ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 19:56:34.61 ID:ceVfSUP90
  
第十八話『戦士達の休日』

〜前回までのあらすじ〜

/ ,' 3 「うぅまぁ〜〜〜〜いぃ〜〜〜〜〜ぞおぉ〜〜〜〜〜〜〜!!」
第一回、VIP料理選手権開催!
最強の料理人を決める為、AA達が続々と終結する!!

(,,゚Д゚)「俺の料理で全員倒してやる!」
参加するは今大会最年少出場者のギコ!
彼は台風の目となれるのか!?

( ・∀・)「フッ、料理はもっとエレガントにやるものさ」
(*‘ω‘ *)「とりあえずみかんを入れときゃいいぽっぽ!」
立ちはだかるは海千山千の凄腕料理人達!
それぞれの技を武器に、ギコの料理と火花を散らす!!

( ゚∀゚)「これが俺の必殺料理、
    トリカブトとフグワタのカルパッチョだ!!」
食べた者は必ず死ぬ、故の必殺――
って、審査員を殺してどうすんだ!!

ミ,,゚Д゚彡「俺の包丁で対戦相手はKOだ!」
それ殺人罪だ!
頼むから料理の味で勝負しろ!!



4: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 20:07:07.32 ID:ceVfSUP90
  
(゜3゜)「この5円玉を見てるとあなたは私の料理に満点を入れたくな〜る……」
催眠術は反則だ!
でもこんなのでも前の二人よりはまともなのってどういうわけだ!?

('A`)「フゥ〜、フゥ〜、クワッ!」
誰がドーピングコンソメスープ作れって言った!
手前ら勝負の意味を勘違いしてるだろ!?

( ´_ゝ`)「こ、これはぁ!
      隠し味にうんぬんかんぬんとにかく美味すぎて私の富士山も大噴火だ!!」
加熱するリアクション!
火山の噴火は当たり前!
雪崩に洪水核爆発!
会場はリアクションの嵐に耐えられるか!?

<ヽ`∀´>「フヒヒヒヒ、これであいつの料理は台無しニダ……」
影で行われる裏工作!
ギコは、この魔の手を跳ね除ることが出来るのか!?

イ从゚ ー゚ノi、「……のう、最近はこの格好で料理するのが普通なのか?」
決勝戦、ギコ対ドス女戦で奇跡が起こった!!
料理界における禁断の奥義、裸エプロンがついに炸裂する!!!

(,,゚Д゚)「料理は勝負だぜ!
   カカカカカーーーーーー!!」
激突するプライドとテクニックと味!!
果たして優勝は誰の手に!?



8: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 20:19:27.29 ID:ceVfSUP90
  
     *  以下、何事も無かったかのように再開  *

(’e’)「……以上が、これまでの経過です。
   詳しいことが分かり次第、追って報告します」
|::━◎┥「ワカッタ。 サガッテヨイゾ」
(’e’)「はっ」
セントジョーンズは歯車王に恭しく敬礼すると、歯車王の部屋を後にした。

(’e’)「……歯車王。
   クククッ、まさにそのものずばりな名前じゃないか……」
歯車王の部屋から離れたところで、セントジョーンズが含み笑いを漏らす。
その顔は、嘲笑に醜く歪んでいた。

(=゚д゚)「何一人で笑ってるラギ?」
笑い声を不審に思ったトラギコが後ろから声をかけた。
(’e’)「……いや、何でもない。
   ああそうだ、今日の約束だったな。 ほら、今回の分だ」
そう言うと、セントジョーンズは分厚い封筒をトラギコに差し出した。

(=゚д゚)「サンキューラギ」
トラギコは封筒を手に取り、中の札束を確認して満足気に笑うと、
用はそれだけとばかりにさっさとセントジョーンズから離れていく。

(’e’)「金さえ貰えればそれでいい、か。
   いや、大いに結構。 歯車が余計なことを考えては邪魔だからな」
セントジョーンズは見下すように言い、
(’e’)「ククッ、誰も彼も歯車に過ぎないのだよ。
   勿論、この私も含めてな……
   ククッ、クククッ、クアーハッハッハッハッハ!!」
セントジョーンズの狂笑だけが、辺りに響いた。



10: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 20:25:35.48 ID:ceVfSUP90
  


        *        *        *


ギコが警察官を目指したのは、悪が許せなかったからだ。
彼は昔から正義感が強く、どんな些細な不正や悪事も見過ごすことが出来なかった。
だからこそ、彼は警察官という仕事を志し、
警察官になれば世の中の全ての悪と闘い、倒していけると信じてやまなかった。
だが――

