( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです

  
1:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 22:35:52.51 ID:+0NCbSN20
  
--第16話--

ちょうどブーン達がコロシアムで奮闘していた頃、北の島では。

「じっちゃん!お手紙だよー!!」

広い孤児院の入り口から、青い服を着た幼い子どもが紙切れを持ってこちらに走ってくる。

/ ,' 3 「おぉ、すまんな」

ありがとう、と礼を言う。子どもはえへへ、と笑ってまたどこかに走り出す。

−かさり

封筒を開いて中身を検分する。

/ ,' 3 「これは・・・なんという事だ」



  
5:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 22:38:48.52 ID:+0NCbSN20
  
ようやく常冬ともいわれるこの島にも、少しは寒さが和らいで、かすかな春が来るというのに。
統計的に見れば、春になれば凍え死ぬことが無いため孤児は増える。子を捨てる親のわずかな良心。

春は孤児院にも出会いの季節である。

だというのに。

/ ,' 3 「まさか大事な子どもを二人も失ってしまうとは・・・」

春は別れの季節、とも言うらしいからのう。
冷静にしていようと思ってそんな思考を巡らせるが、やはり目頭が熱くなる。

歳をとると涙もろくなっていけない。

しかし、喪失を悲しむ前にしなければいけないことがある。



  
6:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 22:43:39.39 ID:+0NCbSN20
  

訃報を他の子ども達に知らせることと、確認しなければならないこと。





・・・もし、あ奴が動き出していたら。

/ ,' 3 「平和な春は近いうちに訪れなくなるかも知れんのう・・・」


昨日吹き始めた春一番の嵐が、荒巻の言葉を掻き消した。



  
7:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 22:48:15.92 ID:+0NCbSN20
  


(;^ω^)「むごぉぉぉー」

ブーンの奇声が観客席に響く。周りの人は軽く白い目で見ている。

(;^ω^)「ルールブックとは言えど、読書は好きじゃないおー」

  _
(;゚∀゚)「落ち着きのない奴だな、そのページで言いたいことはコロシアムなんて見世物なんだってこった」

隣の席で、ブーンにコロシアムのルールを教えていたジョルジュが苦笑する。




ブーンは帰ってくるなりショボンとジョルジュに向かって頭を下げた。
致し方ない場合以外、戦う相手には誠意を持って戦うという教えを裏切ったこと。

コロシアムの入り口の垂れ幕にあるように「戦いは正々堂々、見るものを魅了せよ」というキャッチコピーに反したこと。

わかんないんですには卑怯なことをした、反省しているということ。

ショボンが叱咤激励をする間もなくブーンが謝りだしたので、ショボンはぽかんとしていた。

それから少しして、ブーンに話しかけた。



  
9:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 22:57:56.64 ID:+0NCbSN20
  

(´・ω・`)「ブーン君、わかんないんです君の気持ちは分かるよね?
      勝ちを確信して剣を振り、いきなり眠らされた彼の気持ちを。
  
      きっと目覚めたときすごく悔しいだろうね。」


(;´ω`)「はい・・・わかりますお。」

下を向いたままブーンが答える。

それにあっさりとした口調でショボンが答えた。

(´・ω・`)「うん、分かってるならいいや。もう十分反省したみたいだしね。
      それよりも、思いつめすぎちゃいけないよ。ブーン君は根は真面目だからね。

      あんまりうだうだしてると掘っちゃうからね」


(;^ω^)「うほっ」

よしよし、とブーンの頭を撫でて、ショボンは未だ眠っているであろうわかんないんですの所へ歩を進めた。

その道中、ショボンは少し安心していた。
この子は心配しなくてもまっすぐな子だから、きっと大丈夫だろうね、と。



  
10:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 23:04:14.78 ID:+0NCbSN20
  


(;^ω^)「もっと怒られると思ってたお・・・拍子抜けだお」


ブーンが少し放心しているとジョルジュが何処からか帰ってきて、ブーンにルールブックをくれた。
受付から取ってきてくれたらしい。
  _
( ゚∀゚)「しかし、ショボンも一人前に師匠ヅラするようになったな」

