( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです
- 1: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 00:50:39.51 ID:tHGQpaFa0
- --第20話--
──たーだいまんもすー!
─しい、ツンも、おかえりだお。
──あのね、母さんもお話聞くって!
──えぇ。でも、あなたの冒険の話だから、私は傍に居ることしかできないけど。
─それだけで十分心強いお。
じゃあ、すまないけど、コロシアムでの出来事の最後と、その半年後の話からさせてもらうお。
──・・・ジョルジュ兄さんの・・・ことね。
- 4: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 00:52:39.01 ID:tHGQpaFa0
それは、祝賀パーティの途中。
( ^ω^)「ジョルジュさん・・・どこ行ったんだお?」
きょろきょろと見回してみるが、あの、人のよさそうな笑顔はどこにも見えない。
(´・ω・`)「ねぇ、ブーン君。さっきフリスク取りに一度部屋に帰ったら、ジョルジュのベッドに手紙が・・・」
(;^ω^)「どうしてショボンさんがフリスク・・・」
('A`)「ふたりだけで仲よさそうにしてずるぅーい!ドクオもー!!」
(;^ω^)「うわっ、キモいお!!酒臭いお!」
(´・ω・`)「丁度いいね。3人揃ったし手紙開けようか」
なんとなくみんな嫌な予感がしていたようで、宴会の中心から離れて手紙を開けた。
- 10: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:03:13.78 ID:tHGQpaFa0
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バカトリオへ。
──すべての人間よ、おっぱいを崇めよ!!
ジョルジュ
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(;^ω^)「なんだおこれは・・・」
(´・ω・`)「待って、2枚目がある。上手くくっつけてあるから分かりにくいけど」
ぺり、と高い音がして紙が分裂する。
- 14: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:05:21.18 ID:tHGQpaFa0
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──さすが、これを見抜くとは・・・きっとショボンだろうな。
──お前達なら、きっといい職について、立派な奴らになれると信じているぜ。
──俺も、3バカの中に4バカ人目として加わりたかったが、出来ないようだ。
・・・元気で暮らせ、そして皆で幸せになれ。
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- 15: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:06:18.11 ID:tHGQpaFa0
- 最後の一文だけ、紙を破らんかの如く筆圧が強かった。
それはまるで、最後の願いを古ぼけた和紙に託したかのようで。
もうパーティどころじゃなかった。
手紙の意味が分からない。
とにかくすぐに荒巻に連絡を取った。ジョルジュが残していった携帯電話で。
老紳士はすでにそれを知っていたようで、
ただ一言、「あの子を止めてくれるな」と。
ショボンは納得したという意を彼に伝えて、電話を切った。
そして、もう何が何やらさっぱり訳の分からないという表情のブーンとドクオに、
(´・ω・`)「彼はね、大切なものを守れなかった罪を償うために何処かへ行ったんだ。
どこに行ったのかは分からない。荒巻さんに聞いても教えてくれないと思う。
そんな危険なところに行っちゃったんだよ。僕達は僕達で旅を続けよう」
と言った。
- 18: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:14:19.31 ID:tHGQpaFa0
意外な言葉であった。
ジョルジュさんと旅をしたのは本当に短い間だった。
・・・でも、すごくすごく楽しかったのに。
ブーンもドクオも考えていることはおそらく一緒であったろう。
追いかけようと言いたかった。
でも、電話から僅かに聞こえた荒巻の声や、ショボンの有無を言わせないような表情、声。
逆らえなかった。
罪を・・・償う?守れなかった罪?・・・それは一体?
