( ^ω^)ブーンが多足歩行戦車に搭乗するようです
- 42名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/09(土) 22:15:30.22 ID:gKRfj78B0
第3話
(歩兵) 「コメツキバッタ11より 白1。 送れ」
( ^ω^)「コメツキバッタ11.こちら白1。送れ」
2026年9月21日 1130時。
ブーン達はニーソク人民共和国との国境近い丘陵地帯に展開していた。
白、は彼らの小隊の符号。白・赤・黄・黒。それぞれが3両ずつの4小隊。
計12両から中隊は構成されている。 ブーンは小隊長としてこの丘陵に派遣され、任務についていた。
尾根に残暑の陽光は容赦なく照りつける。だが車両のエアクリーナーを通して僅かに薫る緑は
わるい物ではなかった。
- 43名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/09(土) 22:33:08.65 ID:gKRfj78B0
( ^ω^)「・・・・・・弾着いま!送れ」
( 歩兵)「白1、こちらコメツキバッタ11。弾着確認、右へ100、落とせ200、効力射を要求。送れ」
彼らが今ついている任務は、三週間前の9月1日。ある事件をきっかけに国境を越え侵攻した
ニーソク人民共和国の部隊に、重迫撃砲をもちいて打撃を加えることだった。
彼らの操る多足歩行戦車V−I−Pは『便利』な機体だ。
8本の脚部は人工筋肉によって稼動し、僅かなジェネレーターの電力によって作動する。
即応性も高い。また脚部を伸縮することにより重心の上下が容易であり、機敏な起動。
熟練者があやつり、整った路面であるなどの適当な条件さえあれば『ジャンプ』すら可能だ。
蜘蛛を思わせるようなその外見。一見小型だが多重外殻構造の装甲を持っており、
歩兵携行の対戦車ミサイルなどに対しては有効な装甲となっている。
- 44名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 22:51:47.20 ID:gKRfj78B0
もちろん欠点も多い。
人工筋肉は確かにレスポンス、稼動域などにおいて車輪・キャタピラには大きく勝る。
しかしやはりエンジンの出力にはかなわない。結果的に車体は軽量化・小型化することになり、
必然的にMBTに搭載するような大口径の砲は積めない。
コックピットにダミー君人形を入れ、105ミリ砲を試作的に搭載したvーiーpでの射撃実験は、
技術者が顔面蒼白する結果となった。その技術者は、バク転し擱坐した車両から文字通り
「粉々」になって出てきたダミー君人形を、賞与で弁済するハメになったらしい。
またこの車両は車体上部のハードポイントに複数の火器を搭載できる。対空ミサイル、対戦車ミサイル、
機関砲。ロケット砲。今回搭載している重迫撃砲もそうだ。
それぞれまったく運用方法も操作方法も違うこれら火器を運用するのには、
V−I−Pに搭載されているOS「ヤマタノワロチ」が不可欠だ。 当然乗員にも相当の練度を要求される。
他にもいろいろとあるのだが、とりあえずブーン達はこの国境地帯に闖入した招かざる客達をけん制するため、
だらだらと迫撃弾を打ち込んでいた。まるでこの初秋の日差しのように。
- 46名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 23:03:01.02 ID:gKRfj78B0
( ^ω^)「午前中の投下終わりにするお。送れ」
(歩兵 )「早いなw もうメシか?w」
( ^ω^)「だおだおw今日のレーションは何味か楽しみだおww」
(歩兵 )「納豆味あったら後で交換してくれ。 交信終り」
( ^ω^)「了解だお。交信終り」
(´・ω・`)「少尉…」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「無線の私的交信は現金だとあれほどいったじゃないですか」
(; ^ω^)「おっおー‥ またクー団長に怒られるかお?」
(´・ω・`)「…私は何も聞いてません。あとは先方と少尉がうまくやってくださいよ」
( ^ω^)「了解だお!」
- 48名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 23:19:37.13 ID:gKRfj78B0
( ^ω^)「白2、白3。食事にするお!交代で1人ずつ出てくるお!」
無線で各分隊長に呼びかける。すぐさま了解、の返信。
薄暗い車内とちらつくHMDに辟易していたのだろうか。彼らの声は明るい。
(´・ω・`)「私は無線に張り付いてますから、少尉お先にどうぞ」
( ^ω^)「いいのかお? ショボンありがとだお!!」
そういうとブーンはタンキストスーツの腕についているスイッチを押す。