(;^ω^)「むしろあれは放任じゃないんですかお?」

にやり、というようにジョルジュが笑った。
  _
( ゚∀゚)「そんな事はねぇさ。いずれお前も一人前になって弟子を取れば分かるさ」

(;^ω^)「そうですかお・・・でもショボンさんにも悪いことをしましたお。
       師匠としてわかんないんですさんのところにまで謝りに行かせてしまって・・・」

  _
( ゚∀゚)「気にすんなって。弟子の尻拭いも義務さ。さ、そろそろ次の試合じゃねぇかな。
     ドクオならきっといい試合してくれるだろうからな、目玉かっぽじって見てようぜ」



  
11:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 23:09:47.85 ID:+0NCbSN20
  


ちょうどその時、選手は会場に出るようにとのアナウンスが流れた。

それに続いて対戦者の名前が挙げられたとき、場内が賑やかになった。
待ってましたというかのように最前列へ飛び込んでいく観客もいる。

  _
( ゚∀゚)「下級"和解者"といえど、人を魅了する戦いをする奴は大勢いる。
     そいつらを見たいがための観客だしな。

    ドクオも人気者になりやがって」


ちんぽっぽはわかんないんですに並ぶ期待の新人と噂されており、
ドクオに至っては午前の試験で一躍有名人になっている。

実際、先ほどドクオの名前が挙がった時、小さく歓声が沸いた。

大勢の客が闘技場が良く見える方へ詰め寄ってくる前に、最前列に席を移動した。


ドクオとちんぽっぽがほぼ同時にさっきブーンがくぐったあの門から現れた。



  
14:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 23:19:57.65 ID:+0NCbSN20
  
('A`)「うおっ、さみっ!」

吹き抜けの天井から強い風が吹いている。
気合を入れて袖なしの黒いシャツなんて着てくるんじゃなかった。

(*‘ω‘ *) 「すぐにあったかくなるっぽ。まぁ、息が上がるのはあんただけだろうけどっぽ」

先に開始位置についたちんぽっぽの宣戦布告。

('A`)「言ってくれるじゃないか。弓使い。」

小柄な彼女には似合わない程の大きな大弓を左手に携えている。
丈は軽くちんぽっぽの身長を凌ぐ。

背中には小ぶりな竹弓を、腰には矢筒を提げている。



  
15:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 23:24:49.43 ID:+0NCbSN20
  

他に武器のようなものは見えない。おそらくは飛び道具のみしか使わないだろう。

こちらは腰から巻くマントの様な厚手の布にナイフや短剣を大いに仕込んである。
遠距離攻撃も近距離攻撃も可能であるドクオの方が理論的には優位。

しかし、ちんぽっぽの戦闘スタイルは全くの未知。
あれだけ性格的に問題が多ければ、一筋縄な攻撃だけではなかろう。

矢筒があまりにも太いのも気になる。


最初は様子を伺いながら戦うべきだとドクオが判断する。

そして、開始の合図がなされた。



  
17:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 23:36:22.43 ID:+0NCbSN20
  


( ^ω^)「・・・二人とも、動きませんお」

  _
( ゚∀゚)「様子を伺っているな」

両者が睨み合う形で静止して30秒が経過した。

ドクオは動かない。
ただ、攻撃を防ぐために体の周りに旋風を起こして立っている。

その時、ちんぽっぽの拳が光り始めた。
強い魔法の流れを感じる。

(*‘ω‘ *) 「ふむ、最初に相手の様子を見るのは懸命なことっぽ。
       しかし、私相手にそれをすることは命取りっぽ!」

ちんぽっぽは両手を重ねる。
そして、大地にそれを押し付ける。

ごごごご、と大地の奥深くから轟音がする。
地鳴りというべきか。

恐れをなし、足がすくみそうになるほど響く音。



  
18:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 23:42:00.35 ID:+0NCbSN20
  