分からないまま、旅は続いた。
そして、それは季節は流れるようにめぐり、やがて秋にさしかかる頃だった。
- 21: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:21:55.00 ID:tHGQpaFa0
荒巻の元に届いた便り。取っ手にメモが付けられた、大きめの木箱。
/ ,' 3「これは・・・嗅ぎなれた匂いがするのう・・・やはり今でも慣れぬ」
取り付けられたメモには
「"逆さの胡蝶"の組織に断りなく踏み込んだ青年をお返しする。
そして同時に宣戦布告を申し立てる。私は、私達は、お前をとくと苦しめる」
そう書いてあった。
( ^ω^)「空が・・・高いお・・・」
('A`)「あぁ、夜になれば虫も謡う。だけど、すぐにまた雪が降るんだってな・・・」
北の島の秋は短い。
夜の風に冷たさを感じたなら、瞬く間に白い雪が島全土を覆う。
だから、これが今年最後の晴れ間かもしれない、そう思って島の人は出来ることをしておくのだという。
そんな日の、ことだった。
- 23: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:26:55.10 ID:tHGQpaFa0
ブーンもドクオも、ここには居ないがショボンも黒尽くめ。
一般には、喪服と言えば正しいのだろうか。
いきなりだったので、荒巻の家のものを借りた。
( ^ω^)「ジョルジュさん・・・綺麗だったお・・・」
('A`)「あぁ、ウンディーネさんが出来る限り損傷を修復したらしいな・・・。
それでどうにか顔を皆に見てもらえるぐらいに回復したとか」
( ^ω^)「ズタボロ・・・だったんだお?体中が・・・
血管まみれの心臓も、桃色した小腸だって零れて、灰色の脳だって・・・
('A`)「落ち着け、ブーン。参列者に聞こえるだろ」
参列者に聞かれるのはまずい。
ジョルジュの死因は"病死"にされているのだから。
( ^ω^)「・・・すまんかったお・・・トイレでも行って来るお」
('A`)「・・・フリスクはほどほどにしとけよw」
- 26: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:34:14.60 ID:tHGQpaFa0
ドクオの軽口はいつもと変わらない。
でも、その表情は。
その目の赤さは、偽れない。
( ;ω;)「うぅ・・・」
頑張ってるドクオの前では泣けない。
荒巻の家トイレまでの道に誰も居ないことを確認したこの目は、
すぐさま水滴を溢れさせた。
かちゃ・・・
ブーンがトイレの取っ手に手をかけたとき、
ダンッ!!と壁を殴る大きな音がした。
( ;ω;)「おっ!?」
しまった。声が出てしまった。
(´・ω・`)「あ・・・」
ショボン・・・さん?さっきの音も・・・?
- 28: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:42:59.14 ID:tHGQpaFa0
- (´・ω・`)「ご免ね、びっくりしたよね・・・」
いつものショボンの顔。
しかし、みるみるうちにショボンの目に涙が溜まる。
(´;ω;`)「あの時・・・僕が異変に気付いていればよかったのにね・・・
あの時、すぐに追いかければ良かったんだ・・・
彼の"敵討ち"を邪魔しちゃいけない、彼は強いから大丈夫って思っちゃったんだ・・・」
( ;ω;)「ショボ・・・さ・・・」
あきらかに歪むショボンの顔。こんな顔をした彼を見たことがあったろうか。
握り締めすぎたこぶしから、滲む赤。
(´;ω;`)「半年前に戻って・・・あの時の僕を、殴りたいよ・・・」
- 30: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:47:44.21 ID:tHGQpaFa0
ジョルジュ。僕が兄の様に慕ったジョルジュ。
兄が欲しかった、と彼にごねたら当たり前のように
「ここにいるじゃねぇか」と言ってくれたジョルジュ。
父と母がここから研究の為に去っても、彼と居たかったからここに残った。
やさしかったジョルジュ、しかるときはちゃんとしかってくれたジョルジュ。
帰ってきたジョルジュは血まみれ、傷だらけ、それでも、無理して笑って逝った。
敵に死ぬときまで辛そうにする顔を見せなかったのだろうか。
勇敢な、ジョルジュ。
そんなジョルジュ死んだジョルジュもういないジョルジュジョルジュいないいないジョルジュ殺された
ジョル殺ジュジ虐ョル死ジュ死死死ジョル血ジュジョルジュっ!!!
( ;ω;)「ショボンさんっ!!しっかりするお!!」
- 33: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 01:55:50.95 ID:tHGQpaFa0
- 膝から崩れ落ちるショボン。
(´;ω;`)「はぁっ、はぁっ・・・
すまない、取り乱しすぎたね・・・
早く用を足して出ておいき。
君がここにいたら、僕がちゃんと泣けないから・・・」
─しょぼんさんはここでいっぱいないてまたみんなのまえではひょうきんにわらうのだろう─
( ^ω^)「・・・いつか、ジョルジュさんみたいに笑えるようになりましょうお・・・きっとどこかで、ずっと彼は笑ってますお。
その代わり、今は泣いてもいいと思いますお・・・」
それが、ブーンに出来る精一杯の笑顔と慰めだった。
19歳、それは、とても"大人"なんだと勝手に思っていた。
そんなことは、当たり前だけど、なかった。
- 35: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 02:04:18.56 ID:tHGQpaFa0
ジョルジュの葬儀が行われた後の数日間、ブーン達は荒巻の家に泊めて貰っていた。
葬儀の後も各島からの参列者は絶えず、それは、無言で彼の功績を語っていた。
ショボンは、ジョルジュの師弟にあたるため、連日あちこちに連れ出された。
家にいてもしみったれるだけじゃのう、と荒巻は言って、ブーンとドクオを孤児院に連れて行ってくれた。
死が理解できる子ども達は、ジョルジュの不在を悲しみながらもそれでも明るく、元気に振舞っていた。
赤子や小さい子どもが、悲しみを察知して泣かぬように、と。
('A`)「子どもってさ・・・時々ひたむきに強いよな」
( ^ω^)「うん、すごいお・・・」
- 36: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 02:05:08.02 ID:tHGQpaFa0
乳母車に乗った一人の赤子が、見知らぬ来訪者に驚いてぐずっている。
('A`)「およ?俺達怖がられてるのか?」
その赤子をひょいっと持ち上げ、泣き声をあげる前に手を天に伸ばしてあやしてやる。
その手つきはプロ顔負けである。
( ^ω^)「ドクオすごいお!」
('A`)「俺ん家宿屋だからな・・・子連れの親子とかよく来るんだ。
これぐらいはお手の物さ」
きゃっきゃと赤子が笑う。
それを見て、少しだけ警戒して、物陰からこちらを見ていた子ども達が一斉に押しかけてきた。
─ねぇ、どこから来たの?
