ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:35:18.19 ID:JvyjqNrp0
  
第十七話『理想と現実の狭間で』

〜前回までのあらすじ〜

この前のはほんとすいませんでした


      *   以下、何事も無かったかのように再開   *


(´・ω・`)「ここだよ。 さ、入って」
しょぼくれ顔に連れて来られたのは、街中にある『バーボンハウス』というバーだった。
バーは外から一見した所、レンガ造りのシックな感じで、中々雰囲気の良い店だ。

('A`)「…………」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
俺とドス女は、周囲を警戒しながらバーの中へと入っていった。

ドス女は俺だけでも先に帰すようにと言っていたが、
俺はドス女と一緒にしょぼくれ顔達についていくことにした。

ドス女は止めたが、どっちみちあの状態で俺だけ何も無しに帰るなんてことは出来なかっただろう。
それなら、大人しくついていくのが一番だと考えたのだ。



4: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:38:58.15 ID:JvyjqNrp0
  
川 ゚ -゚)「座るといい」
店に入り、澄まし顔の女が俺達に席に座るように促す。
見たところ、店の中に刺客が隠れている、ということはなさそうだった。
ドアを開けた瞬間、大勢の敵が居てホールドアップ、というのも覚悟してはいたんだが。

ギコは少年とツンツン女と老人に別の場所まで連れていかれてしまった。
……殺されるようなことは無いと思うが、少し心配だ。
ひょっとしたら、洗脳や記憶抹消くらいはされているのかもしれない。

(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ。
      このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」
カウンターの席に座った俺達の前に、しょぼくれ顔がテキーラの入ったグラスを差し出した。

('A`)「…………」
(´・ω・`)「心配しなくても、毒なんかは入っていないよ」
テキーラに手をつけるのを躊躇っていた俺にしょぼくれ顔は言ったが、
矢張りどうにもテキーラを口にするのにはていこうがあった。
ドス女はそんなことを意にも介さず一気に酒を呷ったが、
まあ、こいつはそんじょそこらの毒では効きはしないだろうから心配はいるまい。



5: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:39:33.93 ID:JvyjqNrp0
  
('A`)「あの、ここで話をするんですか?」
俺はしょぼくれ顔に尋ねた。
(´・ω・`)「うん? そうだけど?
      なかなか良い店だろう? 僕が趣味で個人的に経営しているんだ」
しょぼくれ顔が不思議そうに尋ね返す。

('A`)「いや、こう言うのも何なんですけど、
   もっとこう、秘密基地の本部とかそういう所に連れていかれるのかなー、と」
はっきり言って拍子抜けだった。
バーに隠し階段やエレベーターがあって、その下にテレビよろしく秘密基地があると思っていたんだが、
そういった所に案内されるような様子も無かったからだ。

(´・ω・`)「何を言ってるんだい。
      みすみす自分達の本丸に、軽々しく案内するわけがないだろう?
      話を聞くだけなら、ここで十分さ。
      それとも、僕の店は気に入らなかったかな?」
('A`)「いや、そういうわけじゃないです。 すみません」
ショボンのその言葉を聞いて、俺は少し安心した。
本拠地がばれたら困るということは、つまり生かして帰すつもりはあるということか。
あくまでも、今のところは、だろうが。



7: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:42:38.60 ID:JvyjqNrp0
  
(´・ω・`)「さて、話を聞く前に……
      自己紹介がまだだったね。 僕の名前はショボンだ」
川 ゚ -゚)「素直クール、クーでいい」
二人がそれぞれ自分の名前を告げる。

(´・ω・`)「今はここにいないけど、さっきいた三人――
      男の子がブーン、女の子がツン、おじいさんが初代モナーだ。
      まあ、『銀獣』はご隠居のことは知ってたみたいだけど」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ショボンに視線を向けられたが、ドス女は何も答えなかった。
ショボンはやれやれと肩をすくめ、