その音はだんだん地上に近づいてくる。
音は更に更に大きくなる。

(*‘ω‘ *) 「せぇぇぇいっ!」

ちんぽっぽが両手を一層強く押し付ける。

その時、大地が揺れた。

観客席が崩れ落ちてしまいそうなほどの振動。

上に、下に。
左右にも斜めにも激しく揺れる。



  
19:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 23:42:54.42 ID:+0NCbSN20
  
('A`)「!?あぶねぇっ!」

ドクオはその揺れの大きさに耐えられず、たたらを踏む。
それだけでは足りず体を伏せ、うずくまった。

驚きのあまり時間間隔を失ってしまった。
揺れていたのは何分、いや、何秒だったか。



('A`)「なんだ、こりゃあ・・・」

そして、彼が顔をあげて見たものは。



  
22:◆OLIVIA/O7I :2006/09/13(水) 23:59:16.74 ID:+0NCbSN20
  
('A`)「ここってさっきまで平地だったよな・・・?」

闘技場は、広さも形も何もかも小学校の運動場にそっくりだったはずだ。
乾いた土、均された平面までも。

だというのに、今は。

('A`)「運動場というよりかは、山岳じゃねぇか・・・」

呆然と立ちすくむドクオ。

100m四方程度の広さの闘技場全体に、岩山が存在していた。
大小多数の岩山が。

大きいものだとドクオの体ぐらいはすっぽりと隠してしまう。

小さいものでも走るのに邪魔になるほどである。

自分の足元も岩でぼこぼこで、歩く分にも踏み込むにも足場が悪い。



  
24:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 00:01:35.88 ID:H8P7rxoe0
  


それにしても、さっきからちんぽっぽの姿が見えない。
喋りもしない上に気配も完璧に隠している。
そのせいでどこにいるのか分からない。

('A`)「まさか・・・あいつ、これを最初から狙ってい・・・って!!」


その瞬間、ひときわ大きい岩山から矢が飛んできた。

・・・早い!
まだ体勢も整っていなかったドクオの眼前に高速の矢が急襲する。

(;^ω^)「ドクオ!危ないお!!」



  
26:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 00:07:35.47 ID:H8P7rxoe0
  
べしゃっ!

('A`)「ぶはっ!」

それは、ドクオの顔に直撃した。
  _
( ゚∀゚)「・・・べしゃ?」

あれ、あんまり痛くない。
顔面がオレンジ色に染まる。
・・・なんだかものすごく目に染みる気がする。

そしてこの柑橘臭は。



('A`)「みかんっ!!?」



  
29:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 00:15:34.15 ID:H8P7rxoe0
  


(*‘ω‘ *) 「どちらもご名答っぽ。
       弓は一度の攻撃から次のモーションまで時間がかかるから、地形を変えさせてもらったっぽ!
       
       大量の岩山を作り、陰になる部分を作れば風はある程度軽減されるっぽ。
       それに、姿を隠すのにも役立つっぽ。これで矢のモーションの問題は解消っぽ!

       そしてさきほど矢のみかん、これも正解っぽ!
       


       ただ、腐ったみかんであることを除いてはっぽ!」




('A`)「ちょ!腐ってんのかよ!!どうりで変な味すると思ったら!」


(;^ω^)「地味に痛そうだお・・・」

目がまだ染みるらしく、ドクオはまぶたを押さえたままふらふらとしている。

(*‘ω‘ *) 「どさくさにまぎれて食ってんじゃないっぽ!
       リサイクルだっぽ!目潰しには最適なんだっぽ!」



  
36:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 00:32:39.61 ID:H8P7rxoe0
  

