ドクオは正義のヒーローになれないようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:22:47.25 ID:v5pFHEDn0
〜前回までのあらすじ〜

舞台はアメリカ。
ゴールドラッシュの波に乗って様々な欲望、暴力が横行する世界。

増え続ける悪党に対応出来なくなったアメリカ政府は、
賞金首制度というものを制定した。

警官でなくとも、賞金のかかった悪党を捕らえてくれば、
それに応じた金を支払うという制度だ。

これにより、新たに賞金稼ぎという生業が生まれ、
彼ら賞金稼ぎと、賞金首達の血で血を洗う闘いが繰り広げられることになった。

( ´_ゝ`)「なあ、知ってるか? 最近話題の賞金稼ぎの噂を。
     何でもそいつ、銃はおろかナイフの一本すら身につけてないって話だぜ」
(´<_` )「何だって!? 丸腰でどうやって渡り合うってんだ?
     そいつはボクシングのチャンピオンか何かなのか?」
( ´_ゝ`)「いや……
     それがどうも、その賞金稼ぎとやりあった連中は、
     撲殺なんかじゃなく、全員射殺されているらしいんだ」
(´<_` )「!?」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:24:15.06 ID:v5pFHEDn0
銃弾が全てを支配する時代、
そんな時代に、一丁の銃も持ち歩かず、
賞金首を駆り続ける男がいた!
その名もジョルジュ・O・ビッグバスト。
武器を何も持たない。
故に人は彼を、ジョルジュ・ザ・ノーアームと呼ぶ!

( ゚∀゚) 「よし、今度の獲物はこいつにするか」
ジョルジュが新たに標的に選んだのは、
ガトリングガンの腕を持ち、
300人もの人間を殺害した規格外の殺人鬼、わかってます!
賞金額50万$、生死問わず(デッドオアアライヴ)の超悪党だ!

(・∀ ・)「お前がわかってますさんを狙ってる賞金稼ぎか?」
襲い来るわかってますの手下達!
銃を持たぬジョルジュは、如何にして彼らと闘うのか!?

( ゚∀゚) 「抜いてみな。
    但しお前がその引き金を引くより速く、
    俺の弾は手前の眉間を撃ち抜くぜ」
交錯する駆け引きと銃弾!
果たして、銃を使わず相手を射殺するジョルジュの闘い方の正体とは!?



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:25:38.17 ID:v5pFHEDn0
( <●><●>)「このガトリングガンの弾幕に適う奴などいないんです!!」
( ゚∀゚) 「教えてやるよ……
    そんなごつい武器なんか使わなくても、
    石ころ一つで人間は殺せるって事をな!!」
荒野の果て、ジョルジュとわかってますが激突する!
果たして生き残るのはどっちだ!!

( ゚∀゚) 「銃を持たないからって、不殺主義ってわけじゃねえんだぜ?」

口笛と銃声の西部劇!
荒野のジョルジュ、近日放映開始!!



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:26:23.57 ID:v5pFHEDn0


        *  以下、何事も無かったかのように再開  *


( ▼w▼)「…………」
俺とドス女は、原子力発電所の中に潜入していた。
トラックに隠れて発電所まで接近すれば、後は思いのほかすんなりといった。

ここまでに来る途中、何人もの一般人らしき銃殺死体を見つけた。
恐らく、ここの職員だった人達だろう。

しかし――
問題は、ここからだ。
ここから、俺はどう闘っていけばいいのだろう。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドス女が無言でこちらを見る。

言葉は発さないが、目で訴えてきている。
俺がどうするのかを。

大きな犠牲を出す前に、小さな犠牲に目を瞑るのか。
それとも、少ない命の為に大勢を危険に晒すのかを。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:28:25.16 ID:v5pFHEDn0
「人の命は地球より重い」
「全ての人間には生きる権利がある」
学校や親やテレビから、何度も聞かされた言葉だ。

命に、優劣は無い。
俺も、そう信じてきた。

少なくとも、個人に命の重い軽いを判断する権利などないと、
そう信じてきた。

だけど――
そんな綺麗事だけでは、世界は動いていない。

人間の命が、紙切れに過ぎない札束より、
一発の銃弾より、
軽くなることなんてこの世にはざらにある。

命に優劣は無くとも、優先順位はある。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:29:16.22 ID:v5pFHEDn0
俺も、知らず知らずのうちに優先順位をつけてきた。

