( ^ω^)ブーンが多足歩行戦車に搭乗するようです

  
11: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 01:19:02.87 ID:46vi5iZe0
  

-2026年9月21日 1630時

VIP首都ジップ=デークレー省庁街中心部
議事堂会館 第一会議室

『内藤中将閣下。共和国内閣は、VIP共和国の名においてあなたを国家非常事態局
 の局長に任命し、将の位を授けることを決定いたしました』
『……』

『どうなされましたか』
『いや…副首相はどこへ行かれた?』
『自室で薬を飲んで寝ておられます。相当ショックだったようで』
『自決用の青酸カリだったらよかったのに。…これは言い過ぎか』

『…内藤局長。VIPは勝てますか』
『…ふん、ツケが回ったとお考えください。ラウンジとの交渉もどこまでやれるか…』

『局長閣下―』
『何だ』

『―笑っておられますよ…』

第五話 『river no return』



  
17: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 01:25:04.44 ID:46vi5iZe0
  
同日 2105時 440盆地付近(マップ参照)

(# ・∀・)「目が痛えぇぇぇ!!疲れた!」
(#´・ω・`)「静かにしろ!赤外線通信といえども傍受されないわけじゃないんだ!」
(; ^ω^)「いやでもこれは…暗すぎるお」

暗視装置をのぞきっ放しのモララーが愚痴る。あたりはすっかり暗い。
今日は月も出ていなく、VIPの深い森はすっかりと森に溶け込んでしまった。

ブーンたちが受けた命令。それは先ほど退却してきた440丘陵に再進出し、
地形を利用して展開。現地の歩兵中隊と共同し、北部から退却してきた敵を撃滅しろ、というのだ。
 
その北部に展開しているのはわれらが戦闘団の中隊の主力だ。そしてそれを率いるのはクー。

『北部が突破されたら我々も包囲されてお終いじゃないのか』

普通はそう思う。だが我が団にそんなことを思うやつはいない。
北を守るのはあのクー中佐だ。ニーソクが抜けるわけがない。



  
22: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 01:35:44.72 ID:46vi5iZe0
  
(´・ω・`)「ま…確かにこれはすごいですね。昼は無我夢中だったんであまり見ていませんが」

確かに。隘路の左右から緑が首をもたげてきている。緑なんて優しそうものじゃない。
 この速度で茂みに隠れた大木にぶつかれば、V−I−Pは無事でも「中の人」はどうだか

( ^ω^)「ブーン&ショボンフラペチーノができるお」
(´・ω・`)「何の話ですか」

从'ー'从「隊長〜?それいくらするんですか?」
(;^ω^)「おまえ僕たちの合挽き食う気かお」

想像してみたら気持ち悪くなってきたが、ワタナベが元気を取り戻したのはいいことだ。
 出撃前ジョルジュたち整備の人間に聞いてみたら、白3のコックピットは
「惨状」の一言に尽きるらしい。

上半身を吹き飛ばされた無線手の「もう片方」と、彼女は任務終了まで気丈に
同乗し続けたというのだ。一緒に訓練を積み、任務をこなしたその「元」同僚と。



  
24: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 01:47:17.39 ID:46vi5iZe0
  
隊列の先頭をモララー車に任せてるのをいいことに、ブーンたちは周辺警戒をしつつも
雑談に興じていた。

(´・ω・`)「そういえば隊長は士官学校出では無いそうで」

( ^ω^)「ショボンが世間話なんて珍しいおw」

(´・ω・`)「ま…僕も緊張してるということです」
(; ^ω^)「…ブーンは大学から幹部候補生課程出たあと、主計科に配属されたお
      勉強できないブーンに数の勘定は辛かったお…」

(´・ω・`)「勉強できないって、大学で何やってたんですか」

珍しく曹長が笑う。いつも僕らをいさめる側の曹長が。が、すぐに

(;´・ω・`)「…失礼しました」
( ^ω^)「いいおw ブーンは落第生でサッカーばっかりしてたお。曹長はサッカー好きかお?」

あれ…? 曹長の表情が一変した。さっきまであまり綺麗とはいえない歯を見せて
笑っていた曹長と同一人物とは思えない、沈鬱な表情を浮かべていた

(´・ω・`)「あまり…サッカーは知りません…」

重々しく口を開く。せっかく曹長が初陣に向かう
(しかも決して生きて帰れる保証の無い)
僕たちの緊張をほぐしてくれたのに、何かやってはいけないことをしてしまっていたのか。

