ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:18:08.24 ID:X6PFfjlv0
  
第二十話『正義の犠牲と代償』

〜前回までのあらすじ〜

早いものでこのブーン小説
('A`)ドクオは正義のヒーローになれないようです
も二十回目の連載となりました。
これも偏に読者の皆様方の応援あってこそです。
展開が遅く、最終回を迎えるのがいつになるかはまだまだ分かりませんが、
どうかもう少しこの駄文にお付き合い下さい



3: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:20:19.27 ID:X6PFfjlv0
  


        *   以下、何事も無かったかのように再開   *


「うわああああああああああああ!!」
(,,゚Д゚)「!?」
刑事一課で仕事をしていたギコの耳に、耳をつんざくような悲鳴が飛び込んできた。

(,,゚Д゚)「今のは、署長室から!?」
跳ねるように座っていた椅子から立ち上がり、署長室まで駆け出そうとする。
その刹那――

「ぎゃあああああああああ!!」
一階の入り口からも、悲鳴と銃声が響き渡った。
続いて、ガラスを割って何者かがぞろぞろと侵入してくる音。

(,,゚Д゚)「何だ!? 何が起きてるってんだ!!」
叫びながら、ギコが拳銃の安全装置を外す。
その時、刑事一課室にも銃器で武装した戦闘員達が流れ込んできた。

(,,゚Д゚)「う、うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
部屋の中に連続して銃声が鳴り響いた。



5: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:22:13.04 ID:X6PFfjlv0
  


          *          *          *


「現在VIP警察署が武装したテロリスト集団に占拠されたとの情報が入りました!
 警視庁は特別対策班を結成し、事態の収拾と犯人の鎮圧を図り、
 政府は自衛隊の派遣も検討に……」
慌しい口調でニュースキャスターが事件の内容を伝える。
背後には、所々から火の手の上がるVIP警察署。

何だこれは。
これも、怪人どもの仕業だというのか!?

('A`)「くッ!!」
俺はすぐさま立ち上がり、マスク仮面変身スーツに手を伸ばした。

行かなければ。
もし怪人が事件に絡んでいるとなると、警察や自衛隊なんかの手には負えない。
何より、国の対応では遅過ぎて、犠牲者が増え続けることになる。



6: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:22:49.85 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「待て」
今にも駆け出そうとする俺を、ドス女が制した。

('A`)「何だよ! 今はのんびり話してる時間なんか……」
イ从゚ ー゚ノi、「行ってどうする。
      警察が素直に警察署の中にまで入れてくれると思うか」
('A`)「…………!」
そういえば、そうだ。
だけど、だからって……

('A`)「だからって、このまま指を咥えて見てろってのか!?」
警察署の中には、ギコだっているかもしれない。
あいつは嫌な奴だが、悪い奴じゃなかった。
そいつが死ぬかもしれないってのに、何もせずじっとしているなんて出来るわけがない。

イ从゚ ー゚ノi、「気持ちは分かるが、ここは儂に任せろ。
       儂一人なら、人に気付かれず侵入することは容易い。
       それに――」
ドス女は真剣な眼差しを俺に向け、
イ从゚ ー゚ノi、「行けば、きっと地獄を見るぞ」
一切の虚飾無く、きっぱりとドス女は言い放った。



7: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:23:11.19 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「……分かったな。
       お主は、ここから出るな。
       化物退治は、化物に任せておけ」
それだけ言うと、ドス女は窓から飛び降りVIP警察署目掛けて走り去っていった。
部屋の中に、俺一人だけが取り残される。

('A`)「糞ッ! 黙ってここに居ろって、そんな訳にいくかよ!」
しかし、どうする。
正面から行ったところで、ドス女の言う通り門前払いにされて終了だろう。
何か、他の方法を探さなければ。

