ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:47:01.41 ID:lknAShx70
  
第二十九話『嵐の前の静けさ』

〜まだネタ切れ中〜



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:48:19.26 ID:lknAShx70
  
11月26日 〜トラギコ〜

(=゚д゚)「ふざけんな! 何で金を寄越さないラギ!?」
トラギコが今にも殴りかかりそうな勢いでセントジョーンズに掴み掛かった。

(’e’)「ふざけるも何も、当然のことだろう?
   私はお前に怪人毒男を連れて帰れ、と命じたのだ。
   にもかかわらず、お前は連れて帰らなかった。
   任務もこなせない者に報酬を払うほど、我々の組織は裕福ではないよ」
落ち着き払った様子で、セントジョーンズがトラギコの腕を払う。

(=゚д゚)「だからそれは、杉浦ロマネスクとかいう化物が……!」
(’e’)「言い訳は聞きたくないよ。
   いかなる障害が立ち塞がろうと、
   それを焼き払うだけの力を君には与えた筈だ。
   それが出来なかったということは、君の努力が足りなかったということだ」
(=゚д゚)「てめえ……!」
トラギコの右手に炎が宿る。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:49:36.21 ID:lknAShx70
  
(’e’)「私を殺すかね?
   別に構わんが、万一君が勝ったとして、
   他に君が必要なだけの金を与えてくれる所があるのかな?
   君には金が要るんだろう?」
(=゚д゚)「くッ……!」
トラギコが悔しげに歯を食いしばりながら、腕を下ろした。

(’e’)「分かってくれたみたいだな。
   それでは私は失礼させて貰うよ。
   次こそは、今回のような無様は晒さないことだ」
セントジョーンズがトラギコに一瞥もくれず自身の研究室に引き上げていく。

(=゚д゚)「…………!」
トラギコは、黙ったままセントジョーンズの背中を睨んでいた。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:50:09.60 ID:lknAShx70
  
11月28日 〜ドクオ〜

( ФωФ)「た、助けてくれ!!」
午後三時頃、俺とドス女が部屋に転がってテレビを見ていると、
物凄い形相でロマネスクが部屋に飛び込んできた。

('A`)「ど、どうしたんだ!?」
ただ事ではない雰囲気を感じ、ロマネスクに尋ねる。
しかし、ロマネスクはそれには答えず、
( ФωФ)「詳しく話している暇は無い!
     いいから、我輩をしばらくかくまってくれ!!」
あのロマネスクが、怯えている――!?

どういうことなんだ。
ここまでロマネスクを追い詰めるなんて、
一体どれ程強力な怪人が現れたというのだ。

イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
ドス女が危機を察知し、日本刀の柄に手をかける。

相手がどんな奴だろうが、やるしかない。
ロマネスクが逃げ出す以上、楽に勝てる相手ではないだろうが――
こいつには、トラ男から助けてもらった借りがある。

悪の帝王が正義のヒーローに助けを求めるというのも変な気はするが、
この際、それは考えないことにした。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:52:34.05 ID:lknAShx70
  
カツン、カツン。
何者かが、俺達の部屋に向かって近づいて来る。

( ФωФ)「ヒィッ!」
短く悲鳴をあげ、部屋の隅に隠れようとするロマネスク。

――来る。
ガチャリ、と部屋のノブが回される音。
一体、どんな怪人が――

从'ー'从「ごめん下さい」
――現れたのは、渡辺のおばあちゃんだった。

……どうして?
何であなたがここに?

イ从゚ ー゚ノi、「渡辺……?」
从'ー'从「突然お邪魔してごめんなさいね。
    ロマネスクさんがこちらの家に入っていくのが見えたものですから」
つかつかと、ロマネスクのもとに渡辺のおばあちゃんが歩み寄る。
手に、何かの入った紙袋を下げて。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:54:33.84 ID:lknAShx70
  
从'ー'从「さあさ、ロマネスクさん。
    この服を着てみて下さいな。
    サイズが合うかどうか分かりませんけど、一生懸命作ったんですよ」
言いながら、紙袋から上着のようなものを取り出す。

あれは――セーターか。
紺色の、なかなか暖かそうなセーターだが――
何より、胸元に大きく刺繍された可愛い豚さんのマークが目を引いた。

( ФωФ)「や、やめろ!
     宇宙大魔王たること我輩が、そんな服など着れるものか!!」
从'ー'从「まあそうおっしゃらずに。
    これから寒くなってきますから、これだときっと暖かいですよ」
有無を言わさず渡辺のおばあちゃんがロマネスクに詰め寄る。

( ФωФ)「や、やめろ! やめてくれ!!
     助けて、マスク仮面!!
     助け――」
渡辺のおばあちゃんに引きずられ、ロマネスクは俺の部屋から出て行った。

('A`)「…………」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
俺とドス女は、絶句したままその場に立ち尽くすのだった。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:56:30.28 ID:lknAShx70
  
