( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです
- 1:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:16:02.14 ID:gM0l6Tyi0
- --第17話--
(´<_` )「はぁ、今日の夕飯も非常に美味だった。ツンも料理の腕を上げたな」
ぽっこりと膨れたお腹をさすりながら彼は言った。
ξ゚ー゚)ξ「ふふ、弟者ったら。おだてたってもう何も出ないわよ?」
私は彼を"ノーム"とは呼ばず、"弟者"という名前で呼ぶ。
私たちのほか誰もいないときは、通り名なんかじゃなくて彼らのご両親が付けてくれた名前を使うのだ。
今、私たちの神殿には私と4精霊しかいない。
食事は5人で摂るきまりなのだ。
- 34:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:34:35.34 ID:gM0l6Tyi0
- ( ´_ゝ`)「いや、あながち冗談ではないぞ。」
ξ゚ー゚)ξ「兄者、本当に?嬉しいわ」
シルフこと兄者も褒めてくれる。
彼らはとても正直者だ。それが分かっているから余計嬉しい。
从*゚∀゚从「ブーンの為にクーの姉者に頼んで料理を教えてもらうなんて、なかなかやるのう」
サラマンダー、妹者が赤い瞳をらんらんと輝かせて言う。
ξ*゚听)ξ「も、もう!そんなんじゃないったら!新しい趣味が欲しかっただけよ」
自然に頬が熱くなる。もう、妹者はこんな時だけ鋭いんだから。
( ´_ゝ`)「してツンよ、今日の食後の紅茶は何にするかな?」
ナイスフォロー兄者。
- 36:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:35:45.47 ID:gM0l6Tyi0
- ξ゚听)ξ「んー、昨日はダージリンだったから、ディンブーラかしら?
キャラメルもいいし、アンゼリカも捨てがたいわね」
川 ゚ -゚)「キャラメルにしよう。ポットの材質はボーンチャイナで頼む」
ここでいきなり一番紅茶にはうるさいウンディーネ、いやクーが口を出した。
彼女が紅茶については最大の決定権を持つ。
ξ゚ー゚)ξ「わかったわ。みんな異論はないようだし」
そう言ってやわらかに白いボーンチャイナのポットに手を伸ばす。
川 ゚ ー゚)「あぁ、ツンの淹れる紅茶は絶品だからな、こ奴らはそれを飲めるだけでいいのさ」
クーが茶化して言う。5つの席から笑いが漏れる。
兄者と弟者がまったく同時に「そんな事ない」と反論するものだからまた笑いが起こる。
- 38:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:38:17.62 ID:gM0l6Tyi0
- −最近はもう悪夢も見ない。
あぁ、楽しいな。やっぱりここは居心地がいい。
この場にブーンがいたら、もっと楽しいかしら?
兄者や弟者がブーンをからかって・・・またみんなで笑って。
ううん、ブーンならみんなにからかわれてそうね。
って、なんでブーンの事考えてるんだろ。
まぁいいわ、今日は気分もいいの。
思わず鼻歌がこぼれそうになる。
ξ゚听)ξ「あら?」
廊下から足音がする。ここにはもう誰もいないはずなのに。
弟者が少し警戒してドアの前に立つ。
ばたんっ!
- 39:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:39:50.63 ID:gM0l6Tyi0
- 激しい音がしてドアが開く。
受付の人が慌てて戻ってきたようだ。
なんだ、と弟者も安心して席に戻る。
川 ゚ -゚)「どうした、忘れ物か?」
クーが息の上がる受付の人に水を渡す。
受付「そ、それが・・・ツン様に荒巻様から伝言が・・・」
・・・どうしてそんな暗い顔をしているの?
その顔の悲痛さにいわれようもない不安がツンの心をよぎった。
- 42:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:43:28.18 ID:gM0l6Tyi0
(*'A`)「ふぁー、ほこほこー」
( ^ω^)「コロシアムにシャワー室がついてて良かったおね」
今にも体から湯気を出しそうなドクオ。
みかんまみれになったドクオは審査員のおっちゃんから風呂に入るようにとシャワー室に案内された。
そして、今しがた帰ってきた。服もちゃんと綺麗になっている。
(*'A`)「ここの風呂やばいぞ。一人用のシャワー室のはずなのに温泉5つぐらいついてたぜ!ワイン風呂とかさ!」
ドクオが早口にまくしたてる。そんなにいい風呂なら僕も入ってみたい、とブーンは思った。
_
( ゚∀゚)「やぁやぁお疲れ!」
(´・ω・`)「お帰り、ドクオ君」
2人はそこではじめて口を開いた。
- 43:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:46:31.56 ID:gM0l6Tyi0
('A`)「あ・・・あの、ショボンさん・・・」
ショボンはドクオを無言で見つめる。
感情は読み取れない。
それに耐えられずドクオは下を向く。
なんだろう、入り込めない。ここからは2人の世界ですか?