(,,゚Д゚)「糞! 畜生!!」
現実は、違った。
世の中の半分は悪と不正でまかり通っており、
警察でさえ時としてその悪や不正によって組織を維持している。

今回の怪人騒動も、本来なら警察が介入すべき事態である筈なのに――
上層部は、まるっきり動こうと……
いや、あることを認めようとすらしていない。

どこかからの圧力かは分からないが、
そんなものに屈することが、ギコには許せなかった。



11: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 20:30:51.63 ID:ceVfSUP90
  
(,,゚Д゚)「JOWだと!?
   ふざけんじゃねえぞゴルァ!!」
あの後、ブーン達に連れられて――
ギコは拍子抜けするくらいあっさりと解放された。

記憶操作や洗脳といったことも、
口封じの為の脅迫めいたお願いすらもなく、あっさりと。

一人の警察官如きが、何を言ったところで影響は無いと言っているようなものであり、
それをギコもひしひしと感じていた。

自分の正義など、悪や不正を許さぬ心など、組織の前では無力であると――
そう、否定されたも同然だった。

(,,゚Д゚)「畜生……見てやがれ……
   必ず、揉み消せないような大きい尻尾を掴んでやるからな……!」
それでも、ギコの目からは闘志の火が消えてはいなかった。



13: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 20:36:05.72 ID:ceVfSUP90
  


        *         *        *


川 ゚ -゚)「ご隠居、大丈夫ですか?」
(´ー`)「おお……どうもすみません」
クーに湿布を貼られながら、初代モナーが礼を述べた。

JOW日本支部の医務室――
この部屋にいるのは、この二人だけだった。

川 ゚ -゚)「軽度の打撲と内出血だけです。
    全く……どうしてあんな無茶を?」
医療品を救急箱にしまいながら、クーが初代モナーに尋ねた。
初代モナーは面目無さそうに苦笑いを浮かべると、
(´ー`)「すみません。
    年甲斐も無く張り切ってしまって……」
と、すまなそうに言った。



16: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 20:45:37.19 ID:ceVfSUP90
  
川 ゚ -゚)「……矢張り、昔の因縁とやらですか?」
クーが静かに初代モナーに聞いた。

(´ー`)「……そうですね。 まあ、色々とありましたから。
    あの方は、60年前とちっとも変わっていなくて……
    それで、私もその時の夢を――
    あの時間を、もう一度、感じたいと思ったのでしょうね」
どこか他人事のように、初代モナーが呟いた。
その目には、一抹の寂しさと口惜しさのようなものが漂っていた。

川 ゚ -゚)「……深くは追求しませんが、くれぐれももう少し御自重を。
    私も、あなたの葬儀に出たくはありませんから」
(´ー`)「分かっています。 どうもすみませんでした」
クーが初代モナーから感謝の言葉を受け取ると、
クーが救急箱を戸棚にしまい医務室を出た。

初代モナーはそれを見届けると、
しばし座ったままで考え込むように手を組み、
(´ー`)「あの少年……
    『銀獣』は、今はあの少年と共に時を過ごしているのですか……」
呟くように言い、一つ大きな溜息を吐く。

(´ー`)「……矢張り、今の私では駄目か」
初代モナーの瞳の奥を、ゆらりと昏い影がかすめた。



18: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 20:55:12.23 ID:ceVfSUP90
  


         *        *        *


ξ゚听)ξ「あ、ブーン、ここにいたんだ」
JOW日本支部屋上。
その手すりに体をあずけて遠くの景色を見ていたブーンに、ツンが声をかけた。

( ^ω^)「…………」
しかし、ブーンはツンに何も答えない。
ただ、遠くの方をずっと見つめている。

ξ゚听)ξ「ちょっと、どうしたのよブーン。
   あんた、最近元気ないわよ?」
ツンがブーンの肩に手をかけ、そこでようやくブーンがツンに顔を向ける。

( ^ω^)「……ツン」
ブーンは小さくツンの名前を呼んだ。

ξ゚听)ξ「ほんとに、どうしたのよ?
   私でよければ、相談に乗ってあげるわよ?
   べ、別に、あんたが心配ってわけじゃないんだからね!」
テンプレートなツンデレっぷりで、ツンがブーンに尋ねた。



