( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです

  
30: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/08(火) 23:58:56.88 ID:UKBthTxk0
  
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( ^ω^)「こんな事を娘に話すのは恥ずかしいお・・・」

(*゚ー゚)「まぁ、別に○○とか××とかあったわけじゃないからいいんじゃない?」

( ^ω^)「ちょww放送禁止用語wwww」

(*゚ー゚)「それで、この後どうなったの?」

( ^ω^)「実はこの後、2年ぐらいはツンに会ってないんだお。 
      僕も魔法が使えるようになって、ツンの所にいる理由も無くなったし、
      強くなるために修行してたんだお」

(*゚ー゚)「ねぇ、そろそろ血沸き肉踊る話の一つもないの?
    のんびりした話ばっかじゃ飽きちゃうわ。」

( ^ω^)「じゃあ、ツンと別れたすぐ後に、"和解者"に認定してもらいに西の島に行ったことでも話そうかお。
      あれは、同時に"討伐士"になるために頑張ったショボンさんがすごかったんだお、あんな美しい戦い方をする人は他に知らないお」


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33: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 00:06:29.59 ID:0OP4LY3q0
  
第9話

ショボンの腰に刺さる二本の剣。
僕たちは今まで、その片方しか見たことが無い。

それは、精緻な作りの細身の剣。
柄には緑色の宝石が散りばめられ、優雅な螺旋を描いた銀の飾りがそれを受け止めている。
フェンシング等で使われるような剣が豪華になったようなものだ。
しかしそれはとても脆いように見える。敵の攻撃を流すことは出来ても、直に受け止めると折れてしまうだろう。


それが、攻撃の為に使われる剣では無かった事を、僕らは知ることになる。



  
35: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 00:10:14.76 ID:0OP4LY3q0
  
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ショボンの剣の先から、光の筋が踊るように現れる。
閃光。

筋が集まって、光る球体になる。その中には、何かの種子があった。
光がその種を守るように輝いている。
そして、それはショボンが対峙する相手の方へ一直線に向かっていった。

(  )「うわ、う・・・わぁぁぁっ!!」

相手が驚いたのもつかの間、その光る種は、相手の足元に落ちた。
地面に辿り着いた刹那、また、閃光が起こる、場内の全ての人間が目を瞑った。

次に目を開けた時、その光は饗宴、いや、狂宴の始まりである事を知った。



  
36: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 00:17:19.43 ID:0OP4LY3q0
  
ショボンが、唄うように言葉を紡いでいく。暗い暗い、冥府に届くような声で。
(´・ω・`)「此れなるは、宴の始まり也  糧になる輩 煉獄の宴  見る者 天上の宴」

(´・ω・`)「汝を流れる赤き水で 我等を 愉しませてたもれ」

その歌声に竦み、動けないている相手。
その足元から、種が、芽吹いた。

(´・ω・`)「芽吹け  生きよ 我が産みし悲しき華よ
      育て 育てよ 呪われし華  人の血でしか美しく染まれぬ・・・桜」

その芽は尋常ではないスピードで育つ。
ショボンが唄う間にも見る見る間に大きく、高く育っていく。
芽は、相手に絡んでいる。相手を添え木の代わりにして。



  
38: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 00:26:21.50 ID:0OP4LY3q0
  
(´・ω・`)「最早  此の世の花ではない 華  大地の摂理に逆らいて 今 蘇らんとす」 
 
木の種、しかもはるか昔、沈んでしまった極東の孤島に咲いていたという、桜。
美しく儚く咲く花。写真でしか誰も見たことの無い、失われた桜の木だというのか。

木は、2mを越そうとしていた。幹に、相手を取り込んで。
腕や足、首周りには太い枝、細い枝が無数に絡んでいて、どんな怪力が足掻こうとも抜け出せそうにはない。
相手は、涙を流しながら何かを懇願しているように見える。しかし、首を絞められているので声にならない。

ショボンには、届かない。

(´・ω・`)「摂理に逆らいし華 代償は 青き花よ 此の世に在ってはならぬ 蒼き花」

"それ"は、3mを越え、立派な木になっていた。枝には、無数の蕾が存在している。
ただ、蕾が



青いのだ。



  
40: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 00:33:48.06 ID:0OP4LY3q0
  
南の島の海のように青い。美しいはずなのに、寒気がする。引きずり込まれるような蒼。

相手も、それに気づいたのだろう、怯え、その花の色のように顔の色が青くなる。

ショボンが、剣を虚空に突き上げ、更に唄う。
(´・ω・`)「青き花 その存在を許されない花 それでも 咲き誇れ」


ショボンが、剣をおろし、横に一薙ぎ。それに応えるかのよう、春に吹くような暖かな風が吹いた。

その風は、場内に吹き渡り、桜の木の枝も揺らした。
そして、揺れる枝から、青い花が、咲いた。
一瞬で。
咲き乱れた。

(´・ω・`)「さぁ、宴もクライマックスだ。その、青い花は、本当は薄桃色の優しい色をしていた。
      しかし、蘇らせたとき、そんな色にしかならなかった。
      桜を蘇らせるのを多くの科学者が断念した。だから、僕が蘇らせた。


      人の血で、赤く染まるようにと・・・・ね。



  
41: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 00:42:10.68 ID:0OP4LY3q0
  