そうして逡巡していると、先頭の白2号から悲鳴が上がった。



  
25: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 01:54:24.88 ID:46vi5iZe0
  
(# -∀・)「 うおっ まぶしっ!」
(    )「止まれ!誰か!」

モララー車の歩を止めたのは強烈なフラッシュ。
それと同時に誰何が飛んでくる。どうやら現地の歩兵部隊のようだった。

(    )「誰か!…誰か! 撃つぞこの野郎!」

この行為は誰何(すいか)といい、歩哨が不振な対象に向けて行う。
誰何されたら速やかに自分の身分を明かさなければならない。三回誰何するうちに
回答がなければ発砲する、という慣例なのだが

…こういった臆病な歩哨のケースではあっというまに三回言い切ってしまう



  
26: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 01:59:57.51 ID:46vi5iZe0
  
( 歩哨  )「いい度胸だ!う…撃つからな!」

(# ^ω^)「うるせーお!!大声だすなお!明かりを消すお!
       西部方面特殊車両研究教導団第3小隊小隊長、
       内藤ホライゾン少尉だお! 指揮官はどこだお?」

ブーンがハッチから顔を出し、名乗る。哀れな歩哨は慌ててライトを消し、
了解、と言い捨て森の奥へと消えていってしまった。

(; ・∀・)「あ、あれ?あれ?暗視装置切るのどれだったっけ?」

どうやらモララーは暗視装置の安全装置(強烈な光をあてられると自動的に電源が落ちる)を
気っていたらしい。目がくらんでるらしく、動きがおたおたしていた。
ーそう白2の無線手が報告してきた。 やれやれだ。



  
27: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 02:07:21.59 ID:46vi5iZe0
  
从'ー'从「遅いですねー…」

ワタナベから通信が入る。愚痴みたいな通信。というより愚痴そのもの。
  もう10分近く待たされているが、指揮官は来ない。我々に着くべき歩哨も彼以外は誰もいなかった。

もし我々がデタラメな身分を名乗るニーソクのスパイだったらどうするつもりだったんだ?

そういう考えが浮かぶも、ブーンは自分が乗っている車体のことを考えると、
すぐにかぶりを振って笑った。そうだった。こんな珍妙なものを乗り回してるのは、
我らがVIP軍か田舎の暴走族ぐらいだ。

そういえば大学時代、ラウンジとの国境近くの国道で8000ccのバイクを乗り回している、
というバカがゼミにいたな。あいつどうしてるかな…

ブーンが取りとめも無いことを考え始めたそのとき、森から消して大きくは無い人影が出てきた。
人影の口元には僅かな光。赤い。 煙草の火だ。



  
28: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 02:13:04.95 ID:46vi5iZe0
  
(  )「―戦車が来ると聞いたぞ」

煙草をくわえたまま人影が喋る。口を開くたびに、明かりがチマチマと動く。
それに噛み付いたのはショボン曹長だった。

(´・ω・`) 「タバコを消してください。臭いが広がる」

(  )  「戦車が来ると聞いたんだが、この蜘蛛の出来損ないはなんだ?」

(;´・ω・`)「タバコを消してください。アンブッシュが台無しになります!」

(  )   「やかましい!我々は国境地帯で重装備のほとんどを失っちまった。
        相手は車両を中心とした機械化歩兵だぞ、
        こんな出来損ないでなにができる!

        …部下に肉薄攻撃を命令するのは俺なんだぞ…!」

そう吐き捨てると人影はくわえていた煙草を投げ捨て、乱暴に踏み潰した。
一瞬ブーツが光った。ラインが2本引いてあるテープが巻いてあるのが見えた。
 大尉の印だ。間違いない、彼が指揮官だ。



  
35: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 02:31:15.59 ID:46vi5iZe0
  
( ゜ω゜)「v−i−pならできるお!」

ブーンがハッチから飛び出し、大尉に詰め寄った。ブーンは時として
普段の優柔不断さからは創造できないぐらい大胆に行動する。
 それが吉と出るか凶とでるかはケースバイケースであるが。

内藤はほとんどキスしてしまいそうな距離まで詰め寄る。
気持ち悪い限りだ。 闇の中からうっすらと大尉の顔が浮かんでくる。
目が慣れたか、それとも近寄ったせいか。

( ゚д゚ )「お前が指揮官か。戦車砲を積んで無いんだろう?こいつは。
      どう直接支援するというんだ」

( ^ω^)「こっち見んなお!西部方面特殊車両研究教導団第3小隊小隊長、
      内藤ホライゾン少尉ですお!
      V-I-Pには確かに戦車砲は無いけれど、
      重対戦車ミサイルポッドと機関砲を装備してますお!十分な火力がありますお!」

