( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです
- 383: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 07:26:53.36 ID:9WLQ9otV0
--最終話 後編--
ーン・・・ブーン!
( ^ω^)「おっ!?」
がばり、とブーンは起き上がった。
( ^ω^)「僕は、寝てたのかお?」
白い天井、同色のベッド、カーテン・・・病院のようだ。
どうやら個室ではないらしい、まわりでざわざわと音がしている。
なんか閉じられているのも嫌なので、しゃあっと仕切りのカーテンを開けた。
その瞬間。
- 385: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 07:31:23.32 ID:9WLQ9otV0
パンパパパーン!!
( ^ω^)「おっおっ!?なんだお!?」
('A`) 「ブーン目覚めましたイェーイ!」
从*゚∀゚从「イェイなのじゃー!!」
ショボン、ドクオ、4精霊と荒巻が部屋にいた。
騒がしい8人部屋で、皆がクラッカーでブーンの目覚めを祝ってくれた。
(;^ω^)「ここ病院だお!?こんなとこでこんな事してたら怒られるお!!」
(´・ω・`)「大丈夫。ここ、僕の両親の病院だから」
(;^ω^)「にしたってこれは無礼講すぎますお・・・」
とりあえず、隣にいた荒巻にこのようになったいきさつを聞いた。
どうやら、僕は魔法の負荷が大きすぎてまる2日寝ていたらしい。
で、みんな火傷や怪我をしているから、オールスター入院なのだという。
- 389: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 07:38:11.23 ID:9WLQ9otV0
それにしても、さっき起こした声は・・・いや、やめておこう。
彼女がいるはずないのだから。
彼女の体に損傷をつけまいとして、彼女にも結晶に閉じこもってもらった。
それだけなんだ。彼女はもういない。
あの時、彼女は明らかに心臓を抉られて・・・
/ ,' 3「浮かない顔をしておるのう・・・笑う角には福が来るんじゃよ。覚えておくといい」
そうだ、落ち込んでいても仕方ないな。
僕は、今を生きなきゃ。
時間の砂時計が止まってしまった彼女の分も。
気持ちを入れ替えようと、深呼吸をした。
その時、目に入ったもの。
( ^ω^)「ウンディーネさん、髪が黒いお?」
よく見ればウンディーネだけじゃ無かった。
シルフもノームも黒くなっていた。
もっとよく見てみると、目も栗色になっていた。
それは、サラマンダー同様だった。
- 391: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 07:44:11.41 ID:9WLQ9otV0
川 ゚ -゚) 「私はもう、ウンディーネだなんて呼ばれる存在ではない、ただのクーだよ」
(´<_` )「俺も、もうノームじゃない、弟者だ」
从*゚∀゚从「わらわは妹者じゃ!」
( ´_ゝ`)「俺は、兄者だ」
ひとりひとり改めて自己紹介をしていく。
( ´_ゝ`)「俺達は、元々は昔滅んだ極東の島の人間だったんだ。
髪の色も目の色も納得だろう?」
(´<_` )「魔力のせいで、変な色に変わってしまってたんだよ」
という。
( ^ω^)「その話を組み合わせて辿り着くところは・・・」
(´<_` )「わたしたち、人間に戻りました♪キャ」
- 395: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 07:46:43.29 ID:9WLQ9otV0
( ^ω^)「今年最大のビックリベスト3にランクインしそうだお・・・またいきなりどうして?」
川 ゚ -゚) 「それはな・・・」
聞くところによると、怪我の治療の際、レントゲンなるものを取ったのだという。
それに、4人とも変なものが映っており、試しに取ってみたら、髪も黒く変わったのだという。
変なもの、とは石ころのような形をしたものらしく、
それが何かの影響を及ぼして遺伝子に異常をもたらしていたのだという。
川 ゚ -゚) 「普段病気もしない私達は、健康診断と言うものが初めてだったんだ。
もっとちゃんとしておくべきだったと思ったよ・・・そしたらもっと早くに気付いたのに」
从*゚∀゚从「そーですNE!!」
妹者は相変わらずひょうきんものである。
- 397: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 07:49:33.85 ID:9WLQ9otV0
とりあえず兄者と弟者は"VAIO"とかいう最新の機械で遊んでいるし、クーと妹者はシャボン玉でを吹いている。
ドクオとショボンなんてもう。
そんな状態なので、荒巻にいろいろな話を聞いていた。
モナーとフサギコや、組織の面々は、牢屋に入ることを許可したらしい。
でも、一番の被害者である荒巻が減刑を求めたので、またすぐに帰ってこれるらしい。
わかんないんですの腹も問題なく治って、ちんぽっぽたちは特に前科も無いため、また旅に出たらしい。
また、平和な日常が帰ってきたのだ。
たくさんの傷跡をのこして。
- 401: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 07:55:57.17 ID:9WLQ9otV0
/ ,' 3「ブーン君、また眉間に皺が寄っているよ。・・・そんな君にはいいものをあげよう」
( ^ω^)「これは?」
荒巻がくれたものは、丁度てのひらと同じぐらいの大きさの機械の塊だった。
まんなかにレンズのようなものが埋め込まれている。
/ ,' 3「それはのう、手のこんだびっくり箱じゃ。その青いスイッチを押してみるがいい」
言われた通りにそのひとつしかないスイッチを押した。
いつの間にか、皆がブーンのベッドの周りに集まっていた。
「ふわぁ・・・どしたのみんな、今度は何の用かしら?」
懐かしいと思える、愛しい声がした。
- 403: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:02:40.44 ID:9WLQ9otV0
( ^ω^)「つ、ツンッ!?」
ξ゚听)ξ「あらブーン、起きたのね。おはよう」
( ^ω^)「お、おはようだお・・・」
ナニコレ?ナニゴトデスカコレ?
