( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです
- 2: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:03:45.12 ID:CLRCfRf50
- --第21話--
今にも朽ち果てそうな建物。
相変わらずの廃墟に、二人の男の影が揺らめく。
ミ,,゚Д゚彡「ふ、ふふふ・・・」
ひとり、またひとり。
ころして、ころして、ころして。
長い長い復讐の幕開け。
(;´∀`)「フサ、どうしたモナ!?笑い方きしょいモナ!!」
ミ,,゚Д゚彡「きしょいって、どこの方言だよ・・・。それより、あの男、ちゃんと荒巻の家まで届けたか?」
( ´∀`)「もちろんモナ。ボロボロだったから腐敗が進む前に、
・・・見た人が一番ショックを受けそうなあの姿のままきちんと運んだモナ。」
- 4: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:07:55.11 ID:CLRCfRf50
ミ,,゚Д゚彡「よし、よくやった。・・・それで、あいつが荒巻の孫と言うのは間違いないな?」
( ´∀`)「確かな筋の情報モナ。半年前に彼の両親を、荒巻の子を殺したのは覚えているモナ?
あれから、彼はこのアジトを探すのに躍起になっていたモナ」
ミ,,゚Д゚彡「そうか。そして本来では早々見つかることもないこのアジトに、少しずつ情報を流して辿り着かせたのか・・・」
( ´∀`)「そうモナ。俺の独断でやったことモナ・・・」
少し悲しげな顔をするモナー。
ミ,,゚Д゚彡「全然構わない。お前の情報収集能力は役に立っているしな。
今回の事だって、荒巻を苦しめる事が出来ただろうし、あの骸を見てこの組織の恐ろしさも分かるだろう」
( ´∀`)「そうモナね・・・でも」
ミ,,゚Д゚彡「どうした?浮かない顔をして」
- 5: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:09:55.81 ID:CLRCfRf50
( ´∀`)「彼の葬儀の際に密偵を送ったモナが、その情報によると、エンバーミングが上手くいったようで、
死体にひどい損傷は見られなかった・・・らしいモナ」
ミ,,゚Д゚彡「チッ」
10m離れても間近に聞こえそうなほどの盛大な舌打ち。
犬歯を剥き出しにして、怒りを露わにしたその顔。
( ´∀`)「モナッ?」
ミ,,゚Д゚彡「それは多分エンバーミングじゃねぇ・・・俺の炎で焼いたんだ、そうそう修復なんて出来っこない。
ウンディーネの奴・・・あのババァがやりやがったに違いない」
- 6: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:12:47.36 ID:CLRCfRf50
あのジョルジュとかいう男。
大した奴じゃ無かった。
太刀筋も教本どおり、力はそこそこある・・・それだけだ。
死地を何度も何度も駆け抜けた俺には勝てはしない。
ジョルジュとやらの剣戟は全てかわし、こちらの攻撃は全て当ててやった。
そして動けなくなったところで、
目を炎で焼き、
腕をそぎ落とし、
腹を引き裂き、
脳天に剣を突き立て掻き回した。
その上でまた焼いた。
最期まで笑ってやがったのは腹立たしいが、体は本当にずたぼろだったのだ。
常人には、葬儀で見せてやれる体に回復させる事など出来はしない。
ウンディーネの回復魔法・・・それしか思い当たらないではないか。
俺の炎すら癒すなんて。
- 10: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:18:27.21 ID:CLRCfRf50
(;´∀`)「モナ、モナモナモナモナモーナ!!?」
大口を開けて固まっていたモナーが急に慌てた。
フサギコは思考の海から戻る。
ミ,,゚Д゚彡「なんだモナー。とりあえず日本語でおk」
(;´∀`)「モナー・・・」
ミ,,゚Д゚彡「すまねぇ、言い過ぎたか。まぁ、荒巻とウンディーネは関わりあったんだろ?
