( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです

  
4:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 21:49:20.93 ID:Cmo+CsVd0
  
--第13話--

守ることは−あまりにも難しい事だったこと。
若かった僕は何も知らなかった。





( ^ω^)「さぁーて来週のサザエさんは」

('A`) 「こら、始まったのばかりなのに終わらせるな。しかもサザエさんじゃねぇよ」

( ^ω^)「最近のカツオはニヒルになっちゃって嫌だわ!だお。
       
       まぁ、それよりお腹もいっぱいになったしそろそろ帰るお!」
  _
( ゚∀゚)「もうそろそろ2次試験が始まる頃だな」

太陽も空高くに昇ってきたころ、ブーン一行は2次試験のためコロシアムに帰った。



  
6:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 21:56:09.49 ID:Cmo+CsVd0
  
(´・ω・`)「お昼ごはんチョコバナナだけじゃ物足りなかったなぁ」

( ^ω^)「ドクオをかどわかせるのにそんなもの頼むからですお」

(´・ω・`)「むぅー」

頬を膨らませて見せるショボン。
外見が立派で素敵な大人の男性に見える彼がこういう事をすると、女性はイチコロなんだろうな。
ドクオとか。あ、女性じゃないか。いや、心はもう女かも。

ブーンは肌寒いながらも暖かな日差しに包まれて、そんなくだらない事を思いながらコロシアムへの道を歩く。



  
7:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 22:02:04.50 ID:Cmo+CsVd0
  
こんなに気持ちのいい日には、おうちの中でお昼寝したいお。
みんなと寝たら、騒がしくて寝れなさそうだけど、やっぱり楽しそうだお。

そう考えるとなんだか楽しくて、

( ^ω^)「・・・友達っていいおね」

自然にそうつぶやいていた。

('A`) 「いきなりどうした。悪いもんでも食ったか?」

( ^ω^)「さっきまでファービー化してたドクオが言う事じゃないお
       さぁさぁ、もう着くお!!」

('∀`)「なんだとこいつwww」


それを聞かれたのが少し恥ずかしくて話題を逸らした。
ドクオは少し嬉しそうに微笑み、ショボンとジョルジュは眩しいものでも見るように目を細めていた。



  
9:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 22:08:19.49 ID:Cmo+CsVd0
  
  _
( ゚∀゚)「・・・ふむ、今回1次試験受かったのは7人か」
ジョルジュが入り口の掲示板を見ながら言った。

(´・ω・`)「へぇ、結構受かったようだね。みんなよく頑張ったね。
      もちろん、ブーン君もドクオ君もね」

ドクオがえへへ、と照れくさそうに笑う。
('A`) 「2次試験も余裕でパス出来たらいいんですけどね。
    ところで順番って前と一緒ですか?」

(´・ω・`)「案ずるより生むが易し、昔の人はそう言ったよ。」

  _
( ゚∀゚)「あぁ、試験の順番はさっきのままで行く。

     さっきの1次で1番は確か失格だったから、ドクオ、お前が一番手だ。頑張って来いよ」



  
11:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 22:18:00.90 ID:Cmo+CsVd0
  
その時、ポーン♪と高い音がしてアナウンスが流れ出した。

〜2次試験10分前〜受験者は控え室へ〜

  _
( ゚∀゚)「っと、ご指名入ったぜ。気合入れて行って来い!」

( ^ω^)「ドクオ、その力見せ付けてくるお!」
ジョルジュはいつもより多く腕を振り、ブーンは自分の拳をドクオの握られた拳にぶつけた。

(´・ω・`)「落ち着いて、ね?」

ショボンが頭を撫でる。

ドクオは頬をぽりぽりと掻きながら、

('A`) 「はい、楽しんできます」

心からの笑顔でそう言った。
緊張なんてしていない。

戦うことは、なんだかとても楽しいのだ。

俺ってちょっとアブナイ?なんて思いながら、ドクオは控え室まで軽い足取りで踊った。



  
13:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 22:30:44.51 ID:Cmo+CsVd0
  
