ドクオは正義のヒーローになれないようです

167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:11:16.41 ID:ZKkdwAut0
  
第二十四話『二人ぼっちの夜』

〜前回までのあらすじ〜

( ゚д゚ )「ハーイ、全国のリスナーの諸君。
    今週もまた『こっちミンナのラジオタイム』の時間がやってきました。
    皆聞いてるかーい?
    それじゃ今週は、まずこの曲を聴いてもらおう。
    藤井隆で、『ナンダカンダ』!」

「ナンダカンダ叫んだって〜」

( ゚д゚ )「オーケイ、まさに黒歴史に相応しい微妙なナンバーでした。
    皆、もし藤井隆にあっても決してこの曲のことについて触れちゃ駄目だよ。
    抹殺されてしまうからね。
    それじゃ次はお待ちかねのこのコーナー、ミンナの人生相談だ。
    一通目のお便りは、埼玉県在住ペンネームシャキン&フサさん」



168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:11:52.98 ID:ZKkdwAut0
  
(`・ω・´)ミ,,゚Д゚彡「最近出番が少なくて、皆に忘れられているんじゃないか不安です。
           もっと露出を増やしたいのですが、どうすればいいでしょうか?」

( ゚д゚ )「フムフム、こいつは厄介な問題だね。
    出番が少ないから人気が無い。 人気が無いから更に出番が少なくなる。
    これぞ負のスパイラルってやつだね。
    だがあまり気にしてはいけない。
    出番が少ないってことは、逆に言えば登場するだけで新鮮味が出てくるってことだ。
    だから今は我慢して、いつか作品に登場する日を待っていればいいと思うぜ。
    え? いつ作品に出られるかどうかも分からないって?
    そーだなー。 じゃあ、プロデューサーに体か金を捧げればいいと思うよ。
    それじゃあ次のお便りだ!
    徳島県在住の、ペンネームでぃさん!」



170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:12:15.27 ID:ZKkdwAut0
  
(#゚;;-゚)「事業に失敗して闇金に莫大な借金を抱えて困っています。
    妻と娘はソープに入れられ、
    私は生命保険の申し込み書にハンコを押しさせられたのですがどうすればいいでしょうか?」

( ゚д゚ )「……………」

ディレクター「…………」

( ゚д゚ )「オーケイ次が最後のお便りだ。
    東京都在住のペンネームしぃさん!」

(*゚ー゚)「『('A`)ドクオは正義のヒーローになれないようです』第二十二話で、
    ロマネスクが『弱者をいたぶるのは悪ではない』みたいなこと言ってましたけど、
    第十四話の前回までのあらすじでは渡辺おばあさんから荷物を強奪しようとしt」

( ゚д゚ )「おおっと、もう時間みたいだ!
    それじゃ皆、また来週も聴いてくれよな! シーユー!」



171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:13:17.59 ID:ZKkdwAut0
  

       *  以下、何事も無かったかのように再開  *

ドス女と二人、帰り道を歩いていた。
時計の針はもう深夜2時。
草木も眠る丑三つ刻。

('A`)「…………」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
お互い何の言葉も交わさない。
何を言っていいのか分からない。

今さら、俺がこいつに何を言えるというのだろう。
あれだけ、傷つけるようなことを言っておいて。

それでも……
それでも、これだけは言っておかなくちゃいけない。

('A`)「あの……」
イ从゚ ー゚ノi、「うん?」
('A`)「……この前は、ごめん」
こんな言葉では少しも足りないけれど。
何の償いにも、なりはしないけれど。

イ从゚ ー゚ノi、「……お主が謝る必要などない。
      それに、別にもう気にしてなどおらん」
嘘だ。
気にしていないのなら、どうでもいいことだったのなら、
あの時、あんな表情などしていない。
今だって――そうだ。



172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:13:59.89 ID:ZKkdwAut0
  
イ从゚ ー゚ノi、「それに、あの時は儂にも責任があった。
      お主のことも考えず、自分の考えだけ押し付けて――
      化物と呼ばれても、しょうがない」
ドス女はそう言って自分を嘲るように笑う。

('A`)「違う!」
違う。
それは、違う。

('A`)「お前は――化物なんかじゃない」
絶対に、化物なんかじゃ、ない。

イ从゚ ー゚ノi、「……化物じゃよ」
ドス女はふっと遠くを見つめるように目を細め、
イ从゚ ー゚ノi、「老いず、朽ちず、何百年も生き続け、並外れた力を持ち、異形に変身し――
      理から外れた法の下動く。
      これを、化物と言わずして、何と言う」
そう、哀しそうに言った。



173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:14:59.84 ID:ZKkdwAut0
  
('A`)「違う! そんなんじゃない!
   寿命だとか不老不死だとか再生能力だとか怪力だとか姿形だとか――
   そんなのが、化物ということなんかじゃない!
   化物ってのは、本当の化物ってのは――」
化物を、化物足らしめるのは、
('A`)「――気持ちだ……!
   嬉しいとか楽しいとか悲しいとか悔しいとか憎いとか優しいとか――
   そんな当たり前の気持ちを平然と踏みにじることが出来るのが、化物なんだ。
   だから、お前は化物なんかじゃない!
   だって――」
だって、ドス女は、助けてくれたじゃないか。
何度も――
俺を、助けてくれたじゃないか。