驚くことないじゃねぇか」
(;´∀`)「いや、フサがウンディーネをババァ呼ばわりしてるのに驚いたモナ。
本人を知ってるモナ?」
ミ,,゚Д゚彡「あぁ、一応な」
(;´∀`)「フサは謎が多すぎるモナ。荒巻一家の名前もよく知らないのに一家皆殺しとか言うし、
ウンディーネを知ってるし・・・
それにギコは・・・いつから、どうして魔法が使えるモナ?」
- 11: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:22:24.52 ID:CLRCfRf50
ミ,,゚Д゚彡「・・・」
フサがぽかんとした顔をする時。
それは、困っているとき、言い訳を考えるとき、とモナーは知っていた。
( ´∀`)「フサ、前の組織から156人程の人間がフサに付いてきたモナ。
彼らはフサに協力してるモナ・・・そろそろ話をしてくれてもいいんじゃないモナ?」
ミ,,゚Д゚彡「モナー、お前も聞きたいのか?」
( ´∀`)「聞きたくないと言えば嘘モナ」
珍しいモナーの真剣なまなざし。
フサギコは視線を落とし、盛大な溜息を吐く。
ミ,,゚Д゚彡「ボスってのは、ときどき堅苦しいな・・・まぁ、いいさ。そこまで言うなら話そう。俺の知る全てを」
- 13: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:26:44.21 ID:CLRCfRf50
( ^ω^)「ミルックみるっく粉ミルクー・・・やっぱ外はさっぶいおー」
足取りも軽く、ブーンは街角を走る。
孤児院の子どもにあげる為の粉ミルクが切れたため、ブーンが買いに来ていたのだ。
薄着で着てしまったため、随分寒い。
寒さを紛らわせるためにブーンは走っている。
( ^ω^)「もう冬はすぐそこなんだお・・・」
ふぅ、と吐いた息が、白かった。
夕暮れに染まるこの街を見回すと、薪を手に持った人がたくさんいる。
その中でも母親とその子どもが両手に薪を抱えているのが印象に残った。
家に帰ったら、それで暖をとるのだろう。
一家の暖炉の前での団らん・・・ブーンは心がほんのりするのを感じながら、十字路を曲がろうとする。
しかし、それは阻まれた。
- 15: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:30:28.82 ID:CLRCfRf50
ドンっ!!
(;^ω^)「おっ!?」
何かにぶつかり、後ろに向かってあおむけに転んだ。
何か亀みたいで情けない。
「すまなかった。大丈夫か?」
それは女性の声。
僕は・・・人にぶつかって転んだのか。
・・・!!!!
女性!!?角で女の子にぶつかった!!
フラグktkr!!!!
食パン咥えたかわいこちゃん!!!
いやいや僕にはツンがいる!!
でも、でも・・・!!
- 18: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:38:53.33 ID:CLRCfRf50
从*゚∀゚从「あれ、大丈夫かのう・・・っと、ブーンではないか!久方ぶりじゃのう」
( ´_ゝ`)「よく注意もしないで角を飛び出すからだぞ。おいブーン、大丈夫か?」
そういいながら手を伸べてブーンを立ち上がらせてくれた。
聞いたことのある声。シルフと、サラマンダーだ。フラグはぽきりと折れた。
(;^ω^)「ありがとうだお・・・シルh
从*゚∀゚从「シッ!!」
( ´_ゝ`)「お忍びで来ているんだ。ここで名前がバレたら騒ぎになる」
(;^ω^)「それで、コートとかサングラスとか帽子とか装着してるんですかお・・・」
明らかにこの二人の格好は変装だ。
これで気付かれないほうかちょっと怪しい。
- 21: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:42:42.54 ID:CLRCfRf50
从*゚∀゚从「まぁ、たまには下界を満喫せねば、腐ってしまいそうじゃからの。
本来なら怒られるんじゃがのう・・・」
( ^ω^)「怒られるって、どうしてですかお?」
誰に怒られるのかも気になったが、二重の質問になるので避けた。
从*゚∀゚从「教えてやらない事も無い。だが!」
サラマンダーがブーンの腕をがっしと掴む。
( ´_ゝ`)「丁度良い。我らのティータイムに付き合ってもらおうか」
シルフがブーンの背を押す。
( ^ω^)「これって、断る権利がないお!」
元々急ぎの用では無かったので、二人に押されるまま、ずるずると着いて行った。
- 24: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:46:58.74 ID:CLRCfRf50
ミ,,゚Д゚彡「さて・・・質問が多いな。何から話そうか」
( ´∀`)「何からでも、フサが話しやすい事から言えば良いモナ」
ミ,,゚Д゚彡「そうか・・・まず俺は荒巻家の名前を全員知らない訳じゃない。
10年ぐらい前に、あの家には赤子が居ただろう」
( ´∀`)「つーという女の子の事モナ?