観客席に座ったブーン達3人。
  _
( ゚∀゚)「・・・いい顔してやがるな、アイツ」

どこか遠くを見ながらジョルジュが言う。

(´・ω・`)「うん、将来はいい戦士になるだろうね。
      真っ直ぐな目をしてるから、立派な子になるよ。」

それに倣うようにショボンも遠くを見据えている。


見ているのは過去の自分だろうか。
若かりし、青き時代。


ジョルジュは微笑みながら、満足そうなため息と共に
  _
( ゚∀゚)「まったく、ブーンといいドクオといい、お前はいい弟子を持ったな」

とつぶやいた。

(;^ω^)「ふひっ!?」

いきなり名前を呼ばれて、びっくりして変な声が出た。

ドクオの立つフィールドを穴が開くほど集中して見ていたものだから。
それはもうドクオに穴を開けんばかりに。



  
15:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 22:37:25.73 ID:Cmo+CsVd0
  
(;^ω^)「ぼ、僕もですかお?」

(´・ω・`)「もちろん、ブーン君だってとてもいい弟子だよ?


      引き締まった筋肉・・・白い肌・・・ジュル」

ショボンが口元を拭う仕草をする。

(;^ω^)「色んな意味で嘘であって欲しいお・・・」

  _
(;゚∀゚)「全くこいつは・・・ほら、始まるぞ」

ジョルジュがショボンの首根っこを掴む。
ショボンは「うぁー」という間の抜けた声を出して、それから大人しくなった。


ジョルジュさんがショボンさんの扱いに慣れてて良かったお・・・心からそう思った。



フィールドの方では、審査員が2次試験のルールについて、声を張り上げて説明をはじめていた。



  
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/31(木) 22:45:19.90 ID:Cmo+CsVd0
  
('A`) 「・・・」


ドクオの目の前にあるのは、人の形をしているゴムの塊。
立ち上がった姿勢のそれは、高さ170cmほどあった。

しかしこれはただのゴムじゃなくて、魔法や剣の攻撃を吸収する魔法物質だそうだ。


('A`) 「ほいっ、と」

軽く剣で突き立てる。

ぷに、と短剣の先端が刺さる。



この感触が面白くて、今度は力を少し入れて押してみる。

ぶにゅう、という感じでゴムにめりこみ、短剣は鋼鉄の部分が全て埋まった。



  
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/31(木) 22:54:00.80 ID:Cmo+CsVd0
  
('A`) 「剣を引くと・・・傷ひとつないな。さすが魔法物質、ちゃんと復元するんだな。
    魔法を当てても直るらしいし。

    こいつに自分が出来る剣術や魔法を使え、か・・・それで能力を判定する

    ま、戦術の発表会みたいなもんだな」


いつも通り涼しげな顔を装っているが、内心は嬉しくてたまらない。
初めて人前で能力を見せる。
ショボンさんが教えてくれた戦いかたを、見せつけてやるんだ。

もう俺は昔の自信の持てなかった俺じゃない。
思い上がりじゃない強さ、というものをドクオは自分で自分に感じていた。



「ドクオ選手、準備はよろしいか?」

審判が声をかけた。

('A`) 「ええ、始めてください」

審判とドクオ両者が頷いた。

「制限時間は5分!それでは、始め!」

ぴりりり、と高い笛の音がした。



  
22:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 23:07:00.38 ID:Cmo+CsVd0
  
笛の音を聞いた刹那

( ^ω^)「ドクオがいないお!?」

ブーンが叫んだ。フィールドにはゴムと審判だけ。
「走った」じゃない。
「消えた」というのが正しい。

(´・ω・`)「上!」


ショボンが動じずに言う。


ブーンは首を上げ、そして見た。





遥か上空を舞う風使い。


空の王者たる風使いを。



  
25:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 23:15:27.23 ID:Cmo+CsVd0
  