  _
( ゚∀゚)「地形変化の魔法・・・なかなか高度なものを扱うお嬢さんだな。
     それに戦闘に対する創造性・・・これは・・・」

ジョルジュがこの光景にも場内に広がる腐ったみかん臭にも動じることなく推測を続ける。
コロシアムではよくあることなんだろうか。


(;^ω^)「ドクオ・・・大丈夫ですかお?」

  _
(;゚∀゚)「まずいかも知れんな・・・」

しかし、見守るしか出来ない2人。


('A`)「臭い・・・痛い・・・不味い・・・胃腸薬欲しい・・・へぶっ!ぶはっ!」

ふらふらとし続けるドクオにみかん(腐)の矢が2連続で飛んでくる。

('A`)「こんのっ・・・!」

腹立たしいので目を思いきり擦り、どうにか前を見据える。
体を屈めて1本目をかわす。



  
38:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 00:38:09.03 ID:H8P7rxoe0
  
少しだけみかんが腕に掠ってしまった。
腐っているために皮が爆ぜ、中身がドクオの二の腕に飛び散る。

(;'A`)「やっぱり臭い!」

二の腕から鼻を突く異臭。

その匂いにたじろいでしまった。
しかし2本目の矢はお構い無しに襲い掛かる。

(;'A`)「ちっ!」

左側の首をかする。
再びみかんの異臭。
しかし、みかんなんて脅威足り得ない。


(;'A`)「・・・あれ?」

首に違和感。


ちんぽっぽが可笑しそうに哂っている。



  
42:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 00:49:21.10 ID:H8P7rxoe0
  


(*‘ω‘ *) 「矢の先にはみかんしか刺さってないとでも思ったっぽ?」

ちんぽっぽが矢羽の黒い矢を1本取り出す。
そして、矢を手で振って、腐ったみかんを振り払う。

出てきたのは、鋼製の矢じり。

(;'A`)「みかんを刺して凶器を隠してあったのか・・・」

(*‘ω‘ *) 「そうだっぽ。みかんだけの攻撃で油断させたところで仕留めるつもりだったっぽ。惜しかったっぽ・・・」


左首筋を浅いながらも切り裂かれたドクオ。
鮮血が滴りつつある。

左手で傷口を押さえるが、次から次へと溢れてくる。

(;'A`)「ちぃ・・・」

  _
(;゚∀゚)「あの出血量は宜しくないな。出血多量にはならんだろうが、そのうち貧血で倒れるぞ」

(;^ω^)「ドクオ・・・頑張るお・・・」



  
50:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 01:17:35.56 ID:H8P7rxoe0
  


仕込み刀、いや、仕込み矢とはなかなかやるな、ちんぽっぽ。
・・・あんまり深くは切れてなさそうだけど、出血がやばいな。

早く決めちまわないと、こっちが不利になる。

しかし、考え無しにちんぽっぽに飛び込めば、みかんか矢が飛んでくる。
風を使っても死角に入られれば攻撃を与えたことにならない。
俺が飛べば−岩のせいで上手く着地が出来そうにない−降りたところを狙われるだろう。

(;'A`)「どうすれば・・・っぶ!」

(*‘ω‘ *) 「ほらほらっぽ!ボサっとしてるとみかんが飛んでくるっぽ!」

ちんぽっぽが矢を乱れ打つ。
この中にも仕込み矢があるかも知れない、そう思うと体がちゃんと動いてくれない。
視界も奪われ、逃げることすらおぼつかない。



  
52:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 01:21:31.20 ID:H8P7rxoe0
  
  _
(;゚∀゚)「完璧に相手のペースに引き込まれてるな・・・」

このままではまずい。
出血も止まっていないというのに。



みかんの汁の飛沫で再び視界を奪われるドクオ。


それを確認したちんぽっぽ。
岩陰から離れ、少しずつドクオに近寄っていく。

(*‘ω‘ *) 「あまり近寄ると危ないっぽね。悪いけど動きを封じさせてもらうっぽ!」

そして再びちんぽっぽの両手が光りだす。


(;'A`)「今度は・・・何をするつもりだ!?」

まともに開かない目をそれでも見開いてドクオが叫んだ。



  
54:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 01:31:43.94 ID:H8P7rxoe0
  

