ドクオは正義のヒーローになれないようです

185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 21:57:06.68 ID:NBsKCTfs0
第三十五話『規格外対決、怪物VS怪物!』

〜前回までのあらすじ〜

エロ漫画。
それは漢の希望。

エロ漫画。
それは人類の至宝。

これは、そんなエロ漫画の購入に命を燃やした、
熱き男達の物語である――

(,,゚Д゚)「作者ほかまみつり『みんなの登校日』……
    ターゲット捕捉、これより商品棚から入手する」
三度の飯よりエロ漫画が好き!
生粋の変態ギコ!

しかしそんな彼にも悩みがあった!
エロ漫画を購入するのはどうにも恥ずかしい!
何とか恥ずかしさを紛らわす手段は無いのかと!

(,,゚Д゚)「時刻PM8:50分、閉店まで残り10分足らず。
    店内残存客2名……」
恥ずかしさを少しでも減らす為、彼は綿密な計画を練り続けた!
その作戦が、今日、実行される!!



188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 21:58:27.03 ID:NBsKCTfs0
(,,゚Д゚)「レジ店員、性別男性。
    推定年齢50歳から60歳。
    現地点からレジまで他の人間は不在。
    ……行ける!!」
あらゆる状況を冷静に分析し、
最高のタイミングでエロ漫画を購入する!
彼の作戦に死角は無い!

/ ,' 3 「いらっしゃいませー」

(,,゚Д゚)「あの…… これ……」

/ ,' 3 「ありがとうございます。 お会計1050円になります」

(,,゚Д゚)(早く! 早く袋に包んでくれ……!」

ウィーン(店の入り口の自動ドアが開く音)
(*゚ー゚)「良かった。 あとちょっとで店が閉まるとこだったわ。
     あれ? ギコ君じゃない? 何の本買ってるの?」

スネーク! 応答しろ!
スネーク! スネーーーーーーーーーーーーク!!!

大長編大河ドラマ『エロ漫画が辻』



190: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 21:59:18.69 ID:NBsKCTfs0


        *  以下、何事も無かったかのように再開  *


完全に隔離された牢獄に、俺は囚われ続けていた。
外が何やら騒がしい気がするが――
俺にはどうしようもない。

動けなかったし、
動く気力も無かった。

……ドス女は、どうなっているのだろうか。
それだけが、心配だった。

俺は――
間違っていたのだろうか。

発電所で、俺は無関係な人を殺してしまった。
あの時は、ああするしかないと思っていたけど……
本当は、もっと別の方法があったんじゃないだろうか。

それなのに、俺は――



196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:01:08.20 ID:NBsKCTfs0
('A`)「!!!」
突然、牢獄の入り口のドアが轟音を立てて吹き飛ばされた。
何が起こったのかとそちらに視線を動かすと、そこには――

( ФωФ)「ようやく見つけたぞ」
('A`)「ロマネスク……!」
杉浦ロマネスクが、そこに居た。

('A`)「どうして、お前がここに……」
( ФωФ)「話は後だ。 すぐにここを出るぞ」
言いながら、ロマネスクが俺の動きを封じていた金属製の拘束具を取り外していく。

俺がどれだけ力を入れてもびくともしなかった拘束具は、
まるで飴細工のように簡単に破壊されていった。

( ФωФ)「お前の仲間の女はどうした? 一緒にではないのか?」
('A`)「分からない…… ここには、別々にされて連れて来られたから……」
拘束具が全て外され、久し振りに自由を手に入れた。

しかし、既に何物にも縛られていない筈の俺の体は、
見えない何かに縛られているかのように、重く、動かなかった。

( ФωФ)「仕方が無い。 女を探すぞ。 兎に角ここを出るぞ」
('A`)「…………」
ロマネスクが促したが、俺はその場から足を動かすことが出来なかった。

( ФωФ)「どうした? 何故動かない?」
('A`)「俺は……」
俺には、ここから生きて出る資格なんて無い。
何故なら、俺は――



198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:02:03.32 ID:NBsKCTfs0
('A`)「俺は、無関係な人を殺したんだ……」
殺した。
何の罪も無い人達を。

何人も。
何人も。

('A`)「そんな俺に、おめおめと生きていく資格なんて無いんだ。
   ここで、悪人として罰せられるのが、せめてもの報いなんだ……」
俺に、正義のヒーローの資格なんて無い、
どころか、生きている資格だって――

( ФωФ)「言いたいことはそれだけか」
ロマネスクが、短く言い放った。

( ФωФ)「泣き言を言って満足したのなら、動け。
       お前には、まだやらねばならんことがある」
('A`)「だけど……!」
俺にはもう、闘う資格も理由も無いんだ。
そんな俺が、これ以上何が出来るっていうんだ……!