11月29日 〜ドクオ〜

('A`)「ごっそさん」
イ从゚ ー゚ノi、「ごちそうさま」
近所のスーパーで買ってきた昼飯を平らげ、俺とドス女は同時に手を合わせた。

('A`)「じゃあ洗い物してくるわ。
   このコップもう片付けていいな?」
イ从゚ ー゚ノi、「ああ」
そう言って、俺がコップを持ち上げたとき、
手を滑らせてコップを床に落としてしまった。
乾いた破砕音と共に、ガラスのコップが割れる。

('A`)「っと、ぼんやりしちまった。
   ――っつ!」
ガラス片を拾おうとした時、うっかり破片の角で手を切ってしまった。
皮膚に赤い線が入り、そこから血が滲み出る。

イ从゚ ー゚ノi、「大丈夫か、マスク仮面?」
('A`)「ああ。 だいじょぶだいじょ――」
笑って答えようとした瞬間、俺はあることに気がついて凍りついた。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:57:18.29 ID:lknAShx70
  
('A`)「…………!」
血が、止まっている。

どころか――
傷口がもう塞がっている!?

馬鹿な。
いくら浅い傷とはいえ、こんなに早く治癒するわけがない。
これじゃ、まるで怪人――

('A`)「!!!」
そうか――
俺は、怪人に変身出来る能力を身に着けていたんだった。

ならば――
体だって、怪人のようにならない訳がない……!



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:57:54.84 ID:lknAShx70
  
('A`)「…………!」
形容し難い絶望感が俺を襲った。

俺は――
このまま、怪人に成り果ててしまうのか!?
嫌だ、そんなのは。

だけど――
だけど、こんなの、一体どうすれば――

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
視線に気がつき、ドス女の方を向くと、
ドス女は黙ったまま俺を見つめていた。
('A`)「ドスおん――」
俺はドス女に何か言おうとして――



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 22:58:28.48 ID:lknAShx70
  
('A`)「――――!」
言おうとして、言葉を詰まらせた。

見てしまったのだ。
その時の、ドス女の顔を。

困惑しているようでいて、心配しているようでいて――
どこか、薄く微笑んでいるその表情を。

俺はその顔を見て、言いようの無い恐怖に囚われた。

こんな顔をするドス女を――
俺は、知らなかった。
知りたくなかった。

イ从゚ ー゚ノi、「……そろそろ、お主の体を元に戻す方法も考えぬとな」
('A`)「…………」
イ从゚ ー゚ノi、「何、心配するな。
     何かしら、きっと方法がある筈じゃ」
ドス女は、もう先程までの顔をしてはいなかった。

だけど――
俺にはあの時の顔が、脳裏に焼きついて離れなかった。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:00:30.09 ID:lknAShx70
  
11月30日 〜銀〜

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
廃寺の屋根の上――
銀は膝を抱え、物思いに耽っていた。

――見られた。
あの時の、自分の顔を。

ドクオの体の異変に気がついた時――
その身を案じる一方、昏い喜びを感じてしまっていたのだ。

ドクオの体が人間とは別のモノに変化している。
それはつまり、もしかしたらその寿命も――

イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
銀はギリ、と歯軋りをした。

自分は何を考えているのだ。
永遠の孤独の苦しみは――
自分が一番良く分かっている筈ではないのか。

なのに――
なのに、その苦しみを、ドクオにも味わわせようというのか。
道連れに、しようとしうのか――!



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:01:47.93 ID:lknAShx70
  
あの時――
自分の顔は、きっと恐ろしいほど醜いものだっただろう。

きっとドクオはその顔を見て、自分を軽蔑した筈だ。
あの時の顔と同じように、いや、それ以上に醜い、自分の心に気がついて。

銀はぎゅっと強く膝を抱え込んだ。

何てことを考えてしまったのだ、自分は。
これじゃ、本当に化物――



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:02:19.56 ID:lknAShx70
  
「滑稽だな」
イ从゚ ー゚ノi、「!?」
突然の声に、銀は周囲を見回した。

気づくと――
自分の後ろに、一人の男が立っている。

イ从゚ ー゚ノi、「!!!」
銀は驚愕に目を見開いた。
馬鹿な。
何で、こいつがここに――

(’e’)「久し振りだね、『銀獣』……いや、銀」
イ从゚ ー゚ノi、「セントジョーンズ……!」
銀が腰の日本刀に手を当てる。

イ从゚ ー゚ノi、「何故お前が生きている!!
     お前は――」
(’e’)「60年前、自分が殺した筈だ、とでも言いたそうだね。
   見くびってもらっては困る。 私とて君と同じ妖――
   人間に比べて、相当死ににくいのは周知の事実だろう?」
おどけるように、セントジョーンズが言って見せた。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:03:01.40 ID:lknAShx70
  
イ从゚ ー゚ノi、「貴様と一緒にするな! この妖の面汚しが!!
     儂は――」
(’e’)「私とは違う、かい? 確かにそうだ。
   君は私とは――いや、他の妖とは根本的に違うからね。
   その滑稽なところが、何よりね」
セントジョーンズは嘲笑するような目で銀を見据えた。