あの子は確か、1歳になるかならないかの頃に死んでいるモナ」
ミ,,゚Д゚彡「そうだ・・・」
あのとき、歯車が、狂いだした。
多くの人間の、人生のという名の歯車が。
「俺が、殺した」
- 25: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:49:45.17 ID:CLRCfRf50
从*゚∀゚从「くっはー!やはり淹れたての紅茶はたまらんのう!」
( ´_ゝ`)「はしたないぞ。もう少し大人しく飲めないものか」
一面に漂うのは紅茶の独特のフレーバー。
そして、紅茶の受け皿の淵に添えられたスコーンの焼けた匂いと、それに塗られたジャムの香り。
ブーンたちは一軒の喫茶店に居た。
白で統一された落ち着いた店の一番奥、個室に座っている。
ここなら、外の会話は聞こえないし、こちらからの会話も同じだろう。
从*゚∀゚从「まぁ、ブーンも飲め!」
(;´_ゝ`)「酒じゃないんだからな」
こくり、と喉を鳴らして鮮やかな色をしたそれを飲む。
舌で濾すと深い味わいがする。
少し、肩の力が抜けた。
- 27: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:53:02.59 ID:CLRCfRf50
从*゚∀゚从「さて、こんなところにいきなり連れ出されて驚いておるだろうが、いきなり話題の核心を突くぞ」
( ´_ゝ`)「ツンの・・・ことだ」
ざわり、と胸に嫌なものが走る。
ジョルジュの・・・あの日も現れなかったツン。
荒巻は「そっとしておいてやってくれ」と言っていたツン。
ツンが、ツンは、どうなってしまった?
聞きたいのに、口が渇いて喋れない。
手が震えて紅茶も飲めない。
( ´_ゝ`)「落ち着けブーン。ツンは、いつもとほぼ変わりない」
( ^ω^)「え・・・?」
拍子抜けした。
いつもとほぼ変わりない?
( ´_ゝ`)「うわべだけ・・・な」
- 29: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:54:39.29 ID:CLRCfRf50
その後、シルフはツンの状況について延々と話してくれた。
やること、いうこと、すべてがいつものツンと変わりない、と。
でも、明らかにいつもと違う、元気が、意欲がない、と辛そうにサラマンダーが言った。
( ´_ゝ`)「ご両親が亡くなって、傷も癒えぬ間にこれだ・・・傷ついてない筈がなかろう?」
当たり前だ、とブーンは思った。
家族を次々に奪われて、しかも理由も分からないままにそんな事をされて、あの繊細なツンが普通でいられるはずがない。
( ^ω^)「普通であるほうが、異常だお。間違いなく無理をしてるお・・・」
从*゚∀゚从「やはりブーンもそう思うか・・・。
わらわ達も、ツンに無理はするなと、くどく言うておるんじゃが、
何よりも彼女が必死すぎて我らの言葉を聞いてくれぬ。彼女の耳には届かぬのじゃ」
( ´_ゝ`)「無理してでも元気であろうというのは、良いことでも悪いことでもある。
ちゃんと外に出てきてくれているのだから、どうにかツンにちゃんと前を向いて生きていって欲しいのだ」
そして、シルフはまた話を続ける。
無理やりにでも人と接している、ということは、あの事を忘れようとしているに違いないと思う。
だから、無理をしないように、少しでも支えになってやって欲しいのだ、と彼は言った。
- 30: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/29(金) 23:57:20.60 ID:CLRCfRf50
- ( ^ω^)「僕に・・・何が出来ますかお?」
ツンを助けてあげたい。
あたりまえのように沸いた感情だった。
从*゚∀゚从「おぬしは・・・まだツンには会えぬか」
( ^ω^)「・・・僕はまだ、ツンに会わせる顔は・・・ありませんお・・・」
無理やり搾り出した声。
嘘を言ってでも会いたい。ツンに会いたい。
会って、触れて、支えてやりたい。
でも、察しのいいツンには、自分が納得してツンに会いに来たのではないことを悟るだろう。
それでは、ツンを逆に傷つけてしまう可能性がある。
( ´_ゝ`)「せめてツンにしてやれる事を探そう。ツンの僅かな支えになることを」
そのシルフの言葉により、何かツンに贈り物をしよう、という事に決まった。
- 33: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:00:39.22 ID:YJ77gqe+0
(;´∀`)「フ、フサ・・・」
さぁ、と血の気が去っていくのが自分にも分かった。
これ以上聞くのがもう恐ろしい、でも。
(;´∀`)「10年前・・・フサは・・・何歳だったモナ・・・?」
ミ,,゚Д゚彡「今17歳だから、それから10を引け」
・・・7歳・・・?
