ドクオは正義のヒーローになれないようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:17:35.38 ID:NBsKCTfs0
- 第三十四話『参上、宇宙大魔王!』
〜前回までのあらすじ〜
∧_∧
('A` ) < こんにちはマスク仮面です
──┼( )
∧_∧
イ从゚ ー゚ノi、 < こんにちはドス女です
──┼( )
∧_∧
('A` ) < よーし二人で怪人をやっつけよう!
──┼( )
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:19:04.48 ID:NBsKCTfs0
- ∧_∧
(ФωФ ) <そうはいかん 喰らえ主役乗っ取りハトビーーーーーム!
──┼( )
∧_∧
('A` ) < うわーーーーー! 最近影が薄くなってるのに更に見せ場が無くなったーーーーー!
──┼( )
∧_∧
イ从゚ ー゚ノi、 < うわーーーーー! 最近バトルですら活躍しなくなったーーーーーーー!
──┼( )
∧_∧
(ФωФ ) < 邪気眼を持たぬ者には分からぬだろう……
──┼( )
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:21:02.61 ID:NBsKCTfs0
* 以下、何事も無かったかのように再開 *
( ゚∀゚)「それじゃ、自分で着てるもん脱いでもらおうか。
自分で脱がすのもいいが、脱がさせる方が好きなんでね」
ジョルジュ達がいたぶるような視線を銀に向けた。
イ从゚ ー゚ノi、「…………ッ!」
銀は歯を食いしばったまま、そこにじっと佇んでいた。
こいつらを殺すのは簡単だ。
刀が無いとはいえ、この程度の連中、皆殺しにするのに一分もかからないだろう。
だが、ドクオが人質に取られている今、
そうすることは出来なかった。
もし、自分がこいつらに危害を加えたら、ドクオは――
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:22:11.13 ID:NBsKCTfs0
- ( ゚∀゚)「嫌だってんなら別に良いんだぜ? それなら――」
ドクオの身はどうなっても知らない、と言外に言い含め、ジョルジュは銀を恫喝した。
イ从゚ ー゚ノi、「……本当に、あの男の安全は保障するのじゃろうな?」
( ゚∀゚)「勿論。 こう見えて、約束は守る主義なんでね」
ジョルジュが軽い口調で答える。
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
銀は黙ったまま着物の帯に手をかけた。
大丈夫。
耐えられる。
そもそも、自分が深入りしなければ、
ドクオはここまで傷つかずに済んだのだ。
ドクオがこうなった原因は自分にある。
だから、自分が助けなければならない。
だから、その為なら、
例え、この身を汚すことになっても――
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:23:35.85 ID:NBsKCTfs0
- イ从゚ ー゚ノi、「…………ッ!」
悔しかった。
これから自分は、この下種どもの慰み者にされるのだろう。
そう思うと、何もかも考えずに目の前の者を殺してしまいたい衝動が湧き出てきた。
だけど、それは出来ない。
そんな下らない自分の誇りの為に、ドクオを巻き添えにしてはならない。
イ从゚ ー゚ノi、「…………ッ!」
帯がほどけて着物が地面に落ち、銀の裸体が惜しげもなくジョルジュ達に晒される。
何も考えるな。
何も感じるな。
ただ、抱かれればいいだけ。
それを、耐えればいいだけだ。
それだけで――
( ゚∀゚)「くはははッ。 そうそう。
そうやって素直に言うこと聞いてりゃあ、こっちもそれなりの待遇を考えてやるよ」
ジョルジュの右手が銀の乳房に伸びて――
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:24:25.68 ID:NBsKCTfs0
- ( ゚∀゚)「――――!?」
次の瞬間、ジョルジュの二の腕から先が弾け飛んだ。
直後、部屋の壁に一本の矢が突き刺さる。
矢には、さっきまでジョルジュの体にあった筈の、彼の右腕が刺さっている。
( ゚∀゚)「な、なんじゃこりゃあああああああああああああ!?」
驚愕と痛みに、ジョルジュが大きな悲鳴を上げる。
周囲に居た彼の取り巻きも、その突然の光景にただただ混乱するだけだった。
(´ー`)「……汚い手で『それ』に触るな」
牢屋の入り口から、一人の老紳士が姿を現した。
腕にその体には不釣合いな剛弓を持ち――
一歩一歩、銀達の所に近づいてくる。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:25:54.75 ID:NBsKCTfs0
- ( ゚∀゚)「て、手前ええええええええええ、爺いいいいいいいいいい!!
