( ^ω^)に白い羽根が降り注ぐようです
- 18 :師走 ◆PrFAiB62h2 :2006/12/11(月) 23:31:29.98 ID:ONJHdKAq0
−The first piece−
はぁはぁ・・・
間に合わない、か?
(#^ω^)「あと少し・・・」
「まもなく〜8番線の列車が発進します。駆け込み乗車はおやめ下さい〜」
僕の住む尾府は人口もそこそこ多く、高層マンションが多く立ち並ぶベッドタウンである
都心部に近い事もあり、ここ数年は急激な都市開発が進んでいて古くからある街並みは少しを残すだけとなった
JRの本数も増え開かずの踏み切りが多くなった
- 20 :師走 ◆PrFAiB62h2 :2006/12/11(月) 23:32:52.80 ID:ONJHdKAq0
( ^ω^)「ふぅ・・・座れてよかったお」
まぁそんな事は置いておいて・・・。僕は今バイト先へと向かっている
僕の働く職場は街から少し離れた場所に最近出来た
「第3種尾府空港」
JRとモノレールを乗り継ぎ片道30分、その道のりを僕は週に5日往復する
別にこれと言って空港に興味があった訳でもない
ただ募集が大漁にかかっていて採用され易そうだったのと時給の良さに惹かれた、それが正直な所だ
仕事の内容は空港内の警備、巡回。空港警備って響きだけ聞くとなかなか大変そうだが
それ程揉め事も起こりはしないし、空港内に交番もあるから大抵は道案内とか迷子の案内に限られる
ちなみに第3種空港とは地方自治体と国が経営している空港の事で、今のところは国内線のみだ
電車の窓から覗く景色がだんだんと田舎に向かっていく
そらは少しどんよりと曇っており、傘を持って来なかった事を少し後悔した
「まもなく丹生束〜お降りの方は〜」
僕は車内アナウンスを聞いて慌てて鞄を肩に引っ掛けた
丹生束からはモノレールに乗り換えるのだ。ここから空港までは最短で15分で着く
- 23 :師走 ◆PrFAiB62h2 :2006/12/11(月) 23:35:43.93 ID:ONJHdKAq0
( ^ω^)「切符切符・・・」
切符をまさぐりながら電車を降りる。外は昼間だというのにかなり寒い
スルリと改札を抜け、モノレールの駅への連絡橋を渡る
まだ出来てすぐの真っ白な通路は歩いていても気持ちがいい
同じ通路を数人のサラリーマンやキャリーバックを持った少年少女が歩いていく
このモノレールに乗るのは旅行者か、空港職員くらいだ
券売機の前には数人の列が出来ていた。僕は財布から小銭を取り出してその列の最後尾で足を止めた
一人、また一人と切符を手に改札へと歩き出す。しかしそれは僕の目の前で止まる事となった
前に並んでいた女性が小銭をぶちまけてしまったからだ
『ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ あ、スイマセン』
女性は頭を下げて小銭を拾う。しかし列に並んでいるのは僕と数人、そんなに気にしなくてもいいのに・・・
自然と小銭拾いを手伝う。
『ありがとう』
少し紅く染まったその顔は見覚えがある顔だった
- 26 :師走 ◆PrFAiB62h2 :2006/12/11(月) 23:40:14.54 ID:ONJHdKAq0
( ^ω^)「あ・・・」
ξ゚听)ξ「え?あ・・・昨日の人?」
ファー付きのパーカー、チェックのミニスカートに茶のロングブーツ
髪はゆる巻きで少し胸元の開いたベロアのカットソーが目に入る
目の前の真っ赤な顔をした可愛らしい女性は、昨日定期を拾ってくれた人だった
( ^ω^)「昨日はどうもですお」
ぺこりと頭を下げて拾った小銭を手渡す
ξ゚听)ξ「こちらこそ助かりました。ありがとうございます」
小銭を渡す瞬間、手が微かに触れた。すこしひんやりとして柔らかい手だった
彼女はお金を受け取ると改札をくぐった。あ、そうだ・・・僕も急いで買わないと・・・
あらかじめ手に握った小銭を券売機に投入し、そそくさと切符を買う
- 29 :師走 ◆PrFAiB62h2 :2006/12/11(月) 23:46:03.02 ID:ONJHdKAq0
改札をくぐった時、思わぬ顔がそこには待っていた
・・・今日は朝から驚く事が多いな
(;^ω^)「お・・・」
ξ゚听)ξ「あなたも空港の人だよね?昨日のIDで分かっちゃった(笑」
( ^ω^)「あなたも・・・って事は君もかお?」
僕の問いかけに彼女は笑顔で頷く
ξ゚听)ξ「喫茶店で働いてる津出玲香って言います。あなたは?」
( ^ω^)「僕は〜」
話しながらモノレールに乗り込む。これは・・・フラグなんだろうか?