闇から浮かんだ顔には目が二つ、鼻がひとつ口が一つ…
 当たり前ではあるが、ごく普通の顔であった。ただ大きく見開かれた二つの眼をのぞいて。
 その目の下には深いシワが刻み込まれており、彼の軍歴の苦労を悟らせた。



  
36: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 02:40:29.21 ID:46vi5iZe0
  
ブーンと大尉は零距離でにらみ合う。絶対に目をそらしちゃいけない。
このまんまるボタンみたいな大尉の目から目をそらししてはいけないんだ。
 勝ち負けではないが、そんな気がする。ブーンがそうやって瞬きも忘れ、
いい加減白目がヒリヒリしてきたとき、大尉はふう、と嘆息を吐き一歩引いた。

( ゚д゚ )「―自分は西遣歩兵師団 国境支隊144中隊長コッチミルナ大尉だ…」

大尉はコッチミルナ、と名乗り、ついて来い、というと森へと向かった。
 大木以外ならば、v-i-pの特性で踏破できる。ブーンは再びハッチに戻り、
こんどは自分が先頭となって大尉についていく。 
 
 慎重に目視とセンサーの両方を使いながら茂みをかき分けていく途中、ふとした
違和感。

「中隊?残りの人間は北部で布陣してるんですか?」

さっきのハッチ飛び出しの件もそうだが、これはブーンの悪いところかもしれない。
考え無しに頭の中に沸いて出た疑問が口を吐いて出てしまう。
 ー政治家にはなれないかもしれない。

中隊にしては、人数が少なすぎる。最低でも200人はいるはずだ。
だがさっきの歩哨の件にせよ、目に付く兵の数があまりに少ない。
当然といえば当然の疑問なのだが、ミルナは沈痛な面持ちだった。



  
39: 1(支援感謝なんだぜ) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 02:51:53.98 ID:46vi5iZe0
  
( ゚д゚ )「みな死んだよ。残りはこれだけだ」

ミルナはそう吐き捨てる。どう見ても30人とちょっとしかいない。
これでは一個小隊がいいところだ。

(; ^ω^)「…お…あ、大尉!144中隊といえば呼び出しコードはコメツキバッタだったはずだお!
       コメツキバッタ11小隊はどうなったかお?」

まずいことを聞いてしまった、と悟ったブーンは必死で空気を戻そうと昼間の話題を
出す。この144中隊こそが、国境付近に布陣し、
越境したニーソクの「小部隊」の監視に当たっていたのだった。

だが大尉の表情はまったく変わらない。変わりに塹壕の中でもたれかかっていた
一人の兵を呼び、おい、というようにあごで指示をする。

その兵は顔面の右半分を包帯でぐるぐる巻きにしていて、左手も添え木をしていた。
おそらく折れているのだろう。

兵は塹壕のなかでもぞもぞと動くと、ブーンの前に出て会釈をした。
右手には何かが握られているので敬礼ができないからだろう。

兵の右手にはペンダントのようなものが、
2、、、3、、、 数え切れない。



  
41: 1(支援感謝なんだぜ) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 02:57:56.01 ID:46vi5iZe0
  
(  ω) 「これは…」

兵はブーンの表情が変わるのを見て、耐え切れなくなったか。
 まず口元がぐい、とゆがんだかと思うとその場に泣き崩れてしまった。

( ゚д゚ )  「突然の出来事だった。お前達との無線が繋がらなくなり、
       故障かと疑っていたときだ。…大量の砲弾が降ってきた」

…今思えば、あれはジャミング(電波/通信妨害)を受けていたのかもしれない。
それを思えば本管と急に繋がらなくなったこと。そして通信が繋がったときのツンの
歓喜の声。すべてが上手く説明がいく。 我々には運良く腕利きのオペレーターが
ジャミングを破ってくれ、指示をくれた。

だが彼らに待っていたのは迫撃弾、ロケット弾、榴散弾。そして戦車と歩兵の蹂躙。

 さらには死のみだったんだ。



  
42: 1(地の文多い?) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 03:06:16.78 ID:46vi5iZe0
  
兵士が握り締めていたのは認識票、通称ドッグ・タグと呼ばれるものだ。
犬の名札に似てることからこんな通称が付けられている。
 兵士の氏名、生年月日、性別、血液型、所属軍、階級、認識番号、宗教等が書いてある。

