( ^ω^)ブーンがJ( 'ー`)しカーチャンに親孝行をするようです
- 3: ◆QueeniallQ :2007/01/02(火) 23:44:32.74 ID:Cgn8K9sm0
- チュンチ
チュンチュン━━━━
( ^ω^) 「お・・朝かお」
ブーンにとっていつもより快適な目覚めに感じたのは
母の急病に加え、ここ最近めったに見なかった夢で
走馬灯のように昔を無理やり思い出させられていたのだが
今朝はそれがなかったためだろう
( ^ω^) 「(朝ごはんどうするお・・)カーty・・!」
そう、そこまで言ってブーンは気づいた
母は今ここにいない 食卓にも襖をはさんだ隣の部屋にも
- 4: ◆QueeniallQ :2007/01/02(火) 23:49:03.29 ID:Cgn8K9sm0
- ( ^ω^) 「・・・・」
ブーンは日課になっている毎朝仏壇に焚く線香に火をつけ
普段より長く手を合わせていた。ただ、いつもとは違い
なにを報告するでもなく、考えるでもなく、ただ合掌を続けていた
( ^ω^) 「腹減ったお・・何か作るお」
といっても冷蔵庫には価格高等の煽りを受け、安売りされていたキャベツ
それに牛乳1?パックが半分残っているだけだった
母が倒れた日、その日は丁度買出しの日だった
( ;^ω^) 「(流石にこれはどうしようもないお・・ お)」
そのときブーンは気づいた。テーブルの上にあるホットケーキミックスに
- 5: ◆QueeniallQ :2007/01/02(火) 23:52:04.34 ID:Cgn8K9sm0
- ( ^ω^) 「これは・・」
それはさかのぼること一ヶ月
( ^ω^) 「何かお菓子でも作ろうかお・・」
ブーンはふと気まぐれにそんなことをこぼした
母は無言で夕飯の支度をしている
J( 'ー`)し 「・・・ちょっと材料足りないから、買い物行くね 行く?」
( ^ω^) 「いや、いいお いってらっしゃいだお」
ブーンはおそらく一般家庭の18歳の子供にしては
母の買い物に付き添う回数は多いほうだ
しかし今日はなんとなく気がのらなかった
- 6: ◆QueeniallQ :2007/01/02(火) 23:57:24.47 ID:Cgn8K9sm0
- J( 'ー`)し 「・・・ただいま」
( ^ω^) 「お?おかえりだお ずいぶん早くないかお?」
J( 'ー`)し 「買うもの決まってたからね・・」
そういうと母は再び軽快なリズムで包丁まな板に打ち付けはじめた
ブーンは特売で売っていた3千円のCDラジカセにイヤホンをつないだまま
母のだすものとは似つかないリズムをスティックに力を込め虚空に振っていた
J( 'ー`)し 「ご飯、できたよ」
その声は息子の耳に入ることはないだろう
決して聞こえのよくない声と、素人のような下手糞な楽器
その音に確実にかき消される しかしブーンはCDを止め
いつものように席に座る
( ^ω^) 「いただきますだお」
- 7: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 00:05:00.68 ID:K33UsP3A0
- ( ^ω^) 「ご馳走さまだお」
その後ブーンは寝転び雑誌を読み始めた
J( 'ー`)し 「お菓子、作らない?」
( ^ω^) 「あー・・今日はいいお また気が向いたら作るお」
J( 'ー`)し 「そう・・ちょっと調子悪いから、もう寝るね。おやすみ」
( ^ω^) 「大丈夫かお?あんまり無理はしちゃだめだお。おやすみだお」
顔だけ母のほうに向け、機械のような動きで元の位置に戻した
気づけば日をまたぐ頃
( ^ω^) 「(のど乾いたお)」
ブーンは水道から直接コップに水をそそぎ一気に流した
しばらく家では水道水以外を飲んだ記憶がない
学校ではウォータークーラーでカルキ臭さの無い水を飲める
( ^ω^) 「・・・なんだお?これ」
ブーンの目の先に止まったのは
机に置かれたホットケーキミックスの袋だった
母は息子の一言がなければ「買出し」にはいってなかっただろう
- 8: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 00:15:32.64 ID:K33UsP3A0
- ( ^ω^) 「・・・・」
手に取ったまましばらくボーっとしていた
( ^ω^) 「(カーチャンに・・食べさせてやるかお・・。)」
そんなことを考えながらテレビをつけた
今日から冬休み 大学に行くためにあせることも無い
「━━━さぁー、今年もクリスマスがやってきましたねー」
( ^ω^) 「クリスマス・・あぁ、もうそんな時期かお・・
今年はケーキどうしようかお・・。」
クリスマス、宗教感の薄い日本では馬鹿騒ぎするだけの祭り
メインになるのはおそらく街を彩るイルミネイション、照らされる恋人達
しかしブーン一家は毎年家族でゆっくりとすごしている
ケーキはブーンの手作りだった。
- 12: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 00:42:53.25 ID:K33UsP3A0
- ブーンが物心付いた頃には、ブーンが主な作業をし
母は補佐役だった。デコレーションこそ下手糞、そして
スポンジはそんなにふくらんでいないもののお店のような
安っぽい物とは違い、果物缶をふんだんに使った三段が定番だった
( ^ω^) 「そうだお・・クリスマスケーキ、今年はカーチャンを驚かしてやるお」
ブーンは母に隠れてひそかに色々なお菓子に挑戦していた
クッキー ブラウニー スコーン ザッハトルテ etc...
