( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです
- 3: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:34:47.13 ID:iFJfdzjK0
- --第23話--
ツンとブーンが二人きりで盛り上がっているその部屋を、密かに覗く2つの陰があった。
しかしその陰はツンのプロポーズ(?)の言葉が聞こえたのを境にドアの隙間から顔を離した。
川 ゚ -゚) 「これ以上覗くのはやめておこうか…危険なことは何もないだろう」
ブーンがツンを襲う、なんて元々有り得ない事だが、と付け加えて。
(´<_`;)「というか覗き自体野暮だから早く止めようと言っていたのに・・・」
口ではそういうが、彼は穴が開くぐらいツンの部屋の中を覗いていた。
まだ目は充血している。
- 5: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:36:23.90 ID:iFJfdzjK0
川 ゚ -゚) 「まぁ、いいじゃないか。ツンが言った事は、あの子がしたこと全く同じだ・・・懐かしいと思わないか?」
(´<_` )「まぁな・・・。あの事からもう、30年は経つのだな」
4兄弟の末妹、ペニサスが人間と恋に落ちたのは。
('、`*川「姉さん、兄さんたち・・・聞いてくれる?」
30年前・・・自分達からしてみればつい最近の事。
4兄弟が朝食を摂る中、妹がいきなりあらたまってこう言った。
他の兄弟は皆古臭い喋り方をするが、彼女だけは異なった。
彼女は、荒ぶる炎を司る精霊とは思えない程に大人しく可憐な子であった。
- 7: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:37:14.38 ID:iFJfdzjK0
('、`*川「・・・わたし、人間の男性を愛してしまったの」
彼女は自分を人間だと思ってないような表現をする。
まぁ、これだけ生きていれば仕方が無い。
もう何千年生きたのかなんて、私達にも、誰にも分からない。
川 ゚ -゚) 「相手は・・・あの男か?最近毎日ここに通っている・・・」
('、`*川「えぇ・・・そうよ」
ペニサス、先代のサラマンダーは顔を赤らめて頷く。
- 8: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:38:15.32 ID:iFJfdzjK0
現在から約50年ほど前から、神殿に立ち入る人には規制がかかっていた。
それでも、ペニサスを虜にした男がここに毎日立ち入れたその理由は。
川゚听)リ「その"男"とは私の孫の事かぇ?なかなかあ奴もやるのう」
彼女は先代の、120代目の巫女。
ペニサスの愛した人は彼女の孫息子だったのだ。
('、`*川「ごめんね、婆・・・」
見かけは少女、中身は100歳程にさしかかった彼女を精霊達は"婆"と呼んだ。
彼らの方が歳を経ているにも関わらず、この巫女は自分を婆と呼ぶようにさせたのだ。
川゚听)リ「何を謝る?お前はあの子と幸せに暮らせばいい。
ただペニサス、お前にも私の孫にもやらなくてはならぬ責務がある。
それを果たしてくれるなら、二人の恋愛に私は賛成じゃよ」
笑顔で深く深く頷く先代の巫女。
- 9: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:39:20.63 ID:iFJfdzjK0
( ´_ゝ`)「婆がそういうのなら、俺達は止められない」
(´<_` )「二人の愛情を引き裂こうなんて、もとより思ってないがな」
川 ゚ ー゚) 「あぁ、私達の可愛い妹よ、幸せになれ」
('、`*川「みんな・・・ありがとう・・・」
ぽろぽろと涙を流しながら礼を述べるペニサス。
ちょうどその時、例の"男"が現れた。
きょとんとしていた彼は、涙を流す彼女に幸せな報告をされた事は言うまでもない。
- 10: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:40:34.67 ID:iFJfdzjK0
それから間もなくして、男が二人の男女を拾ってきた。年のころは10代半ば。
聞けば両親を流行り病で亡くした子達なのだと言う。
