ドクオは正義のヒーローになれないようです

62: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:28:15.10 ID:0oi8W+Kv0
  
第七話『破壊のヒーロー、ネガティブアヴァター!』


( ▼w▼)「アアアアアァァアアアッギャアァァァアアアアアアアッッッ!!」
ドクオだった存在が、閉ざされていた鋼鉄の扉をおもむろに殴りつける。
先程ドクオがどれだけ懸命に叩いてもビクともしなかったその扉は、
その一撃でまるで飴細工のように変形して蝶番ごと吹っ飛んだ。

闇黒の化物は、遮る物の無くなった出入り口を悠々とくぐり抜け、牢獄の外へと足を踏み出す。

( ・∀  ∀・)「壁を封鎖しろ! 隔壁を閉めろ!
         急げ、急げえ!!」
奇形男が叫びながら、部下の戦闘員にドクオを閉じ込めていた牢獄の隔離を急がせる。

ブザーが鳴り響き、化物のいる通路に次々とシャッターが降ろされていく。
厚さが数センチもある金属のドアによる、十重二十重にの障壁。
しかし、そんなものは最早、足止めとしての役割にすらならなかった。

( ▼w▼)「ギャバラアァァァアアァァァァァ!!」
紙のように、化物は次々と障壁を突破していく。
このまま外にこの化物が放たれるのは、時間の問題だった。



63: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:29:05.86 ID:0oi8W+Kv0
  
( ・∀  ∀・)「已むを得ん! あそこのブロックごと、あの化物を爆破しろ!」
戦闘員A「しかし、奇形男様……」
( ・∀  ∀・)「やれと言っている!
         それとも、このままあの化物に殺されたいか!?」
戦闘員A「はッ!」
自分の命の危機を悟り、戦闘員がセ−フティを解除し緊急爆破ボタンのスイッチを入れる。
直後、化物のいた通路が爆炎に包まれ、化物はその炎の中に飲み込まれた。

( ・∀  ∀・)「ハ……ハハッ……
         どうだ、これなら肉片すら残るま――――い?」
奇形男が絶望に顔を歪める。
肉片どころか、モニターの中では化物の全身がしっかりと残っているのが映っている。
さっきの爆発などまるで意に介さぬ様子で、ゆっくりと、しかし確実に歩を進めていく。

( ・∀  ∀・)「奴を殺せええぇぇぇッ!
         どんな手段を使っても構わん!
         ここから、生かして出すなああああああああ!!」
奇形男が悲鳴にも似た叫びを上げる。
それを受け、戦闘員達がマシンガンやアサルトライフル等の思い思いの武器で武装し、
化物のもとへと向かっていく。

肉体改造と同時に洗脳処理を施された戦闘員らに、
確実な死が待っていることは明白なのだとしても、
統率者である怪人奇形男の命令に逆らうことなど出来る筈はなかった。



65: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:30:10.04 ID:0oi8W+Kv0
  


                   *            *             *


体の内側が熱い。
頭の中が燃える。
だというのに――
心は、金属のようにひんやりと冷え切っている。

何だ、これは。
俺に、一体何が起こっている。

分からない。
何も、分からない。

一つだけはっきりしていることは、
今、俺には力があるということだ。
俺は、闘えるということだ。

だが、何と闘えばいいのだ。
俺は、何と闘いたいのだ。

分からない。
何も、分からない。

俺は、何者だ。
何が、したいのだ。
何を、求めていたのだ。



66: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:31:11.09 ID:0oi8W+Kv0
  
――そうだ。
俺は、救われたかった。
いや、救われなくてもいい。
誰かに、助けに来てもらいたかった。
ただ――それだけ。

分からない。
何も、分からない。

……音がする。
いつの間にか、俺は何人もの人間に囲まれていた。
全員が趣味の悪い戦闘服に身を包み、こちらに銃口を向けている。

何だ、こいつらは。
こいつらも、俺を傷つけようとしているのか。

分からない。
何も、分からない。

……もう一つ、はっきりしていることがあった。
それは、
俺『達』の敵は、
一人残らず鏖(みなごろし)にしてやるということだ……!



