢だった、と。

川 ゚ -゚)「……む。もうこんな時間か。少し急がないと」

クーは勢いよく階段を降り、母親に朝食はいらないと伝えるとまず洗面所に向かう。
必要最低限の身嗜みを整え、鞄を手に勢いよく家を飛び出した。

川 ゚ -゚)「行ってきます」



  
18: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 19:01:27.07 ID:qO+pJhj60
  
彼女の家は学校まで、決して近くない。
他の生徒にとっては間に合う時間でも、彼女にしてみればギリギリセーフか、アウアウ。

川 ゚ -゚)「駅まで走らないとダメだな……」

独り言さえ聞き取れないほどに、全力で走り始める。
途中幾つかの角を曲がり、駅へと向かう。

川 ゚ -゚)「毎度のことだが、駅まで5分ってそれは嘘だろう……。走ってもそれ以上掛かるというのに」

鞄を握る手に力が篭る。

ξ゚ー゚)ξ「そうかもね」

川 ゚ -゚)「…………」

走っている最中に何かが見えた気がしたが、クーはそのまま走り抜ける。
忘れかけていたことが、昨日の出来事が思い出される。

川 ゚ -゚)「……疲れてるんだろうな」

速度を落とすことなく、クーは駅へと向かう。
数分後、彼女は予定より早く駅に到達し、電車へと乗り込んだ。



  
19: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 19:14:35.07 ID:qO+pJhj60
  
電車内はそう混んではいなかった。
難なく席を見つけ、荷物を抱きかかえるように座る。

川 ゚ -゚)「…………」

表向きには平然としてはいるものの、彼女の頭の中では先ほどの出来事が何度も繰り返し思い出されていた。
先日の帰りに出会った女が、今日の今にまた現れた。
どうやら私は疲れているわけではないようだ、と窓を向きながら呟く。

川 ゚ -゚)「……あの女は一体誰なんだ……?」

ξ゚ー゚)ξ「知りたい?」

川;゚ -゚)「なっ!?」

突然の問いかけに彼女は大声で反応してしまう。
静かな電車内。他の乗客たちが一様にクーに振り向く。その視線も、どれも一様だった。

ξ゚ー゚)ξ「こういう場所で大声を出すのは感心しないわね」

川 ゚ -゚)「貴様は一体……。私に何の用なんだ?」

ξ゚ー゚)ξ「前にも言ったでしょ? 少し遊びましょうよ」



  
27: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 19:32:21.29 ID:qO+pJhj60
  
川 ゚ -゚)「遊ぶ……とはどういうことだ?」

ツンデレの抽象的な発言に苛立ちを隠すことなく、クーは問い詰める。
一方、ツンデレは窓の外を見ており、問いかけにまともに対応する気は無いようだ。

ξ゚ー゚)ξ「あ、あの家可愛いわね。何か懐かしいな」

川 ゚ -゚)「……聞いてるのか、貴様」

ツンデレの態度にクーの声色にも変化が起きる。
先ほどとはまるで違う、問いかけているのではなく命令しているように声を掛ける。
その瞳は、少し赤みを帯びていた。

ξ゚−゚)ξ「……何?」

クーの高圧的な態度に、ツンデレの雰囲気も変わる。
窓を眺めていた時とは比べ物にならないほどの冷たい視線。
それに臆することなく、クーはツンデレを見つめ続ける。

川 ゚ -゚)「質問に答えてもらおうか」

電車は静かに、ゆっくりと揺れながら次の駅へと進む。



  
28: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 19:48:04.41 ID:qO+pJhj60
  