(;^ω^)「手も足も出ないとはこのことだお」

ドクオがここまで何も出来ないことにブーンは混乱していた。

  _
( ゚∀゚)「・・・今まであいつは先制攻撃型で、先手を取られたことがなかったからな。
    似合わないことして自分を追い込みやがったか」

ブーンもドクオも対人は経験不足、とは言わずに溜息で隠しておいた。



まったくもって、これはどうしたものか、とちんぽっぽは思う。
この少年、審査の時の勢いが全く無いではないか。

ちんぽっぽは思考を巡らせる。

ドクオの大空を高く舞い、蜂よりも優雅な攻撃を思い出す。
あれをしてくれなくては面白くない。






もっとも、その手札をことごとくふさいだのは自分だが。



  
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/14(木) 01:33:56.99 ID:H8P7rxoe0
  



そろそろ出血もひどくなってくる頃だし、止めを刺してあげようか。
痛いのは辛いだろうし。
ただ、近接戦闘用のナイフを持っているから、不用意には近寄れない。

致し方ない、昨日開発した新技を使うしかないようだ。
あれ自体に殺傷能力はないが、動きは止められるだろう。



それを使おうとしたら、少年は何をするつもりだと乞うた。

だから、こう答えてやったのだ。

(*‘ω‘ *) 「何をするって・・・それはもちろん


       み  か  ん だっぽ!!」



  
59:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 01:55:59.17 ID:H8P7rxoe0
  

ちんぽっぽは光る両手を天に翳す。
昨日、メテオストライクとかなんとかいうヤツをインスピレーションしたあの技を。
大地魔法の使い手である私なら、みかんぐらいなら自由に動かせる、だから。

(*‘ω‘ *) 「いくっぽ!!みかんストライク!!」

  _
(;゚∀゚)(;'A`)(;^ω^)「バカー!なんだその厨臭い名前はー!!!!!」

コロシアムの天井にあたる部分の方からどこから現れたのか大量のみかんがドクオ目掛けて降って来る。

びちゃびちゃと嫌な音がする。
みかんの雨に降られるドクオ。

(;'A`)「やっぱり腐ってるし・・・」

  _
(;゚∀゚)「あー・・・なるほど、確かに動きは止まるわな」

(;^ω^)「地面がみかんでぬるぬるだからですかお?」

ちんぽっぽのネーミングと、やることの馬鹿らしさに冷や汗をかきながら続ける。



  
60:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 01:59:19.86 ID:H8P7rxoe0
  

  _
(;゚∀゚)「あの岩・・・水があるとすぐに滑りやすくなる材質のようだ。
     だから、精神的攻撃にもなるし、完璧な足止めにもなるんだ」

ブーンがハッとした顔をする。

(;^ω^)「・・・ちんぽっぽさんって、今までほとんど足止めしかしてませんおね?」

  _
(;゚∀゚)「あぁ、そうなんだ。そこにドクオが気付けばな・・・あいつが動けば状況も変わるさ。
     全く、ブーンとやってることかわらねぇじゃねぇか」

(;^ω^)「すいませんだお」

  _
(;゚∀゚)「それにしても、ショボンの奴遅すぎるだろ・・・何やってんだ」

(;^ω^)「まさかわかんないんですさんと・・・くそみs」

  _
(;゚∀゚)「・・・ヤボダナァ」



  
64:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 02:09:54.44 ID:H8P7rxoe0
  



(;'A`)「もうヤダ・・・」

反抗期独特のやる気のなさがとうとう現れだした。弱音も吐きたくなると言うものだ。
こちらの特技をことごとく封じられて・・・。

言葉の通り手も足も出ないまま終わるのか。

なんとなく、ちんぽっぽはわかんないんですの復讐をしているのではないかと思えた。
わざとではなく、無意識のうちに。相方を倒された辛さはやはり拭えないだろう。

みかんはドクオのズボンの裾を濡らすほどに降り積もり、襲来はまだ止みそうに無い。

ちんぽっぽは最後の一撃を放つべく、矢を番え弦を引き絞りはじめる。


その時ふと、南入り口から視線を感じた。


│ω・`)「・・・」

ショボンがなにかいいたそうにこちらをみている。



  
65:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 02:17:49.47 ID:H8P7rxoe0
  