68: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:32:07.49 ID:0oi8W+Kv0
  


                *             *             *


戦闘員A「撃てえーーー!!」
号令と同時に、弾丸の雨が闇黒の化物に降り注いでいく。
数百発にも及ぶ弾の嵐に回避出来る隙間などなく、
何発もの弾丸が化物目掛けて叩き込まれていく。

( ▼w▼)「ギ……クギ…………」
しかし、化物はその銃弾を避けるどころか、防御しようとすらしなかった。
まるで小雨でも浴びるかのように平然としたようすで、じっと戦闘員達の様子を窺っている。

戦闘員「わああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
殆ど恐慌状態のまま、戦闘員達は銃爪を絞り続けた。
しかし、目の前に存在する化物は、まるで覚めない悪夢かのように、変わらずそこに存在している。

( ▼w▼)「ギイイィィィィィィィィィィッ!」
化物が呻くと、化物の背中の一部が盛り上がり、そこに孔のようなものが生まれる。
しかし、そこから恐るべきものが放出されていることに、戦闘員達はまだ気付いていなかった。

戦闘員「…………?」
戦闘員達が異変に気付いたのは、孔が出来てから数秒経ってからだった。



69: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:33:02.67 ID:0oi8W+Kv0
  
戦闘員「ダニ部cvwygvくkbヴあいヴぃytcflびいlぼくおあヴヴぇわc!!」
突如、最前線にいた戦闘員がガクンと膝を折り、
言葉にならぬ叫び声を上げながら悶絶する。

戦闘員「bvbがうえfbgcxじゅkyBCんjkcxbfjんはjkcxぶfvdxbKJLSNMxふぃあlsんgcfx!!!」
それは次々と他の戦闘員達にも感染し、
その場にいた戦闘員達は、化物が指一本触れないまま地面に崩れ落ちた。

戦闘員「bgckybぁbfdばんghふぃあwbcfxyてbcぃlyhdんhgふyばfDXNGいあfcんrglんGKFSUGNCls!!!!!」
戦闘員達は、今までに味わったことのない苦痛に身をよじらせた。

目が、鼻が、喉が、皮膚が、内臓が、火で炙られているかのように熱い。
体中、どこにも痛くない場所がない。

目が見えない。
息が出来ない。
音が聞こえない。

誰か、誰か助けてくれ……!

( ▼w▼)「ギィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
一分もしないうちに、戦闘員達は残らず体の穴という穴から血を垂れ流して絶命していた。
化物の孔から放たれた目に見えない毒素は、周囲のありあらゆる命を奪っていた。

いかなる生物も瞬殺無音――
まさに、恐怖の化身と呼ぶべき能力だった。



70: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:34:24.09 ID:0oi8W+Kv0
  







( ・∀  ∀・)「馬…………鹿な!
         有り得んッ!
         何なんだ! 何なんだ、あいつはああァッ!」
奇形男がモニター越しに見ていた惨劇に混乱の声を上げる。

( ・∀  ∀・)「糞ッ! 仕方無い!
         ここを放棄するぞ!!
         ドクター・セントジョーンズから厳罰が下るかもしれんが、
         ここにいたら100%死ぬだけだ!!」
奇形男が乱暴に席を立つ。
最早実験施設の管理者としての責務を完全に放棄し、彼の頭の中は逃げることのみで覆いつくされていた。

( ・∀  ∀・)「おい! 逃げるぞ!
         早く重要なデータを纏めろ!」
奇形男が同席していた戦闘員達に指示を出す。
しかし、戦闘員達は椅子に座ったままピクリとも動かなかった。