そしてこれが重大な意味を持つ時。その持ち主は既に生あるものとして
この世にはいないということを意味する。

ーよく見ればどれもこれも形がゆがんでいたり、血糊がついていたり…
変形しているものばかりだった。

(  ω) 「大尉殿…」

( ゚д゚ )  「言うな。仕方が無い。死ぬのが仕事の内なのはお互い様だ」

大尉は泣き崩れた兵の肩を起こしながら言う。冷静にも聞こえるが
その声色の裏には不条理に襲い掛かる死に対する憤慨が窺い知れた。
 泣き崩れる兵士の体を抱き、肩越しに何か渡すような動作が見えた。

そうしたかと思うとすくっ、と立ち上がり、ブーン達を見据えて、一言。



  
43: 1(地の文多い?) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 03:16:39.53 ID:46vi5iZe0
  
( ゚д゚ ) 「配置についてくれ。橋の上に障害物はまだあるが、
      やつらがその気になればあっという間に消し飛ぶ。
      
      我々の陣地より東に100メートルの位置に戦車用の塹壕を掘らせておいた。 
      敵車両が現れたら撃破してくれ」
( ^ω^)「主力戦車用の塹壕ですかお? おっきすぎてv-i-pじゃすっぽり埋まっちゃいますおw」

ブーンが軽口を叩く。すると大尉の大きな目はさらに大きくなって、その凶器ともいえる視線が
さらにブーンに降り注ぐ。

( ゚д゚ ) 「…」
(; ^ω^)「…」

まずいな、本当に僕は空気を読めない男だ。拳骨の一発ぐらいは覚悟した方がいいカモ知れない。
 しかしミルナはそんなブーンの覚悟をいなすように穏やかな口調で口を開く。

( ゚д゚ ) 「ふん… ブーン少尉だったな。あとで納豆味レーションをよこせ。替わりに俺がもらう」
(; ^ω^)「聞いていたんですかお…」


( ゚д゚ )「俺もな、あの猛撃の中心地にいたんだ。11小隊のところにな。
     ・・・無線手をぶん殴りにだが」



  
44: 1(地の文多い?) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 03:26:46.61 ID:46vi5iZe0
  
(; ^ω^)「残念ながら納豆味はありませんので代わりのものなら・・・」

( ゚д゚ ) 「冗談だよ。さあ、配置についてくれ。くれぐれも頼むぞ。我々は軽火器しか
      持っていないんだ」

始めてこの大尉が笑うのを見た。大きな目がくしゃりとつぶれる。さっき見たシワが
それに引き寄せられ、くぼみとなる。

昼間見た景色が、夜はまったく違う表情で僕らを迎えたように、
人間も様々な一面をーその景色ほど器用にできないにせよー、精一杯使い分けているのかもしれない。

v-i-pには不釣合いに大きい戦車用塹壕で足場を確保しながら、
ブーンは大きな目と、深いしわを持つその大尉のことを思った。

ハッチを閉めて、センサーを注視する。
 木々がざわめき、生暖かい空気がエアクリーナーを通して入ってくる。
鼻の頭にうっすらと汗が浮かび始める。

ブーン達はこれから起こるであろう事をそれぞれ思い浮かべ、
みなそれぞれ緊張していた。風にさんざめく木々のように。



  
89: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 21:02:37.76 ID:46vi5iZe0
  
配置について、ジェネレータの電源を落としてからしばらく。
白1の後部座席にはなぜか畸形がいた。

( )・ω・`)「小隊長」
(; ^ω^)「なんだお?」

車内が何かにおうな、と思うとショボンが口をもごもごと動かしていた。
よく見れば戦闘食を口いっぱいにほおばっている。ごくん、とそれをのみこむと、
ブーンにも持ちかける。

(´)・ω・()「ためといたレーションあるんですが、食べます?」
( ^ω^)「ありがたいお。緊張して腹へってたんだお」

ショボンから手渡されたレーションを掻っ攫うと、すぐさま包装を解いてぱくつく。
まるでサルがバナナを食べるみたいで、作法も何もあったものじゃない食べっぷりだった。



  
90: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 21:06:25.32 ID:46vi5iZe0
  
( ^ω^)「珍しい味だったお。なんだおこれ」
(´・ω・`)「コンソメポタージュ味なんですけど… まあ珍しいでしょうね」

( ^ω^)「初耳だお。そんな味つけあったのかお」
(´・ω・`)「ええ。『ありました』」

( ^ω^)「…?」
(´・ω・`)「糧食開発部がいくらか前に再編されたんですけど、
      その際になくなった味ですから」
(; ^ω^)「…いくらかって…いつのだお?」