こんなことをして只で済むと思って――」
ジョルジュが言い切る前に、初代モナーの矢が今度は彼の左耳をそぎ落とした。
( ゚∀゚)「ギッ……!」
残った方の腕で耳のあった部分を押さえ、ジョルジュがうずくまる。
(´ー`)「『こんなことをして』? 『只で済むと思っているのか』?
それはまさかこの私に言っているのか、若造?」
ジョルジュ達の表情が凍りついた。
いつも笑顔の耐えぬ好々爺。
それが今までの彼らの初代モナーに対する印象だったが――
そんなものは微塵も感じられない鬼が、そこには立っていたのだ。
(´ー`)「一度だけ言うぞ。 失せろ。
二度目からは、言葉以外の方法で理解してもらう」
( ゚∀゚)「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
初代モナーの気迫に圧され、ジョルジュ達は一目散にその場から逃げ出していった。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:26:55.53 ID:NBsKCTfs0
(´ー`)「……申し訳ございません。
私どもの輩が、かような無礼なことを……」
銀に肌を隠す為の毛布を渡しながら、初代モナーが済まなそうに頭を下げた。
イ从゚ ー゚ノi、「……部下の教育がなっていおらぬな。
これで正義の組織とは、笑わせる」
毛布で素肌を隠しながら、銀が毒づいた。
(´ー`)「返す言葉もございません……」
初代モナーはただ、丁重に頭を下げるのみであった。
イ从゚ ー゚ノi、「……いや、お主に当たってもしょうがないことじゃったな。
そんなことより、礼が遅れた。
すまんかったな。 もう少しで、あの下種どもの玩具にされるところじゃった」
(´ー`)「礼には及びません。 部下の不始末の責任を取るのは、年長者の務めですから。
それとご安心下さい。
私の眼の黒いうちは、あなたやあの青年に、手出しはさせません」
イ从゚ ー゚ノi、「そうか……」
それを聞き、銀は心底安心した様子でほっと胸を撫で下ろした。
(´ー`)「……あの青年が、大切なのですか?
自らの身を汚すことも厭わない程に」
初代モナーが、静かに、しかし重く、銀に訊ねた。
イ从゚ ー゚ノi、「そ、そんなわけではない。 あの男をここまで巻き込んだのは、儂の責任じゃからな。
じゃから、せめてもの罪滅ぼしにと……」
銀が慌てて首を振る。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:28:35.61 ID:NBsKCTfs0
- (´ー`)「自分と同じ『人外』だから、あの青年となら共に歩めるかもしれない。
だから、手放したくないということですか?」
イ从゚ ー゚ノi、「違う! 儂は、そんな――」
銀は言葉を詰まらせた。
本当に違うのだろうか。
ドクオが人とは違う体の作りに変わってしまっていることを知った時、
あの時感じた昏い喜び――
あのおぞましい感情を、確かに自分は感じていた。
(´ー`)「ならば、もし私があなたと同じ時を歩めるようになれば……」
イ从゚ ー゚ノi、「……? モナー、お主、一体何を――」
モナーの影のある表情に気が付き、銀がそれを訊ねようとした時、
轟音が二人の会話を遮った。
(´ー`)「!? 今のは!?
イ从゚ ー゚ノi、「上から、か!?」
二人が同時に天井を見上げる。
轟音の正体を二人が知るのは、それから少し後のことだった。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:29:54.97 ID:NBsKCTfs0
* * *
JOW日本支部管制室。
ここでは、JOW日本支部に取り付けられたレーダーやカメラからの映像が、
壁一面のスクリーンに映し出されている。
ここに映った映像を元に、
隊員に指令を下すのが、ここで働くオペレーター達の仕事だった。
「交代の時間です」
「おお、そうか。 悪いな」
昼休みを終えた隊員が、次の隊員と交代する為に声をかけた。
「何かありましたか?」
「いや、何も。 まあ、最近治安が悪いとはいえ、日本じゃそう滅多なことはそうは起きないだろうよ」
「言えてますね。 でも何かつまんないですね」
「馬鹿。 何も起きないのが一番なんだよ。
それに、テレビや漫画じゃないんだから、そうそうミサイルや隕石が飛んできたりなんか――」
そこで、オペレーターの一人は絶句した。
スクリーンに、常識では考えられない物を発見したからだ。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:30:44.05 ID:NBsKCTfs0
- 「あ、あれは―― あれは何だ!?」
スクリーンに映る、一つの物体。
銀色の、皿の様な形の飛行物体。
空想の世界で見たり聞いたりしたことはあっても、
現実では一度も見たことのない、見る筈のない、その物体。
だが、間違い無い。
あれは、あの飛行物体は、あの空飛ぶ円盤は――
「ユ、U…… UFOだあ!!」
UFOが、空を飛んでJOW日本支部に接近してきていた。
誰もが、そのあまりに異常な光景に自分の目を疑う。
「至急至急! 上空から正体不明のUFOが接近中!!
