ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 22:54:02.97 ID:naIoW1cq0
  
第十九話『炎上、VIP警察署!』

〜前回までのあらすじ〜

連載もある程度続き、固有名詞も増えてきたので作中の用語解説をします

『超兄貴』
メサイアという会社製作の、
ほぼ全裸の筋肉マンを操作してこれまたキモい敵を倒していくシューティングゲーム。
必要以上の筋肉描写と男汁にヒく人がほとんどだが、
実は純粋なシューティングゲームとしての完成度はなかなかのものである。
本編には一切登場しない。

『パニッシャー』
超戦闘兵士養成機関ミカエルの眼が、
その中でも特に優秀なものに与える最高にして最強の個人兵装。
十字架を模したボディに、マシンガンとロケットランチャーが内臓されている。
某テロ牧師の代名詞の武器だが本編には一切登場しない。

『バテンカイトス』
モノリスソフト製作の、ゲームキューブ用RPGソフト。
普通のRPGと違い、カードゲーム方式のバトルが一部で話題となった。
奇抜な戦闘システムだけでなく、
ストーリーも王道の中にプレイヤーの意表をつく展開があったりと楽しめる。
しかし悲しいかなあまり知名度は無い。
これも本編には一切登場しない。



2: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 22:55:00.39 ID:naIoW1cq0
  
『THE ガッツ!』
筋肉ムキムキのお姉さんばっかりが出てくる、
良い意味でも悪い意味でも馬鹿なエロゲー。
ツンデレだの幼馴染だの、生温い萌えの一切を拒絶する筋骨隆々なお姉さんたちが、
プレイヤーと主人公に文字通り襲い掛かる。
素人にはお勧め出来ないがその手のマニアを自称するなら是非。
勿論本編には一切登場しない。

『泣き虫サクラ』
バキの作者板垣恵介がイブニングに連載している
漫画版餓狼伝のキャラクター。
過去に母親に両目を抉られており、そのせいで泣くことが出来なかったが、
グレート巽との死闘の果て涙を取り戻す。
超人的な身体能力と子供のような残虐性を併せ持つ。
当然本編には一切登場しない。

『パンの缶詰』
その名の通り、パンの入った缶詰。
主に災害時の非常食用として販売されているが、非常食と侮ることなかれ。
パン生地はしっとりふっくら、味もバナナ風味苺風味とバリエーション豊かで、
老若男女問わず美味しく頂くことが出来る。
機会があれば一度ご賞味あれ。
やっぱり本編には一切登場しない。



3: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 22:58:18.24 ID:naIoW1cq0
  
『裸エプロン』
料理界における究極にして最終の秘奥義。
この姿で料理すれば、どんな料理も至高の味わいとなる。
というか、味なんかどうでもよくなる。
さらに料理だけでなく、作った人も美味しく食べることがあqせdrftgyふじこlp
本編には多分一切登場しない。

『ネコミミ』
ザッツアベリー萌え萌えアイテム。
最早言葉は不要。
ネコミミはとても素晴らしい。
まさしく人類の編み出した叡智。
はにゃーん。
いつか絶対本編に出す。

『人外属性』
人間でないおにゃのこが所有する属性。
悪魔だったり天使だったり妖怪だったりエルフだったりとカテゴリーは様々だが、
この属性がメインとなった作品は他のジャンルと比べて少ない。
しかしそのマイノリティーさ故コアなファンも多く、一部逸般人に根強い人気を持つ。
本編には登場してます。



6: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:00:12.04 ID:naIoW1cq0
  


       *   以下、何事も無かったかのように再開    *


('A`)「…………」
( ФωФ)「…………」
渡辺のおばあちゃんの家の居間の中、
俺と杉浦ロマネスクはお互い向かい合う形で座布団に座っていた。

('A`)「…………」
( ФωФ)「…………」
会話の無いまま、気まずい時間だけが流れる。

そりゃそうだ。
正義のヒーロー(自称)と悪の大魔王(自称)、
こんな組み合わせで何を話せというのだ。



7: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:00:55.90 ID:naIoW1cq0
  
('A`)「えーっと…… B78星雲から来た宇宙大魔王でしたっけ」
沈黙に耐え切れず、俺はロマネスクに尋ねた。

( ФωФ)「そうだ」
('A`)「てことは、この地球の人じゃないのか?」
( ФωФ)「そうだ」
わーお。
妖怪に怪人の次は宇宙人か。
まさか、こんなに多くの人外どもと、関わり合いになるなんて思わなかった。

('A`)「どうして、どうやってこの地球に?」
( ФωФ)「フッ、よくぞ聞いた。
       我輩の宇宙船で宇宙を旅していたら、丁度良い星を見つけたのでな。
       我輩の名前を宇宙全域に轟かせる第一歩として、この星に降り立ったのよ!」
つまり、侵略の為にこの地球まで来た、と。

('A`)「……地球を征服して、どうするつもりだ?」
俺は恐る恐る聞いた。

この杉浦ロマネスクという男、
見た目はともかく、戦闘能力は計り知れない。
そんな奴が地球を征服すると聞いて、黙っているわけにはいかない。
返答によっては、例え死ぬと分かっていても闘わなければ……!