その機械は、ホロジェクターであった。
立体映像─ホログラム発生装置。
学校で聞いたことがある。
その機械から、ツンのホログラムが現われたのだ、それで間違いないだろう。
(´・ω・`)「んーびっくりしたかい?すごいでしょ。これが父さんと母さんの発明だよ」
人間の脳のデータを数値化、精神をアナログ化させて
その機械の中のスパコンに取り込んだんだ、とショボンは説明してくれた。
精霊が精神を入れ替えることが出来たから、そこからそのメカニズムが生まれたのだ、と。
- 407: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:11:09.79 ID:9WLQ9otV0
(´・ω・`)「もちろん、これは大きなリスクがある・・・
でも、ツンはそれを承諾してくれたよ。ブーン君と一緒にいるためにね」
ξ*゚听)ξ「別に、そんな事言ってないでしょ!」
殴ろうと思ってみても、彼を殴ることは出来ない。
彼女はホログラムだから。
所詮はレンズに映し出された姿似でしかないから。
──それでも僕は、ツンにまた会えた事が嬉しかった。それだけで良かった。
そこまで考えて、はっとする。
( ;ω;)「ツン・・・ごめんだお。助けに行ったのに・・・間に合わなくて」
いきなり泣き出したブーンに困惑するツン。
ξ゚听)ξ「えーとね、あたしは全然遅かったなんて思ってないわよ。実際来てくれたんだし。
それにね、あんたが死にかけだったあたしの、いえ巫女の体を保ってくれてたおかげで、
あたしの脳や精神は生きていられたの」
- 409: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:12:11.76 ID:9WLQ9otV0
ξ゚ー゚)ξ「だから、こっちこそ礼を言わなきゃね。ありがとう、ブーン」
( ;ω;)「おー!!!」
ブーンはその日、思いっきり泣いた。
ツンが死んだと思ったあの日よりもずっと。
ツンも少しだけもらい泣きしていた。
それを見て、あぁ、やっぱりツンだ、と変な安心をした。
2人は、再開を皆に祝福された。
泣いた後は、皆でたくさん笑った。
─それはとても、幸せな日だった。
- 412: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:18:02.93 ID:9WLQ9otV0
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( ^ω^)「というお話だったのさ」
(*゚ー゚)「そんな事があったのね・・・」
もう夕暮れが近づいていた。
ずいぶん長々と話してしまったものだ。
ξ゚听)ξ「あの後ブーンったらあたしの機械に鼻水たらして困ったのよねぇ・・・」
( ^ω^)「もう、そのことは忘れてくださいお・・・」
もうあれから20年は経ったというのに。
(*゚ー゚)「それで、父さんはもう魔法を使えなくなったの?」
( ^ω^)「一応与えられたものだから、使う事はできるお。
でも、負荷で脳神経やかれたからドクターストップかかってるお」
- 415: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:21:22.48 ID:9WLQ9otV0
(*゚ー゚)「そっか、見たかったけど・・・無理言っちゃいけないわね」
( ^ω^)「ごめんだお。代わりに旅をして、その先で魔法を使える人を見つけるといいお!」
(*゚ー゚)「え・・・?」
目をまんまるくするしぃ。
( ^ω^)「さっき言ってた、この話が終わったら言いたいことって・・・旅に出ることだろうお?」
(*゚ー゚)「どうして分かったの!?」
( ^ω^)「僕が冒険の話ばっかりするせいで、僕達の子ども達はみんなそう言って旅に出たんだお。
・・・しぃは、いつごろ旅に出るのかお?」
(*゚ー゚)「今咲いている梅の花が散って、そこの桜が咲く頃に・・・」
( ^ω^)「・・・そうかお。寂しくなるお。でも、止めたりはしないお。旅を楽しんでおいでお!」
- 417: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:28:34.79 ID:9WLQ9otV0
〜それから、2ヵ月後〜
ξ゚ー゚)ξ「しぃ、行っちゃったわね」
( ^ω^)「家ががらがらに感じるお・・・」
ξ゚听)ξ「そうね・・・」
( ^ω^)「あの病院から退院してから、僕達の周りにはずっと子どもがいたお。