19: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:03:36.35 ID:ceVfSUP90
  
( ^ω^)「……ツン」
少し黙った後、ブーンは意を決したように口を開いた。

( ^ω^)「僕は、本当に正義のヒーローなのかお?」
ξ゚听)ξ「え?」
不意をつかれた質問に、ツンが思わず素っ頓狂な声をあげる。

( ^ω^)「……あの時、あの人は言っていたお。
     『これが正義のヒーローのやることか』って。
     ツン、僕は、本当に正義のヒーローなのかお?」
ツンを正面から見据え、ブーンが問うた。
まるで、救いを求めるかのように。

ξ゚听)ξ「な、何言ってんのよ!
    正義のヒーローに決まってるじゃない!
    私たちJOWは正義の味方の組織でしょ?
    それに属し、その為に働いている限り、あなたは正義のヒーローよ。
    何あんなコスプレオタクの言うこと真に受けてんのよ?」
( ^ω^)「……そう、かお」
ツンはそう答えたが、ブーンはまだ納得のいっていない様子だった。



21: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:08:55.61 ID:ceVfSUP90
  
(´・ω・`)「あ、いたいた。
     ツンお嬢様、長官がお呼びですよー」
その時屋上への出入り口が開き、ショボンが大声でツンを呼んだ。

ξ゚听)ξ「分ったわ、ありがとう!
   ……それじゃブーン、私もう行くわね。
   このことはさっさと忘れた方がいいわよ?」
そう言うと、ツンはショボンの元へと駆け出し、屋上を出て行った。
屋上には、ブーンだけが取り残される。

( ^ω^)「僕は、正義のヒーロー……」
ブーンは再び、遠くの景色をじっと見つめていた。


        *        *        *


イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドクオと初めて会った廃寺の縁側に座り、銀は物思いに耽っていた。

銀は思い出していた。
ドクオと初めて会った時のこと、
それから、モナーに会った時のことを。

モナー――
かつて自分と過密な時間の中鎬を削りあった、あの恐るべき『魔弾』の使い手。
『死置き人』の異名を持つ兵。

その兵も、今や只の老人と成り果てようとしていた。
あの時の少年は、もうどこにもいなかった。



23: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:15:09.90 ID:ceVfSUP90
  
覚悟は、している筈だった。
自分は人間と同じ時間の流れの中を生きることは出来ないと――
自分は、化物なのだということを。

自分は何も変わらない、何も変われないまま、
周りの人間は変わり果て、死んでいく。
時間が経てば、その痛みにも慣れていくと、そう思っていた。
思わなければ、ならなかった。

だが――
今の自分のこの心の様は何だ。
何度も出会いと別れを繰り返していた筈なのに、
たった一人の人間の老いにここまで打ちのめされている。

自分は化物ではないのか。
化物なら、冷酷残虐な心を持っている筈ではないのか。
そうなれれば――こんな痛みなど、感じなくても済むのに。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
いずれ、ドクオも老いて自分の元を去っていく。
その時も、こんな痛みを感じるのだろうか。

いずれ訪れる別れと、いつ果てるかも分らぬ己の寿命。

それが――銀には、たまらなく恐かった。



25: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:20:58.33 ID:ceVfSUP90
  


         *        *        *


('A`)「……ここに来るのも久し振りだな」
俺はマスク仮面変身スーツを着て、渡辺のおばあちゃんの家の前まで来ていた。
スーツを着たからには、
まずここに挨拶に来なければいけないと思っていたのだが、
随分と遅くなってしまった。

('A`)「おじゃましまーす」
勝手知ったる我が家とばかりに、玄関の戸を開けて家の中に入る。

???「はいはい、どこのどいつだ?」
しかし返ってきたのは、知らない男の声だった。

誰か他に客でも来ているのかといぶかしんでいるうちに、
ドタドタと足音が近付いてくる。
そこに現れたのは――

( ФωФ)「我輩の隠れ家に何の用だ?」
どこからどう見ても怪しさ爆発のおっさんだった。



34: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:29:45.84 ID:ceVfSUP90
  
('A`)( ФωФ)「むむ! 怪しい奴!!」
俺とおっさんが同時に声をあげた。

何だこいつは。
そのままプロレスにでも出れそうな豪華な鎧。
悪人全開のメイク。
こんな不審者が、この辺にいたのか?

('A`)「何だ貴様は! 何者だ!?」
とっさに身構え、おっさんを指差して大声で尋ねた。

( ФωФ)「よくぞ聞いた。
     我輩は宇宙大魔王杉浦ロマネスク!
     この地球を征服しにB78星雲からやってきた悪の帝王だ!!」
地球征服――だって?
このおっさん、本気でそんなことやるつもりなのか?



