( ・∀・)と愉快な仲間たちのようです
- 39: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 20:49:47.20 ID:FeNBJ3L60
- 第十三話『絆創膏(その三枚目)』
次の日の夜、俺はバーボンハウスの近所、K町のファミレスで人を待っていた。
日本有数の繁華街であるK町では、こんな夜中でも道行く人が後を絶たない。
スカウト、呼び込み、ホームレス、外国人。
中には明らかにそれとわかる筋の人間もいて、ここならではの名物が街をにぎわせている。
- 40: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 20:54:32.77 ID:FeNBJ3L60
- ぼーっとしていると、待ち合わせの相手が顔を見せた。
川 ゚ -゚) 「すまない、こんな遅くになってしまった」
( ・∀・) 「いや、別にいいよ」
『綺麗』という言葉がこれほど似合う女もいないだろう。
黒髪のストレートだが、持ち物や服からしてこの街で働いている奴だとわかる。
その割には、口調のせいもあってか当たりが強そうな印象が否めない。
川 ゚ -゚) 「私の名はクーだ。ドクオの…そこは、いきさつから話そうか」
…
- 41: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 20:57:16.75 ID:FeNBJ3L60
- 川 ゚ -゚) 「まずは、これを見てほしい」
そう言うと、クーは一枚の写真を取り出した。
写っていたのは、若いカップル。これ以上ないくらいに幸せそうな顔をしている。
女のほうはクー本人。綺麗な顔立ちと黒髪が、今でもそのまま残っている。
隣にいるのは、少しピンボケしているが、地味をそのまま形にしたようなメガネ君だ。
- 42: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 20:59:56.89 ID:FeNBJ3L60
- 川 ゚ -゚) 「その女は、私ではない」
( ・∀・) 「ん?どう見ても本人だが…」
川 ゚ -゚) 「そっくりだろう。私には一つ年下のキューという妹がいるんだ。そして隣にいるのが…」
(;・∀・) 「………まさか」
川 ゚ -゚) 「そう、ドクオだよ。五年前のな」
俺は慌てて写真を見直した。確かに低い鼻や垂れ目で…
嘘だろ!?
少し見ただけではわからないが、このクソ真面目なメガネ君はドクオ以外の何者でもなかった。
- 43: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 21:02:36.03 ID:FeNBJ3L60
- (;・∀・) 「見る影もない…ってのは、こういうことなんだな」
川 ゚ -゚) 「今はあれでも、以前は地味でおとなしい奴だったんだ。人を殴るなんて、考えられないくらいな」
( ・∀・) 「この腕じゃ、ネコも殴れないだろ」
写真のドクオの腕は、今の半分くらい細かった。
あのいかつさが印象にあるせいか、かなり頼りなく見える。
- 44: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 21:05:15.26 ID:FeNBJ3L60
- 川 ゚ -゚) 「…ドクオとは同じ高校だったんだ。写真の通り、あいつは地味でおとなしかった」
( ・∀・) 「それが、よくこんな美人と付き合えたもんだぜ」
川 ゚ -゚) 「キューが真面目なドクオを気に入ったのさ。絵に描いたような幸せなカップルだったよ。三年も付き合っていた」
キューの性格がどうかは知らないが、惚れさせるくらい良い性格だったのだろう。
今のドクオでは考えられない。
- 46: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 21:08:38.77 ID:FeNBJ3L60
- 当時のドクオの細い腕が、キューの肩にまわっていた。
大切な宝物を守っているような、そんな感じだ。
( ・∀・) 「で、このマジメ君が、どうしてあんな喧嘩っ早くなっちまったんだ?」
川 ゚ -゚) 「その原因は、別れたことにある」
(;・∀・) 「…ベッタベタなグレ方だな」
川 ゚ -゚) 「だと思うだろう……問題は、別れたすぐ後だ」
- 47: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 21:11:43.32 ID:FeNBJ3L60
- 川 ゚ -゚) 「振られたドクオは、ただただ落ち込んでいた。口もきかなくなるくらいにな」
そりゃそうだ。あんな美人に振られたら誰だってそうなる。
それがこんなマジメ君だったら、なおさらだ。
川 ゚ -゚) 「そんなドクオに、次の彼氏が追い討ちをかけた」
( ・∀・) 「別れた後すぐ付き合ったのか。取られたようなもんだな……で?」
川 ゚ -゚) 「『ブサメンでごめんなさい』と言うまでやめないと言って、頬骨にヒビが入るくらいボコボコにしたんだ……キューの目の前でな」
- 48: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 21:14:48.97 ID:FeNBJ3L60
- 川 ゚ -゚) 「文字通りの追い討ちさ」
(;・∀・) 「…ひでえ野郎だ」
川 ゚ -゚) 「とうとう気持ちが折れて、ドクオは謝った…それでも奴はやめなかった。キューの静止も聞かずに、何度も何度も殴り続けた」
( ・∀・) 「…」
川 ゚ -゚) 「色んな意味で、絆創膏なんかじゃ治らない傷だったよ」
筆舌に尽くしがたい、あまりにひどい話だった。
ドクオの泣き面など浮かびもしないが、たった五年で悔やみ切れる話だとは思えない。
- 50: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 21:17:43.59 ID:FeNBJ3L60
- 川 ゚ -゚) 「それからドクオは変わってしまった。一年かけて、中身まで」
( ・∀・) 「しかし…それと今回の失踪、何の関係があるんだ?」
川 ゚ -゚) 「妹の彼氏は売れっ子ホストだ。新人なのに、急に成りあがった」
俺はショボンの話を思い出した。
女癖の悪い、イケメンのホストがいる。
まさかドクオの知り合いだったとは。
- 51: ◆dIeazkfFEk :2007/02/16(金) 21:22:08.70 ID:FeNBJ3L60
- 川 ゚ -゚) 「その彼氏だが、昨夜は普通に帰宅したそうだ……決行は、今夜になるかもしれない」
(;・∀・) 「ヤバい!早くドクオを止めないと!!」
俺は留守番させていた渡辺を呼び出すと、駆け足でホストクラブの前へと向かった。
まだ閉店するまでには時間がある。
つづく
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