(*'∀`)「あぁ、気持ち良いな」




コロシアムにいる人間が親指ほどの大きさになるほどの上空で。


ドクオは、笑っていた。



今頃下のほうでは突風が起こっているのだろうか。
そんなことはどうでもいい。

空に昇るのは心地がいい。それだけだ。




('A`)「さて、制限時間あるから楽しんでもいられないな」

顔にいつものクールさを戻す。
ニタニタして降りていったら正直キモイ。


風が凪いだ。
ドクオが地上に降り立つ為に。



  
27:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 23:24:19.92 ID:Cmo+CsVd0
  


ドクオの体が重力に従う。
落下。

落ちる。
猛烈なスピードで。

地上に近づく程更に更に加速する。


( ^ω^)「ドクオ・・・すごいお・・・!」
コロシアムの開かれた天井は風使いの為。
ブーンは確信した。

小さかったドクオが少しずつ大きくなってくる。


太陽は中点。
「それ」はドクオの後光となる。


後ろに太陽を従えしドクオ。
彼は疾風と化す。



  
30:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 23:34:06.73 ID:Cmo+CsVd0
  


('A`)「まだ、まだだ!」

半分は降りた。
でもまだ足りない。

('A`)「はぁっ!」

振り上げた腕を大地へ下ろす。
刹那、上からの突風。



突風に叩きつけられる。
ドクオはまだ加速する。






('A`)「加速が、足りねぇっ!!」



  
31:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 23:37:25.59 ID:Cmo+CsVd0
  



先ほどよりも加速のついたドクオの体。


('A`)「もうそろそろだ・・・」
さっきよりも速いスピードで降りたな。



地上は目の前。
ドクオは頭から飛び込む姿勢をとる。


そして剣を構える。
貯めに溜めた力をゴム人形に向かって




放った。



  
34:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 23:41:46.94 ID:Cmo+CsVd0
  
ズザァァッ!ドシュッ!ズゥン!

  _
(;゚∀゚)「短剣が大地に刺さったとは思えん程の轟音だな・・・」

剣の長さは30cm程。
それがコロシアムを揺るがす轟音となったのだ。

(;^ω^)「人形が、一瞬へしゃげて形になってなかったお・・・」


驚きに冷や汗をかきながら喋る二人だが、






(´・ω・`)「まだドクオ君は止まらない」



  
36:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 23:52:08.89 ID:Cmo+CsVd0
  
ショボンが静かに呟く。

そういえば、ドクオは?そろそろ地面に降り立ってもおかしくないはず・・・




(;^ω^)「!?」




風神の如き少年が目に留まらぬスピードで地面に降ってくる。
危ない!

                 _
(;^ω^)「落ちる!!」   (;゚∀゚)「ぶつかる!!」   (´・ω・`)「・・・」




そして、再びの突風。

北から南へ切り裂くように吹く風。



  
37:◆OLIVIA/O7I :2006/08/31(木) 23:55:46.78 ID:Cmo+CsVd0
  
ドクオは!?地面に落ちていない・・・無事だ!
思わず南の方へ目をやるブーン。




('A`)「思ったより速かったな・・・」

鳥の様に優雅に壁に足をついたドクオがそこにいた。

そう思った刹那、彼は人の形に戻った人形へ駆け出す。





(´・ω・`)('A`)「「風よりも静かに、誰よりも荒ぶる」」

先ほどより二回り大きい剣を両手に持ち、傀儡へと突風を従え切りかかる。



  
40:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 00:09:44.89 ID:oxkFnAQ50
  




(;^ω^)「ドクオ・・・さっきのはやばかったお・・・」


(;'A`)「いや・・・俺もちょっとやりすぎたと思ってる・・・今は反省している」

ドクオはあの後すぐに帰ってきた。

  _
( ゚∀゚)「まさか人形壊しちまうとは思ってなかったぜ」

(´・ω・`)「下級"和解者"用だから強度が弱い人形とはいえ、壊したのはきっと史上初じゃないかな?」


(;'A`)「まさか、壊れるとは思いませんでした・・・」


ドクオの剣は、豪雨の様な激しい攻撃だった。
目で捕らえるのも大変だった。

そんな猛攻撃を絶え間なく続けたものだから、
人形が負荷に耐えられなり、ぶっ壊れてしまったのだ。



  
42:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 00:16:46.07 ID:oxkFnAQ50
  