(’e’)「化物が人間と同じ格好をして、人間の考え方をして、
   必死に人間の振りをしようとしている。
   ――滑稽だ。 実に、滑稽だ。
   そんなことをしても無駄だと、まだ分からないのか?」
セントジョーンズが大げさな身振り手振りをしながら言った。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:03:38.97 ID:lknAShx70
  
イ从゚ ー゚ノi、「御託はもういい――
     殺す前に聞かせろ。 これまでの怪人騒動、貴様が裏で手を引いていたのか?」
銀が日本刀を抜き、セントジョーンズに向けて構えた。

(’e’)「その通り。 どうだい、私の怪人達は。
   なかなか良い出来だっただろう。
   60年前、神威師団で研究していた時は、
   後一歩のところで君に邪魔されてしまったが――
   今回はじっくりと、腰を据えて実験が出来た」
セントジョーンズが誇らしげに告げる。

(’e’)「それに――感謝して欲しいものだね。
   偶然とはいえ――私の実験によって、
   君が現在御執心の、あの青年は君と同じ化物になれたんだから」
イ从゚ ー゚ノi、「セントジョオオオオオオォォォォォォォンズ!!!!!」
叫びながら、銀はセントジョーンズに斬りかかる。
一瞬で間合いを詰め――
刀身を閃かせたが、既にその場にセントジョーンズはいなかった。

(’e’)「今日は挨拶だけのつもりでここに来た。
   まだ君とは闘いたくないからね。
   ……ま、そのうち再び会いに来させてもらうよ」
どこかからセントジョーンズの声だけが聞こえ――
やがて、その気配も完全に消え失せる。
その場に、銀だけが取り残される。

イ从゚ ー゚ノi、「がああああああああああああああああッッ!!」
銀の咆哮だけが、その場に響き渡っていった。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:04:17.60 ID:lknAShx70
  
12月1日 〜トラギコ〜

(=゚д゚)「…………」
VIP大学付属病院の一室――
トラギコはその中のベッドで横たわる少女を見つめていた。

静かに眠ったまま、決して目を覚まそうとしない少女――
彼女は、トラギコの唯一の肉親、彼の姉であった。

数年前――
詳しい病名難しくて忘れてしまったが、
100万人に一人とかいう難病にかかり、それっきり彼女は目を覚ましていない。

そして――
その命を繋ぐのには、莫大な金が必要だった。
まともな仕事では、決して追いつかない程の。

だから――
彼はその手を悪に染め、ひたすらに金を求めた。

怪人改造手術。
その、セントジョーンズという狂人が生み出した悪魔の技術に縋り付いてでも。
彼にとっては、姉だけが自分の全てだった。

(=゚д゚)「…………」
トラギコは、黙ったまま病室を後にした。

次こそは、絶対にしくじるわけにはいかなかった。
そう、自分には金がいる。
例え、間違った道を歩むことになるのだとしても。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:05:02.45 ID:lknAShx70
  
12月2日 〜ドクオ〜

今日も猟奇殺人死体が発見されたというニュースがあった。
これでもう何人目なのだろう。

ニュースキャスターももうそれほど興奮していない様子で、
淡々とニュースを読み上げている。
みんな、この異常な状況に慣れてしまったのだ。

12月3日 〜ドクオ〜

今日は怪人兎男と兎女と闘った。
「しけいはんいここまで」
とか言っていたが、どういう意味だったのだろう……?

12月4日

テレビを見ていたら、
豚のマークを胸につけた変態が、
暴漢に襲われた女性を助けたというニュースが流れていた。

……ご愁傷様



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:05:38.26 ID:lknAShx70
  
12月5日

深夜、いきなり電波がジャックされ、
歯車王とかいう怪人が宣戦布告をしていた。

ドス女が以前言っていた神威師団――
それが、今になって復活するなんて。
こいつらが、今までの事件の黒幕だったのか。

そういえば――
あれから、ドス女の様子がどこかおかしい。

だけど――
どう声をかけていいのか分からない。

いや、正直な話、俺はどこかでドス女を避けようとしていた。
このままじゃ駄目なのは分かっているのに……

12月6日 〜ドクオ〜

結局昨日の事件はテロリストが東京タワーをジャックしたということらしかった。
電波ジャックをした犯人は逮捕されたらしいが――
恐らく、JOWが動いたのだろう。

JOW……
あいつらは、この事態にどう対処するのだろうか?



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:07:15.57 ID:lknAShx70
  
12月7日 〜ドクオ〜

今日もいつもと変わらない一日だった。
世間ではあんなに人が死んでいるというのに――
心のどこかで、他人事といった風に思ってしまう。

俺でさえそうなのだから、
一般人達はなおさらなのだろう。

このままこんな日が続けば――
そう思うが、恐らく無駄なのだろう。

そう。
嵐の直前は、いつだって静かなのだから。


〜第二十九話『嵐の前の静けさ』 終
 次回、『緊急事態発生、原子力発電所での攻防!』乞うご期待!〜



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/08(火) 23:08:05.47 ID:lknAShx70
  
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太陽

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