(´・ω・`)「それで、ええと……
      『銀獣』はいいとして、君の名前は?」
ショボンが俺に向き直り、名前を聞いてきた。

('A`)「……鬱山ドクオ」
偽名を答えてやろうかとも思ったが、どうせこいつらはすぐ本名をつきとめるだろうと思い、
素直に本名を名乗ることにした。

(´・ω・`)「了解。 ドクオ君だね」
ショボンがうんうんと首を縦に振る。



9: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:43:50.94 ID:JvyjqNrp0
  
イ从゚ ー゚ノi、「それで、儂らに何を聞きたいというのじゃ?」
さっきまで黙っていたドス女がやおらショボン達に聞いた。

川 ゚ -゚)「そうだったな。
     先程も言ったが、私達が聞きたいことは唯一つ、
     最近頻発している、怪人の凶行について、あなた達がどこまで知っているのか、だ」
クーが鋭い視線をこちらに向けながら言う。

イ从゚ ー゚ノi、「だから、さっきも答えたじゃろう。
       儂らは何も知らぬ。 何処の誰が、何の目的であんなことをしているかなど、さっぱりじゃ」
ドス女がやれやれといった風に答えた。

川 ゚ -゚)「ふざけるな!
     あまりいい加減なことを――」
(´・ω・`)「まあまあクー、落ち着いて。
      『銀獣』、何も知らないというのならそれでいい。
      だったら、今まで怪人達と闘ってきた状況や、その時気付いたことでもいいんだ。
      教えてはくれないか?」
今にも掴みかかろうとするクーを抑え、ショボンがやんわりした口調で聞いてきた。



11: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:45:31.22 ID:JvyjqNrp0
  
イ从゚ ー゚ノi、「闘った感想、か……
       そうじゃな、あの身体能力、特殊能力――
       どれも、人間が努力や修練によって、取得可能な領域ではない。
       明らかに、人間とは別の『何か』の力が背景にあるじゃろう」
(´・ω・`)「その背景にあるもというのが――」
イ从゚ ー゚ノi、「……儂の同類、貴様ら人間が、悪魔や妖怪と呼ぶ類のものじゃろうな。
       恐らく、その力を人為的に移植しておる」
重い口調でドス女が答えた。

悪魔――妖怪、だって?
そんなもの、御伽噺の世界じゃなかったのか?

いや――
今更、こんなことで驚いていてどうする。
俺は今までに、それと似たような怪人と会ってきたじゃないか。

(´・ω・`)「その、改造している奴らに心当たりは?」
イ从゚ ー゚ノi、「じゃから、知らぬと言っておろうに。
       ――いや、待て。 『一つだけ』あった」
急にドス女が表情を変えた。
忌々しいことでも思い出してしまったかのように。

イ从゚ ー゚ノi、「旧日本帝國軍、『神威師団』――
       あの狂人どもが、それと似たようなことを企てておった」
川 ゚ -゚)「『神威師団』……!?」
クーが身を乗り出すような姿勢で食い入ってくる。



12: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:47:19.87 ID:JvyjqNrp0
  
イ从゚ ー゚ノi、「お主達が知らぬのも無理は無い。
       あれこそは日本の暗部――軍の中でも限られた者しか知らぬ組織じゃったからな。
       戦争で劣勢に立たされていた日本が、最後の切り札として密かに進めていた計画――
       『超異能戦闘員製造計画』、それを一手に担っていたのが、『神威師団』じゃ。
       かつて、儂もその組織に狙われていた」
吐き捨てるようにドス女が言う。
そうか。
力を得ようっていうなら、ドス女ほど相応しい対象はいないだろう。
あの人外魔境の力――是非とも、欲しがった筈だ。

イ从゚ ー゚ノi、「じゃが、結局その計画は身を結ばなかった。
       儂が徹底的に叩きのめしてやったし、
       あともう少しの所で、日本が敗戦してしまったからな。
       そして神威師団は、GHQにも秘密のまま極秘裏に解体され――
       完全にその存在を歴史上から消した筈じゃった。
       しかし――」
ドス女が一拍間を置いて、
イ从゚ ー゚ノi、「しかし、その計画を、何者かが継いでいるのだとしたら?」
(´・ω・`)川 ゚ -゚)「――――」
ショボンとクーが一様に言葉を失った。

超異能戦闘員製造計画、だって――?
馬鹿げている。
そんなこと、まともな神経じゃ考えても、実行したりなんかしない。

だが、今までの怪人……
あれが、その産物なのだとしたら……!