9: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:01:23.25 ID:naIoW1cq0
  
( ФωФ)「えッ?」
しかし、ロマネスクから返ってきたのは驚きの声だった。

('A`)「いや、だから地球征服してどうすんのかって聞いてんの」
( ФωФ)「いや、その、えーっと……」
しどろもどろになり、露骨に視線を泳がせるロマネスク。
まさか、こいつ、ひょっとして……

('A`)「……もしかして、地球征服してからのこと考えてないの?」
( ФωФ)「う、うるさい! それくらいちゃんと考えているわ!
       その、だから、そうだ! 
       貴様ら愚民にはその内容を言っても理解など出来ないだろうから、教えないだけだ!!」
……前言撤回。
こいつは多分放っておいても大丈夫だ。
何をするかも決めないで世界征服だけしようなんて、どんな馬鹿だ。

( ФωФ)「と、とにかくだ!
       地球征服をすれば、誰もが我輩を悪の帝王と認める筈だ!
       だからこそ我輩はこの家を一時的な隠れ家として、悪の活動を行うのだ!!」
('A`)「悪の活動って?」
( ФωФ)「えーっと……
       燃えるゴミの日に燃えないゴミを出すとか、
       ピンポンダッシュとか……」
……それが宇宙大魔王(自称)のする悪行か。
そこらへんの犯罪者の方がもっと悪いことやっとるわ。



10: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:02:00.80 ID:naIoW1cq0
  
( ФωФ)「そ、そうだ!
       この前、我輩以外にも悪を名乗る奴がいたんで、成敗してやったぞ!
       これぞ悪の活動と呼ぶに相応しい!!」
('A`)「誰だそりゃ?」
( ФωФ)「確か、怪人キムチ男とか言っていたな……」
('A`)「!!!」
怪人キムチ男だって!?
もしかして、俺とドス女が闘ってきた怪人の一味か!?

( ФωФ)「何やらバスジャックをしていたのでな。
       我輩を差し置いてそんな悪事をしているのが許せなかったので、
       一撃の下成敗してくれたわ!」
……あの怪人の仲間を一撃で倒したのか。
やっぱり規格外だ、このおっさん。

('A`)「……そいつらに、何か心当たりはあるのか?」
( ФωФ)「知らんな。 何処の馬の骨か分からんが、あの程度で悪を名乗るなど片腹痛い」
嘘を言っているとも思えない。
ということは、俺達の闘っている悪の秘密結社とこいつとは、無関係ということか。
どころか、お互いに敵が一致しているとも言える。

正義のヒーロー(自称)と宇宙大魔王(自称)の敵が同じとは……
何とも奇妙な巡り会わせだ。



11: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:02:24.43 ID:naIoW1cq0
  
('A`)「てか、何でお前この家に住んでるわけ」
( ФωФ)「……いつの間にかここのおばあさんの荷物を箱場されて、
       いつの間にかここに住むように言われて住むことになった。
       ……深くは聞くな」
……状況が大体想像出来てしまった。
まあ、何だ。
ご苦労様。

( ФωФ)「今度は我輩からも質問させろ」
('A`)「?」
と、今度はロマネスクの方から俺に尋ねてきた。

( ФωФ)「貴様、自分は正義のヒーローと言っていたな。
       それは本当なのか?」
言われて、俺は返答に詰まった。

俺は――本当は正義のヒーローなんかじゃない。
正義のヒーローの、真似事をしているだけだ。
そんな俺が、どうしてその質問に「はい、そうです」と答えられるだろう。



12: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:02:52.69 ID:naIoW1cq0
  
('A`)「……だったら、どうする」
結局口から出たのは、肯定でも否定でもないその場凌ぎの言葉だった。

( ФωФ)「知れたこと。
       さっきも言ったが、正義のヒーローを倒せば更に悪の名声が増すというもの。
       あのおばあさんの手前、今ここで事を起こすつもりはないが、
       いずれ必ず貴様とは決着をつける」
ロマネスクが射抜くような目で俺を見つめた。

('A`)「……何で俺が正義のヒーローって分かるんだよ。
   もしかしたら嘘かもしれねえんだぞ?」
俺には何も無い。
正義のヒーローたる大義も。
正義のヒーローと呼んでくれる人々も。
それなのに、どうしてこいつは俺を正義のヒーローと信じているのだ。

( ФωФ)「フッ、馬鹿を言うな。
       あのおばあさんがお前を見るときの目、あれが全てを物語っている。
       あの人間にあそこまで信頼される者が、正義のヒーローでない筈がない」
('A`)「――――」
俺は胸の奥を締め付けられるような感覚に襲われた。