(´・ω・`)「たしか私が軍に入ってすぐでしたから…20年ぐらい前ですか」
(; ^ω^)「ちょwwwwwwwwwwwテメェwwwwww」

(´・ω・`)「まあいいじゃないですか。おいしかったでしょう?
       結構プレミアものなんですよ」

まったく。いいところでこの曹長は「はずして」くれる。
すっかり緊張がほぐれたところで、ヘルメットが揺れる。

『…ザッ…ザザ―無線封止解除。 白1。ダンスパーティは終わった。
 物足りなさげなゲストがそっちに向かった。歓待してやれ』

団長からの入電。どうやら向こうはうまくやったようだ。さすがは団長だ。



  
93: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 21:19:33.96 ID:46vi5iZe0
  
川 ゚ー゚)  『白1。聞こえているか。応答しろ』
( ^ω^)  「―し、白1迎撃命令了解だお!」

川 ゚ー゚) 『主力戦車はこちらでやっておいたが、自走無反動砲がいくらかいる。
しくじるなよ。健闘を祈る』

気が抜けないな。感心してたらすぐこれだ。ジェネレーターを起動して即応体制に入る。
じっと待つ。

まるでお目当ての星が出てくるまで待つ天体観測家の様に。

しかし空に浮かぶのは星と夢ではない。圧倒的な説得力を持つミサイルと砲弾なのだ。

そんなことを考えながらブーンとショボンはセンサーに注意を払う。
まるでセンサーの中に入り込んでしまいそうなぐらいそれを凝視する。

まだ反応は無い。 静寂。ただエアクリーナーの音だけが車内に響く。

どれだけの時が流れただろうか。すでに時間の感覚は鈍っている。
いいかげん目を離そうとしたその時

(´・ω・`)「来ました…ね。これは」



  
94: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 21:29:54.66 ID:46vi5iZe0
  
光点が…合わせて七つ。隊列を組んでいる。間違いない。目標の敵機械化歩兵だ。
無線に無かい、指示を出す。

( ^ω^)「白2、先頭の車両をやれお。当車は最後尾をやるお。
       白3!物騒な自走砲を始末しろお!」

(#´・ω・`)「はずすなよ、白2」
(; ・∀・)「この距離ではずしたら、そいつは戦車兵じゃありません!」

(´・ω・`)「よく言った腰抜け!小隊長、今です!」

( ^ω^)「小隊!僕たちの多足歩行戦車V―I―Pの初陣だ!
       お偉いさん方に御披露目するするチャンスだお!行くお!
       地獄の門を開いてやるお!小隊!!撃ち方始め!!」

小隊のミサイルが一斉に火を噴く。一瞬の出来事だった。
空気を裂く強固な意志。それは次の瞬間には隊列の前後3両は炎に包まれるという
形で発現した。

从'ー'从「自走砲一両撃破!つづいて連続射撃!目標自走砲!右二つ!」

ワタナベがミサイルを連続射撃する。のこり二台の自走砲に命中し、動きが止まる。

これで最大の脅威は沈黙した。あとは歩兵戦闘車だけだ、
と白小隊は一斉にv-i-pを目標である歩兵戦闘車の方向へと回頭する。

すると目標車両は突如正面をこちらに向け、
車体脇についてる筒のようなものを天に向けて発射した。これは…



  
97: 1(いらっしゃーい) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 21:43:52.29 ID:46vi5iZe0
  
(; ・∀・) 「サーマルセンサーの感度が!
       奴等赤外線遮断スモークを展開しやがった!
       このままだと誘導が効かなくなります!」

(´・ω・`) 「落ち着け!センサーと自分の目を信じろ!落ち着け!」

       目標の車両は煙幕(しかも赤外線すら遮断できる最新型だ)
       を展開したのだ。煙幕のスクリーンの裏で黒い影がうごめく。
        おそらく車両に搭載されていた歩兵が下車したのだろう。

       目標とブーンたちの間を河が遮っているとはいえ、
       西北の森に逃げ込まれて抗戦されると厄介だ。
       ブーンはショボンにその影に向かっての機銃掃射を命じた。