( ФωФ)「あの女は、きっとお前の助けを待っている。
       ならば、お前は行かねばならぬ。
       何故なら、お前は正義のヒーローなのだから」
('A`)「違う! 俺は、俺は正義のヒーローなんかじゃ――!」
正義のヒーローなんかじゃない。
絶対に、ない。



204: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:03:21.96 ID:NBsKCTfs0
( ФωФ)「ならば正義のヒーローとしてではなく、一人の男として助けに行け。
       あの女が大切なのだろう? 護りたいのだろう?
       我輩を失望させるな。
       ここで行かなければ、お前は正義のヒーローではないどころか、ただの下種だ」
('A`)「…………!」
俺は――
俺はそれでも闘わなければいけないのだろうか。

闘う意思も理由も無くして、
自分で、自分を信じることすら出来なくなって――
それも、闘わねばならないのか。

それが、俺に科せられた、罰なのか――

……分からない。
俺には分からない。

だけど――
それでも、きっと、行かねばならないのだろう。

例えこの身が闇に堕ちても、ドス女は助けてやりたい。
その気持ちだけは、何も変わってはいないのだから――

( ФωФ)「どうした。 行かないのか。
       動かぬというのなら、力ずくでも連れていくぞ」
('A`)「……分かった」
俺が一歩足を踏み出そうとしたその時――



206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:04:22.96 ID:NBsKCTfs0
爪'ー`)「君が侵入者か」
いつの間にか、扉の破壊された牢獄の入り口に男が立っていた。
あいつは――誰だ?
JOWの関係者であることには間違いないだろうが……

( ФωФ)「何者だ、貴様は」
爪'ー`)「JOW日本支部長官、フォックス。
    君こそ何者だ? 何が目的で、ここに来た?」
フォックスと名乗った男が、ロマネスクに訊ねる。

( ФωФ)「我輩は宇宙大魔王杉浦ロマネスク。
       この男を奪いに来た」
ロマネスクが不遜な態度で答える。

爪'ー`)「それは困る。 この男は折角捕らえた化物でね。
    我々には監視し、始末する責任があるのだよ」
( ФωФ)「ハッ―― だったらどうする。
       貴様が、力ずくで我輩を止めてみるとでも?」
爪'ー`)「そうさせて貰うよ。
     ただし――」
フォックスが後ろに振り返る。

爪'ー`)「手を下すのは、私ではなくこの男だがね」
フォックスの後ろから、一人の男が姿を現した。



212: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:06:25.19 ID:NBsKCTfs0
( ゚∋゚)「…………」
ゆうに2メートルは超えている身長。
筋骨隆々の体躯。
無機質な瞳――

本能的に体が危険を感知する。

こいつは、やばい。
こいつは、今までの怪人やJOWの連中とは、圧倒的に何かが違う……!

爪'ー`)「紹介しよう。
    JOWアメリカ本部の戦闘部隊隊長、コードネームK――クックルだ。
    彼に相見えたことを光栄に思いたまえ」
フォックスの前に、クックルがのそりと歩み出た。
その闘気に、部屋の空気が一瞬にして張り詰める。

爪'ー`)「やれ。 クックル」
フォックスがパチンと指を鳴らした直後――
俺の視界からクックルが消失した。

違う、消えたんじゃない。
あまりのスピードに、俺の動体視力では捉えられなかったのだ。



216: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:08:02.19 ID:NBsKCTfs0
( ФωФ)「!!!!!!!!」
それは一瞬の出来事だった。

神速ともいうべき速度でロマネスクの目前に移動したクックルは、
ロマネスクの顔面をその足で蹴りつけた。
そのまま、ロマネスクの体が壁を突き破りながら吹っ飛んでいく。

その間、まさに数秒の出来事。
あまりの光景に、俺の思考は現状に全く追いついていけなかった。

( ゚∋゚)「…………」
爪'ー`)「他愛も無い。 ……いや、クックルが強過ぎるのかな」
馬鹿な。
あのロマネスクが、たったの一撃で!?
こんな怪物が、この世に存在していたなんて……!



222: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:09:37.49 ID:NBsKCTfs0
('A`)「…………!」
反射的に、俺は身構えた。

だが――
こんな化物と闘って、一体どうなるというのだ。

ロマネスクですら歯が立たなかったこいつに、
俺が勝てる訳が無い。
ここまでか――!

爪'ー`)「そう身構えなくても結構さ。
    無理矢理逃げようとしない限り、今ここで君をどうこうするつもりはない」
フォックスが穏やかな声で言う。

爪'ー`)「それに…… 逃げたところでどうしようも無いことは、君が一番知っている筈だろう?」
そうだ。
ここから逃げたところで、無関係な人を殺したという罪は一生つきまとってくる。
それからは、決して逃げることは出来ない。



227: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:10:52.94 ID:NBsKCTfs0
爪'ー`)「君のことを少し調べさせて貰ったよ。
    君、正義のヒーローを夢見ていたんだって?」
('A`)「…………」
フォックスが優しげな声で言ったが――
その声の中には、明らかに悪意を感じ取ることが出来た。

何だ。
こいつは、何が言いたい。

爪'ー`)「君のこれまでの人生――決して恵まれたものではなかったようだね。
    だから、正義のヒーローに救って欲しかった」
嘲るように、フォックスが言った。

爪'ー`)「だが、正義のヒーローは君の前には現れなかった。
    だから、自分で正義のヒーローになって、自分を救おうとした」
うるさい。
うるさい……!