13: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:48:56.79 ID:JvyjqNrp0
  
イ从゚ ー゚ノi、「……儂が知っているのはこれだけじゃ。
       解体された後の神威師団のその後は、本当に知らぬ。
       信じる信じないは勝手じゃがな」
ドス女が話し終え一つ大きく息をついた。

(´・ω・`)「……分かりました。
      貴重なお話をありがとうございます。
      最後に、もう一つだけいいですか?」
ショボンがさっきのドス女の話をメモに取りながら尋ねてきた。

(´・ω・`)「VIP市郊外に、廃工場を装った研究施設らしきものがありまして、
      そこに戦闘員が毒ガスらしきもので大量に殺されていました。
      これに、心当たりは?」

――――!?
研究施設に、戦闘員の死体が!?
まさか……!

(´・ω・`)「ドクオ君、君も何か知っていないかい?
      些細なことでもいいんだ」
あの時のことは、記憶が飛んでいてよく覚えていない。
だが――やっぱり――



14: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:50:25.71 ID:JvyjqNrp0
  
('A`)「……あ、あの…………」
どうする。
答えるべきか。
俺がその張本人です、と。
だが、もしそんなことがばれたら……

イ从゚ ー゚ノi、「知らぬな。 全く、心当たりが無い」
ドス女が平静を装ったまま言った。

川 ゚ -゚)「本当か?」
イ从゚ ー゚ノi、「見ての通り、儂の得物はこの刀じゃ。
       毒ガスらしきもので死んでいた、と言っていたが、
       日本刀ではそんな殺し方は出来まい。
       今までに何人か怪人を殺してきたが、それは本当に無関係じゃ」
ドス女が平然と答える。

(´・ω・`)「……まあ、それもそうか。 失礼、いらないことを尋ねてしまったね」
ショボンは一応納得したように一人で頷いた。
(´・ω・`)「それじゃ、今日はこれくらいにしておこうか。
      すまないね、時間を取らせてしまって。
      また、こちらからも連絡させてもらうかもしれない」
取り敢えず今回は一段落したようで、
俺とドス女はようやく解放されることとなった。



16: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:53:46.96 ID:JvyjqNrp0
  



ドス女と並び、夜道を愛しの我が家向けて帰る。
夜風が頬にあたり、気持ち良かった。

('A`)「何か、つかれたな……」
夕方まで変身スーツを探して、JOWとかいう連中に拉致されて――
帰るころには、とっくに日付が変わってしまっていた。
本当に、最近色々あり過ぎた。
何もかも、忘れてしまいたいぐらいに。

('A`)「あ、そうだ」
イ从゚ ー゚ノi、「うん?」
俺が声をかけ、ドス女が顔を向ける。

('A`)「その……さっきはありがとう」
研究所でのことを聞かれたとき、ドス女が助けてくれなければ本当のことがばれていたかもしれない。
そうしたら、今ここでこうやって帰ることなど出来なかった筈だ。

イ从゚ ー゚ノi、「気にするな。 それより、マスク仮面」
と、ドス女が俺の正面に立ちいきなり背中に腕を伸ばしてきた。

('A`)「ちょッ! ドス女、何――」
間近まで体を寄せられて、慌ててしまう。

いや、ちょっと、夜中とはいえ、いきなりこんな往来で――



17: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:54:10.25 ID:JvyjqNrp0
  
イ从゚ ー゚ノi、「よし、取れた」
そう言うと、ドス女は俺の背中にまわしていた腕を離し、何か摘んでいる手を見せてきた。

('A`)「これは……」
イ从゚ ー゚ノi、「ま、発信機か盗聴器か、あるいは両方か、じゃろうな」
ドス女の手あったのは、超小型の機械だった。
あいつら、いつの間にこんなものを……!