例えば――
俺の大切な人が殺されそうになったら、
俺は迷わず殺そうとしている奴を殺す。
躊躇なく、後悔せず、殺す。

だけど――
俺とは何の関わりも無い人を守る為に、
誰かを殺さなければならなくなった時、
そんな時は、どうすればいいんだろう。

誰も、こんな問題に答えてはくれない。

イ从゚ ー゚ノi、「……どうするのじゃ?」
足を止め、ドス女が訊ねてきた。

どうする。
殺すのか。
殺さないのか。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:30:58.76 ID:v5pFHEDn0
( ▼w▼)「……毒ガスは、使わない」
さんざん迷った末、俺はそう答えた。

そう、毒ガスを使うわけにはいかない。
もし使えば、まだ生きている人達まで犠牲にすることになる。
助かるかもしれない命を見捨てるなんて、俺には出来ない……!

イ从゚ ー゚ノi、「・・・・・・そうか」
うつむきがちの顔で、ドス女が言った。

イ从゚ ー゚ノi、「ならばもう何も言うまい。
    じゃが、その選択を選んだ以上、ここから先一切の失敗は許されん。
    それだけは、覚悟しておけ」
毒ガスを使わない以上、
原子力発電所を爆破するなり何なりの方法で、
付近一帯に放射能を撒き散らされる危険性は飛躍的に高くなる。

そうなれば、数え切れない程の犠牲を出してしまう事になり、
全てが終わりだ。

それを防ぐ方法はただ一つ。
相手がこちらに気づく前に、全ての敵を始末する。
それしかない。

成功率は低いが、これに賭けるしか――



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:33:12.17 ID:v5pFHEDn0
「何だ、お前達は!!」
突然、通路の向こうから大声がかけられた。

あれは――戦闘員!
しまった、見つかったか!!

イ从゚ ー゚ノi、「チィッ! やるぞ、マスク仮面!!」
ドス女が身を翻し、猛スピードで戦闘員達に斬りかかる。
俺もそれに続き、戦闘員達を撲殺していった。

手に残る人を殺す感触。
しかし、今はそんな事を気にしている暇は無い……!

「撃て! 撃てええええええええええええ!!!」
連続して響く銃声。
まずい、この音で、他の奴らにも気づかれてしまう!

「どうした! 何があった!!」
「こっちから音がしたぞ!!」
ぞろぞろと、こちらに向かって戦闘員達が集まってくる音が聞こえてくる。
毒ガスを使わずにこの事態を解決する、という当初の目論見は、
最早完全に失敗と言うしかなかった。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:34:51.08 ID:v5pFHEDn0
「すぐにシナ男様に連絡を入れろ!!」
「構わん! 爆破装置を起動しろ!
 最悪、ここだけは爆破しろとの命令だ!!」

ここを爆破、だって――!
冗談じゃない。
そんなことなどさせるものか!

イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面!!」
ドス女が叫ぶ。

分かってる。
爆破を、何としても止めなければならない。

だけど――
だけど、どうすればいいっていうんだ!

どこに敵がいるのか、どこに爆弾が仕掛けられているのか分からない。
そんな状態で、毒ガスを使わずに、どうやって止める手段があるというんだ……!

俺の脳裏に、大切な人達の姿がよぎる。
死んでしまった両親と、渡辺のおばあちゃんと、ロマネスクと、
そして……ドス女と。

もしこいつらが誰かに殺されそうになったら、
俺は迷わずそいつを殺す。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:36:15.25 ID:v5pFHEDn0
だけど……
大切な人なんて、誰にだっているんだ。

そう、誰にだって。
俺にだって、他の人にだって、恐らく、怪人達にだって。

この原子力発電所が爆破されるようなことになれば、
どこかの誰かの大切な人達が大勢死んでしまう。

だけど――
この発電所の中で、まだ生きているかもしれない人だって、
誰か大切な人がいて、誰かの大切な人なんだ。
それを、殺すことなんて……!



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:38:13.41 ID:v5pFHEDn0


( ФωФ)「己の信じた正義の為に、何かを犠牲にしたのなら、
       何があっても、最後までその正義を貫かねばならん。
       犠牲が無駄ではなかったことを、証明し続けなければならん。
       犠牲にした以上のものを、救わなければならん。
       例え、自分で自分を許せなくなっても。
       それが、正義のヒーローの義務だ」


ロマネスクは、かつてこう言った。

正義の為の犠牲――
だけど、正義とは一体何なんだ!?

多くを生かす為に、少ない者を殺すことが、正義なのか?

違う。
それは、絶対に違う。

だけど。
だけど、このまま何もせずに、
大きな犠牲を出してしまうことなんて――!