隊員は至急戦闘準備に備えろ!!」
オペレーターからのそのアナウンスを信じたものが、
果たして何人いただろう。
UFOがやってきている。
普通の者が聞けば、オペレーターの気が狂ったとしか考えられない内容だ。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:32:39.43 ID:NBsKCTfs0
- 「カメラの倍率を上げろ! あのUFOを拡大するんだ!!」
カメラのズーム機能が働き、UFOの全体像が拡大された。
どこからどう見ても銀色の空飛ぶ円盤。
よく見ると、その上には――
「な、何だあいつは!?」
「変態だ! 変態がUFOの上に立っているぞ!!」
UFOの上部に立っている人影が更に拡大され、その姿がでかでかとスクリーンに映し出される。
豪華な鎧。
漆黒のマント。
不敵な笑み。
そこに在るは、宇宙大魔王。
悪の権化。
そいつは、
その男こそは――
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:33:52.97 ID:NBsKCTfs0
- ( ФωФ)「フ―― フハハハハ!
フハハハハハハハハハハハハハハ!!」
杉浦ロマネスクが、そこに立っていた。
( ФωФ)「とうッ!!」
ある程度UFOがJOW日本支部に近づいたところで、
ロマネスクはUFOの上部から跳躍した。
マントをたなびかせながら滑空し、ズシンと音を立ててJOW日本支部の屋上に着地する。
( ^ω^)「何者だお! 何をしに来たお」
騒ぎを聞きつけ、ブーン、ツン、ショボン、クーの四人が屋上へと駆けつけてきた。
四人が、ロマネスクと対峙する。
( ФωФ)「我輩は宇宙大魔王杉浦ロマネスク。
ここに囚われているマスク仮面という男を、奪いに来た」
四対一という圧倒的に不利な状況にも関わらず、傲然とロマネスクは言い放った。
( ФωФ)「あの男は我輩の宿敵だ。 貴様らなんぞにくれてやるわけにはいかん」
(´・ω・`)「あの男が宿敵? とすると、君は君の敵を助けにここに来たっていうことかい?
矛盾してないか、それ?」
ショボンが得心出来ないといった様子でロマネスクに訊ねた。
( ФωФ)「別に何もおかしくなどない。
我輩は絶対の悪。 その悪を貫く為には、正義のヒーローの打倒が必要不可欠。
故にその正義のヒーローが他の誰かに横取りされそうになれば、
それを阻止するのは当然の道理」
川 ゚ -゚)「正義のヒーローとは、あの男のことを言っているのか?」
クーがロマネスクに問う。
( ФωФ)「無論。 他に、誰が居る」
即答するロマネスク。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:35:37.82 ID:NBsKCTfs0
- ξ゚听)ξ「ふ――ふざけんじゃないわよ!
よりによって、あの男が正義のヒーローですって!?」
ツンが声を張り上げて激昂した。
(´・ω・`)「……どうやらかなり誤解しているようだね。
あの男は正義のヒーローなんかじゃない、ただの人に害を為す『化物』だ。
その男を討伐する我々が、どちらかといえば正義のヒーローに近い筈だけどね」
( ФωФ)「お前達が? 正義のヒーロー?
フ、フハハ、フハハハハハハ!!」
ショボンの言葉を嘲笑うかのように、ロマネスクが高々と笑い声を上げた。
川 ゚ -゚)「何がおかしい?」
( ФωФ)「おかしいとも。
ここのビルに来てすぐに分かった。
ここは、我輩の嫌いな臭いで充満している。
腐った、どぶ川のような臭いがな。
そんな連中が、正義のヒーローなどとは片腹痛い」
ξ゚听)ξ「なッ――!」
怒りのあまり何も言葉が出ずに、ツンはただ金魚の様に口をパクパクさせた。
( ^ω^)「……殺したお」
ぽつりと、ブーンが呟くように言った。
(#^ω^)「あいつは、何の罪も無い人を殺したんだお!