何か無いか。
何か――

('A`)「……そうだ!」
俺の頭に、一筋の光明が差し込んだ。



8: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:26:31.05 ID:X6PFfjlv0
  



薄暗がりの中、懐中電灯の明かりだけを頼りにして、
俺は下水道の中を歩いていた。

以前のバイトの関係でもらっていた下水道の地図が、
まさかこんなところで役に立つとは。
人間、何事も経験してみるものだ。

('A`)「……ここら辺だな」
この上のマンホールの蓋を開ければ、VIP警察署の敷地内に出れる筈だ。
もしかしたら警察や怪人が既にマンホールの下にもいるかもしれないと思っていたが、
幸運にもまだそこまで手は回っていないみたいだ。

('A`)「よっと」
マンホールの蓋を下から押し上げ、地上へと身を乗り出す。
どうやら、うまいことVIP署の敷地内に出てくることが出来たらしい。
周囲からは、警察やマスコミや野次馬達の騒音が聞こえてきた。



9: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:27:37.28 ID:X6PFfjlv0
  
('A`)「…………」
物陰に隠れ、誰も見ていないことを確認すると、
俺は目を閉じて意識を集中した。

心を落ち着け、奥底の声へと辿り着く。

「我らと重なれ」

俺の心に住まう、俺ではない何かの声。

自分の中に異形の力が宿っていると知ってから――
俺は何度となく、自力で変身する為の訓練を続けていた。
その甲斐あって、今では自分の意思で自在に変身することが出来る。

自分だけど、自分じゃない何者かの力と心。
そいつと、心を一つに重ねる。

(▼A`)「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛」
黒いマグマが俺の心と体を溶かす。
はち切れそうになる破壊衝動。
それに飲み込まれることなく、黒い力に自分を委ねる。
そして――



10: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:28:03.42 ID:X6PFfjlv0
  
( ▼w▼)「ぐはあああァァァァァァ……」
俺の体は、化物のそれへと変化した。
体の奥底から、力が溢れ出る。

――いける。
これなら、十分闘うことが出来る。

( ▼w▼)「ジャッ」
窓をぶち破り、警察署の中へと侵入した。
次の瞬間、俺の目に飛び込んできたのは――



13: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:32:48.27 ID:X6PFfjlv0
  
( ▼w▼)「な――――!」
死体。
死体死体。
死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体。

男に女に中年に若者に――
警察官の死体が、床一面に転がっている。

体中に銃弾らしきもので穴を開けられ――
恐怖に顔を強張らせたまま絶命している。

いや、そんなのはまだいい。
中には、顔の形を判別出来ないくらい砕かれているものもある。

( ▼w▼)「う、うわあああああああああああああああああああ!!!」
血の海の中、俺は叫んだ。

何だこれは。
何だって、こんなことになってるんだ……!

戦闘員「何だ、貴様は!?」
そこに、趣味の悪い戦闘服に身を包んだ集団が駆けつけ、俺に向けて自動小銃を構える。

やばい。
今の声で気付かれた。



14: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:33:19.88 ID:X6PFfjlv0
  
戦闘員「撃てェーーーーーーー!!」
怒号と共に、雨のように銃弾が降り注いでくる。

( ▼w▼)「ぐッ!」
両腕で上半身を庇いながら、襲い来る銃弾をガードした。
変身しているため、この程度の攻撃ではすぐには致命傷にはならない。

だが――どうする。
こいつらは怪人じゃない。
単なる人間だ。

恐らくこの警察署の人間はこいつらが殺したのだろう。
それを、許すことは出来ない。
だけど――
俺の判断で、人間を死刑にする権利なんてあるのか?