72: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:36:07.18 ID:0oi8W+Kv0
  
( ・∀  ∀・)「何をやっている!
         早くし――」
奇形男が戦闘員の肩に手をかけたとき、戦闘員の体がグラリと椅子から崩れ落ちた。
見ると、モニターに映っていた戦闘員達と同様、
目や耳や口から血を流して絶命している。

( ・∀  ∀・)「ヒィッッ!!」
部屋の中にいる他の戦闘員も同様だった。
闇黒の化物から放たれた猛毒は、既に施設全体を覆いつくしていたのだ。
戦闘員以上の強靭な肉体を持っている怪人、奇形男だけが、
辛うじて不可視の死神の鎌から逃れることが出来ていた。

( ・∀  ∀・)「うわああああああああああああああああああああああああ!!!」
半狂乱のまま、奇形男がモニター室から飛び出す。

逃げなければ。
逃げなければ。
逃げなければ。
逃げなければ、死――

( ・∀  ∀・)「あ……」
部屋を飛び出した所で、奇形男は足を止めた。
見てしまったからだ。
目の前に、闇黒の化物が既に来てしまっていたことを。



75: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:37:21.95 ID:0oi8W+Kv0
  
( ・∀  ∀・)「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」
奇形男が、さっき出たばかりのモニター室に再び逃げ込む。
しかし、そこにはもう、それ以上の逃げ場は無い。

皮肉にも、彼自身がドクオにもたらした状況と全く同じ立場に、追い込まれてしまっていた。

( ・∀  ∀・)「やめろ……
         来るな、来るなああああああああ!!!」
泣き叫びながら、奇形男が駄々っ子のようにブンブンと腕を振り回す。
その顔は、まるで笑っているかのようだった。

( ▼w▼)「ックッ……ギャアアアアアアアァァァァァアアァァァァァア!!」
しかし、化物にそんな命乞いは通用しなかった。
今度は化物の腹部が開き、おぞましい色の肉壁の中から砲門のような盛り上がりが姿を覗かせる。

( ▼w▼)「グルワアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッ!!」
咆哮と共に、内臓器官の砲門から暗黒の虹が幾重にも放たれた。
虹は部屋中に満ち溢れ、奇形男へと襲い掛かる。



76: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:38:14.51 ID:0oi8W+Kv0
  
( ・∀  ∀・)「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
奇形男が虹の中に飲み込まれる。
次の瞬間、奇形男の右腕が一瞬にして腐り落ちた。

( ・∀  ∀・)「なッ……ぎゃああああああああああああああああああ!!!」
異変は腕だけではなかった。
体中に、おどろおどろしい肉腫が浮かび上がり、
そこから大量の血と膿が噴水のように噴出していく。

肛門と尿管から大量に下血し、
目と鼻と耳からはどす黒い血が流れ出ていた。

( ・∀  ∀・)「……負の権化(ネガティブ・アヴァター)め…………」
それが、奇形男の最後の言葉だった。
体が腐敗により自らの体重を支えきれなくなるほど脆くなり、
奇形男の体が床の上に崩れる。
肉片がブスブスと音を立てながら煙を上げ、
ついには、彼の姿はこの地上から塵一つ残さず消え去ってしまった。

( ▼w▼)「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
化物は、何一つ生物の居なくなった空間で雄叫びを上げた。
だが、その声は、どこか泣き声のようでもあった。



78: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:39:41.95 ID:0oi8W+Kv0
  






イ从゚ ー゚ノi、「…………!?」
銀がドクオの連れ去られた、郊外の廃工場を装った実験施設に辿り着いた時には、
既に化物による大虐殺が行われた後だった。

イ从゚ ー゚ノi、「これは一体……
       マスク仮面は……?」
恐る恐る、銀は隠されていた地下へと続く階段を下りる。
床には、傷一つない死体が無数に転がっている。
どうやら、毒ガスか何かの兵器がここで使用されたようだ。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
と、奥から形容し難い叫び声が聞こえてきた。