母に憧れ、子どもをとても愛していたペニサスは、
彼らを歓迎し、わが子として育てた。
彼女ら精霊は、子を成せば己の命を失うということを知っていたから。
元々は4精霊の母親に何か遺伝子異常があり、
それを子ども達が受け継いだ、というのが今日の研究で解明されている。
母親に何が起こったのかは謎である。
4精霊が生後5歳になる頃、彼らはその力に覚醒した。
そして、その時、母は何かを失われたかのように枯れ果てて死んだのだという。
故に、とうに失われた彼女の体を調べることなどは出来なかったから。
「子を産めば、その力を奪われて死ぬ」という悲しい真実だけが解明されて終わった。
- 13: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:43:24.89 ID:iFJfdzjK0
故に、ペニサスは「彼」を愛しながらも、子を成すことは出来なかった。
それを薄々感じ取っていた「彼」は、彼女のその寂しさを紛らわせ、愛を注ぐべき存在を与えてくれたのだろう。
巫女は、子ども達と夫婦となった者達のために、部屋をひとつ与えた。
自分もよくそこに訪れ、幸せな日々を送っていたのだ。
彼女─婆の、残り少ない人生を、それでも幸せに。
人間の精神は、この世界では持って120年。 別の惑星がどうとか、詳しいことは知らないが。
とにかく、それ以上の生は望めない事を精霊達は今までこの目を持って知っていた。
何故かは分からないが、巫女達も齢120で死んでいったのだ。
精神崩壊を起こして。
─それは彼女も例外なく。
でも、それはまた別の話。
- 14: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:45:10.37 ID:iFJfdzjK0
先代巫女の崩御まで、それはそれは明るく楽しい日々が続いた。
いつも5人だった食卓はやたらとうるさくなり、
部屋はごちゃごちゃといやになるぐらい荒れ、また怒られては掃除をした。
その子達がいつの間にか大きくなり、そして夫婦となって新たな命を生みここから出て行っても、
彼らはしつこくここに通い詰めた。
巫女はひ孫が見えたと嬉しそうに笑った。
そう、皆笑い合って生きていたのだ。
川 ゚ ー゚) 「幸せだったな・・・あの頃は」
歌を奏で、夢を紡いだあたたかい場所だった。
──10年前のあの悲劇までは。
否、その数年前から悲劇の序章は既に始まっていたのだけど。
- 15: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:46:53.52 ID:iFJfdzjK0
(´<_` )「なぁクー、ペニサスは、どうして自分"で"子を産んでしまったんだ・・・?」
弟者の顔に怖いぐらいの陰が差している。
夜だと分かっていても、奇妙なほどに。
川 ゚ -゚) 「・・・一夜の過ち、だ」
母のように自分で子どもを、と望んだペニサスの過ち。
その祈りは力と化し、二人の子どもをこの世に産み落としてしまった。
(´<_` )「それでも・・・日に日に力を奪われたペニサスを、どうして、どうしてあの男は・・・!!
残り少ない生を、どうして謳歌させてやろうとしなかった!?」
拳を握りすぎて手の色が変色しているのがクーにも見て取れる。
川 ゚ -゚) 「落ち着け。あの男を責めてはいけない。知っているだろう?」
弟者の肩を強く握り冷静にさせようとする。
(´<_` )「分かってるさ、分かってる・・・!!でも・・・!!」
普段の弟者なら、時折ここにまだ現れる彼を見ても普通に対応出来ている。
しかし、感傷に浸りすぎた彼は今、平静を失っている。
- 16: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 21:48:28.76 ID:iFJfdzjK0
彼の詰問は止まらない。
川 ゚ -゚) 「もう、止めるんだ・・・弟者よ」
クーの苦渋の言葉も、彼の耳には届かない。
(´<_` )「どうして・・・なぜあの男は・・・
荒巻は!!!ペニサスを殺したッ!!」
どれだけ問うてみても、この闇の中に答えは見つからなかった。
--第23話 終--
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