( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです

  
7: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 00:28:59.46 ID:Q5p7edtG0
  

--第22話--

白い壁、しかし真っ暗な研究室で、男女の声がする。

(  )「ねぇ」

(  )「どうした?」

(  )「私達、存在覚えてもらってるのかしらね・・・」

(  )「顔も無いからな・・・大丈夫、ちゃんと最初に登場人物載せたから」

(  )「そうよね、大丈夫よね・・・7話に出たきりだけどね・・・」


(  )「・・・ほらほら、本題に行こうか」

(  )「そうだったわね・・・」

そうして、薄暗い部屋で2人は着衣を整える。



  
9: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 00:34:26.67 ID:Q5p7edtG0
  

(  )「やっと、やっと完成したわね・・・」

(  )「あぁ、長かったな・・・もうすこし早ければ、ジョルジュ君を救えたかもしれないのに・・・」

(  )「それは、言わない約束でしょ」

(  )「そうだったな。悲しいけど、次の"誰か"はもう悲しませたりしないよ。絶対に」

(  )「えぇ、たとえ神に逆らっても」

(  )「それにしても、北の島に置いてきてしまった可愛い息子、元気にしているだろうか?」

(  )「研究も終わったし、会いに行く?」




(`・ω・´) 「そうだな、僕達の可愛いショボンに会いに行こう」

从'ー'从「本当、久しぶりね・・・」



  
12: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 00:41:34.62 ID:Q5p7edtG0
  

ξ゚听)ξ「〜♪」

ガラにも無く、あたしは鼻歌なんて歌う。
昨日眠れなかったとき、元気が出なかったとき、今日頑張らなきゃいけないとき。
そんな時はいつもツンは鼻歌を紡いで元気を出す。特に朝。

ぷしゅ、と霧吹きから液体の出る心地よい音をバックミュージックに。

魔女が使うフラスコの様な形をしたガラスのびん。
その中に入っているのは、もちろん香水。


ξ゚听)ξ「大分、中身減っちゃったなぁ・・・」

どれだけ大切に使ってみても、もう残りは4分の1ぐらいしか残っていない。

ξ゚听)ξ「折角、ブーンがくれたものなのに・・・」

あからさまにがっかりとした声が出て、独り言なのに焦った。



  
14: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 00:46:29.42 ID:Q5p7edtG0
  

そう、この香水は、ちょうど1年ほど前にブーンがプレゼントしてくれたものだ。
ブーンのあの雪と同じように、鎮静効果があるらしい。


確かにあいつの魔法とおんなじ・・・。

何が同じなのかは分からないが、漠然とそう思っていた。


何かつらいことがあった時は、いつもこの懐かしい匂いに助けられてきた。

・・・もしこれが無くなったら、新しいのを買い足そう。


妹者ならきっと、どこで売っているかも知ってるだろうから。


廃盤になってなきゃいいな、と思いながらツンは朝の職務のために着替えを始めた。



  
16: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 00:50:37.53 ID:Q5p7edtG0
  

と、その時。
ばこーん、と元気よくツンの部屋の扉が開いた。

从*゚∀゚从「ツンよ!大変じゃ!!大変なのじゃ!!」

ξ;゚听)ξ「なっ!?ど、どうしたの!!?」

開けたのが妹者で良かった。
それにしても、この彼女の慌てようは一体。

困った、というよりも、ものすごく嬉しそうな顔をしている。

从*゚∀゚从「よく聞くのじゃぞ!ブーンが、ブーンがここまで来たのじゃ!!



  
20: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 00:56:23.34 ID:Q5p7edtG0
  

え・・・?

从*゚∀゚从「・・・ン!こりゃ、ツン!おなごが口をそのように空けるでない!!」

ぽかーんとしたツンの口をサラマンダーが戻そうとする。
しかし完全に放心していて、聞く耳もない。


ブーンが・・・ここに?
だって、1年半ぶりじゃない。

"あの時"だってここに来なかったじゃない。
そりゃ、待ってるとは言ったけど・・・?

え?え?ブーンが・・・ここに?