殺さずに済むのなら、それで――

戦闘員「ロケットランチャーだ!
     ロケットランチャーを使え!!」
まずい。
いくら何でも、あんなのを喰らったら――



16: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:36:14.30 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「何をやっている!!」
その声と共に、一迅の銀の風が戦闘員達に突っ込んだ。

戦闘員「な!? うわあああああ!!」
戦闘員「ぎゃあああああああ!!」
直後、ドス女の日本刀が戦闘員達を丸太のように輪切りにしていった。
紅い血飛沫と断末魔の悲鳴とが、周囲に飛び散る。

戦闘員「ひ、ひいいいいいいいい!!!」
仲間を皆殺しにされた戦闘員の生き残りが、恐慌状態でその場から逃げだそうとした。

イ从゚ ー゚ノi、「行かせぬ」
しかし、ドス女はそいつを逃がさない。
すぐさま追いつき、肩を掴んで強引に振り向かせると、
その喉笛に噛み付いた。

戦闘員「ぐぼッ……! がばああああああああ!!」
首を食い破られ、ヒューヒューと喉に開いた穴から血と空気を漏らしながら、戦闘員は絶命した。

ただの一分もしないうちに――
十数人居た戦闘員はただの肉塊へと変わり果ててしまっていた。



18: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:37:04.21 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「……何故来た!
       来るなと言っておいたじゃろうが!!」
ドス女が俺の目の前まで近づき、必死の形相で睨んでくる。

( ▼w▼)「な……で…………だ……」
それには答えず、俺はドス女に問いかけの言葉を発した。
( ▼w▼)「何で殺したんだ! あいつらは人間だぞ!?」
何でだ。
怪人でもなんでもない人間を、どうしてそんなにあっさりと殺せるんだ!?

イ从゚ ー゚ノi、「何で殺した、じゃと!?
       お主、寝惚けておるのか!?
       今この場で、奴らを殺す以外に何の方法がある!!」
ドス女が俺の声に負けないくらいの大声で叫んだ。

イ从゚ ー゚ノi、「いいか!? 奴らは殺した!
       ここの、何の罪も無い人間達をな!
       その瞬間、奴らは自分の命も投げ出した!
       誰かを殺すということは、誰かに殺されても仕方がないということじゃ!
       人間だの怪人だの化物だの、そんなことは最早関係無い!
       殺した以上、殺されなければならない!!
       それとも何か!? 人を殺さないことだけがお主の言う正義か!?」
( ▼w▼)「でも! だけど!!」
それでも、人を殺すのはいけないことじゃないのか!?
そんな理屈――ここでは通用しないというのか!?



19: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:38:50.39 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「……人殺しになるのが怖いか」
声のトーンを落とし、静かにドス女は言った。
俺は何も答えず、黙ったままドス女を見つめる。

イ从゚ ー゚ノi、「じゃがな、怪人達と闘うというのはこういうことじゃぞ?
       今まで儂らが闘ってきた怪人――あれも、元々は人間じゃ」
( ▼w▼)「な……!?」
何、だって――?
怪人も、元々は人間!?

いや、待て。
そういえば、以前ドス女は言っていた。
人外の存在の力を人為的に移植して、怪人や戦闘員を製造している、と。

俺はそんなことも知らずに、
否、そんなことにも気付かないまま、今まで闘っていたのか?



20: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:39:19.23 ID:X6PFfjlv0
  
( ▼w▼)「そ、んな……」
そんな――
それじゃあ、前俺が殺した蝙蝠男も――

イ从゚ ー゚ノi、「……言うたじゃろう。
       地獄を見る、と。 そんな覚悟も無いままここに来て、お主はどうするつもりだったのじゃ」
憐れむような目で、ドス女が俺に言った。

人を、殺していた――
俺は、人を――



24: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:43:39.57 ID:X6PFfjlv0
  



(,,,"Д゚)「な……んだ。 騒がし……と思ったら…… やっぱ……お前か……」
突然の声に、俺とドス女は反射的に声の方向へと体を向けた。

( ▼w▼)「ギコ……!」
そこにいたのは、ギコだった。
しかし、その声にかつての力強さは無い。
片目は潰れ、全身を血に染めて――
生きているのが不思議なくらいの、瀕死の有様だった。