(*‘ω‘ *) 「・・・っぽ?」

弦を引き絞り、会に入ったちんぽっぽも
ドクオの視線が入り口に向かっていることに気付いた。

あれは確かドクオの師匠でもある、有名な荒巻の弟子・・・ショボンだったか。

二人がアイコンタクトをとっているのかと思いきや、ショボンは何かを口パクで話している。

何かの作戦か、と思い唇の動きを読んでみる。

│ω・`)(あ の よ る の じ ょ う ね つ を お も い だ し て)

・・・あの夜の情熱を思い出して?

意味が分からない、
とちんぽっぽが弓を引いたまま訝しげに考えていると、矢の向いた方向からおびただしい熱量を感じた。

('A`)「・・・」

ドクオの目がぎらぎらと輝いていた。
それは、午前の試験の時よりもずっと凶暴で、妖しい眼光を帯びていた。



  
68:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 02:29:05.77 ID:H8P7rxoe0
  

これは危険だ!
ちんぽっぽは直感でそれを感じた。

今倒さないと、もう・・・!

(*‘ω‘ *) 「覚悟っぽ!」

もっと引き絞ってから離すべきだったが、そんなこと構ってられなかった。
危険だ、危険すぎる。

−ピィィィン

弦から澄んだ音がして、矢は前方へ真っ直ぐと飛んだ。


しかし矢は肉を貫く事無く、ドクオの立っていた場所より少し奥にあった岩に突き刺さる。

(*‘ω‘ *) 「どこへ行ったっぽ!!?」




('A`)「ここだ」

全く見当もつかない方向からドクオの声がした。



  
73:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 02:46:44.40 ID:H8P7rxoe0
  


ドクオの声と同時に背中に衝撃が走り、ちんぽっぽの左手の弓が2つに割れた。

この風使いの少年は、弓使いの少女が一矢放つと同時にここまで飛んできていたのだ。

(*‘ω‘ *) 「どうして!?どうやってここまで来たっぽ!?」

破壊された弓の上半分を強く握り締める。
あのみかんの海からは逃げられないはずなのに。


('A`)「お前はあのみかんよりも甘いぜ。

    見てみな、あのさっき放たれた矢をさ」

確かドクオの首を狙ったはずの矢は、ドクオの足元ぐらいの高さの場所に刺さっていた。
二人の距離は遠くなかった。
だから、あそこまで下がるはずが無い。

('A`)「・・・わからないか?じゃあ、説明してやるよ。

    俺は、矢が飛んできた瞬間真上に飛んだ。で、飛んできた矢を踏み台にして、あのみかんの空間から逃げたのさ」


(*‘ω‘ *) 「そんなことできるわけ・・・」

('A`)「そう思うならもう一度やってくれてもいいぜ。
    矢にあれぐらいの勢いがあったから、踏み台にしたって減速しかしなかった。あんたの腕はすごいもんだぜ。」



  
75:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 02:52:26.86 ID:H8P7rxoe0
  

ありえない、そうちんぽっぽは思った。

理論的には可能である。
突発的に上昇気流を起こし、上に向かって飛ぶ。ここは地面が滑らない限り成功する。
しかし、矢を踏み、ドクオの体の進行方向のベクトルを前方に変え、そこから南から北への風を起こす。

風は最も繊細なため制御が難しい。なのに、一瞬で風向きを変えたというのか。

午前の試合でのドクオは、単調な風しか扱えていなかったはずだ。
上昇する風を操りながら、同時に横に吹く風など扱うことはできなかった。

ここに来ていきなり進化したということか。

驚愕の次に現れた表情は、孤高の笑みだった。

(*‘ω‘ *) 「おもしろいっぽ!」



  
77:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 03:04:10.12 ID:H8P7rxoe0
  