(´・ω・`)「ドクオ君、思ったより勢いがなかったね、どうしたんだい?」
('A`)「すいません・・・」
(´・ω・`)「いいんだよ、怒ってない怒ってない。それよりも、何があったのか聞かせてくれないかい?」
('A`)「はい・・・あの後、あのことを思い出して、気を取り直していきり立ったのは良かったんですが・・・」
(´・ω・`)「余計なところまでいきり立っちゃった、と?」
- 44:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:50:47.10 ID:gM0l6Tyi0
- (//A//)「・・・はい・・・」
(´・ω・`)「仕方ないよ、初めてだったんだもんね。」
二人が世界に浸っているのをいいことに、ブーンがジョルジュに耳打ちする。
(;^ω^)「(・・・ジョルジュさん・・・これはいったいいかなることですかお・・・)」
_
(;゚∀゚)「(俺にもさっぱり・・・しかし、これはくそみそフラグの予感・・・)」
ショボンの頭が水平にこちらを向く。
(´・ω・`)「こらそこの二人」
(;^ω^)「ヒッ!」
聞こえてたのか・・・
- 46:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:54:21.98 ID:gM0l6Tyi0
(´・ω・`)「まったく、色んな特訓をしてただけだよ。プンスカ!
ま、ドクオ君、ちゃんと今回自分で悪かったと思うところは改善していこうね」
(*'A`)「分かりました・・・」
特訓・・・だけだったら、どうしてドクオは頬を赤らめているんだろう?
何かが匂う。
しかし、この謎はついに明かされることはなかった。
_
(;゚∀゚)(そういえば、ブーンがツンに謝りに行った夜・・・
ブーンがいなくなった後あの二人も何処かに言ったような・・・)
(´・ω・`)「メメタァ」
_
( ゚д゚)「ぬおー」
やはり、ジョルジュのこの謎も明かされない。
- 47:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:56:42.82 ID:gM0l6Tyi0
- (´・ω・`)「それにしても、2回戦まではまだちょっと時間があるねぇ」
今は1回戦の5戦目。全部で8戦であるから、まだ余裕がある。
( ^ω^)「剣の手入れでもしてるかお?」
('A`)「そうだな」
むくり、と起き上がるジョルジュ。
_
( ゚∀゚)「いい心がけだな。俺も相棒の手入れするとすっか!」
彼が相棒と呼ぶ剣。
普段は背中に背負っているそれ−今は座っているため膝と膝の間にある−を取り出し、
黒塗りの質素な鞘から柄を掴んで一気に引き抜く。
('A`)「うわ・・・」
( ^ω^)「すごいお・・・」
二人がそれを見た瞬間同時に息を呑む。
- 48:◆OLIVIA/O7I :2006/09/14(木) 23:58:29.32 ID:gM0l6Tyi0
- (´・ω・`)「二人ともジョルジュの剣を見るのは初めてなんだね」
_
( ゚∀゚)「この剣はな、昔じいさんは刀匠やっててさ、それを生かして作った最高傑作なんだとさ。
作られたのは10年前ぐらいだったかな」
( ^ω^)「荒巻さんは元々刀匠だったんですかお?」
_
( ゚∀゚)「あぁ。なんで"和解者"になったのかは知らねえがな。どうせ自分の剣の切れ味でも試してみたくなったんだろうさ」
ジョルジュが白い歯を見せて茶化す。
そして、この剣は"討伐士"と"守護者"の職を引退したとほぼ同時に"和解者"になったジョルジュに譲られたのだと語った。
彼は視線を落とす。
その視線は自分の剣へ注がれる。
その剣からは歴戦を経た証が詰まっていた。
柄の飾りもつくりも大分くたびれてきている。
- 51:◆OLIVIA/O7I :2006/09/15(金) 00:04:02.19 ID:vuJWHAfG0
しかし。
これはどんな材質で作られたのだろうか。
水晶を使ったのかと思うほど透き通った剣。
濡れた輝きを帯びているかのように煌く。
剣を通してジョルジュの顔が僅かに見える。
屈折せずに彼の姿が見える。
そして、それより更に驚いたこと。
その透明の剣の中、真ん中の部分に、
炎が、閉じ込められていた。
摩訶不思議であり、それでいて溜息が出そうな程美しい刀剣。
その剣には傷一ついておらず、まだ製作したてだと言われても納得出来そうである。
- 53:◆OLIVIA/O7I :2006/09/15(金) 00:06:40.46 ID:vuJWHAfG0
('A`)「これ・・・どうなってるんですか?」