空気が一気に抜ける音がしたかと思うと、ブーンはハッチをあけ、勢いよく外へ飛び出す。
( ^ω^)「ぷはーーッ! やっぱ外は気持ちいいお!」
彼らが身に付けるタンキストスーツは特注だ。
VーIーPは小型の車両に2人が乗るため、ほとんど身動きが取れない。
戦車というより航空機のコックピットに近い。脱出時、計器や操縦桿に服が引っかかり、
生存性の低下をひき起こすのを防ぐため突起やたるみをほとんど排除した全身タイツのようなものとなっている。
胸から腹部、背中には主要な臓器を守るためのケプラーとチタンの複合素材のプレートを付けてはいるが、
下半身に関してはおおむね女性クルーからは大不評である。
いまブーンがした操作は、空気圧によってスーツの一部をふくらませ、コックピットに体を固定させていたのを
解除したのだ。高級なシートベルトといったところだろうか。だが様々な体格の兵士に完璧に適応しているとは言いがたく、
彼らの腰痛の原因の1つとなっている
- 53名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 23:53:47.71 ID:gKRfj78B0
( ・∀・) 「小隊長!お疲れ様です!」
从'ー'从「おひゃきにいただいてまひゅよ〜」
キョロキョロと小動物のような黒いまんまるな瞳の男がモララー1等軍曹。
すでにレーションをほお張りながら喋っているのは ワタナベ上級勤務伍長だ。
長ったらしいので2人とも隊では単に「軍曹」か、ワタナベの場合「超伍長」と笑われながら言われている。
これは長たらしい階級名だけでなく、彼女の性格もその一因ではあるのだが。
本来上級下士官がこなさなければならない分隊長の任であるが、ここにも人員不足の弊害が出ていた。
(; ^ω^)「お前達早すぎだお…」
从'ー'从「はひゃいとこたびぇてこうひゃいしにゃけひゃいけひゃいでひゅかひゃ」
( ^ω^)「日本語でおk」
( ・∀・)「早いとこ食べて交代しなけりゃいけないですからね」
(; ^ω^)「お前すごいお…」
- 54名前: 1投稿日: 2006/12/10(日) 00:07:30.77 ID:1smMNJyK0
( ^ω^)「そうだお!納豆味のレーション、ストック無いかお!?」
(; ・∀・)「あー ありますよ まあ…なんだ。その…」
从'ー'从「このレーション悪くなってませんでしたー? なんか変なニオイしましたよ?」
(; ・∀・)「ありました、と言いますか…」
从'ー'从「次はどんなのありましたっけ〜」
ワタナベは小体長とモララーの会話を、まるで100マイル先で行われているアメリカン・フットボールの
ハドルみたいに意に介さず、レーションを漁る。
(; ^ω^)「参ったお・・クー団長に怒られるかもだお」
( ・∀・) 「怒られなかった日があるんですか?」
相変わらずこの小動物のような男は、他人がなかなか言い出しにくいことをズバズバという。
もっとも、そのあたりを買われてクーからスカウトを受けたのだが。内藤自身もモララーのことは嫌いではなかった。
事実、訓練においてクー隊長の駆るV−I−Pに撃破判定を与えた数少ない車長のひとりであるなど、
彼の言葉は自信と経験に裏打ちされたものだった。
- 56名前: 1投稿日: 2006/12/10(日) 00:27:44.15 ID:1smMNJyK0
( ^ω^)「モララーは術科学校でクー団長と同じだったのかお?」
( ・∀・)「ええ。最初はビックリしましたね。幹部候補生。半年もすれば少尉様になるエリートが、
なんでこんなところに?って」
2人はワタナベのことはもう諦め、おぞましい色をしているレーションをぱくついていた。
オレンジ色のフレーク状のレーションを水筒で飲み干すと、モララーは続けた。
( ・∀・)「そりゃ最初は反発しましたよ。こんなお嬢様、一発で音を上げるに決まっている。
ここは俺達の場所だ。狭い鋼鉄の棺おけの中で、殺し、死ぬことができる
俺達の場所だ、って。 ところが音をあげたのはー」
(; ^ω^)「モララーたちのほうだった、かお? …そのフレーク何味だお?」
( ・∀・) 「グレープフルーツ味。 そうですね。ありゃ大雨の日だったかな。酷いぬかるみでした。
誇張抜きで、だ。俺の足の長さぐらいある砲弾を、ひたすら戦車に積み、そして降ろす訓練があった」
あれはいつだったかなー。
モララーは「フルーツポンチ味」とラベルのあるレーションをあけながら語りだした。
とりあえず糧食開発部は腹を切るべきだろう。
- 61名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/10(日) 00:53:45.89 ID:1smMNJyK0
ー2019年 vip共和国軍 戦車術科学校敷地内
ぜえ、ぜえ、ぜえ。
目がかすむ。足がぬかるみに沈み、力が入らない。
ベシャッ!