(,,,"Д゚)「そ……の声、正義のヒー……ローの兄ちゃんか……
     コス……プレの服……変えたのか……?」
ギコが、壁に背中をもたれかけた状態でずるずると崩れ落ちた。

( ▼w▼)「おい、大丈夫か!?」
駆け寄り、肩を掴んで呼びかける。
ギコの体温がみるみる失われていくのが、両手越しに感じることが出来た。
(,,,"Д゚)「ヘマ……やらかしちまった……
     畜生……何だってんだ…… あの、連中……」
途絶え途絶えのか細い声で、ギコが呻くように言う。



25: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:46:34.45 ID:X6PFfjlv0
  
(,,,"Д゚)「おう…… 正義のヒーロー……」
と、ギコがこちらに顔を向け、縋るような目で見据えてきた。

(,,,"Д゚)「どうやら……俺は……ここまでだ……
     何も……分かんねえまま……死ぬのにゃ腹立つが……
     もう……動けそうにねえ……」
( ▼w▼)「ふざけるな! どこまでも追いかけるんじゃなかったのかよ!
       こんなとこで死んじゃ駄目だ!!」
肩を掴んだまま、必死に叫んだ。
しかし、ギコにはもう俺の声は殆ど届いてはいなかった。

(,,,"Д゚)「だから……よ…… 癪だが……こっから先は……任せるぜ……
     こんなことをする連中を…… 許しちゃいけねえ……
     悪党共を……みんなぶっ倒しちまってくれ……」
( ▼w▼)「何言ってるんだ!
       あんたは警察官だろ!?
       だったら自分の手で奴らを逮捕してみせろよ!!」
何度も、肩を揺さぶって意識を保たせようとする。
だけどもう、何をやっても悪足掻きにしか過ぎなかった。

(,,,"Д゚)「頼ん……だぜ……
     正義の……ヒーローさん、よ……」
違う。
俺は正義のヒーローなんかじゃない。
俺は――



26: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:47:53.15 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「分かった。 後は儂らに任せてゆっくり休め」
ドス女がギコに向けて、はっきりとそう言った。
ギコはそれを聞くと安心したように微笑んで、大きく一つ息を吐く。

(,,,"Д゚)「……あー…… 死にたく……ねーなあ……」
それが、ギコの最後の言葉だった。
それだけ呟くとギコはゆっくり目を閉じ、静かにその場に崩れ落ちる。

( ▼w▼)「ギ……コ……」
ギコはもう動かない。
二度と、生き返ったりはしない。

( ▼w▼)「う……うわああああああああああああああああああああああ!!」
何なんだ、一体。
何で、こうなった。
何で、ギコが死ななきゃならない。
他にも死ぬべき人間はいっぱい居る筈なのに、どうして――

考えても考えても、
答えは何一つ出てはこなかった。



27: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:51:43.20 ID:X6PFfjlv0
  



イ从゚ ー゚ノi、「……行くぞ、マスク仮面」
うなだれていた俺の腕を掴み、ドス女が言った。

イ从゚ ー゚ノi、「まだ、お主が来るまでの間に、あらかたの戦闘員は殺しておいたが、まだ残党が居るかもしれん。
       何より、まだ怪人級の敵を倒しておらぬ。
       いつまでも、ここにこうしておっては危険じゃ」
ドス女が腕を引っ張り、立ち上がらせようとする。
だが、俺にはもう闘うだけの意思も気力も残されてはいなかった。

( ▼w▼)「もう、沢山だ……」
イ从゚ ー゚ノi、「?」
( ▼w▼)「もう、沢山だ! 何だよこれは!? 何なんだよこれは!?
       人が死んで人が死んで人が死んで――
       人殺しなら、どっか別のところでやってくれ!!」
もう闘いたくなかった。
もう何もかもが嫌だった。

こんなことが、正義のヒーローの仕事だって!?
冗談じゃない。
こんな、人殺しが、正義のヒーローのやることだなんて――



30: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:55:25.20 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
ドス女が、俺の頬を平手で打った。