       ―ブーンたちの西の塹壕からもミルナ中隊の小銃火力が投入されているが、
        いかんせんせいぜい軽機関銃しか無い歩兵には期待薄だ。

(´・ω・`) 「了解!…しかし数が多いッ!」

从'ー'从 「展開が予想以上に速いです… あ!!ロケット来ます!!きゃあっ!」

       吹き飛んだ車両の残骸に伏せた敵歩兵がこちらに小型の使い捨て
       ランチャーを向けているのにワタナベは気づいた。

        あわてて機銃掃射が開始されたが、かまわず歩兵は発射する。
 
        弾頭は白3の車体から左20メートルぐらいの位置に着弾した。
        
        負けじとこちらも残りの車両へと撃ち返すが、奴らはスモークの幕を
        巧みに使い回避機動をする。



  
98: 1(いらっしゃーい) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 21:53:41.73 ID:46vi5iZe0
  
(; ^ω^)「うろたえるなお!ただのめくら撃ちだお!狙ったって
       この距離じゃそうそう当たるもんじゃないお!」

(; ・∀・)「この隘路で回避機動!?それにもう位置がばれたか!練度が高い!
      …!!隊長! 11時方向!歩兵戦闘車上部!対戦車ミサイル!」

モララーが指し示した方向にはスモークに隠れてうっすらと歩兵戦闘車が見える。
 その上には対戦車ミサイルが搭載してあるはずだ。そう、今まさに目標上部では
兵員がミサイルの操作を… やばい!!

(; ゜ω゜)「撃て!とにかく撃つお!照準させるなお!
        ミサイル照準まだかお!」

v-i-pが機銃掃射をする。しかし機銃弾はカン、カンと目標をノックするばかりで
肝心の敵兵に当らない。まずい、まずい。ブーンの奥歯がその不安と焦燥で
嫌な音を立てたとき、敵兵は突如ビクン、と痙攣したかと思うと、倒れた。

何が起こったのかわからないで呆けている間もなく、無線が入る。



  
99: 1(いらっしゃーい) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 22:03:19.51 ID:46vi5iZe0
  
( ゚д゚ ) 『よくやってくれた。これなら我々でもなんとかなる。
      うちの中隊の狙撃手の力をよく見ておけ』

( ^ω^)「大尉!ありがとうですお!」
(´・ω・`)「これで…命中するはずです。調停よし!」

間髪いれずショボンはその車両に向けてミサイルを撃つ。命中。爆発。
これでは中にいた兵員は助からないだろう。

…半ば手動照準みたいな状況なのに、この曹長は本当によくやってくれる。

 しかし歩兵中隊の狙撃のサポートがなければ、
今頃はあの世行きだったろうと思うと背中に冷たいものが走った。

とはいえ曹長の的確な指示で、ブーン達は残りの三台へも次々と命中させていった。
火に追い立てられる歩兵も、狙撃兵を恐れ散発的な抵抗をしたものの森へと後退していった。
 
 -そしてその背中に機銃団が襲い掛かる、というシナリオだった。逃れられぬ死。

从'ー'从「白3!ミサイルポッド残弾ゼロ!」
( ^ω^)「白1おなじくだお! 敵車両はもうのこってないかお?」

一瞬の静寂。時たま散発的に歩兵の小銃のバースト射撃の射撃音が渓谷に響く。 
 
スモークが徐々にはれてきて、破壊された敵車両や倒れた兵員が顕れる。
奇妙なぐらい静かだ。センサーも徐々に本来の性能を取り戻しつつある。
ブーンは注意深くセンサーとスコープを交互に注視する。

―そのとき。耳慣れないアラートが響いた。



  
100: 1(いらっしゃーい) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 22:07:56.67 ID:46vi5iZe0
  
―ヤマタノワロチがアラートを告げる。どうやら破片をいくらか食らったようで、
外郭装甲にダメージを受けたようだ。…いや、これはダメージだけじゃない。
このアラートは…

(;`・ω・`)「赤外線誘導照準を受けています!!」

ショボンが叫ぶと同時に、v-i-p白1が揺れた。HMDの映像が乱れ、ヤマタノワロチの
アラートがいっそう激しくなる。津波のような音がしたかと思うと、HMDはには
雨が写っていた。しかし降ってくるのは大量の土。これはどうやら至近弾だ。
こんな爆発はミサイルじゃない。無反動砲が生きていたのだ。

(; ゜ω゜)「どこだ!? どこだお!?」

あわててセンサーを注視する。ぐずぐずしてはいけない。
深い塹壕のおかげか一発目は助かったが、二発目はそうはいかない。

次は― …死ぬ!
 
