ブーン系情報誌
Boon Novel Magazine
【特集】ぼくらの好きなブーン系
case.3 afo氏の場合

( ^ω^)ブーンは歩くようです


白状するけど、俺は最初、ブーン系というやつを舐めていた。

VIPのスレ一覧で「新ジャンル」というのを見ると「もう何番煎じだよ、いい加減にしろ」とイラッとし、「( ^ω^)が何々・・」を見ると「何だよこの中二くさいスレ・・」って思ってた。
そういったスレをまともに読んだこともなかった。 そんな俺がブーン系を書き始めた動機も不純なものだった。

あれはいつの頃だったか、当時はワロタ2ッキを始めとしたコピペブログが隆盛を極めていた。
そうしたコピペブログの中の一つ(今にして思えばあれは蛇屋さんだったと思う)を職場で何気なく眺めていたら、俺にVIPを教えてくれた先輩が、ほんとに何気なく俺に軽口を放ったのだ。

「お前むかしは小説とか書いてたんだろ、なんか書いてお前もこういうブログに乗れる?」
「あ、余裕っスよwwww」
「マジですげーwwwじゃ書けよ先生wwwww」
当時職場で文学部出身は俺だけだったから、俺はいつも「文学青年」ネタでいじられていた。

そんなこんなで書き始めたブーン系。
とはいえ最初はブーン系なるものがあることすら知らず、「コピペブログに乗るお話」を作るつもりで、ちょこっと専門性があってライトユーザーの興味をそそる実用系の物語…のつもりで書いていた。
これが後のやる夫系の主流となることも知らず。

そんなこんなで俺はブーン系を書き始めたけど、しばらくの間、ほかのブーン系スレは全く読んでいなかった。というか「ようです検索」を知らなかった。
あるとき、自作品の続き物(たしかやる夫系)のスレタイに「ようです」を入れなかったことがあった。
そうすると来る人が少ない少ない…

見るに見かねてとある読者が教えてくれた。
「スレタイにようですを入れないと人が来ないよ、みんなようですで検索してるから」
「そ、そうだったのか…!」
俺は衝撃を受けた。
「そうか、『ようです』で検索…」
俺は導入したばかりのjaneで、マニュアルと首っ引きでスレタイ検索を敢行した。

いくつものスレが赤文字で引っかかってきたが、その一番上に上がっていたのは、『( ^ω^)ブーンは歩くようです』だった。

「初検索成功! 記念だし、ちょっと読んでみっかな…」
そう思って、俺は初めてのブーン系本格読みの扉を開いた…

今でも時々ふしぎに思う。
こんな素晴らしい作品との出会いが、全くの偶然に彩られた運命的なものだったことを。

この作品のおかげで俺は忘れていた「小説の面白さ」を思い出した。
昔買った小説類はすべて捨てるか売るかしていたので、俺の部屋には一冊も小説本はなかったが、このとき以来、また本屋に足を運ぶようになった。

「歩く」は、それくらいインパクトの強い作品です。
物語として読んでも面白い。
けど、この作品を読んで本当に面白いと思う人は、
きっと世の中のさまざまなことについて思い悩んだ経験のある人でしょう。
この作品を読み、内藤のたどった足跡を追体験する。
旅物語として世界中につけられた靴跡を追うばかりでなく、ブーンが歩いた心の軌跡をも追体験する。
ブーンは歩きます。

人は、歩く速度でしか、成長できないものなのかもしれません。
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