そんな、そんなバカなっ!!
(;´∀`)「規定で洗礼を受けられるのは15歳以上と決まっているのに・・・どうして、モナ・・・?」
ミ,,゚Д゚彡「それは・・・
- 37: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:05:16.97 ID:YJ77gqe+0
( ^ω^)「よしっ!これでいいお!」
箱にリボンを結びつけてブーンが言った。
片手に収まりそうな程のお世辞にも大きくない箱。
ツンへのプレゼントを詰めた箱。ラッピングは自前だ。
お世辞にも上手くはないが、味がある・・・そうブーンは思っている。
从*゚∀゚从「まぁ、ありきたりの物じゃが、それでも喜んでくれるであろう」
( ´_ゝ`)「2時間も何を買うか迷って、その後また2時間も何を買うか選んだんだ。
気持ちは相当詰まってるだろう」
とサラマンダーとシルフも言ってくれた。
実際、もうとっぷりと日が暮れている。
お店の閉店時間まで粘ってしまったから。
僕がツンに渡すわけにはいかないので、彼らに渡してもらう手はずになった。
それで、近況をまたいずれ報告してくれるとの事だ。
- 39: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:08:25.45 ID:YJ77gqe+0
( ^ω^)「ツンが喜んでくれるといいお・・・」
ポツリとブーンが零す。
シルフは眩しそうに少年を見つめる。
从*゚∀゚从「もちろんじゃ!好いた男からの贈り物に喜ばぬ女など居らぬというに!」
元気いっぱいにサラマンダーがいう。
( ^ω^)「サラマンダーみたいに長く生きてきた人も、やっぱり贈り物は嬉しいのかお?」
从*゚∀゚从「わらわを年増扱いするでない!もちろん、嬉しいに決まっておろう」
はにかみながら、それでもまっすぐに彼女は言う。
実際、数え切れない季節を越えてきたようにはまるで見えない。
从*゚∀゚从「それでじゃ・・・ブーンよ。折り入って頼みがある。
その贈り物をツンに渡すのと交換条件でどうじゃ?」
- 40: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:10:58.64 ID:YJ77gqe+0
( ^ω^)「僕に出来ることなら、かまいませんお」
特に何も考えずに答えた。
从*゚∀゚从「それはありがたい。頼みとはな、人を探して欲しいのじゃ」
( ´_ゝ`)「おい、それは・・・!」
从*゚∀゚从「ええい、兄者は黙っておれい!わらわを止めてくれるな!!」
いきなりのサラマンダー激昂。
どうしたというのだろう?
- 43: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:13:55.47 ID:YJ77gqe+0
( ´_ゝ`)「分かった・・・それが、全ての根源かも知れないのだからな・・・」
大人しく引き下がるシルフ。・・・あれ、さっき、兄者と呼ばれていた?