イ从゚ ー゚ノi、「正義の味方とやらも、みみっちい作業が好きなものじゃな」
ドス女が指先に力を込め、機械をぺしゃんこに潰した。
これで、一応は大丈夫だろう。



19: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:54:37.37 ID:JvyjqNrp0
  


イ从゚ ー゚ノi、「……それで、どうじゃった?」
('A`)「?」
ドス女が不意に何かを質問してきたが、何のことか分からず何も答えられなかった。

イ从゚ ー゚ノi、「正義の味方の組織と会った感想じゃよ」
('A`)「ああ……」
そこまで言われて、ようやく合点がいった。

('A`)「てか、聞きそびれちゃったんだけど、あのJOWってのはどんなことをしてるんだ?」
イ从゚ ー゚ノi、「儂も昔のことしか知らぬが……
       テロリストの撲滅や、今回のような異常事態の鎮圧や、人間に害を為す者の駆除――
       要は、世界の秩序を裏から保つようなことをしておったな。
       尤も、戦争などは流石に規模が大きすぎて手出し出来んかったようじゃが。
       ま、今もやってることはそう変わるまい」
('A`)「ふーん……」
裏から世界の秩序を支える、か。
俺には想像すら出来ないレベルの話だ。

('A`)「……俺は」
ドス女の説明を受けた上で、俺はもう一度じっくり考えた。
JOW――絶対正義執行機関――正義の味方の集団。
その一員と会ってみて、俺が感じたのは――



20: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:55:09.79 ID:JvyjqNrp0
  
('A`)「……あれは、俺の憧れていたものとは、違うと思う」
世界の秩序を保つ――それは、とても大変なことなんだと思う。
綺麗事ばかりでは、当然やってはいけないのだろう。
だけど――力ずくでドス女を連れて行こうとしたり、発信機をつけたり――
それが正しいこととは、どうしても思えなかった。

イ从゚ ー゚ノi、「しかし、あの組織は実際に多くの人々の命を救っておる。
       直接的にも、間接的にも。
       それは紛れも無い事実であり、じゃからこその正義の味方じゃ」
分かっている。
そんなことくらい、分かっているんだ。

テレビの中からは決して出てこない正義のヒーローなんかより、
あいつらの方が遥かに人助けをしていると。
その過程で、多少犠牲が出たり、汚いことをするのも必要なんだと、分かっている。

だけど、どうしても。
どうしても、俺は、あの日テレビで見ていた、
正義のヒーロー『マスク仮面』への憧れを捨てることは出来なかった。



21: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:55:36.44 ID:JvyjqNrp0
  
困っている人の前に現れて、
どんなピンチにも弱音を吐かずに、
自分一人の力で正々堂々と悪や不正に立ち向かう正義のヒーロー。

その姿を見て、俺は憧れた。
助けて欲しいと、心から望んだ。

そんなものは現実では通用しないと、
理想だけで闘うことは出来ないと、
何度も打ちのめされてきた。

それでも、
あの正義のヒーローの姿は、
今でも心の中で光り輝き続けていた。

イ从゚ ー゚ノi、「……正義など、所詮は多数派の主義主張に過ぎぬ。
       そもそも普遍の正義など、ありはしない。
       それくらい、分かっておろう?」
だけど、
それでも、
傷つきながら人を助けるその姿に、
俺は真実の正義を見つけたと思ってたんだ。



24: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:57:50.51 ID:JvyjqNrp0
  
('A`)「俺は……
   それでも、正義のヒーローを信じていたい」
腕に抱えるマスク仮面変身スーツが、いつもより重く感じられた。
例えこのスーツがハリボテなのだとしても、その中に宿るものは、きっと本物だろうから。

イ从゚ ー゚ノi、「そうか……」
ドス女は俺の答えを聞いて、静かに微笑むと、
イ从゚ ー゚ノi、「ならばもう何も言うまい。
       こうなれば乗りかかった船じゃ。
       暇潰しに、儂ももう少しだけ付き合ってやる」
ドス女が微笑みながら言った。

('A`)「……てか、どうしてそこまでしてくれるんだ?」
本当は嬉しかったのだが、照れ隠しについついぶっきらぼうな言い方になってしまった。
こういう性格を改めれば、今までに一人ぐらいは恋人が出来たのだろうか。