友人からもらったオーブンがあったので、それを活用していた
一番の驚きは市販品を買ったほうが安く済む ということ
( ^ω^) 「スポンジ・・ことしはミックスを使わずに自分で作るお」
さっそくブーンはバイト代の入った袋から1000円札を勢いよくだすと
それをポケットに押し込んで自転車を走らせた
- 42: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 21:48:21.04 ID:K33UsP3A0
- ( ^ω^) 「(なんでバターはこんなに高いんだお・・。生クリームも
植物性なら1/3で帰るのに動物性ときたら・・。)」
心の中で愚痴を言いながらクリスマスセール真っ只中の
地域色まるだしのスーパーで商品を眺めるブーン
( ^ω^) 「(ホイップに小麦粉100円・・砂糖はおk・・後は・・缶詰と・・)」
少ない脳みそをフルで働かせ、レシピを考えるブーン
ドン
( ^ω^) 「(えぇと・・後は・・何が必要かお・・)」
( ^^ω) 「おい!思い切りぶつかって謝りもなしか」
( ^ω^) 「お?なにかいったかお?ヒシャゲ顔野郎」
( ^^ω)「な・・てめぇ!」
- 44: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 21:55:15.48 ID:K33UsP3A0
- ( ^ω^) 「一々そんなことで怒ってて・・疲れないかお?」
( ^^ω)「うるせぇ!ていうかなんだよてめぇはよ 何様なんだ」
( ^ω^) 「四様だお」
( ^^ω)「あ!?ブッコロスz・・」
丁度店の隅のほう、人が少ない場所で
口論になっていた二人。ヒシャゲ顔の男が
ブーンにつかみかかろうとしたそのときだった
( ^ω^) 「お前も、死にたくないお?」
( ^^ω)「ちょ・・う・・」
ブーンはサバイバルチームと書かれた
刃渡り8cmほどの多機能ナイフを相手に向けた
( ^^ω)「おま・・なんなんだよ」
( ^ω^) 「・・・四様だお」
その後ヒシャゲ顔は商品も買わずに店を出て行った
この間約30秒ほどだろうか 相変わらずこの一角に客は来なかった
( ^ω^) 「(・・・俺も・・変わったお・・本当に)」
- 46: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 21:59:15.21 ID:K33UsP3A0
- 冷静に考えれば、仮に銃を向けられたとしても
それはただのモデルガンなのだろう
こんな口論で人を殺すようなことはしない
だが現代社会における倫理ではそんなことも通用しない
そういった情報をなんとなくインプットされていただろう
ヒシャゲ顔の男、彼は本気でブーンに殺されると思った
きっと、そういった秩序だとかの問題以上に、ブーンの目をみて。
ふと、園児二人がおもちゃを投げあいながらブーンの横を走り去った
( ^ω^) 「(・・いや・・変わってないんだお きっと。なにも・・変わってないんだお)」
ブーンは自分があの子供たちぐらいの時にしたことを思い出していた
( ^ω^) 「(そうだお・・変わってないんだお だから・・弱いままだから・・
だから・・一番身近な人でさえ・・一番大切な人でさえ・・!)」
ブーンのかごを握る手は震えていた。
- 48: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 22:11:26.97 ID:K33UsP3A0
- ブーンはレジのお姉さんに ありがとうだお と一言。そして帰路に戻った
( ^ω^) 「今年は・・なんて暖かいんだお・・」
ふと、カーチャンの言っていたことを思い出す
J( 'ー`)し 「今年は変な気温ね・・地震でもおきないかしら」
( ^ω^) 「地震・・かお・・。あの家なら一瞬で死ねるお・・。そのほうがいいお・・。」
どんどん鬱になっていくブーンだった
二年前の夏・・ブーンは生まれつき持っていたアトピーが
急激に悪化した その時以来軽い双極性障害になっていた
( ^ω^) 「・・・考えるの、止めるお」
- 49: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 22:15:28.87 ID:K33UsP3A0
- ( ^ω^) 「・・お?」
路上に何か横たわっているのが見えた
はじめは猫か何かが轢かれたのかと思ったが
黒ずんだ「それ」は元々命など無かった
( ^ω^) 「ヌイグルミ・・どうしたんだお。こんな日に・・」
結構な汚れから、捨てられたのは今日じゃないことはわかっていた