イ从゚ ー゚ノi、「今のは――」
銀は、その声に聞き覚えがあった。
いや、その声の響きに聞き覚えがあった。

悲しそうな、
救いを求めるかのような、
悲痛な声。

間違える筈もない。
あの、マスク仮面の声だった。



81: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:40:31.77 ID:0oi8W+Kv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面……!」
声のした場所に駆けつけ、銀が目にしたものは、
彼女の良く知るマスク仮面の姿ではなく、異形の闇黒の化物だった。
しかし、彼女はその化物から確かにマスク仮面の心を感じ取っていた。

イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面、大丈夫――」
銀が化物に触れようとした時、化物はその手を振り払った。

( ▼w▼)「グウウウゥゥ……グウゥゥゥゥ……ルウウウウゥ………」
化物は血涙を流し、敵意に満ちた態度で銀の方を向いた。

イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面……」
しかし、銀は恐ろしさを感じることは出来なかった。

気付いてしまったのだ。
化物は、傷ついて――
怯えていて――
泣いていることに。
そんな哀れな、余りにも弱く、痛々しいものを――
一体、誰が恐れることが出来るというのか。



83: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:41:34.78 ID:0oi8W+Kv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面!」
銀は、化物に向かって叫んだ。
さっきの惨状がこの化物のもたらしたものだとすれば、
自分の身も危ないかもしれないということは分かっていた。
だが、銀には、どうしても放っておくことができなかった。
化物が、どうしようもないくらい、救いを求めていると知ってしまったから。

イ从゚ ー゚ノi、「もう、充分じゃろう!?
       これ以上、何を殺す!
       お主は、正義のヒーローではなかったのか!?」
銀が、悲痛な声で化物に訴える。

( ▼w▼)「ゼイギノ……ヒー……ロー…………」
化物が、僅かによろめく。
その目に、少しずつではあるが、理性の色が戻っていった。

イ从゚ ー゚ノi、「もう、闘わなくてもよい!
       もう、終わったんじゃ!
       もう、大丈夫じゃから、だから――」
銀は、そこで言葉を詰まらせた。
だから、もう正義のヒーローを無理して演じる必要などない。
そう言いたかった。

( ▼w▼)「ヒーロー……タスケニ………キテ……クレタ…………」
糸が切れたように、化物が地面に倒れる。
と、化物のからだから黒い霧のようなものが立ちこめ、
程なくして、化物の体は元のマスク仮面のそれへと戻っていった。



85: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:42:21.08 ID:0oi8W+Kv0
  


                 *             *             *


――両親が事故で死んでから、何年が経っただろう。
あの頃の俺はまだ小さくて、両親のことはよく覚えていない。

ただ――
両親におんぶしてもらったときの、あの感覚は覚えている。

暖かくて、柔らかくて、
それだけで、心の底から安心できた。

両親は、俺にとって万能の、正義のヒーローだった。

……だけど、両親は、もういない。
俺の所に正義のヒーローは――



86: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:43:21.12 ID:0oi8W+Kv0
  






('A`)「…………」
目が覚めた場所は、さっきの牢屋ではなかった。
夜空に星が見える。

ここは、外か?
でも、いつの間に――

イ从゚ ー゚ノi、「起きたか、マスク仮面」
ドス女の声で、俺はドス女におんぶされていることに気が付いた。

('A`)「ドス女――」
体を動かそうとすると、体中に激痛が走り思わず呻き声を上げる。

イ从゚ ー゚ノi、「じっとしておれ。 まだ、体が回復し切っておらぬじゃろう。
       それと、儂の名前は銀じゃ。 何回も言っておろうが」
ドス女の苦言もそこそこに、俺は自分の身に起こったことを思い出していた。

牢屋に監禁されて、変な化物に飲み込まれて――
それからは、よく覚えていない。
だが、とてもおぞましいことが、あった気がする。

……まあいい。
そのうち、思い出すだろう。
今日は、色んなことがあり過ぎた。



88: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:44:07.98 ID:0oi8W+Kv0
  
('A`)「……てか、お前どこに行ってるんだ?」
俺は背中からドス女に声をかけた。
周りの風景からして、VIP市の街外れにある農業地帯ということは分かるが、
どうして俺とドス女がこんなところにいるのか分からない。