ξ゚−゚)ξ「私に能力は効かないわよ。言ったでしょ?」

二人の殺伐とした空気に、他の乗客も自然と視線を集めている。
その一方で、クーはまたしても訳の分からないことを言うツンデレに苛立ちを隠せずにいた。

川 ゚ -゚)「能力とはなんだ、その前に貴様は何者だ」

ξ゚−゚)ξ「……覚えていない訳じゃないみたいだけど。私はツンデレ。それ以上を言うつもりはないわ」

川 ゚ -゚)「…………」

ξ゚−゚)ξ「…………」

二人の間に沈黙が流れる。
それらは彼女らの載っている車両全体を包み込んでおり、車両を移る乗客も現れた。

ξ゚−゚)ξ「……いいわ。でも、もう一度説明するのは面倒ね。だから思い出しなさい。今日の夢を」

ツンデレはクーの顎を優しく手のひらで包み込むと、ゆっくりとクーの顔を上げ、自身の顔に寄せる。
二人の顔と顔の間が数十センチ、数センチと唇がぶつかりそうになりながら近まる。

川 ゚ -゚)「な、何を……」

クーの頬が少しずつ染まる。ツンデレは薄らと笑みを浮かべていた。



  
29: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 20:04:32.81 ID:qO+pJhj60
  
ξ゚ー゚)ξ「可愛い。赤くなっちゃってさ」

ツンデレは立ち上がり、クーとの距離をとる。
彼女の言葉にクーは我に返ると、先ほどよりも頬を染めながら同じくして立ち上がる。

川;゚ -゚)「何なんだ、貴様は!」

我慢しきれずに、声を張り上げる。
電車内であるということも忘れ、思い切りツンデレを睨みつける。

ξ゚ー゚)ξ「冗談よ。別に、意味はないから。安心して」

川;゚ -゚)「貴様……。……ッ!」

クーは言い終える前に、その場に倒れこんでしまっていた。
他の乗客も一部始終を見ていたために、驚きを隠せずにいる。騒ぎ出す者も出始める。

「うーん、場所が悪かったか。どうしよっかな……」

クーが聞き取れたのはそこまでだった。
既に意識はそこになく、見たことのある景色が彼女を包みこんでいく。



  
31: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 20:18:00.31 ID:qO+pJhj60
  
「貴方に力をあげるわ。……もっとも、今更要らないといわれても困るんだけどね」

声の主に実体は無く、直接頭に語りかけるような錯覚。
実感が湧かないのは、彼女自身、実体を持っていないからだ。

「…………」

声は出ない。出し方が分からないのだ。
もしかすると、声は出ないのかもしれない。もともと、声など無いのかもしれない。
考えはまとまらず、まともに思考することすら出来なくなっていた。

「話は簡単よ。貴方は強くなれるの」

強くなれる。
誰がそんなことを望んだか。
そう口にしようとしたが、やはり声は出なかった。

「貴方が望んだんじゃない」

彼女は決して言葉を口にはしていない。それは確かだ。
しかし目の前の相手には、ツンデレには伝わっていた。考えが筒抜けになっている。咄嗟にそう感じた。

「使い方も簡単。今までみたいに祈ればいいのよ」
「祈って、命じる。今までと違うのは、それが実行されるかどうかってとこね」



  
32: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 20:32:30.85 ID:qO+pJhj60
  
「大丈夫、貴方ならきっと出来るわよ」

彼女の言葉にぬくもりはなく、感じるのは強制的な安堵。
それに違和感を拭うことはできずに、警戒を解くことは出来なかった。

「そう硬くならないでよ。私はこれでも善人よ? 貴方に力を与えているんだから」

「でもここからは貴方次第」

ξ゚ー゚)ξ「私に会いたければ祈りなさい。そうすれば。もしかしたら。きっと……」

ツンデレの姿が現れると同時に、また意識が薄れる。
きっと夢から覚めるのだろう、そうクーは思った。


そして目が覚めればまたこの場所。
彼女と初めて出会ったところ。

腕の時計を見ると、あり得ない時間が表示されていた。電車に乗ってから数分しか経っていない。
登校時間に間に合っているのだ。
しかし、今の彼女にはそれを受け入れるだけの余裕があった。


川 ゚ -゚)「退け、デカいの」

「邪魔だ」



戻る次へ