从*゚∀゚从「・・・すまない、シルフよ。さて、ここは人通りも少ない。
さすがにそろそろ帰らねばウンディーネに大目玉を食らうゆえ、早目に用件を言うぞ」
ドーム状の囲いのある公園。
寒さはしのぐ為に作られたこの場所で、サラマンダーは朗々と語り始めた。
- 46: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:18:29.35 ID:YJ77gqe+0
あの日、母が殺されたあの寒い夜。
勢いづいて飛び出したものの行くあてもなく、ふらふらと雪の積もる道をさ迷った。
寒くて寒くて、何度も足を止めた。
振り返って、帰ろうとした。
でも。
帰っても母さんもういない。
もう、いないんだ。
妹のことが気がかりだったけど、あそこにはちゃんとあの子を育ててくれる人たちがいる。
だから、僕が、いや、俺がいなくても、とまたちいさなフサギコは歩みを前に前にと続けたのだ。
- 48: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:21:13.50 ID:YJ77gqe+0
記憶も曖昧になるほどにとぼとぼと歩いていたら、太陽の光が目に刺さった。
朝が来た。
そして、見覚えのある一軒の家の前で立ち止まっていることに気付いた。
ミ,,゚Д゚彡「ここは・・・」
幼いフサギコは首を上げて灰色の屋根の建物を見上げる。
母がまだ元気だった頃。
2度ほど、この家に来たことがある。
母はここによく手紙を置きに来ていた。
あの男、母を殺したあの憎い男の家に、だ。
あの男は、いつも旅をしているため、手紙を家に置くことでしか連絡を取れないのだと母は言った。
その家の前に、フサギコは立っていた。
- 51: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:24:22.94 ID:YJ77gqe+0
玄関までしか立ち入ったことのないこの建物のドアノブに、フサギコは背伸びをして手をかけた。
ミ,,゚Д゚彡「何かが、あの男が何者か、分かるかも知れない・・・」
かちゃり。
ドアは鍵をかけておらず、易々と開いた。
彼が、そこで見たものは。
52: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:30:22.26 ID:YJ77gqe+0
(*゚∀゚)「あー。だぁー」
从'ー'从「あらあら、お客様ですか?」
高級そうな布に包まれ、乳母車に乗る赤子と、
膝をついてそれをあやす女性だった。
ミ,,゚Д゚彡「・・・ここは、誰の家?」
从'ー'从「ここの家の主の事ですか?
ここは、有名な"討伐士"荒巻スカルチノフ氏のお屋敷です。
貴方は、どちらからいらっしゃったのですか?寒いなら、暖ぐらいは提供できますわ」
小さな来訪者に、若い女性は警戒心を抱くことはなかった。
- 58: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:42:46.93 ID:YJ77gqe+0
あの男の名前は荒巻・・・荒巻スカルチノフ。
憎いにくいにくいあの男のなまえ。
フサギコは頭の中で何度も何度も、吐き気がするくらい反芻する。
ミ,,゚Д゚彡「貴方は誰?その子は誰?」
玄関で立ち尽くしたまま、質問を浴びせるこの小さな男の子は。
一体何があったんだろう?と不思議に思いながらも、女性はきちんと答えを返す。
从'ー'从「私は、住み込みでこの家のお世話をさせて頂いている渡辺と申しますわ。
こちらのお子様は、つー様と申します。
荒巻様のお孫さまですわ。」
ミ,,゚Д゚彡「孫・・・?荒巻・・・さんの?」
孫だって?孫、孫とは・・・子供の、子どものことで・・・
あの男に、子どもが?
許せない。なんで、母さんとは好き合ってて、思いあってたんじゃなかったのか!?
子どもがいるってことは、お嫁さんが、おくさんがいる!!