(´・ω・`)「直すのにちょっと時間がかかるようだから、ブーン君はここで待機するようにって」

( ^ω^)「分かりましたお」

(;'A`)「・・・」

やってしまった、という顔をしているドクオだが、どこか清清しさを帯びている。
あれだけやればすっきりもするだろう。

(;'A`)「なんか俺、目立ってる?」

なんか、さっきから指差されたり、ヒソヒソ言われてる気が・・・
目立つのって嬉しいけど、恥ずかしいな。

それよりも、ショボンさん、ちゃんと見ててくれたかな・・・
捨てられた子猫のような目でショボンを見た。


(´・ω・`)「?」
ほんの微かににこっとして首を傾げるショボンに不覚にも萌えた。

(;'A`*)「はぁぁぁふううううううう」

あぁ、鼻血。
一瞬で滝のように噴き出したため気が遠くなる。

乙女思考はいつでも止まらないようだ。


( ^ω^)「やっぱりドクオはこうでないと」



  
45:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 00:24:31.54 ID:oxkFnAQ50
  


それからしばらくして、ドクオの鼻血も止まった頃、

  _
( ゚∀゚)「ブーン!もうすぐ人形が直るから控え室に行くようにってさ」

( ^ω^)「把握したお」

(ヽ'A`)「ブーン、頑張れよ・・・」
頬のそげたドクオの激励。

( ^ω^)「出血多量のドクオこそがんばるお」

(´・ω・`)「気楽にねー」


3人に手を振って見送られ、のんびりと控え室に向かうブーン。

到着したころには人形も復元されており、すぐに試験開始という運びになった。



  
47:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 00:33:02.49 ID:oxkFnAQ50
  


( ^ω^)「結構人形でかいお・・・ブーンよりもでっかいとはショックだお」

ゴムをぶにぶにと突っついてみる。
そこはかとなく強い弾力が癖になる。

初めての実践・・・緊張するお。トイレ行って来れば良かったお。
ちょっとブーンは後悔する。

( ^ω^)「なんだか人の形をしたものを切るのは気が引けるお」

やっぱり実践はやってみたい。自分の実力を知りたい。
でも、人を傷つけるのはちょっと怖い。

僕ってやっぱりチキンだお、と心の中でため息をつく。



  
54:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 01:03:45.35 ID:oxkFnAQ50
  


( ^ω^)「そいやっだお」


掛け声と共に左右から後ろに流した剣の鞘から剣を抜く。

よく似た双子の剣。
刃渡りは90cm程度。

手にずっしりと馴染むこの剣。

( ^ω^)「さて、と」

ブーンが跳ねる。
足は人形に向かう。

('A`)「!」

速い。ブーンはあまりにも速い。
単純な足の速さなら俺よりもブーンに分があるな。


そう考えている間にブーンは距離を詰める。



  
56:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 01:10:34.70 ID:oxkFnAQ50
  
ブーンは一度立ち止まって剣を構える。
  _
( ゚∀゚)「なぁショボン。ブーンのあの構え、もしかして「剣舞」か?」

(´・ω・`)「うん、君のおじいさんの武術を教えさせてもらったよ」


ブーンは左手を額の前へ、
右手を胸の前で構えている。

(´・ω・`)「ブーン君は素早いからね。
      「剣舞」術で回るように踊り、そして敵を狩る。
      それがブーン君の身体能力的に一番合っている」


ブーンはその構えのまま大きく深呼吸を一つ。
そして、土を勢いよく足で蹴った。



  
61:1 ◆et0cofkO4A :2006/09/01(金) 01:36:13.85 ID:oxkFnAQ50
  


まず、相手の右側に左足を踏み込む。

右腕をめいっぱい左に捻る。
その右手で相手を切る。

その腰のバネで左剣を振るう。

次は右足から・・・ステップ繰り返し。

( ^ω^)「えっほ、えっほだお」

複雑なステップだがもう慣れた。


(´・ω・`)「これが本当の実践なら着実に相手に大きなダメージだろうね」
  _
( ゚∀゚)「確実に相手の急所を狙っている。よく考えて動いているな」

ドクオの戦いに比べれば迫力は無い。
でも。


('A`)「剣舞って効率がいいし、
   
   すごく優雅ですね・・・」



  
62:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 01:38:01.89 ID:oxkFnAQ50
  
−その昔、極東の国から流れてきた「舞踊」というものがベースらしいぞ。

−そうなんですか?