イ从゚ ー゚ノi、「……羨ましいから、じゃろうな」
自嘲気味な口調で、ドス女が呟くように言った。

イ从゚ ー゚ノi、「人間は命が有限だからこそ、何か目標を定めそれに向かって走ることが出来る。
       丁度、今のお主のように。
       じゃが――儂らは、違う。
       急がなくとも、時間は限りなくある。
       また明日やればいい、駄目ならそのまた明日やればいい――
       そうやって、命が腐っていく」
永遠に等しい命。
それは永遠に退屈が続くということ。
永遠に休める時間が来ないということ。
不老不死を望む人間は五万といるが――果たして、それは本当に素晴らしいことなのだろうか。



25: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:58:18.70 ID:JvyjqNrp0
  
イ从゚ ー゚ノi、「じゃから――
       そうじゃな、お主が正義のヒーローに憧れるのと、似たようなものか。
       そうやって他人の夢に乗っかることで、自分も夢を追っているつもりになりたいだけなのじゃろうな。
       下らない話じゃ」
違う。
下らなくなんかない。
だって、ドス女は今まで俺を何度も助けてくれたじゃないか。
下らなくなんてない。
それは尊いことじゃないか。

……そう、言いたかった筈なのに、
俺は何も言ってやることが出来なかった。
何を言っても、慰めにしかならない気がしたから。

イ从゚ ー゚ノi、「まあそういう訳じゃから、お主が気にする必要はない。
       なあに、儂には幾らでも時間があるのじゃからな」
ドス女は笑っていたが、
俺には、その笑顔が無理して笑っているものとしか思えなかった。

今は共に夢を追うことは出来ても――いずれ、俺は老いて死ぬ。
そうなった時、ドス女は、どうするのだろうか。



26: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:59:07.51 ID:JvyjqNrp0
  
('A`)「……てかさ」
イ从゚ ー゚ノi、「うん?」
('A`)「お前と同じような人外って他にもいるのか?
   俺はお前以外見かけたことがないんだが」
昔話ではよく聞くけれど、実物を見たことは全くない。
まあ、ちらほら人外を見かけるようならそれこそ大騒ぎになっているだろうけど。

イ从゚ ー゚ノi、「……いなくなったよ。
       ある者は自然と共に消え、ある者は人間に牙を剥き、返り討ちに遭い、
       ある者は山の奥深くでひっそり生きることを選んだ。
       もう、この辺りにはほとんど儂みたいな者は残っておるまい」
寂しげに、ドス女が言った。

('A`)「そんな……!
   お前はそんなんでいいのか!?
   人間を憎いとか思ったりしないのか!?」
イ从゚ ー゚ノi、「お主は、アメリカ人の一人が日本人を殺したとして、アメリカ人全員を憎むか?
       それはお門違いというものじゃろう。
       ……何より、儂らは永く生き過ぎた。
       何百年、何千年と生きてきて、滅びない種族の方がおかしい。
       いずれ滅びる定めであり――そのきっかけの一つがたまたま人間に過ぎなかっただけじゃ」
('A`)「でも……!」
でも、だけど、それじゃあ、ドス女はずっと独りぼっちじゃないか。
そんなの、寂しいじゃないか……!



27: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 15:59:47.31 ID:JvyjqNrp0
  
イ从゚ ー゚ノi、「この話はこれで終わりじゃ。 さて、家までもうすぐじゃな」
会話を一方的に打ち切って、ドス女はすたすたと先に歩いて行く。

……俺は何も分かっちゃいなかった。
困っている人、助けるべき人が、こんなにも近くに居たってのに、
何一つ気付いてはいなかった。

――だけど、
どうやって、助ければいいというのだ。

正義のヒーローなら、何か上手くいく方法を考え付くのだろうか。
……そんなことを考えながら、俺はドス女の後ろを無言のまま歩いていた。



〜第十七話『理想と現実の狭間で』 終
 次回、『戦士達の休日』 乞うご期待!〜



28: 洋菓子のプロ(チリ) :2007/04/15(日) 16:00:57.98 ID:JvyjqNrp0
  
この番組は、

天翔斬!
天翔裂斬!
天翔裂空斬!
神舞……裂帛!

の提供でお送りしました



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