─名前は?
─南の島!?
─あったかいところだよねぇ!!
─おなかすいたー、ドクオお兄ちゃんおやつちょうだい!
─ブーンお兄ちゃん、おもしろいことして!
その後は子どもに囲まれ身動きも出来なかった。
- 38: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 02:09:40.64 ID:tHGQpaFa0
子ども達が昼寝を始めるまでの3時間、休みがなかった。
だから、あっという間に時間が流れた。
( ^ω^)「子どもといたら楽しいお・・・」
何気なく呟いた一言で、ブーンがはっとする。
楽しい?楽しいのか・・・僕は。
ジョルジュさんの事を、ほんの一瞬でも忘れて。
もうジョルジュさんは"楽しむこと"も出来やしないのに・・・僕は、何を・・・
('A`)「なぁ、ブーンよ。他人がそれを出来ないからって、自分がそれをしないってのは傲慢だと思うぜ、俺は。
生まれてきて、生きてるならさ、自分の体を、心を精一杯使わなきゃな」
- 40: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 02:12:41.69 ID:tHGQpaFa0
( ^ω^)「ドクオ・・・エスパーかお?いつから心を読めるようになったんだお」
('A`)「いや・・・浮かない顔してさ。今悩むなんてそれぐらいだろ」
( ^ω^)「ドクオ・・・ドクオはどうしてそんなに強いんだお?」
('A`)「これが強さだなんて思わねぇがな・・・まぁ、これも宿屋絡みでさ、
旅行者の中には観光客だけじゃなくて旅人もいてさ、世界の事を色々教えてくれたんだよ」
世界・・・広い。広い考え。僕には世界が足りない?
- 42: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 02:16:48.32 ID:tHGQpaFa0
('A`)「そんな顔するなって。お前は旅して世界を知ったろ?十分大きくなってるさ」
そこでやっとブーンは嬉しそうに笑う。
( ^ω^)「ドクオ・・・なんかお兄ちゃんみたいだお」
('∀`)「俺もお前もひとりっこだからな。いいんじゃないか?」
( ^ω^)「おっおっ。同い年なのになんかおかしいお。
ってゆーかニート志望のドクオも変貌しすぎだおww」
('∀`*)「うっせ、夢見つけたんだよwショボンさんの嫁にn・・・
(;^ω^)「STOOOOOOOOOOOOOOOP!!」
('∀`*)「なんでだよ?いいぞー、仕事から帰ってきたショボンさんにさ、
"おかえりなさいアナタ♪お風呂?ご飯?それとも、あたしー!?"なんて、ヒャッハー!!」
(;^ω^)「汚物は消毒・・・だお。前言撤回だお・・・」
- 43: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 02:24:43.68 ID:tHGQpaFa0
その一連の会話を、子ども達を寝かしつけていた荒巻は聞いていた。
/ ,' 3「私の可愛い孫の事を思い出すのう・・・」
老紳士の脳裏に映るは色褪せた情景。
─ぼく、おにいちゃんほしかったんだ。ひとりっこさみしいよ・・・。
──なに言ってんだよ、俺がいるじゃねぇか!!
─・・・え?
──なんだ、兄弟みたいに思ってたのは俺だけか?
─う、ううん!僕もお兄ちゃんみたいだって思ってたよ!
──そっか、ならいいじゃねぇか!
ツンも、これから生まれてくる子どももお前の「きょうだい」だぜ!
─・・・ねぇ・・・
──ん?
─ありがとう、ジョルジュ。
──いーってこった!それよりショボン、
兄弟になら「おっぱい教」広めるのが義務、ってこら逃げるなー!!
- 44: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/28(木) 02:26:49.95 ID:tHGQpaFa0
目頭がつん、と痛い。
/ ,' 3「ジョルジュ・・・ショボン。二人とも、わしの可愛い孫じゃ」
隣の部屋へと移動しながら荒巻が呟く。
/ ,' 3「どうか・・・この世界に神というものがおるならば、どうかあの二人だけは引き裂かんでくれ・・・」
"兄弟"でいることすら叶わなかった彼らのような悲しみを、背負わなくていいように。
--第20話 終--
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