−うん。その国では情緒というものを尊重したからね。


そんな会話を耳の端に聞きながら。
それでもブーンは足を止めない。

舞踊の次は下段からの薙ぎ、上からの切り込み、
ショボンにならったものは一通りやってみた。


剣はまだ教えられた通りにしか使えない。
魔法ばかり重点的にやるんじゃなかったお・・・

少しだけ口からため息が漏れた。

でも、魔法は少しなら自信がある。
まずは。



  
65:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 01:44:06.00 ID:oxkFnAQ50
  

('A`)「う、寒っ」
ドクオが体を抱えて縮こまる。


  _
( ゚∀゚)「いきなり冷え込んだな。何があったんだっ・・・て、ブーンの剣が!」

さっきまでとは何かが違う。



('A`)「さっきよりも

   剣が長い・・・」


( ^ω^)「氷の剣、成功して良かったお」

瞬間的に双剣の周りの空間を凍らせて作り上げた氷の剣。
剣の刃の部分に分厚い氷が張り付いており、長さも増している。

それを胸の前で十字に重ねる。



そして、人形を十文字に斬り付けた。



  
66:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 01:51:54.83 ID:oxkFnAQ50
  

('A`)「人形、綺麗に4つに切れたな・・・」

勢いよく切り裂いたため人形の体はバラバラになった。

その衝撃で氷の剣は粉々に砕けて壊れた。





・・・おかしい。

最初にそう思ったのはジョルジュだった。

再生が始まるのが遅い。




いや、違う。

再生などしていない。



  
68:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 01:58:55.68 ID:oxkFnAQ50
  
( ^ω^)「ふぅっ。なんでか知らないけど人形壊れちゃったお。

       魔法使って疲れたからちょっとだけ休憩だお」

ジョルジュの気持ちなど露知らず、ブーンは人形の傍らに腰を下ろす。

  _
( ゚∀゚)「おい、ショボン。どうなってんだ?」




(´・ω・`)「信じられないかも知れないけど、無効化の魔法だよ。

      人形の再生魔法を"無効化"したんだ」


  _
(;゚∀゚)「魔法の"無効化"なんて・・・前例も少ない貴重な魔法だぞ!?

     それを、ブーンが持っているなんていくらなんでも驚いちまうぜ」



  
69:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 02:04:15.70 ID:oxkFnAQ50
  


(´・ω・`)「もっとも、本人はコントロール出来ないみたいだけどね」



ドクオは"無効化"についての知識を頭の中で復習した。


世界クラスで見ても一握りの人間しか持たない能力。
属性は関係無しに発生する能力。


確か、自然の摂理に大きく反する魔法であるため、持てる人間が少ないのだったか。



それを、ブーンは持っているというのだ。
自分が望んで引き出したりは出来ないようだけど。



  
70:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 02:08:22.75 ID:oxkFnAQ50
  


ブーンが休憩している間、場内はどよめきに満たされた。

無効化の魔法だ、と驚く者、
いや、人形の故障だと騒ぐ者。


(;^ω^)「も、もしかして僕はこれを壊しちゃったのかお?」

困ったことになったお。弁償は高そうだし。

そうだ、治せばいいんだお。


閃いたブーンは審判に向かって、

( ^ω^)「ごめんなさいですお、今治しますおー」

そう言って人形の前に膝をついた。


両手を前にかざす。
その手から水の球体が現れた。


それは大きな球体になり、ばらばらになった人形を包み込んだ。



  
71:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 02:11:51.08 ID:oxkFnAQ50
  
人形が動いた。
体が繋がる。

繋がった。元通りだ。
切られた跡すら見当たらない。


( ^ω^)「はい、治りましたお」

ブーンは起き上がった人形を見つめながらにっこりと笑って言う。


その時




ピリリリリリリリ!