ドクオが興味を持ったように尋ねる。
_
( ゚∀゚)「刀身に軽く触ってみな」
剣の切っ先をゆっくりとドクオに差し出す。
恐る恐る剣に触れてみる。
('A`)「え・・・冷たい?」
驚いたドクオが手を引っ込める。
- 54:◆OLIVIA/O7I :2006/09/15(金) 00:08:21.49 ID:vuJWHAfG0
- _
( ゚∀゚)「ああ。これはな、サラマンダーの炎をウンディーネの魔力の結晶・・・溶けない氷で封印したらしいんだ」
視線は剣から逸らさないままドクオが言う。
('A`)「すごい・・・。でもどうしてそんな事を?」
_
( ゚∀゚)「それも分かんない。じいさんはちゃんと言ってくれなくてさ。
でも"これはサラマンダーが生きた証じゃよ"とか言ってたな。やっぱりよくわかんねーけど」
ジョルジュは首をかしげ、苦笑しながら剣を磨く。
たくさんの通行人がその美しさに足を止めた。
- 55:◆OLIVIA/O7I :2006/09/15(金) 00:10:40.78 ID:vuJWHAfG0
- ----
もう止めて、聞きたくないの。
−かちゃん。
陶器独特の高い音がしてポットが割れた。
腕から力が抜けた。
火傷をしなかったか、とクーが駆け寄ってきて体を支えてくれた。
そうしてくれなきゃ、きっと立っていられなかった。
ξ )ξ「嘘よ・・・」
お父さんとお母さんが死んだ、なんて。
- 57:◆OLIVIA/O7I :2006/09/15(金) 00:14:40.62 ID:vuJWHAfG0
嫌よ嫌よいやよいやよいやいやいやいや嫌嫌嫌嫌
いつもやさしくて、でも時々ちゃんと厳しくしてくれて。
夫婦仲はいつもすごく良くて。
子どもが見ても暑苦しいぐらいで。
寒い日に外に出るときには、いつもだっこして、抱きしめて歩いてくれていたのを今でも覚えている。
旅に出てからはほとんど会えなかったけど、それでも私は両親が大好きだった。
なのに。
- 58:◆OLIVIA/O7I :2006/09/15(金) 00:16:57.29 ID:vuJWHAfG0
- 何で何でなんでなんでなんでなんで何でなんでなんでなんでなんでなんでっ!
妹が、つーが死んだあと、
「もう何も失いたくないんだ、だからそれを現実にするために旅に出る」と言って去った父さん。
「あなたもジョルジュも荒巻父さんも大事なの。あななたちが安心して生きられるために行くわ」と言って去った母さん。
守りたいものを守るために旅に出た二人。
荒巻おじいちゃんの家も継がずに冒険者になった。
おじいちゃんには「放浪の旅に出る」と言って。
おじいちゃんは諦めたように笑って、「自由な奴だ」と言い、
私は寂しくて泣いて、兄さんは唇を噛み締めてただ静かに頷いた。
でも、誰も止めることは出来なかった。
代わりに、毎日毎日−手紙の出せないところに探検にいかない限り−手紙をくれていた。
- 62:◆OLIVIA/O7I :2006/09/15(金) 00:19:53.63 ID:vuJWHAfG0
・・・おかしいじゃない!死ぬわけないじゃないっ!!!!!
嘘うそうそどうして嘘嘘この前だってあんなに元気な手紙をくれたじゃないっうそうそ嘘、嘘よっ!
だって、だって!
一昨日の手紙には「廃墟と化した施設に泊り込みでちょっと調査に行くから」って!!!
何かの間違いじゃないの?あと2日も待てば施設からひょっこり出てきそうなものじゃないの?
・・・これは夢?そうよ夢!!!違うの、現実はこれじゃない!!早く目覚めてよ!!!!
ξ )ξ「ああ・・・あ、あ゛ぁっ!」
川 ゚ -゚)「ツンっ!」
クーが腕に力を込める。
- 63:◆OLIVIA/O7I :2006/09/15(金) 00:22:24.58 ID:vuJWHAfG0
川 ゚ -゚)「ツン、ツン!?しっかりしないか!!」
嗚呼、そうよ、私?私は121代目の偉大なる巫女、ツンよ。
こんなところで取り乱しちゃいけないわ。
そうよそうよ、私は巫女。だから何?
・・・違う、違うわ、落ち着かなきゃいけないの。「しっかり」しなきゃ。
ξ゚听)ξ「詳しく、話、聞きましょう・・・か・・・」
どれだけ冷静ぶってみても、やはり混乱は解けない。
本人はそれには気づかないふりをして、話を聞くことにした。
そして、受付の人の早口な説明が終わり、
ξ゚听)ξ「兄さんに・・・知らせなきゃね」
ツンは半ば呆然としており、ちゃんと歩けていない。
それでも、それだけ言って食堂からふらりと出て行った。
--第17話 終--
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