それなのに、何であいつが正義のヒーローなんだお!!」
ブーンが叫ぶ。
理不尽に怒る子供の様に。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:36:41.19 ID:NBsKCTfs0
- (´・ω・`)「ブーンの言う通りだ。 あの男は、無関係な人間を何人も殺している。
そんな男を、正義のヒーローと呼ぶ理由は何だい?」
ショボンが懐からカードを抜き出しながら、ロマネスクに言った。
( ФωФ)「人を殺した。 だからどうした。
我輩は発電所の事件に直接関わったわけではないが、
あの場合、他にどんな方法があったというのだ。
あの男が――マスク仮面が、他の方法を考えようともせずに、
あの決断を下したと思っているのか」
ロマネスクが正面からショボンに言い放つ。
( ФωФ)「殺された、無関係な者達の家族や縁者が、マスク仮面を責めるのは当然の権利だ。
どころか、あの男を殺す権利すらあるだろう。
だが――直接手も下さず、判断も下さなかった外野に、あの男を責める権利――
殺す権利など有りはしない。
特に、本心ではうまく罪を被って貰えた、などとほくそ笑んでいるような連中など、論外だ」
(´・ω・`)「…………!」
心を見透かしたかのように、ロマネスクがそう告げた。
( ФωФ)「それと、あの男を正義のヒーローと呼ぶ理由だったな。
何、簡単なことだ」
ロマネスクは腕を組んで口の端に笑みを浮かべ、
( ФωФ)「この我輩が、正義のヒーローと認めている。
それ以上に、理由など必要あるまい」
ただそれだけ、ロマネスクは断言した。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:37:46.42 ID:NBsKCTfs0
- ( 0ш0)「ふ――ざけんなお!!」
ブーンが腕の変身装置を発動させ、変身して戦闘態勢に入った。
ショボンやクーやツン達も、それぞれ身構える。
( ФωФ)「フン。 矢張り、素直には通してくれんか」
四人が戦闘態勢に入っているにも関わらず、
ロマネスクはあくまで自然体を崩さなかった。
まるでちょっとそこまで買い物にでもいくかのような、無防備な体勢のまま、ブーン達と向き合っている。
( ФωФ)「そこの女二人。 怪我をしたくなければ下がっていることだ。
我輩に女を痛めつける趣味は無い。
そちらから手を出さない限り、こちらからも何もしないが――
向かって来るというのなら、容赦はせんぞ?」
ξ゚听)ξ「甘くみないでッ!」
ツンがそう言うと同時に――
不可視の念動力がロマネスクに襲い掛かった。
響く爆音。
衝撃の余波で屋上の地面が大きく削り取られ、もうもうと煙があがる。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:38:50.01 ID:NBsKCTfs0
- ξ゚听)ξ「なッ――!」
しかし――
そんな威力の一撃を受けたにも関わらず、ロマネスクは悠然と立っていた。
まるでそよ風でも受けただけとでも言うかのような面持ちで、不敵な笑みを浮かべている。
川 ゚ -゚)「怯むな、ツン!」
ツンの横からクーが飛び出し、サブマシンガンでロマネスクに銃撃を浴びせた。
しかし――
ロマネスクはそれすら避けようとせず、
銃弾の雨を正面から受けながらクーに向かって突進する。
( ФωФ)「愚か者め! 飛び道具なんぞが通用するか!
我輩を倒せるのは、魂の込められた拳のみ!!」
川 ゚ -゚)「馬鹿な!? 対怪人用特殊弾丸が通用しないだと!?」
クーは知らなかった。
ロマネスクは怪人などではなく――もっと、恐ろしい存在なのだということを。
川 ゚ -゚)「チッ!」
クーがズボンから煙幕手榴弾を取り出し、ロマネスクに投げつけた。
( ФωФ)「!?」
手榴弾がロマネスクの足元に転がると同時に、黒い煙が彼の周囲に立ち込めて、
付近一帯の視界を奪う。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:39:34.50 ID:NBsKCTfs0
- (´・ω・`)(ナイスだ、クー)
ロマネスクがクーに向かっている隙に、彼の背後に移動していたショボンが、
煙幕に紛れてロマネスクを狙っていた。
(´・ω・`)(対怪人用特殊弾丸が効かないとはいえ――
これだけのカードを至近距離から喰らえば、ただでは済まない筈……!)