イ从゚ ー゚ノi、「取り敢えず、お主が攫われた河川敷まで戻っておる途中じゃ。
       全く、あの廃工場からここまで運んでくるのは骨が折れたぞ?」
そうか、俺は攫われた後、そんな所まで運ばれていたのか。
……待て、そういえば。

('A`)「……何で俺の攫われた場所が分かったわけ?」
イ从゚ ー゚ノi、「匂い」
忘れてた。
こいつは狼女だったんだ。
犬科なら、嗅覚で匂いの元を辿るなどお手の物ということか。

('A`)「……あのさ」
イ从゚ ー゚ノi、「ん?」
一拍置いて、俺は言葉を続けた。
('A`)「俺を、助けに来てくれたのか?」
イ从゚ ー゚ノi、「ああ」
そっけなく、ドス女は答えた。

('A`)「俺を、助けに――」
気が付くと、涙が溢れていた。

助けに、来てくれた。
助けに、来てくれたんだ。
俺を、助けに――



89: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:45:02.31 ID:0oi8W+Kv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「どうした、マスク仮面?」
(;A;)「……ぁッ――ああぁッ――――ああッ――」
助けに来てくれた。
助けに、来てくれた。
助けに、来てくれたんだ。

嬉しかった。
助けに、来てくれたことが。
嬉しくても涙が出ると、初めて知った。

(;A;)「お、俺――俺の、所に、助けに――――」
助けに来てくれたんだ。
助けに来てくれたんだ。
助けに、来てくれたんだ。

イ从゚ ー゚ノi、「……泣くな。 男の子じゃろう?」
ドス女が、俺に優しく声をかけた。
ドス女の背中は、どことなく、母さんと同じような匂いがした。

(;A;)「あ、あり、ありが……うぅッ……!」
必死にお礼を言おうとしたけれど、上手く言うことが出来なかった。

……助けは、やって来た。
それが、正義のヒーローじゃないのだとしても。
確かに、俺の所にやって来てくれた。
それが、どうしようもないくらい嬉しかった。



91: カメラマン(チリ) :2007/03/28(水) 18:46:42.98 ID:0oi8W+Kv0
  


イ从゚ ー゚ノi、「さて、意識が戻ったところで、お主の家を教えてはくれぬか?
       その体では、どうせ自力で帰ることは出来まい」
ひとしきり泣き終え、涙がすっかり枯れた所で、ドス女が声をかけてきた。
('A`)「あ、ああ。 えっと、番地はVIP市今北の……」
背負われたまま、住所を教えようとしたそのとき、
俺とドス女の体がいきなり光で照らされた。

イ从゚ ー゚ノi、「誰じゃ!」
ドス女が身構える。
ゆっくりと、闇の中から光を向けた主の姿が浮かび上がってきた。

(,,゚Д゚)「……銃刀法違反女に、この前の変態男、か」
左手に懐中電灯、右手に拳銃を持った男がこちらに向かって歩いてきた。

あの男、見覚えがある。
確か、この前追いかけられたギコとかいう刑事だ。

(,,゚Д゚)「この前、小さな女の子から
     『クマの怪物からマスク仮面とかいう正義のヒーローと、綺麗な銀髪のお姉ちゃんに助けられた』
    って証言があったんだが、そのことについて詳しい話を聞きたいんだけどな?」
俺達から数メートル離れた場所で足を止め、拳銃を突きつけたまま、
ギコという刑事は肉食獣を思わせる笑みをこちらに向けた。


〜第七話『破壊のヒーロー、ネガティブアヴァター!』 終
 次回、『警察官(セイギノミカタ)、ギコ!』乞うご期待!〜



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