(#-∀・)「ぐえッ!」
/ノ 0ヽ
_|___|_
ヽ( # ゚Д゚)ノ「モララー生徒!また落としたか!腕立て40回!」
畜生。また落とした?何キロあると思ってるんだ、この砲弾。
ヽ( # ゚Д゚)ノ「不服そうだな!ああそうだ!やめちまえ!貴様みたいなクズは歩兵になっちまえ!
ダッチワイフでも乗せてたほうががまだ戦車が見栄えする!」
( メ∀・)「モララー生徒腕立てします!故郷に1回!共和国に1回・・・!」
ヽ( # ゚Д゚)ノ「声が小さい!またコーヒーを飲みたいか!?」
野郎。頭を踏みつけやがった。顔面が泥水まみれになる。息ができない。
そのまま腕立てを続ける。頭を抑えられ、思うように体が上がらない。
( メ∀・)「上官に1回!!愛する戦車隊に1回!!」
- 62名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/10(日) 01:02:36.44 ID:1smMNJyK0
ヽ( # ゚Д゚)ノ「よおーし!!それだ!それでいい! あと3セットで許してやる!!
熱いシャワーを浴びられるぞ!」
熱いシャワー。なんてすばらしいんだろう。この忌々しい泥と汗とおさらばできる文明の利器だ。
不覚にも一瞬想像してしまい、腕の筋肉が緩む。教官はそれを鋭敏に察知し、踏みつける!
ヽ( # ゚Д゚)ノ「馬鹿めが!あと5セットだ!」
こいつは絶対変態だ。俺達を苦しめる様を覚えておいかないと、
不細工(であろう)嫁とヤる時に、たたないんだろう?
周りを見ると、どこの分隊も同じようなものだった。
もちろん俺の分隊のメンバーは全員何百回と腕立てをした。
そんなことに一抹の安心感を覚え、再び砲弾を受け取る。
そのとき、とんでもない声を聞いたんだ
- 64名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/10(日) 01:17:33.13 ID:1smMNJyK0
川メ゚ー゚)「クーク分隊!作業完了しました!!」
え…? …馬鹿な。あの細腕で?俺は眼を疑った。あのお嬢様が、何故?
確かに彼女の軍服は泥だらけだった。美しい銀髪も、泥がこびりついて乾き、
魚網のようになっていた。だが、なんて形容したらいいんだろうか。
小さい頃、クレヨンを使って絵を書いたことがあるだろ?クレヨンで書いた後に、絵の具で塗りたくる。
そうすると絵の具はクレヨンを避けちまう。
…きっと俺には文才が無いな。まあいいさ、けどそんなふうだった。そんなふうに、
彼女の大事な部分だけは、何かこう、泥から避けている。そんな感じだったんだ。
不覚にも俺は見とれていた。あれに眼を奪われない奴は、男じゃない。そう思っていると…!
ヽ( # ゚Д゚)ノ「危ない!!!」
- 67名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/10(日) 01:30:58.59 ID:1smMNJyK0
やっぱり俺は大馬鹿野郎だった。目が覚めて、最初に飛び込んできたのは真っ白な天井。
( -∀-)「お…ここは?」
体を引き起こそうとすると、激痛が走る。一瞬何が起こったか事態を把握できなかったが、
首を起こして足元を見てみると左足にはいかめしいギプスがはめられていた
川 ゚ー゚) 「気がついたか」
( -∀・) 「クーク…曹長?」
幹部候補生である彼女達は、少尉任官するまでのごく短い期間を曹長の身分で過ごす。
方や我々は術科学生。一応上等兵並みの待遇は与えられているが兵ですらないハンパものだ。
既にここから俺と彼女の差はあった。
川 ゚ー゚) 「すまんな」
( -∀・)「?」
川 ゚ー゚)「熱いシャワーは無理だったが、代わりに私が拭かせてもらった」
何を言ってるんだ。この女は。吹いた?噴いた?