全く――
どいつもこいつも、どうして俺なんかを正義のヒーローと思っているのだ。
そんなことされたら、余計に惨めになるじゃないか――



16: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:04:10.58 ID:naIoW1cq0
  
('A`)「……望むところだ。
   この正義のヒーローマスク仮面が、返り討ちにしてくれる!
   簡単に勝てるとでも思うなよ!!」
( ФωФ)「フハハハハッ!
       それでこそ我輩が仇敵とした正義のヒーローだ!
       いいだろう、時が来れば、全力で貴様を葬り去ってくれる!!」
俺とロマネスクは、そう言ってお互いに笑い合った。

……まあ、こういうのがあってもいいのかもしれない。
正義のヒーローもどきと、悪の帝王もどき。
そんな連中が、半端者同士ヒーローごっこをするというのも。
それで、お互いがどこかで救われているのなら。

从'ー'从「お待たせ。 夕食の仕度が出来ましたよ」
('A`)( ФωФ)「あ、はーい」
正義のヒーロー(自称)と宇宙大魔王(自称)が、一緒に卓を囲んで食事をする。
ジョークとしては、たちが悪すぎて笑うしかないものだった。



17: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:04:46.28 ID:naIoW1cq0
  
('A`)「でさ、ロマネスクのアホがまた馬鹿なことやってさ」
イ从゚ ー゚ノi、「ほう」
ロマネスクと出会ってから10日、特に何もないまま時間が過ぎていった。

いつものように新しく見つけたバイトに行って、変身スーツを着てパトロールをして、
渡辺のおばあさんの家でロマネスクと馬鹿を言い合って帰宅して、
いつものようにドス女が部屋で待ってくれている。

今までの騒動が嘘のように、
穏やかな毎日が過ぎていっていた。

('A`)「普通ありえんだろ。 自称宇宙大魔王が痴漢の冤罪で交番に連れていかれるとか」
イ从゚ ー゚ノi、「くくくっ」
俺の話を聞きながら、ドス女が少女のように屈託無く笑う。



18: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:05:21.25 ID:naIoW1cq0
  
ドス女は今日は着物ではなく、ラフなスタイルのシャツにズボンといった現代風の格好をしていた。
というのも、以前に

イ从゚ ー゚ノi、「替えの着物が無くなった。 新しいのを買ってくれ」
('A`)「自分で買え」
イ从゚ ー゚ノi、「金が無い」
('A`)「働け」
イ从゚ ー゚ノi、「嫌じゃ」
('A`)「知るか糞ニート」
イ从゚ ー゚ノi、「ちなみに75万円」
('A`)「バカ! バカ! マンコ!
   うちにそんな金があると思ってんのか!?」
イ从゚ ー゚ノi、「腎臓を売れ」
('A`)「テメーぶっ殺すぞ」

といった流れの会話があり、殺し合い寸前の話し合いの結果、
金は払ってやるから現代の服で我慢しろという結果になった。

……何で俺が金を出してやらなければいけないんだろう。

イ从゚ ー゚ノi、「!? マスク仮面……!」
と、ドス女が突然かじりつくようにテレビ画面を覗き込んだ。

('A`)「んあ……?
   !!!!!
   これは!?」
ニュースから、信じられないような内容の報道が流れてくる。

そう、心のどこかでは、本当は気付いていたんだ。
いつまでも、平穏な日々が続く訳は無いということに。



20: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:06:08.65 ID:naIoW1cq0
  

         *          *          *

――VIP警察署署長室

(´・_ゝ・`)「ふう……」
VIP警察署署長、盛岡デミタス。
彼は今日も、警察署での激務に追われていた。

と、突然署長室のドアがノックされる。
(´・_ゝ・`)「誰だね? 入りたまえ」
盛岡がそう答えると、部屋のドアがゆっくりと開けられた。

(・∀ ・)「失礼します、署長」
現れたのは、斉藤またんきだった。
その顔に邪悪な笑みを浮かべながら、一歩一歩盛岡まで歩み寄る。

(´・_ゝ・`)「どうしたのかね? 君は現在、謹慎中の筈だが――」
斉藤の異様な雰囲気に違和感を覚えながらも、盛岡はそう告げた。

(・∀ ・)「何、今日はちょっとプレゼントを持って来ましてね」
(´・_ゝ・`)「プレゼント?」
盛岡が不審がりながら尋ねる。

(・∀ ・)「ええ。 地獄への片道切符、ですよ」
斉藤がそう言うと同時に、彼の体は異形のそれへと変化していった。


〜第十九話『炎上、VIP警察署!』 終
 次回、『正義の為の犠牲と代償』乞うご期待!〜



21: 山伏(チリ) :2007/04/20(金) 23:07:13.78 ID:naIoW1cq0
  
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