俺には、ドス女が本当は考えていたのか知ることは出来ない。
だけど、考えることは出来る。

俺を助けてくれた時――
笑い話をしてる時――
俺が、ドス女を化物と言ってしまった時――

ドス女が、何を想い、考えていたのかを。



174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:15:48.37 ID:ZKkdwAut0
  
('A`)「――だって、お前には、色んなことを感じる心が有るじゃないか……!」
イ从゚ ー゚ノi、「――――!」
ドス女は一瞬泣きそうな風に顔を歪め――
そして、すぐにもとの飄々とした表情に戻った。

強がってるのだろう。
俺は、そう感じていた。

イ从゚ ー゚ノi、「心、か……」
ドス女はぽつりと呟いた。

イ从゚ ー゚ノi、「儂にも、まだそんなものがあるのじゃろうかな」
('A`)「あるさ、絶対」
そう、絶対に。

イ从゚ ー゚ノi、「……そうか」
ドス女はそう言って、少しだけ微笑んだ。

……やっぱり、ドス女はこうして笑っているほうが良く似合う。
いや、ドス女だけじゃない。
誰だって、笑顔が一番似合うに決まってるんだ。
それを護るのが、きっと、正義のヒーローの務めなのだろう。



176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:16:23.45 ID:ZKkdwAut0
  



イ从゚ ー゚ノi、「…………」
と、ドス女が急に足を止めた。
('A`)「どうした、何かあったのか?」
俺はドス女に尋ね、周囲を見回した。
すると、そこには――

('A`)「ここは……」
忘れる筈もない。
ここは、俺とドス女が初めて出会った廃寺だった。

あれから――
そんなに時間は経っていない筈なのに、
随分昔の事の様に感じられる。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
と、ドス女は何も言わずすたすたと寺の中に入って行った。

('A`)「お、おい、待てよ!」
慌てて後を追いかけたが、ドス女の姿は既にどこかへと消えてしまっていた。

('A`)「ドス女……?」
まさか。
まさか、あいつ、俺を置いて――



177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:16:44.12 ID:ZKkdwAut0
  
「主は誰じゃ?」
廃寺の奥から、ドス女の声がした。

あいつ、いきなり何を言って――
……そうか、これは。

('A`)「だ、誰だ!?」
わざと怯えたような声で、俺はすぐ近くにいるであろうドス女に向けて言った。

「先に質問したのは儂の方じゃぞ。 もう一度聞く。 主は何者じゃ?」
('A`)「お、俺は――」
そう、俺は。
俺の名前は――

('A`)「俺は、正義のヒーロー『マスク仮面』だ!!」
本当は、正義のヒーローなんかじゃないけれど。
子供の頃望んでいた姿とは、全然違うけれど。
それでも、俺はそう答えた。

イ从゚ ー゚ノi、「……正義のヒーロー、か……
      そうか…… そうじゃったな」
ドス女が廃寺の陰からゆっくりと姿を現した。



178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:18:04.66 ID:ZKkdwAut0
  
イ从゚ ー゚ノi、「……まだ、その正義のヒーローを続けるつもりか?」
こちらに近づきながら、ドス女が尋ねる。

('A`)「……多分、な。
   ロマネスクにも言われたよ。
   犠牲を出した以上、お前は正義のヒーローであり続けなければいけない、って」
それが、俺に科せられた罪であり、罰だから。

イ从゚ ー゚ノi、「……辛くないのか?」
('A`)「…………」
俺は何も答えなかった。

辛くない、と言えば嘘になる。
どころか――辛くない訳なんてない。

だけど――
それでも俺は、闘い続けなければならない。
俺が信じたものの為に。
その為に、犠牲にしてきたものの為に。

例え痛みや苦しみに苛まれても――
俺は、もうこの道から逃げてはいけない。

だから、今、何も答えない。
何か言えば、弱音になってしまうから。
懺悔になってしまうから。
それは、犠牲にしてしまったものに対する冒涜だから。



179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:18:25.58 ID:ZKkdwAut0
  
イ从゚ ー゚ノi、「……分かった。 もう、これ以上は何も聞くまい」
俺の沈黙の意味を察したのか、ドス女はそれ以上追及はしなかった。

イ从゚ ー゚ノi、「そろそろ部屋まで帰ろう。 お主も、色々あって疲れたじゃろう」
('A`)「まだ、一緒にいてくれるのか……!?」
あんなことを言ってしまったのに。

化物だなんて――
あんな酷いことを、言ってしまったのに。

イ从゚ ー゚ノi、「いたしかたあるまい。 まだ怪人騒動は何も解決しておらぬし――
      それに、お主を放っておくわけにもいかん。
      あと――お主がこれから先、どう生きていくのか興味もある」
ドス女はそう優しく微笑んで、
イ从゚ ー゚ノi、「……じゃから、辛いことがあっても、もう一人で抱え込むな。
      お主の苦しみを代わりに背負ってやることは出来ぬかもしれんが――
      傍で、支えてやるくらいは出来る」
……その言葉だけで、俺は救われた気がした。



180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:18:50.45 ID:ZKkdwAut0
  
俺は、もう一人ぼっちじゃない。
こんな俺を、傍で支えてくれる者がいる。
もう、一人ぼっちなんかじゃなかった。

――だけど、それだけじゃいけない。
このままじゃいけない。

早く、強くなって――
もっともっと強くなって――
俺も、ドス女を支えてやれるようになりたかった。

('A`)「ドス女……」
イ从゚ ー゚ノi、「うん?」
('A`)「……ありがとう」
夜空にはぽっかりと穴のような満月。
その光が、静かに俺とドス女を照らしていた。


〜第二十四話『二人ぼっちの夜』 終
 次回、『デッドヒート、クー&ショボンVS怪人チーター男!』乞うご期待!〜



181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/04/30(月) 15:19:12.71 ID:ZKkdwAut0
  
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