また高い笛の音がした。
5分経ったようだ。


(;^ω^)「氷の剣出した頃から疲れちゃって試験の事忘れてたお・・・」


どうするにも終了の笛が鳴ってしまったので、とりあえず観客席に戻るしかなさそうだ。



  
74:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 02:19:02.58 ID:oxkFnAQ50
  


( ^ω^)「試験中に休憩とか僕もどうかしてるお・・・」

無効化の魔法は反動が大きく、休憩は必要であることをブーンは知らない。



(´・ω・`)「おかえり、お疲れ様ー」
帰ってくるとショボンが肩をぽんぽん、と叩いてくれた。

('A`)「よくやったじゃねぇか」

  _
( ゚∀゚)「今さっきまで審査員の会長さんがここに来ててさ、"二人ともすばらしい"って褒めてくれてたぜ

      で、これを預かったんだ。ホラ」


( ^ω^)「おっとっとだお」

ジョルジュが何かを投げてきた。500円玉ぐらいの大きさのキラキラしたもの。



  
75:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 02:26:26.69 ID:oxkFnAQ50
  


(´・ω・`)「それが、下級"和解者"認定バッジだよ。おめでとう」

(;^ω^)「大事な物を投げないでくださいお」
落とさなくて良かった、とブーンは思った。

  _
( ゚∀゚)「まぁまぁ、それにしてもやったな。これで"和解者"への第一歩だ。先は長いが、とりあえず今は祝おうぜ!!」

('A`)「とりあえず今日は認定バッジだけで、明日になれば他の免許やらも交付してくれるってさ。」


  _
( ゚∀゚)「バッジがあるから今日の夜のコロシアムバトルは出られるぞ!
     
     だがしかし、今日はバトルが始まるまでに祝杯を上げに行くぞ!!」

ジョルジュが嬉しそうに腕を振る。
酒に弱いのに酒好きなんだろうか・・・

  _
( ゚∀゚)「さぁさぁ、行くぞ!有無を言わさず行くぞ!!ほら、ショボンも付いて来い!」


(´・ω・`)「はぁい。仕方ないね、付き合ってあげるよ」



  
82:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 02:32:32.23 ID:oxkFnAQ50
  


ショボンはジョルジュに肩をがっちりと組まれ、離してもらえそうにない。

だからドクオさん、悔しそうな顔で見るのはおやめなさい。



結局そのままジョルジュに酒場に連れて行かれて、また酒乱パーティになったのは言うまでも無かった。

コロシアムバトル・・・酔っ払ったままで行くのかな・・・

ブーンは酒場でもどうするのだろうかと悩んでいた。
しかし、試験の疲れも溜まっていたため、酒とあいまって気づかないうちに眠ってしまっていた。

夢に見たのは、4人で昼寝をする光景。



  
85:◆OLIVIA/O7I :2006/09/01(金) 02:40:06.63 ID:oxkFnAQ50
  
  _
( ゚∀゚)「ブーンもドクオも、幸せそうに寝てやがるぜ」

やんちゃな弟が出来たかのようにジョルジュが言う。

  _
( ゚∀゚)「なぁ、ショボン。お前はこいつらの師匠として、こいつらの能力をどう思う?」

眠る2人を見つめるショボンとジョルジュ。

(´・ω・`)「潜在能力はとんでもないと思うよ。二人ともね。

      でも、精神的な強さがまだ追いついていないね。
      それは、少し危ういと思う。小さな子どもが車のような凶器を運転するのと同じぐらいにね。」

ブーンとドクオの寝顔は、間違いなく無邪気な少年のそれであった。
  _
( ゚∀゚)「俺も、それは思ってた。でも今更こいつらの力は弱くはならないぜ」

(´・ω・`)「うん、だから、コロシアムバトルで何かをカギを見つけてくれれば、と願っている」

ショボンが2人の頭をくしゃり、と撫でながら切ない声で呟く。

(´・ω・`)「どうか、この子たちの未来は明るいものでありますように・・・」


--第13話 終--



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