(  )「なぁ゛っ・・・!がっ!!」

自分にこれから降りかかる災いを知り、更にもがく相手。しかし、足掻いたところで逃げ出せるはずもない。
もう、大樹に体の半分が取り込まれているのだから。

相手は、暴れに暴れたせいで、体のあちこちから出血していた。

その傷口に、優しく触れるものがあった。


枝、だった。最初は恐る恐る傷口に触れていた。しかし枝は、その先端に血が付いた途端、恍惚を感じたかのように一瞬震え、しかしその刹那、


傷口から、体内へ進入した。

相手は、何があったのが分からないまま痛みにのたうつ。
まさか自分の傷口に枝が突き刺さるとは予想もしなかっただろう。


しかし、傷口のあちこちから枝が侵入している。二の腕から、太腿から、首の付け根から。
気が狂ってしまわないものか。

体と木が、一つになってしまった。色んな意味で。でも相手の人、男で良かったね。



  
43: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 01:00:30.14 ID:0OP4LY3q0
  
(´・ω・`)「そんなに血に飢えていたのか・・・吸血種の植物と配合したのは失敗だったか。
      まぁ、いい。そろそろ、最後を飾ろうか。」


今度は木全体が震えた。喜んでいるようだった。犬が飼い主に「よし」と言われた時のように。

その震えに、悲しき犠牲者が反応する。枝も震えたため激痛が走ったのだろう。
しかし、もう叫びをあげる気力もないのか、この世に絶望したような顔で呆然としている。


(´・ω・`)「さぁ、失われる前の美しい姿を見せておくれ」

冷たいぐらいに青かったはずの花が、少しずつ、少しずつその色が和らいでいく。
薄い水色に変化する、淡い紫になる、そして、また色が変化していく。

桜の木の全景を見上げると、それは、写真で見たような、いや、それよりも美しかった。
春を祝うような薄い桃色。それが満開に咲き誇っている。



  
44: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 01:02:11.49 ID:0OP4LY3q0
  
この木は血を吸ったのだ、しかし、そんな恐怖を掻き消すかの如く美しく、綺麗で、儚かった。

ショボンが、満足そうに微笑む。そして、静かに頷いた。
風が吹いた。花びらが散った。そう、桜の花びらが散った。

人々はその美しさに酔いしれた。ここが、戦いの場であったことも忘れて。
桜の花びらはそれに応えるかのように、人々の周りを舞った。

しかし、花びらは人の上に落ちる事無く、ショボンと、桜の木の間に振り積もった。
ショボンと、桜の木の間には、桜の絨毯が敷き詰められた道が出来た。

ショボンは、その道を歩いて、桜の木に近づく。
そして、桜の木の下で、一本だけ、枝を折った。見事な花のついた枝だった。
それの匂いを嬉しそうに嗅いで、ショボンは優雅な歩きで場外へと、コロシアムの外へと出て行く。

まさに、ショボンが見せた"戦場の花"であった。



  
45: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 01:04:21.17 ID:0OP4LY3q0
  
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( ^ω^)「ショボンさん、"討伐士"認定試験合格おめでとうだお!(人格変わってたお・・・怖いお」
  _
( ゚∀゚)「やったな!これでお前がめでたく史上最年少の"討伐士"だ!・・・しかし、やりすぎじゃねえか?」

(´・ω・`)「2人ともありがとう言わなきゃね。ジョルジュより早く"討伐士"になれるなんて思ってなかったよ。
      大丈夫、死ぬまでやってないから、ね。死ぬまでやったら花びら真っ赤だよ?」

(;^ω^)「・・・(この人怖いお」

(´・ω・`)「ところで、ドクオ君は?」

  _
( ゚∀゚)「あぁ、途中で鼻血吹いちまって医務室運ばれたぜ。
     明日ブーンとドクオは認定試験なんだから、ちょっとはフェロモン抑えてくれ」

ツン・・・北の島から離れて一週間。僕たちはまた旅に出た。
ここは西の島。色々な資格を認める事ができる唯一の島。

僕たちは"和解者"になるための試験を受けに、ついでにジョルジュさんが
「討伐士にはなりたいけど僕はまだまだだよ」と言うショボンさんを半ば強制的に"討伐士"になるための試験を連れて来た。

"討伐士"の認定の試験の方が1日早くて、今日はショボンさんの活躍が見えると楽しみにしてきたのだ。
明日の参考になればと思って。



  
46: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 01:04:40.14 ID:0OP4LY3q0
  

"討伐士"試験は・・・戦いがベースだった。とりあえず治療班がいるので思いっきり戦えと。
内容は少し、残酷だったけど。
「何回も犯罪を繰り返す人間を説得の上、説得に応じないなら攻撃」というものだった。
これは、その犯罪者を懲らしめるという意味も持っている。

だから、さっきショボンさんと戦った人も犯罪者なのだ。

確かに犯罪者を捕まえたり戦わなくてはいけない"討伐士"だが、これは少し後味が悪すぎる。
だから"討伐士"は数が増えない。それも狙いなのかも知れないけど。

ショボンさんと戦った相手は、親に暴行を繰り返す少年だったらしい。
それを聞いてから、ショボンさんの人格が変わった。
きっとショボンさんも普段は危ない人だけど、本当は正義感溢れる優しい人なんだろうな。

(´・ω・`)「ちぇ、このフェロモンのまま勝利と一緒にドクオ君も頂き♪大作戦考えてたのにな」


(;^ω^)「(前  言  撤  回)」


とりあえずこの後、医務室でまだ鼻血の止まらないドクオを捕まえて、滞在中にいる宿まで帰った。



  
47: 1 ◆et0cofkO4A :2006/08/09(水) 01:08:40.96 ID:0OP4LY3q0
  
--9話-前編 終--



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