とっさ手を頭に伸ばしてみると、髪の毛に凝りついていた泥は綺麗になくなっていた
( ・∀・)「俺は一体…」
川 ゚ー゚)「雨で手を滑らし、受け渡された砲弾を足に落として骨折した。よくある事故だ」
- 68名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/10(日) 01:45:01.76 ID:1smMNJyK0
( ・∀・)「そうですか…」
よかった。気づかれてない。女に、しかも一応上官に見とれて、砲弾を落として骨折。
そんな奴は、『間抜け』という。栄光あるタンキストじゃない。
川 ゚ー゚)「詳しくは話せないがー…
どうしてもな。上に昇らなければならない理由があるんだ」
( ・∀・)「!?」
俺は、上手くやっていたはずだ。この女に気をとられていた素振りなんかこれっぽっちも見せていたはずはなかった。
( ・∀・)「な、なななんでそんな話を?」
川 ゚ー゚)「違ったか?お前は私をよく見ていたからな。てっきり」
結局、彼女にとって俺は路傍の石に過ぎなかった。綺麗な花に絡み付いてくる醜いツタ。
結局俺もそんなふうに思われていたのか。
よく考えてみれば、そうだ。俺はこの花に噛み付いて、栄光どころかギプスをもらっちまった。
川 ゚ー゚)「養生しろ。それからこれはな、教官からの差し入れだ。私は内容について感知しないが」
そういって彼女は紙袋を渡す。どうやら雑誌のようだった。
- 69名前: 1 ◆OC3qKKb/tI 投稿日: 2006/12/10(日) 01:54:18.71 ID:1smMNJyK0
( ・∀・)「曹長!!」
川 ゚ー゚)「教官を恨んでくれるなよ。あれが彼らの仕事だ」
( ・∀・)「違うんです…曹長は…曹長は」
言葉が出てこない。喉を搾り出すが、嗚咽しか出てこない。
俺はどこまでグズなんだ。
川 ゚ー゚)「−私と同じ景色が見たかったら」
( ・∀・)「!!」
川 ゚ー゚)「まずは最高のタンキストになってくれ。そうしたら必ず迎えに行く」
俺は泣いた。声を出して泣いた。
そして半年後、卒業直前に曹長は姿を消した。教官に問い詰めたが、
『お前等の知ったことではない』と腕立て伏せを食らった。
秘蔵の「雑誌」を渡しても、口を割っては呉れなかった。
だが俺には判っていた。彼女は花であることをやめ、戦士になったのだ。
卒業の日。
術科学校最優秀生徒として表彰されながら、俺は確信していた。
- 72名前: 1 ◆OC3qKKb/tI 投稿日: 2006/12/10(日) 02:05:59.30 ID:1smMNJyK0
※
※
(; ^ω^)「…クーはやっぱりすごいお…」
( ・∀・) 「まあ泣いた後、きっちり抜いたんですけどね」
( ^ω^) 「お前やっぱり最低だお」
( ・∀・) 「大変でしたよ。足伸ばせないから、一発抜くのにも時間がかかってかかって」
从'ー'从 「何の話ですかー?」
台無し。本当にこいつらは国内屈指のタンキストなんだろうか?ワタナベの間延びした声は、
そんな疑問を抱くことすらつまらないようなことに思える
从'ー'从 「しかし小隊長〜?」
( ^ω^) 「お?」
从'ー'从 「私達のこの作戦、本当に団長が考えたものなんでしょうか〜?」
( ^ω^) 「?」
从'ー'从 「だっておかしいじゃないですか〜。いくらけん制とは言っても、たった三台の重迫撃砲ですよ?
集中運用するべきの火砲なのに、効果があるかどうか疑問ですよ〜」
( ^ω^) 「!!」
从'ー'从 「それに、この作戦私達がやる意味があるんですか〜? 確かにこの丘陵は車両は入れませんけど、
歩兵なら昇れないということもないですし〜」
この女は。時々本当に鋭い。こんな性格も「超軍曹」と敬意を込めて揶揄されるゆえんだろうか
( ^ω^) 「それはブーン達の考えることじゃないお…」
我々は兵士だ。そんなことは考える必要は無い。疑念を頭から振り払おうとしたとき、ハッチからショボンが出てきた。
(´・ω・`) 「隊長、ちょっときてください。何かおかしいんです」
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