痛い。
変身して、人間以上の力を得ている筈なのに、
たまらなく、痛かった。

イ从゚ ー゚ノi、「甘ったれるな!
       いつまでもいじけてメソメソして、ギコから託された遺志を無駄にするつもりか!?」
( ▼w▼)「…………!」
イ从゚ ー゚ノi、「いいか! 過程はどうあれ、ギコは儂らに託した!
       己の意思を、己の信念を、己の人生を、己の持つ全てを!
       それを捨てることなど断じて許さん!!
       立て! マスク仮面!! いや、ドクオ!!
       立てぬならば、引きずってでも連れていくぞ!!」
俺は砕けそうなくらい奥歯を噛み締めた。
分かってる。
そんなことは、分かっているんだ。

だけど、俺はドス女みたいに強くはない。
そんなに簡単に割り切ることは出来ないんだ……!

イ从゚ ー゚ノi、「……もう一度だけ言うぞ。 立て」
( ▼w▼)「…………」
イ从゚ ー゚ノi、「そうか。 ならば望み通り引きずって連れて行って――」



31: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:55:56.29 ID:X6PFfjlv0
  
(・∀ ・)「なあんだ、まだ生き残りがいたのか」
通路の向こうから、聞き覚えのある邪悪な声がしてきた。

あれは――斉藤またんき、なのか?
甲殻類を思わせる装甲に身を包み、後ろには蠍のような先端に棘のついた尻尾の、異形の姿。
しかし、その顔と声は、紛れも無く斉藤のものだった。

イ从゚ ー゚ノi、「……何者じゃ」
日本刀を構えながら、ドス女が言った。

(・∀ ・)「俺は斉藤また……いや、怪人蠍男。
     人間を遥かに超越した存在さ」
斉藤が背中の尻尾をぶんぶん振り回しながら、ドス女に歩み寄る。

どういうことだ。
あいつは、普通の人間だった筈だ。
まさか――改造手術で怪人になったのか!?



32: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 18:56:44.45 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「……貴様がこの虐殺の首謀者か」
ドス女の体から怒りの闘気が立ち込める。
完全に、ブチギレた状態だった。

(・∀ ・)「そーだよー? いやー楽しかった楽しかった。
     あれ? ひょっとして、君が俺の手下達を殺しちゃったのかな?
     おかしいと思った。 いつの間にか皆死んじゃってるんだもん。
     ま、いいや」
斉藤がドス女まで後少しという距離まで近づき――

(・∀ ・)「お前の命で勘弁してやるからさああああああああああ!!」
斉藤の尻尾がドス女に襲い掛かる。
しかし、ドス女はそれを避けようともせず――

(・∀ ・)「…………えッ?」
気付いた時には、斉藤の尻尾は根元から斬り落とされていた。
緑色の体液が、傷口から溢れ出す。

(・∀ ・)「え? ええ〜〜〜〜〜〜!?」
信じられないといった形相で、斉藤が慌てふためいた声を上げる。

馬鹿な。
今の一瞬で、斬撃を放っていただって?
一体、どれ程の神業だというのか。



35: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 19:01:06.53 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「のろい。
       これで人間を遥かに超越した存在とは、笑わせる」
返す刀で、斉藤の右腕を斬り落とす。
あまりの剣速に、斉藤は斬られたことすら知覚できず、
腕が地面に落ちてからようやく何が起きたかを察して悲鳴を上げた。

(・∀ ・)「う、うわあああああああああああああああああ!!」
斉藤がこちらに向かって逃げ出してきた。
俺には目もくれず、ただその場から逃げ出そうとひた走る。

イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面!」
ドス女が俺に叫ぶ。
ドス女が何を言いたいのかは分かっていた。

奴を殺せと。

だけど、だけど俺は……!