35: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:30:09.59 ID:ceVfSUP90
  
('A`)「ふざけるな!
  この正義のヒーロー、マスク仮面がいる限り、そんな悪事は許さんぞ!!」
( ФωФ)「何ィ、正義のヒーローだとぉ!?
    それはいい! ならば今ここで貴様を倒せば、我輩の悪のステータスも上がるというものだ!!」
ロマネスクの体から闘気が立ち込めていく。

やばい。
ふざけた見た目とは裏腹、このおっさんマジに強そうだ。
ドス女と同等か――恐らくそれ以上。
こんな奴に勝つことが出来るのか!?

( ФωФ)「ククククク……
    行くぞ、マスク仮面!!」
ロマネスクが今にも襲い掛かろうとし――



50: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:40:56.19 ID:ceVfSUP90
  
从'ー'从「あらあら、マスク仮面さんじゃないの。
    お久し振りね」
渡辺のおばあさんの声が、張り詰めた空気を一気に弛緩させた。

('A`)「あ……どうも、御無沙汰してます」
来てくれて助かりました、本当に。
あのままだったら、生きてないかもしれません。

从'ー'从「そうそう、実は少し前からこの家に新しい人が住んでるんですよ。
    杉浦ロマネスクさんと言って、本当にお優しい方でねえ。
    住む家が無いというんで、可哀想だからここの家の部屋を貸してあげてるのよ。
    ……あら、もう挨拶されてるみたいね」
襲い掛かろうとした姿のまま硬直しているロマネスクと俺を交互に見やり、
渡辺のおばあちゃんがにっこりと微笑んだ。

しかし、あれだけ大騒ぎしていたにも関わらず全く気づいていないとは、
どれだけ耳が遠いのだろう。
もし、気づいている上でこんなに落ち着いているのだとしたら、
絶世の馬鹿か大物かのどちらかだ。



51: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:41:35.11 ID:ceVfSUP90
  
从'ー'从「さ、上がって下さないな。
    ロマネスクさん、マスク仮面さんにお茶を出して差し上げて」
( ФωФ)「あ、はい……」
さっきまでの勢いは何処へやら。
すっかり腰の低くなった態度でロマネスクが台所へと姿を消す。
どうやら、渡辺のおばあさんには頭が上がらないらしい。
まあ、俺もこのおばあさんには勝てそうにないけれど。

从'ー'从「そういえば、お二人ともどこか似ている雰囲気があるわ。
    きっと良いお友達になれるわよ」
そう言って、渡辺のおばあさんは嬉しそうに笑うのだった。



61: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:52:03.53 ID:ceVfSUP90
  


         *       *       *


(・∀ ・)「糞が! 冗談じゃねえっての!!」
斉藤またんきは荒れていた。

先日、蝙蝠男に襲われて拳銃を発砲したのだが――
警察の上層部がそれを認める筈もなく、彼には一ヶ月の停職の処分が下されていた。

(・∀ ・)「それもこれも全部ドクオの所為だ!
    あの野郎、今度会ったらただじゃおかねえからな!!」
ドクオに助けられたことなどすっかり忘れ、
彼はひたすらドクオを罵倒し、全責任を彼に押し付けようとしていた。
その顔は、人間のものとは思えないくらいに醜い。

(・∀ ・)「今度は警棒ぐらいじゃ済まさねえ……
    ライターで目を炙って……」
そうやって黒い妄想に耽る斉藤の肩を、何者かが掴んだ。



63: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:53:45.61 ID:ceVfSUP90
  
(・∀ ・)「何だ!?
    俺に何か用か!?」
斉藤が手を乱暴に振り払い、後ろに振り向く。
そこにいたのは――

(=゚д゚)「お前で今月の実験材料のノルマ達成ラギ。
   ま、運が悪かったと思って諦めるラギ」
(・∀ ・)「な――――」
斉藤が何か言おうとしたが、それが声になる前に意識を失うのだった。


〜第十八話『戦士達の休日』 終
 次回、『炎上、VIP警察署!』乞うご期待!〜



64: 電気店勤務(岡山県) :2007/04/18(水) 21:54:05.64 ID:ceVfSUP90
  
この番組は

ブラボー!
オーマイコーンブ!
このアライを作ったのは誰だァ!
シャッキリポン!

の提供でお送りしました。



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