ショボンが両手一杯にカードを握り、静かにロマネスクの背後から忍び寄って行った。
あと5メートル。
あと3メートル。
(´・ω・`)(喰らえ……!!)
ショボンがありったけのカードをロマネスクに叩き込んだ。
轟く轟音。
周囲に閃光と爆風が吹き荒れ、ロマネスクの体がその中に飲み込まれる。
手応えは十二分。
あれだけの一撃。
倒し切れないまでも、相当の深手は負わせた筈。
そう、ショボンは確信していた。
(´・ω・`)「やっ――」
ショボンが思わず歓声を上げようとしたその時――
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:40:21.73 ID:NBsKCTfs0
- ( ФωФ)「言った筈だ。
我輩を倒せるのは、魂の込められた拳のみだと」
それでも、ロマネスクは倒れていなかった。
至近距離から爆発を受け、体のあちことに傷を負いながらも――
それでも、毅然と立っていたのだ。
(´・ω・`)「ば、化物め――!」
ショボンが新たにカードを取り出したが、彼に出来たのはそこまでだった。
( ФωФ)「ぬるい!!」
ロマネスクがカードを持ったショボンの腕を掴み、それ以上の動きを封じる。
同時に、ロマネスクは右足でショボンの左足の膝を蹴り込んでいた。
(´・ω・`)「がはッ……!」
ショボンの左膝は完全に破壊され、骨と筋肉がむき出しになっていた。
痛みに、ショボンが苦悶の表情を浮かべる。
( ФωФ)「うおおおおおおおおお!!」
しかし、ロマネスクの攻撃はそこでは終わらなかった。
ショボンの腕を掴んでいた手を放すと――
上体を屈め、その体勢から渾身のボディーブローを打ち込んだ。
(´・ω・`)「ゴボォオッ!!」
血反吐を撒き散らしながら、ショボンの体が弾丸の如く横っ飛びに飛翔した。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:41:07.46 ID:NBsKCTfs0
- 川 ゚ -゚)「!!」
ξ゚听)ξ「!!」
そのショボンの体が、一直線にツンとクーに向かって飛来する。
川 ゚ -゚)「ツンッ!」
ξ゚听)ξ「きゃあああッ!」
クーが咄嗟にツンを庇ったが、遅かった。
二人はもろにショボンという名の砲弾を受け、
屋上出入り口の壁に叩きつけられる。
川 ゚ -゚)「がッ……!」
クーはツンを庇った際、強く頭を壁に打ち付けてしまい、脳震盪を起こしてそのまま気を失った。
ξ゚听)ξ「…………!」
クーの体がクッションとなったおかげで、ツンはクー程の打撃は受けなかったものの――
肉体強度は一般の女の子並みの彼女が昏倒するには、充分過ぎるダメージだった。
ショボン、クー、ツン、
三人は団子状態のまま、その場に倒れ付す。
( 0ш0)「なッ――!」
ブーンは言葉を失っていた。
ショボン、クー、ツン。
彼らの強さは、ブーンが一番良く知っていた。
その彼らが――こうもあっさりと。
何者なのだ、こいつは。
何故、これ程の男が、あのドクオとかいう男を助けようとしているのだ!?
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:42:40.78 ID:NBsKCTfs0
- ( ФωФ)「ああ、そう言えば忘れるところだった。
貴様を倒す前に、一つ聞くことがあったのだ」
ブーンに向き直り、ロマネスクが思い出したように言った。
( 0ш0)「…………!」
ブーンは何も答えず、黙ったままロマネスクを見据える。
( ФωФ)「貴様らは先程、正義のヒーローは自分達だと言ったな?
では、その理由は何だ。 貴様らは何を以って、自らを正義のヒーローと名乗る?」
ブーンの沈黙に構わず、ロマネスクが問うた。
( 0ш0)「ブーンは…… ブーン達は、みんなの為に闘ってるんだお!