( ▼w▼)「お……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
俺は、体の内側に宿る不可視の死神を開放した。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:39:30.13 ID:v5pFHEDn0



数十秒後――
辺りには、死体の山が転がっていた。

全員が苦痛にのた打ち回り、
苦痛に歪めた顔のままで絶命している。

俺は、選んでしまった。
多くの方の命を。
少ない命を、犠牲にすることを。

( ▼w▼)「…………」
足が動かない。
どころか、自分の体が自分のものでないかのような錯覚すら覚える。

俺は、
俺は――

イ从゚ ー゚ノi、「……行くぞ、マスク仮面。
    こいつらはさっき、シナ男様がどうとか言っていた。
    まだ怪人が残っている可能性が高い。
    毒ガスでは、怪人は死んでいないじゃろうからな」
ドス女が俺の腕を掴んで引っ張る。
しかし、俺はその場から一歩も動くことが出来なかった。

イ从゚ ー゚ノi、「行くぞ」
ドス女は、無理矢理俺の体を引きずって連れて行った。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:40:54.33 ID:v5pFHEDn0



戦闘員達の死体が横たわる中を歩き回り、
俺達は発電所の中枢を目指していた。

怪人がいるとするならば――
恐らく、最も重要な場所。
発電所中心部。
一刻も早く、そこに辿り着かねばならない。

幸運にも、今までに毒ガスで死んだような一般人の死体を見つけることはなかった。
どれもが、戦闘員に銃殺されたような死体ばかり。
そのことが、俺の心を少しだけ軽くしていた。
どうか、このまま毒ガス死体が見つからないように。
そう、俺は祈っていた。

イ从゚ ー゚ノi、「ここも違うか……」
途中にあったドアを開けながら、中心部を探していく。
糞、こんな所で道に迷っている暇は無いってのに。

イ从゚ ー゚ノi、「こちらの扉は――」
ドス女が一つの扉を開けて――



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:42:20.11 ID:v5pFHEDn0
イ从゚ ー゚ノi、「ッッ!!!」
突然、ドス女が体を硬直させた。

何だ。
一体中に、何があるってんだ?

( ▼w▼)「どうしたんだ、ドス女?」
イ从゚ ー゚ノi、「駄目じゃ! 見てはならん! 見ては――」
ドス女が中を覗き込もうとする俺を必死に止めようとした。
しかし、もう既に俺は部屋の中を見てしまって――

( ▼w▼)「――――!」
俺は、見てしまった。
体のどこにも外傷のない、一般人の死体を。

その顔は、毒ガスで死んだ戦闘員達と同じように歪んでいて――



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:43:49.91 ID:v5pFHEDn0
( ▼w▼)「う、うわあああああああああああああああああ!!!!!」
殺した。
人を殺した。

何の罪も無い、無関係な人間を。
何も知らない人を、殺してしまっていた……!

( ▼w▼)「わあああああああああああああああああああああ!!!!!」
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺しt

イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面!!」
ドス女の平手が俺の右頬を打った。
その痛みが、俺の心を少しだけ現実に引き戻す。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:45:19.41 ID:v5pFHEDn0
( ▼w▼)「お、俺、俺は、無関係な、人を――」
イ从゚ ー゚ノi、「そんな事は分かっておる!
     じゃが、今ここで膝を折ってはならぬ!!」
ドス女が俺の目を見て叫ぶ。

( ▼w▼)「だ、だけ、ど、俺、お、俺、俺は……」
イ从゚ ー゚ノi、「そう、殺した! だからこそ、お前は今闘わなければならん!
     この馬鹿げた闘いを終わらせなければならん!
     殺した命を無駄にする気か!?」
分かっている。
そんなことは分かっているんだ。

だけど、俺は殺したんだ。
無関係な人を。
罪の無い人を。
仕方が無い、そんな理由で殺してしまったんだ……!



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:46:19.89 ID:v5pFHEDn0
( ▼w▼)「お、俺、俺、俺、おれは――」
護りたかった。
一人でも多くの人を。
助けたかった。

それなのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
どうしてこんなことをしてしまったんだろう。

決して償えない罪。
それが、俺の背中に押しつぶされそうな位重くのしかかっていた。


〜第三十一話『命の取捨選択』 終
 次回、『許されざる者』乞うご期待!〜



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:47:20.90 ID:v5pFHEDn0
この番組は

だっちゅ〜の
フォー!
ゲッツ!
チッチキチー
何でだろ〜

の提供でお送りしました。



戻る第三十二話