 ブーンの焦燥はそのまま眼球運動となって現れる。ぐるぐるぐるぐる。
 せわしなく動く。まるで薬物中毒患者のように。

(;´・ω・`)「小隊長、あれです!11時方向 距離400!」
(; ゜ω゜)「「どれだ…どれだお!」
(;´・ω・`)「白2!お前から見て一時の方向だ!」

ハッとしたようにショボンが叫ぶ。曹長の指し示した方向には、スモークと丘陵の段差に隠れ
こちらを狙っている自走砲があった。畜生、確かに命中したはずだったのに。
不発か、それとも当たり所が悪かったか。

 いずれにせよそんなことを後悔する暇はない。



  
105: 1(ガチムチオッスオッス) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 22:27:38.32 ID:46vi5iZe0
  
(; ・∀・)「…んな…あれか!」

(#´・ω・`)「そうだ!お前がやれ!外すなよ!外したら地獄でお前を待ってるぞ!
       お前とお前の出来損ないのパパママ三人同時にしごいてやる!」

(; ・∀・)「畜生…あとで覚えてろよ…」

自走砲の砲塔の動きが止まった。来る。もはや一刻の猶予も無い。
まさにどちらの決意と覚悟が上回っていたかで人生の長短が決まる一瞬だった。

「!!」

ー轟音ののちの、静謐。

…確かに無反動砲の砲塔から弾体は発射された。しかしそれはモララー車の
ミサイルによって砲塔部「も」同時に吹き飛ばされた後だったのだ。
紙一重だった。主なき砲弾はひょろひょろとあらぬ方向に飛び、
あらぬ方向へと着弾した。 …いや、すこし西の塹壕に近いか。

ともかくブーンは九死に一生を得たのだった。

(* ・∀・)「命中!」

(#´・ω・`)「よくやった!さっきの暴言は不問に処してやる!」

(;;・∀・)「…」



  
106: 1(ガチムチオッスオッス) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 22:32:17.50 ID:46vi5iZe0
  
モララーの歓喜が曹長の地獄耳にかき消されたのち。
あとはもう無我夢中で機銃を撃っていた。

気がつくとスモークはすっかり失せていて、
V-I-Pの望遠スコープは視界を回復していた。ブーンは慎重にそれを覗き込む。
そこに残るのは大きな鉄の棺おけと、
無造作に-ウサギの糞みたいに-ぽろ、ぽろと転がる「元」人間。

体をちぢこませて黒焦げになっているものから、
四肢を投げ出し、眠りこけているように横たわるものまで。さまざまだった。

 ブーンはこの地獄絵図とも言える惨状を前に、変に冷静な気持ちでいた。
昼間の自分だったら間違いなくスコープを切るか、
広角にして空に向け、野鳥でも観察していただろう。

(´・ω・`)「幾らか逃げられたようですが・・・大勝利ですよ、小隊長」

从'ー'从「…は…はっ… 勝ったんですか?」

(; ・∀・)「ははは…どうやらそうみたいだな」

从;'ー'从「ほら、震えとまんないです、膝ガクガク行ってますよ」

部下たちの声は耳には入るが、頭には入ってこない。彼ら元「人間」の前で、
ブーンは頭が空っぽになったような心境だった。殺らなければ殺られる。

そして彼らは11小隊を皆殺しにしたニーソク軍だ。
殺すべきであった。今でもその認識は揺るがない。

 だがなにか。何かがブーンの心につかえていた。



  
108: 1(ガチムチオッスオッス) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 22:52:14.82 ID:46vi5iZe0
  
―ヘルメットが振動する。

川 ゚ー゚)『―白… 白小隊。聞こえているか。応答しろ』
( ^ω^)「お、団長!」

川 ゚ー゚)『首尾はどうだったか』
( ^ω^)「主な脅威は撃破して、作戦目標を達成しましたお」

川 ゚ー゚)『そうか、さすがだな。我々はすでに帰途についている。お前たちも
      直ちに帰還しろ。夜間とはいえヘリがくるかもしれん。対空警戒を怠るなよ』

ー切れた。

今度はこっちが呼び出す番だ。無線でミルナ大尉を呼び出す。

どうだ。v-i-pはきちんと任務を果たせただろう。

あの目の大きな大尉に一刻も早くそれを言いたかった。
世間ではそれを皮肉というのだが、この内藤=エアヘッド=ホライゾン
にはそんなことまるで思いもつかなかった。

( ^ω^)「主な脅威は撃破したが、歩兵は随分逃がしたかもしれないお。
      十分に警戒しつつ撤退してくれお。ブーンたちは帰還命令が出たので本管に帰るお!」