('A`)「その小さな弓で戦うつもりか?」

大弓は壊れてしまったというのに、まだ余裕の表情をくずさないちんぽっぽ。
ほんの少しの苛立ちと共にドクオが尋ねた。

(*‘ω‘ *) 「そんなわけないっぽ!」

そう言い終わったと同時に、ちんぽっぽの拳がドクオの髪をかすめる。


('A`)「なっ!?」
あのさっきの矢の速さと同じ、もしくはそれ以上に早い。

(*‘ω‘ *) 「弓は元々副業だっぽ!私の本業は拳で殴りあうことだっぽ!」

そういう間もちんぽっぽの両の拳は止まらない。
スピードが常人よりも明らかに速いうえに、的確に急所を狙おうとしてくる。

ちんぽっぽのひきしまった筋肉はこのためだったのか。



  
78:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 03:06:44.34 ID:H8P7rxoe0
  
(´・ω・`)「あらら、また押されてるね」

  _
(;゚∀゚)「おう、お、遅かったじゃねぇか」

唐突にショボンがジョルジュの背後に現れたため、ジョルジュはどもってしまった。

  _
( ゚∀゚)「何があったかわかんねぇが、いきなり反撃に出ていい感じだったんだけどな・・・」

(´・ω・`)「こっちまでは口パクは分からなかったようだね・・・」

ボソリとショボンが言った。

  _
( ゚∀゚)「今何か言ったか?」


(´・ω・`)「大丈夫だよ、もうああなったらドクオ君は止められないよ。あの夜みたいにね」

(;^ω^)「(最後の言葉がなんかひっかかるお・・・)」



  
82:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 03:12:08.58 ID:H8P7rxoe0
  


('A`)「とっとっと・・・」

拳をかわすドクオ。足元が悪い為バランスをとりにくい。

一方ちんぽっぽは岩山での戦いは手馴れているらしく、ふらつきもせずに高速の拳を繰り出す。

(*‘ω‘ *) 「これでどうっぽ!!」

ちんぽっぽの体重を乗せたアッパーカット。


しかし、ドクオはその手を易々と捕まえる。
下を向いたためドクオの目に宿る燐光はちんぽっぽには見えない。

('A`)「風使いの動体視力をなめちゃいかんぜよ・・・さぁーて」

それだけ言って、素早く両手でちんぽっぽの腕を掴む。

('A`)「せぇい!!」

そして先程まで自分がいたみかんの海に、細い少女の体を思い切り投げ捨てた。



  
86:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 03:27:43.84 ID:H8P7rxoe0
  

びちゃり、と嫌な音がした。
みかんまみれのちんぽっぽ。

(*‘ω‘ *) 「目が!!!目がー!!!!!!っぽ!これ痛いっぽ!!!」

(;'A`)「ムスカ、人にやっといてそれはないぜ・・・」

さぁ、視界を奪われている間に、勝利も奪ってしまおうか。

('A`)「しかし困ったな・・・やりすぎたか」

腹いせにみかんの海に投げてみたが、あそこには自分も近づけない。
間違えて滑って転べばまた堂々巡り。

ナイフを投げたらちんぽっぽが怪我するし。

('A`)「俺も甘いな」

フッ、と鼻で笑う。

そして、一番近くにあった岩山へと飛ぶ。
ジャンプして、風で跳躍を助ける。



  
88:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 03:33:42.67 ID:H8P7rxoe0
  
ちんぽっぽが転がっている箇所に一番近い岩山までぴょんぴょんと飛ぶ。
2mほどの岩山のてっぺんのたったドクオ。

('A`)「ほっ」

ちんぽっぽ目掛けて落ちた。
ちんぽっぽに直撃する寸前に彼女の服の襟元を掴む。
そして急上昇。

後ろの岩を蹴ってみかんの海から脱出。
まだ抵抗出来ないちんぽっぽを降ろし、背中の弓を奪う。

('A`)「破壊じゃねーけどさ、奪ったら勝ちになるかな?相手動けてないし」

そう審査員に問うと、彼はうなずいた。

--第16話 終--



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