ξ゚听)ξ「うっそーん」



  
21: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 01:00:37.65 ID:Q5p7edtG0
  

ツンが素っ頓狂な声を上げる。

そしてハッとして、鏡で化粧のノリ具合や、髪型をセットする。
左の髪の巻き具合が気に入らなかったようで、また櫛で梳く。


从*゚∀゚从「完全に年頃のおなごじゃのう・・・用意が出来たら広間にくるんじゃぞー」

聞こえているか不安に思いながら、妹者は部屋を後にした。



  
23: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 01:04:32.07 ID:Q5p7edtG0
  

( ^ω^)「ここに来るのも随分久しぶりですおー」

川 ゚ -゚)「そうだな、およそ1年半ぶりか・・・普通の人なら人生に一回しか来ない場所なんだがな」

ウンディーネの淹れてくれた紅茶を飲みながら、ブーンは広間でツンを待っていた。

从*゚∀゚从「ただいまなのじゃー」

ツンを呼びに行ったはずのサラマンダーがひとりで帰ってきた。

( ^ω^)「ツンはどうしたんだお?」

あ、いけない、また敬語を忘れていた。
サラマンダーとブーンが同じ年頃だと知って以来、なんだか敬語を忘れがちだ。

从*゚∀゚从「野暮を言うでない。女の子には色々と準備が必要なのじゃ」



サラマンダーが後ろでに広間と廊下を繋ぐドアを閉めようとした、その時。

ξ゚听)ξ「なにがじゃ」

(;^ω^)「ちょwww」

いきなり竹原・・・いや、ツンが現れた。



  
25: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 01:12:51.88 ID:Q5p7edtG0
  

ξ゚听)ξ「ひ、ひさしぶりねブーン」

ちゃんと笑顔は作れたかしら・・・
多分無理ね、引きつってる。

( ^ω^)「本当に久しぶりだお!ツン、元気にしてたかお?」


それでもブーンは気にしてなさそうね、良かった。
気を取り直して、ちゃんと、気丈でいなきゃ。


ξ゚听)ξ「えぇ、あたしは全然変わりないわ」

実際、巫女の体には何の異変も無い。

( ^ω^)「確かに体は変わらないお。それでも、こころの方は変化してるんだお?」

どうして、この子は。
こういう事をあっさり言っちゃうのだろう。



  
26: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 01:17:48.57 ID:Q5p7edtG0
  

ξ゚听)ξ「そうね、それでも相変わらずよ。それよりアンタ、ショボンとドクオは?」

( ^ω^)「僕が神殿に行くって言ったら、"邪魔しちゃいけないから"
       って・・・だから2人ともショボンさんの実家にいるお」

・・・懸命だわ、二人とも。GJ!
でも、あれ?確かあの二人って・・・

ξ゚听)ξ「ねぇ、ブーン・・・やばいんじゃないの?ふたりっきりにさせちゃ」

(;^ω^)「アーッ!くそみそフラグktkr!!」

慌てたブーン。しかし、すぐに冷静になって椅子に座りなおす。

( ^ω^)「・・・まぁ、もう慣れたお。だって、気がつけばいつの間にか2人でどっか行ってるんだお」


ξ゚听)ξ「あんたも苦労してたのね・・・」

しみじみとツンが言う。
もう、昔、おにいちゃんと呼ばせてくれたショボンはもう何処にもいないんだ、と自分に言い聞かせていた。



  
28: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 01:29:29.03 ID:Q5p7edtG0
  


川 ゚ -゚)「さて、と・・・2人ともいい雰囲気のようだしな」

从*゚∀゚从「後は若い二人に任せるのじゃ!」

そういって二人は席を立ち、何処かへと出て行ってしまった。


(;^ω^)「ありゃ・・・どこへ行っちゃったんだお?」

ξ゚听)ξ「多分、朝の職務を終わらせに行ったのよ・・・」

(;^ω^)「そ、そうかお・・・」

いきなりツンの声が低くなる。
やっぱり、1年半も来なかった事を怒っているのだろうか?

ξ゚听)ξ「ま、彼女達のおかげであたしは今日の朝の職務をしなくて済みそうだけどねっ」

顔を上げて、元気いっぱいを精一杯装って言う。
緊張して口調が冷たくなったら、あからさまにブーンがげんなりした。

あたしが元気を出さなくっちゃ!