- 32 :師走 ◆PrFAiB62h2 :2006/12/11(月) 23:48:33.57 ID:ONJHdKAq0
僕達は隣同士座り仕事の話などで盛り上がった。どうやら同い年らしい
髪型のセットが毎朝大変だとか、大学に入った途端に友達がしょっちゅう合コン誘ってきて困るとか・・・
そんなたわいも無い話だったけど、なんだか学生時代に戻ったみたいで楽しかった
「間も無く、終点、尾府空港駅に到着します」
アナウンスと同時に立ち上がる。窓からは、丁度飛びたつ瞬間の飛行機が目に入った
真っ白な機体が曇り空に吸い込まれていく
ξ゚听)ξ「飛行機・・・好きなの?」
彼女も曇天に吸い込まれていく白い翼を見つめている
( ^ω^)「そうでもないお」
僕は一言そう言うと自動ドアの前で開くのを待った
ん?今日はやたらと護送車や機動隊みたいな格好をした人が空港周りに多いな・・・
VIPでも来るんだろうか?そういう情報はいつもバイトにまでは教えてくれない
ξ゚听)ξ「なんだろう?」
( ^ω^)「さぁ・・・」
これ以上この子と関わりたく無かった。深く関わると気になってしまいそうな予感があったから・・・
- 33 :師走 ◆PrFAiB62h2 :2006/12/11(月) 23:50:45.68 ID:ONJHdKAq0
それから改札を抜け、空港に入る手前までお互い無言だった。彼女も僕の態度を察したのだろう
僕達は一般入り口とは逆の、職員用通路。裏口に回る。そこで警備員に止められた
('A`) 「IDカード見せてもらっていいっすか?」
ξ゚听)ξ「お疲れ様です、はい」
( ^ω^)「はいだお」
顔写真入りIDカードを確認すると道を開けてくれた
('A`)「ご協力感謝します。どうぞー」
空港に入ってすぐの所で彼女が口を開いた
ξ゚听)ξ「私、二階で働いてるからお昼にでも来てね。じゃね」
僕の返事を聞かぬまま女子ロッカーへと歩いていく
・・・・・・
・・・
・
( ^ω^)「あんまり関わると・・・ だお」
僕は一人そう呟いて、男子ロッカーに入った
- 36 :師走 ◆PrFAiB62h2 :2006/12/11(月) 23:52:09.75 ID:ONJHdKAq0
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(´・ω・`)「ドクオ、交代だよ」
しょぼくれた顔をした男が痩せた男に話しかける
('A`)「お、もうそんな時間か。ショボンもう飯食ったか?」
痩せた男が頭を掻きながら言葉を返す
(´・ω・`)「いや、今日は忙しくなりそうだから食べたかったんだけどね」
('A`)「そういやそうだな、今喰わなきゃ喰えそうにないんだけどな・・・」
二人は大きく溜息を吐く。空腹でこの寒さの中屋外警備は正直御免こうむりたい、と言う顔だ
『今日は極秘にVIP用通路を使って首脳陣がここから自家用機で帰るって事だからな・・・空港周りも警察がいっぱいだ』
雲行きが怪しくなってきた空を見つめ、二人の警備員の腹が鳴った
−Next begins−
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