どうなってるんだ!!もうわけがわからないよ・・・
- 60: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:51:54.06 ID:YJ77gqe+0
だめだ。落ち着け落ち着け・・・落ち着け。
まだまだ聞きたいことはたくさんあるんだ。
ミ,,゚Д゚彡「他の・・・家族は?荒巻さんは今どこ?」
もう、頭がパンクしそうだった。
考えることも言うことも支離滅裂だった、と今でも思う。
それでも、非情なことに、渡辺と名乗った女性は淡々と、そして冷酷な答えを述べる。
从'ー'从「荒巻様はまたお仕事に出られましたわ。
荒巻様のお子様である奥様と旦那様、そしてその2人のお子様は、薪を拾いに行きました。
本当に仲の良いご家族ですのよ。どこに行くのも一緒で・・・。
つー様なんて、ついこの間まで、奥様がいないとすぐにぐずってしまって。
やっと私にもなついてくれたんです」
にこぉ、と人の良さそうな笑顔を浮かべる女性。
目の前の幸せにいっぱいいっぱいで。
その時は、フサギコのなかに目覚めた殺気に、気付かなかった。
- 63: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 00:58:48.29 ID:YJ77gqe+0
ミ,,゚Д゚彡「・・・たのか」
从'ー'从「・・・何か、仰いました?」
そこで、渡辺はぞくりとした。
うつむいた少年から、ただならないものを感じる。
この家に仕えるには、守るには、戦闘能力も必要。それを兼ね備えた人間を荒巻は雇った。
渡辺は、己の剣術に奢りもしなかったが、謙遜もしていなかった。
だから、この小さな小さな男の子に恐怖を覚えた自分に違和感を覚えた。
- 65: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 01:02:17.34 ID:YJ77gqe+0
ミ,,゚Д゚彡「荒巻は・・・母さんを騙して、"たぶらかして"おきながら・・・自分にはおくさんも子どもも・・・孫までいたって言うのかよ・・・」
頭が熱い。顔も熱い。胸だって、何かがふつふつと煮えているようだ。
あの子は、母親のぬくもりを知っていて、これからもそれを味わえるなんて、ずるいじゃないか・・・
フサギコに、母親に関する言葉は、禁句だったのに。
この女性は言ってしまった。
母を失った少年の悲しみを知らずに。
それは決して罪では無かった。
でも、少年は・・・それを許しはしなかった。
ミ,,゚Д゚彡「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
- 69: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 01:12:41.61 ID:YJ77gqe+0
(;´∀`)「それで・・・つーを、殺したモナか・・・」
ミ,,゚Д゚彡「あぁ、あの女も一緒に殺してしまったがな」
つーの死因は焼死、と聞いている。
フサの炎で焼かれて死んだということか。
でも、まだ矛盾は消えてない。
"どうしてその年齢で、魔法が使えたのか。"
人を2人も殺せるほどの。激しい業火を。
- 70: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 01:13:48.44 ID:YJ77gqe+0
ミ,,゚Д゚彡「なぁ、モナー・・・知っているか?」
( ´∀`)「何を、モナ?」
ミ,,゚Д゚彡「4精霊は、人と同じく子を産める、ということを」
(;´∀`)「な・・・!?」
ミ,,゚Д゚彡「そして、生まれてきた子どもは、その親の能力を生まれながらにして受け継ぐことを・・・」
(;´∀`)「フサ・・・!?お前・・・いや、貴方は…!!」
- 74: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 01:21:14.47 ID:YJ77gqe+0
从*゚∀゚从「ブーンよ、一度しか言わぬから心して聞け。
探して欲しいのはわらわの兄じゃ」
(;^ω^)「お兄さん…かおっ!?って、精霊は4兄弟じゃ!!?」
从*゚∀゚从「わらわを年増扱いするなと先程言うたであろう?
・・・それは、何の冗談でもないのじゃよ。
わらわは…2代目じゃ。母上が病気で亡くなり、後を継いだのじゃ」
- 76: ◆OLIVIA/O7I :2006/09/30(土) 01:32:59.66 ID:YJ77gqe+0
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从*゚∀゚从「わらわには先程言うたとおり兄がおる。母親が死んだ日に失踪。
その次の日にツンの妹が殺されておる。」
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ミ,,゚Д゚彡「俺には妹がいると言ったな。あいつが今、2代目のサラマンダーとして生きている」
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从*゚∀゚从「そして、その兄の名は…
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ミ,,゚Д゚彡「俺はこんなところにいるが、れっきとした4精霊から生まれた子どもだ。俺は…
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「フサギコ。サラマンダーの息子だ」
時を同じくして生まれた二人。
この告白は、生きる場所は違えど、全く同じ時刻に、それぞれの場所に響いた。
--第21話 終--
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