それがいなくなるのは寂しいものだお」
( ^ω^)「でも、僕がまだ元気で生きていられたうちに旅立ってくれて、よかった・・・お」
こぷ、とブーンは血の塊を吐いた。
いつもは黒いのに、今回は紅く、タオル1枚では到底足りない。
( ^ω^)「そろそろ、このときが来たお・・・」
- 418: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:29:24.73 ID:9WLQ9otV0
5年前、医者にもう長くはないと言われた。
あの魔法は、術者の生命を削る魔法だったのだ。
( ^ω^)「ツン、ごめんだお・・・折角帰ってきてくれたのに・・・僕がこんなになっちゃって・・・」
ξ゚听)ξ「いいえ、あたしは幸せよ。ねぇ、ブーン?」
( ^ω^)「なんだ・・・お?」
だんだんブーンの声がか細くなってきた。
これはもう、いよいよ危ないかも知れない。
ブーンはのんきにそう思った。
- 422: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:36:18.92 ID:9WLQ9otV0
ξ゚听)ξ「苦しいなら、無理して喋らなくてもいいから・・・
もしね、あたしのいる場所に、このからくりの世界に来れるなら、ブーンはどうする?」
確か、今の状態じゃツンひとりのデータでそのスパコンは容量いっぱいだと聞いていた。
だから、僕がそちらに行くことは叶わない。
それは、ツンと僕の優しい嘘の夢。叶わない夢。
でも、最後が寂しくないように、幸せな夢を綴りながら逝けるように、とツンは考えてくれたのだろう。
そして、ツンのこれから生きる希望のために。
ツンは、半永久的に生きることが出来るから。
( ^ω^)「もし・・・僕がそっち、に。いける・・・とした、ら・・・
まず、ツンに触れられるか試してみたい。そして。
- 427: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:44:25.43 ID:9WLQ9otV0
ここはブーンのいるところから遠く離れた島の研究室。
ふたりの中年にさしかかろそうな男性ふたりが話をしています。
('A`) 「ねぇ、ショボンさん。ブーンにあの事教えなくても良かったんですか?」
(´・ω・`) 「んー、どのこと?」
('A`) 「あのホロジェクター、容量が実はふたりぶんあるってことですよ」
(´・ω・`) 「んー、ああ、あれね。ブーン君が死んだら、彼も自動的にあっちに送られるようになってるから」
(;'A`) 「・・・そんなドッキリみたいなこと・・・」
(´・ω・`) 「だってツンをひとりで長い間生きていかせるなんて、男として失格でしょ?
・・・僕は一度きりの人生で一人の人を愛して、その人の胸で死んでみたいけど・・・
ブーン君はツンと永遠でも生きていけそうじゃない?」
('A`) 「まぁ、そうですね・・・」
- 430: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:47:29.76 ID:9WLQ9otV0
それとほぼ同時刻。
ブーンはこちらの世界から離れつつあった。
朦朧とした意識の中で思うことは。
あの日、僕の親友が言った一言、
「幸せって、何だろう。」
今なら、その答えが出せる。僕なりの、僕だけの答え。
ツンと、永遠に二人で過ごしたい。一生なんかじゃ物足りない。
二人で生きるんだ。喧嘩しても、仲直りして。飽く事の無い日々を。
それが、僕の幸せ。僕があっちに行けたらしたいこと。
ツンは、"データ"だ。"本物の"ツン、生きてた頃のツンかどうかなんて僕には分からない。
そして、僕が"本当"の僕でいられるかどうかも分からない。
全ては未知数だ。だから、その時まで。
- 431: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:48:26.32 ID:9WLQ9otV0
僕は信じよう。
ツンも、僕も、"本物"だと。
そして、僕達は──永遠に──電脳の海で愛し合う。
- 434: ◆OLIVIA/O7I : 2006/10/10(火) 08:50:27.17 ID:9WLQ9otV0
- その時、水鏡がゆらりとうごいた。
床に伏したブーンは知らなかったけど。
それは、光の花畑を歩くブーンとツンの幸せそうな光景をうつしだしていた。
--最終話 終--
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