36: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 19:01:29.14 ID:X6PFfjlv0
  
( ▼w▼)「…………!」
斉藤が俺の横を通り過ぎるのを、俺は黙って見過ごした。

イ从゚ ー゚ノi、「馬鹿者!! 何を考えている!!」
ドス女が怒声を発する。

駄目だ。
殺せない。

確かに、斉藤は嫌な奴だ。
高校生の頃、何度奴を殺そうと思ったかは分からない。
だけど、今は怪人の姿をしていても、奴は人間なんだ。
そいつを、殺すなんて……!

「き、きゃあああああああああああ!!」
その時、俺達のものとは別の悲鳴が響き渡った。
見ると、斉藤が逃げている方向に、婦人警官がへたりこんでいる。

なんてことだ。
まだ、逃げ遅れた人がいたのか……!

(・∀ ・)「どけええええええええええええええええ!!」
斉藤が、婦人警官を蹴散らそうと残された左腕を伸ばす。

( ▼w▼)「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺は全力で駆け出して――



37: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 19:02:22.39 ID:X6PFfjlv0
  



(・∀ ・)「ぐはッ……! かッ……!」
斉藤の心臓を、俺の右腕が貫いていた。
滴る緑の体液。
その生温さが、突き刺した右腕から伝わってくる。

( ▼w▼)「――ッ、ハアッ、ハアッ……!」
俺はゆっくりと右腕を引き抜いた。
斉藤は二、三歩よろよろと前に進むと、ゆるゆるとこちらに体を向ける。

(・∀ ・)「て……め…………」
それだけ呻くと、斉藤は前のめりに地面に倒れて息絶えた。

殺した。
人を殺した。
人を、殺した。

「き――きゃあああああああああああああああ!!」
婦人警官が叫び声を挙げながら逃げていく。
当然だ。
だって、目の前にいるのは人殺しの化物なんだもの。
逃げて、当然だ。



39: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 19:02:56.72 ID:X6PFfjlv0
  



('A`)「…………」
変身を解き、元の姿に戻った。
これ以上、一分一秒たりとも変身していたくなかった。
さっきまでの姿が、とても汚いものに思えたから。

('A`)「う……あ…………」
寒くもないのに体が震えた。
震えが、止まらない。

人殺し。
俺は、人殺しなのか。

嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……!

俺が人殺し。
俺が――



40: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 19:03:16.10 ID:X6PFfjlv0
  
イ从゚ ー゚ノi、「……マスク仮面」
ドス女が後ろから声をかけてきた。

イ从゚ ー゚ノi、「……お主が、気に病む必要は無い。
       あのまま放っておけば、あの女は死んでいた。
       お主のやったことは、正しいことじゃ」
('A`)「正しい、だって――?」
ドス女は俺を慰めようとしていることは分かっていた。
だけど、その言葉は単なる気休めにしか聞こえなかった。

('A`)「ふざけるな! 正しい訳なんてあるか!
   気にしないなんて出来るか!
   俺は、俺は――」
駄目だ。
それ以上言ってはいけない。
だけど、俺はその言葉を止めることは出来なかった。



41: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 19:03:47.78 ID:X6PFfjlv0
  
('A`)「俺は、お前のみたいな化物とは違うんだ!!」
イ从゚ ー゚ノi、「――――!」
言ってから後悔したが、もう遅かった。

ドス女は雷に打たれたかのように体を硬直させ、
哀しそうな顔で俺を見る。

何でこんなことを言ってしまったんだろう。
本当は、もっと言わなくちゃいけないことがあった筈なのに。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドス女は何も言い返さず、ただ黙ったまま俯く。
それが、俺の心を幾重にも苛んでいた。


〜第二十話『正義の犠牲と代償』 終
 次回、番外編『『魔弾』VS『銀獣』、真夏の夜の夢』乞うご期待!〜



43: 練習生(チリ) :2007/04/21(土) 19:04:56.19 ID:X6PFfjlv0
  
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