それがJOWの使命なんだお! だから――」
だから、正義の為に闘う自分達は正義のヒーローであると、ブーンは言った。
( ФωФ)「そうか。 矢張りその程度か」
落胆した様子を隠すことなく、ロマネスクは肩をすくめた。
( ФωФ)「みんなの為と言ったな? ならば更に問おう。
『みんな』とは何だ?」
( 0ш0)「――――!」
ブーンは、答えられなかった。
みんなの為に。
ずっと、JOWでそう教えられて闘っていた。
しかし――
肝心要のそれが何であるのか、彼は一度も疑わなかったし、考えたことも無かったのだ。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:44:51.11 ID:NBsKCTfs0
- ( ФωФ)「答えられないのか。
いや、その様子だと、答えを探そうとすらしていなかったようだな。
『みんな』の為――
そんな自分でも訳の分からないものの為に闘っていただけのことで、
正義のヒーローを名乗っていたのか」
ロマネスクが一歩、ブーンに近づく。
それに応じて、ブーンは一歩、後ろに下がった。
( ФωФ)「正義も悪も――それだけでは闘う理由になどならない。
そんな漠然としたものの為になど、闘うことは出来ない。
正義も悪も、所詮は闘う過程の為の手段。
闘いの為の理由の根源――貴様には、それがない。
護るべき大義も、対象も無い。
正義の為だけに、正義を実行しているだけ」
ロマネスクが更に一歩近づき、ブーンが更に一歩下がった。
( ФωФ)「『みんな』の為?
そういえば、確か我輩が外道として葬った連中も同じ事を言っていたな。
それがさも免罪符になるかのようにな」
近づくロマネスク。
下がるブーン。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:46:03.16 ID:NBsKCTfs0
- ( ФωФ)「与えられた使命。 与えられた目的。 与えられた居場所。
与えられた力。 与えられた信念。 与えられた敵――
何一つ、自分で掴み取り、定めようとせず、
与えられるがまま、言われるがまま、盲目的に闘う。
そんなものは正義のヒーローなどとは呼ばん。
――単なる狗だ」
( 0ш0)「だ――黙るおおおおお!!!」
下がるのを止め、ブーンがロマネスクに突進した。
( 0ш0)「ブーーーーーーーーーンキイーーーーーーーーーーーーーーックッッッ!!!」
充分な助走をつけて――
ブーンがロマネスクに向かって飛び蹴りを放った。
常人を遥かに超えた脚力の生み出す必殺の蹴り。
それに耐えられるものなどこの世には存在しない――
筈だった。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:48:18.28 ID:NBsKCTfs0
- ( 0ш0)「!!!!!!」
必殺の蹴り――
それが、ロマネスクによって、片手で受け止められていた。
( ФωФ)「魂の込もらぬ攻撃など、何のことも無い。
貴様では、我輩は倒せない」
( 0ш0)「!!!!!!!」
ロマネスクが両手でブーンの足を握り直し、勢い良く、ブーンの体を振り上げた。
60キロを超えるブーンの体が、軽々と宙に浮く。
( ФωФ)「教えてやる!
正義のヒーローとは! 穢れを纏い、なおも高潔な魂を持って闘う者!!
穢れることを知らず、穢れることを忌み、穢れることを畏れる傍観者に、
正義のヒーローを名乗る資格など有りはせぬわ!!」
ロマネスクは砲丸投げの様にブーンの体をぶんぶんと振り回し――
充分に加速させたところで、思い切り地面へと叩きつけた。
( 0ш0)「がッ……!!」
轟音と共に地面に大きなクレーターが生まれ、
衝撃がビル全体を揺るがした。
クレーターの中央で――
ブーンが仰向けに倒れたまま、気を失う。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:49:21.41 ID:NBsKCTfs0
- ( ФωФ)「……あの男なら、きっと我輩の問いに答えただろうな。
『みんな』とは、一体何なのかということに」
既に失神しているブーンを見下ろし――
ロマネスクはそう告げた。
マスク仮面ならば、きっと答えるだろう。
ならばこそ、今、自分の犯した罪に苦悩している筈だ。
だから、悪である自分が行かねばならない。
そう、確信していた。
( ФωФ)「さて、思わぬ時間をくってしまった。
近道させてもらうとするか」
そう言うと、ロマネスクは足元の地面に拳を打ち下ろした。
その一撃で地面に大穴が開き、そこから下の階が姿を覗かせる。
( ФωФ)「征くぞJOWとやら!
この悪の帝王が、正義のヒーローではなく単なる障害として討ち倒してくれる!」
ロマネスクは軽く跳躍し、穴の下へと飛び降りていった。
〜第三十四話『参上、宇宙大魔王!』 終
次回、『規格外対決、怪物VS怪物!』乞うご期待!〜
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 02:50:52.37 ID:NBsKCTfs0
- この番組は
更新が遅くなって本当にすみませんでした
会社なんて無くなればいいと思います
の提供でお送りしました。
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