ブーンはその擬人化してあるニワトリをかごにいれ、再び走り始めた
( ^ω^) 「ただいまだお」
誰もいない部屋に響く声
ブーンは母のいない日でも決して「ただいま」は欠かさなかった
( ^ω^) 「さて・・と。だお。」
- 50: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 22:32:15.22 ID:K33UsP3A0
- 手際よくケーキを作っていくブーン
( ^ω^) 「はじめはきみとしろみをわけて・・湯銭しながら・・砂糖入れて・・メレンゲ・・
粉はふるっておいて・・黄身はマヨネーズ状・・混ぜて・・粉入れて・・
さっくりさっくりさっくり・・おkだお! 型に入れて・・と。あ 余熱忘れたお・・」
などとぶつぶつ言っている間に、オーブンでスポンジを焼き始めた
その間テレビでもつけてボーっとすることにした
冬休み。バイトの無い日はCDを聞きながらスティックの素振りか
雑誌か小説を読んで一日を過ごすことが多かった
そのどの場面においても、大抵の時間は母が近くにいた
( ^ω^) 「・・・」
ブーンはさっきつけたテレビを消すと、CDラックからケースを取り出し
CDラジカセの中に入っているCDと交換した
- 52: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 22:57:53.96 ID:K33UsP3A0
- ━━━Is this the real life?
アカペラで男性ヴォーカリスト達の声が
滑り込むように、耳に入ってくる
ブーンはこの曲が大好きだった
まるでUKを代表するような聞き取りやすい英語
なんとなくしかわからないがストレートに突くような
そして変奏した後の不可思議な 歌詞
( ^ω^) 「たしかに俺は・・人を殺したのかもしれないお・・hisじゃなくてThey
知らない間に 今もこうしていることが・・」
結局また色々と考え始めてしまうのだった
どんな曲を聴いてもそうだ 物思いにふけってしまう
しかしこの曲は途中のハードロック調の部分に差し掛かると
何故か気分を高揚させてくれた
( ^ω^) 「・・・いいにおいがするお・・そうだ、これはあの時の・・」
- 53: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 23:00:23.28 ID:K33UsP3A0
- ( ^ω^) 「カーチャンが誕生日ケーキを作ってくれてて・・俺がデコレーションを・・
その次以降はミックスをカーチャンが買ってきてくれてきてたんだっけ」
曲は変わり、ドンドンチャ ドンドンチャ という足踏みとクラップが響く
( ^ω^) 「ス ポ ン ジ 忘 れ て た」
急いでオーブンの残り時間を確認すると、残り時間はデジタルで
37秒という表示をすぐさま36に変えた
(;^ω^) 「あ・・危なかったお・・」
- 54: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 23:05:45.90 ID:K33UsP3A0
- ピー ピー
( ^ω^) 「お・・」
付近で手を保護し、プレートを取り出すと急いで30cmほどから
一回ストン と生地を落とす そしてさかさまにして冷ましに入った
( ^ω^) 「片付けでもするかお・・。 お」
ブーンの目にとまったのはさっき拾ったニワトリだった
( ^ω^) 「・・一緒に洗ってやるお」
洗剤をつけてごしごしとあわ立てるブーン
昔見た油まみれの海鳥を洗っているCMを思い出していた
- 55: ◆QueeniallQ :2007/01/03(水) 23:11:32.92 ID:K33UsP3A0
- ( ^ω^) 「もうそろそろいいかお」
ニワトリを自転車のかごに置いて乾し
冷ましたスポンジを三段に切り分け間に果物の缶詰を
クリームとともにはさみ、全体を生クリームでコーティングしていく
(;^ω^) 「お・・おおう・・。相変わらず下手だお・・」
見た目こそ悪いが味はそこそこ のはず
チョコ生クリームで仕立てられたクリスマスケーキが完成した
( ^ω^) 「・・病院ってこういうのもってっていいのかお・・?」
とりあえず、スーパーでもらったメロン梱包用の箱にケーキを入れた
( ^ω^) 「一時かお・・そろそろカーチャンのみまいでm・・」
プルルルル プルルルル
( ^ω^) 「なんだお・・? はい ブーンですが あ、先s・・」
ガチャ ブーンはケーキの入った箱を抱え玄関の鍵も閉めず飛び出した
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