  
31: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 01:35:48.77 ID:Q5p7edtG0
  


( ^ω^)「・・・あれ?」

この匂いは。
ツンが顔を上げたとき、首筋のあたりから立ち上ったやわらかな芳香。

間違いなく、昨年あげた香水の匂い。

(*^ω^)「ツン、僕のあげた香水使ってくれてるのかお?すごい嬉しいお!」

ξ#゚听)ξ「あんたって奴は・・・無駄に鼻が利くのねぇ?」

(;^ω^)「おっおっ?どうして怒るんだお?」

ξ#゚听)ξ「だってねぇ、恥ずかしいじゃない?男ならその辺黙ってなさいな」

(;^ω^)「ごめんだお。でも本当の事だお・・・」

ξ#゚听)ξ「あーもうシャーラップ!」

これ以上4流以下のラブコメなんてやってられない。


それにしても。
私が変わらない間に、随分ブーンは変わってしまった。
そうツンは思った。



  
34: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 01:55:19.04 ID:Q5p7edtG0
  

当時の子どもを思わせるようなやわやかな曲線は、もうその体には残っていなかった。

あるのは、細いながらも鍛え上げた筋肉、端正な喉仏、手には大きな剣ダコ。
そして、昔のあの少し怯えたような瞳は、優しさは変わらず湛えたまま、しかしその中に信念の強さが宿っていた。

無邪気な少年は、いつの間にか、いっぱしの剣士の顔をしていた。

ξ゚听)ξ「あんた、あたしに会いに来たって事は、何か自分で満足行くようなことがあったのね?」

( ^ω^)「そうだお。とても小さな事だけど・・・」

ξ゚听)ξ「何があったか、聞いてもいいのかしら?」


( ^ω^)「もちろんだお!元々は、カーチャンが倒れたって知らせを聞いて、南の島に一度戻ったのがきっかけだお」

ξ゚听)ξ「・・・!大丈夫なの!?」

身を乗り出してツンが聞いてくた。
間違いなく人の健康状態や、安否について敏感になっている。

ブーンは手でツンを制して落ち着かせる。



  
36: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 02:07:31.83 ID:Q5p7edtG0
  

( ^ω^)「過労だお・・・カーチャンは元々頑張りすぎる人だから。

       でも、ゆっくり休めばすぐに治るって、お医者様も行ってくれたお」

ξ゚听)ξ「そう・・・良かった」

ほっと胸をなでおろすツン。
ブーンはそれを確信して話を続ける。

( ^ω^)「その時にカーチャンが、僕が"和解者"として活躍してることを耳にしたって言ってくれたんだお!
       内容は、西の島でおじいちゃんとおばあちゃんの喧嘩の仲裁したこと、とても小さな事だったんだけど・・・

       それでも、僕のしたことはちゃんとカーチャンの耳に届いてた、たくさんの人から届いて来たんだお。

       そう考えると、僕もちゃんと"和解者"としてお仕事できてるんだな、って思えたんだお」

爛々と瞳を光らせて話す。



  
37: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 02:10:18.13 ID:Q5p7edtG0
  

( ^ω^)「でも、自分が一人前かと聞かれたら、全然そうじゃないお」

今度は困ったように笑う。
表情がころころ変わって、見ていて飽きない。

( ^ω^)「でも、ツンに会いたかったんだお。何でもいいから理由こじつけて、ツンに会いたかったお」


ξ゚听)ξ「あんた・・・自分で言ってて恥ずかしくない?」

(*^ω^)「実はすっごい恥ずかしいお」

えへへ、と彼は笑った。

ξ゚ー゚)ξ「中身はまだまだ子どもね」

ちょっといじわるに鼻だけで笑ってやるつもりだったけど、なんだか口元が綻んだ。



  
38: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 02:17:47.97 ID:Q5p7edtG0
  


それからとっぷりと日が暮れるまで、ふたりはたくさんの話をした。
ブーンは旅の先であった話を、ツンは洗礼に来た人の話など。

1年と半年の時間の埋め合わせは、日が昇って暮れるまででは到底足りなかった。

今までの離れ離れの時間の分、新しい時間をふたりで作っていった。
笑ったり、ふざけたりしながら。

そこではツンも素直になれた。ブーンも、緊張しなかった。

日が暮れれば、4精霊と一緒にご飯を食べた。
食後の紅茶も飲んだ。

ツンの淹れた紅茶は、今まで飲んだ紅茶のどれよりも味わい深かった。


夜になれば、ふたりでこれからの夢を語った。
長い長いこれからの夢を。



  
40: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/02(月) 02:21:47.31 ID:Q5p7edtG0
  



2人は口にすら出さなかったが、出来ればずっと一緒に、と心で願っていた。



それなのに。

それなのに、その夜。





ツンは、消えた。



--第21話 前編 終--

21話は前編、中編、後編で分けようと思います
最後の2レスは中編の予告編だと思ってください

短いけれど、今日はここまでにさせて頂きます。
この先がまだきちんと決まっていないので・・・(´・ω・`)

今日はたくさんブーン小説スレが立ったからこのスレには人いないんでしょうかね・・・
ちゃんとクオリティで人を集められるように頑張ります



戻る次のページ