(    )『…』

( ^ω^)「ミルナ大尉!了解しましたかお!」



  
109: 1(ガチムチオッスオッス) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 22:55:20.68 ID:46vi5iZe0
  
応答は無い。おかしいなと思いつつも無線にがなりたてていると
誰かがハッチをノックした。ペリスコープで除くと、さっきの兵がいた。

包帯でぐるぐる捲きの満身創痍のあの兵だ。
ブーンはハッチから身を乗り出し、意外な来訪者を迎える。

( ^ω^)「どうかたしたかお?さっきから大尉と無線が繋がらないー」

( #゚д\`)「支援感謝いたします。指揮官・無線手戦死のために
  伝令に参りましたコッチミンナ上等兵です」

(  ω )「……」

( #゚д\`)「144中隊の戦死者、生存者全てに代わり御礼申し上げます。無事の帰還をお祈りいたします」

そういって自由になる右手で敬礼をする。相当痛むのだろうか。動きがぎこちない。
だがブーンにはそんなものは目に入っていなかった

(  ω)「無反動砲の流れ弾が…当ったのかお…?」

( #゚д\`)「ブーン少尉殿、−これを」

先ほどはよく見えなかったが、この上等兵もなかなか大きい目をしていた。

―さっきまで無線で軽口を叩き合っていた誰かのように。

ごそごそと戦闘服の中から器用に何かを取り出し、内藤に差し出す。
その手に握られていたのは― 鈍色に光る拳銃だった。



  
112: 1(四話なげぇぇぇえ) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 22:59:49.03 ID:46vi5iZe0
  
( ^ω^)「……これは」
( #゚д\`)「少尉殿。我々は少尉と戦うことができて誇りに思います。
       数々の非礼。中隊を代表してお詫び申し上げます。それでは失礼いたします」

そう言い放つと上等兵はまたヨタヨタと塹壕へ戻っていった。たまらず内藤は呼び止める。

( ^ω^) 「ミンナ上等兵! まさか大尉は…大尉はあんたの!」
(    ) 「―…父でした。因果なものです。死ぬべきものが生き残って、
       生きなければいけないものが…」

そこで言葉はつかえた。しかし上等兵は喉を振り絞って、一言。

#;д\`) 「少尉殿。武運長久をお祈り申し上げます。
        ―その…父をよろしくお願いいたします」

あの暗闇の中、傷ついた兵士の肩を抱いたミルナ大尉。
それはまさに息子を抱く父そのものだったのである。その父ができたこと。

ーそれは万が一の場合に備えての自決用の拳銃を渡すことだけだったのだ。
   ニーソク軍の一部には捕虜をとらず、「残虐」な行為に興じる部隊があるという。

ブーンの頭はすでに何も考えられなくなっていた。
虫のようにバタバタとのように死んでいく部下。そして息子に与えられる最後の思いやりを
こういった形でしかできなかった悲しい運命。

時代を呪うのは簡単だ。だがブーンの手にはずっしりと鈍色の拳銃の重みがのしかかる。
それは現実という重さだった。



  
125: 1(四話なげぇぇぇえ) ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 23:25:51.63 ID:46vi5iZe0
  
(´・ω・`)「―小隊長」
(  ω )「…」

(´・ω・`)「その拳銃の所持手続き、私がやっておきましょう。
      …書類のそういった類の改ざんには慣れっこです」

(  ω )「…ショボン、ありがとだお」

殺さなければ殺される。殺されたらサッカーもできないし、ドクオにも会えない。

 戦争に宗教は付き物だ。だけど僕は神様なんて信じちゃいない。
しかし誰にでも信じるものは必要だ。

そういう点で僕は非常に恵まれていると思う。僕の小さい背中を守ってくれている
このしょぼくれた顔の曹長と、部下たちがいるから。
 
そう考えたところで合点が行った。さっきの胸のつかえが一体何か。やっとわかった。



  
127: 1 ◆OC3qKKb/tI :2006/12/22(金) 23:32:24.21 ID:46vi5iZe0
  

『僕は善人でいたいですが ドクオだけを殺さずに 
          ニーソクの豚どもを皆殺しにする方法は無いですか』

ーどこにもそんな虫のいい願い事を聞いてくれる神様なんていないから。

東への帰路をとるブーン小隊。夜明けは近い。
計器に反射し、腰の拳銃が僅かに光る。

 ーいい加減で気まぐれな神様を呪うかのように。



第五話  『river no return』
                             終 第6話に続く



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