それがどうした。
それは、いけないことなのか……!



231: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:12:08.05 ID:NBsKCTfs0
爪'ー`)「ククッ…… クククッ……! ククククククククク!
    何とも泣かせる話じゃないか!
    夢を諦め切れず、足掻き続けるなんて!
    それで、正義のヒーローとやらは君の前に来てくれたのかい!?」
正義のヒーローは来なかった。

正義のヒーローの真似事をして、
正しいことをやっていれば、その見返りとして、
正義のヒーローが助けに来てくれると信じていた。

だけど、正義のヒーローはやって来なかった。

分かっていたんだ。
正義のヒーローなんて、この世にはいやしないと。

それでも、
それでも俺は、
正義のヒーローを信じ続けていたかったんだ……!



235: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:13:14.73 ID:NBsKCTfs0
爪'ー`)「教えてやろう!
    君の前に、正義のヒーローは現れない!
    君は、正義のヒーローになどなれはしない!
    何故なら、君は咎人だからだ!
    咎人を救う正義のヒーローなど、この世には存在しない!!」
――俺は、咎人なのか。

そりゃそうだ。
俺は、今までに多くの人を殺したんだ。

怪人も、戦闘員も、無関係な人も。
そんな俺が救われようなんて、虫の良すぎる話だったんだ。

(;A;)「俺は……」
俺はただ救われたかった。
ただ、誰かに助けて欲しかった。

それだけだったのに――
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
どこで、おかしくなってしまったんだろう。

俺のしたことは、間違っていたのか。
俺は――



238: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:14:04.79 ID:NBsKCTfs0
( ФωФ)「それ以上、我輩の前でその男を愚弄するのは止めて貰おうか」

('A`)「――――!」
爪'ー`)「――――!」
( ゚∋゚)「――――!」

突然のその声に、誰もが声のした方へと振り返った。
直後――

( ゚∋゚)「!!!!!!!!!」
今度は、クックルの体が吹っ飛んでいた。

ロマネスクが、
クックルの顔面にパンチを叩き込んだのだ。

ロマネスク――
やられては、いなかったのか……!



243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:15:22.42 ID:NBsKCTfs0
爪'ー`)「有り得ん! クックルのあの一撃を受けて、斃れないだと!?」
フォックスが驚愕の声を上げる。

( ФωФ)「確かに凄まじい威力の攻撃だった。
       速度、筋力、技術……どれをとっても申し分無い」
ロマネスクが一歩、倒れたクックルへと近づいた。

( ゚∋゚)「…………」
クックルも今の一撃だけでは昏倒する程のダメージにはなっていなかったらしく、
すぐさま立ち上がってロマネスクに向き直る。

( ФωФ)「だが、それだけでは足りない。
       貴様の攻撃には、血肉沸き立たせ、心奮わせる魂が無い。
       そんな拳では、この我輩は斃せぬわ!!」
ロマネスクが叫ぶ。

あれだけの一撃を受けたばかりだというのに――
その姿からは、微塵の疲弊も感じさせなかった。



253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:17:31.11 ID:NBsKCTfs0
( ФωФ)「行け、マスク仮面!
       ここは我輩が引き受ける!」
('A`)「だ、だけど……!」
咎人の俺に、そんな資格は有りはしない。

( ФωФ)「……無関係な人を殺したことを悩んでいるのか」
('A`)「…………」
俺は、ロマネスクに何も答えなかった。

( ФωФ)「……発電所でお前が下した決断が、最善のものだったのか、
       それとも、他に方法があった筈なのか――
       それは、我輩には分からない。 誰にも、分からない。
       お前があの時無関係な人を殺したという事実は消すことは出来ないし、
       殺された者の家族が真実を知れば、一生お前を呪うだろう」
ロマネスクが静かに告げる。

( ФωФ)「だが、これだけは言える!
       例えお前のその手が血で汚れていたのだとしても――
       お前の心は、何一つ汚れてなどいない!
       それは、真の心から出た、真の行動だからだ!
       最後の最後まで、悩み、苦しみ、最善を考えあぐね続けた結果だからだ!
       そんなお前を責めることなど、殺された者の縁者以外、誰にも出来はしない!!」
はっきりと、ロマネスクはそう言った。



260: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:18:39.92 ID:NBsKCTfs0
( ФωФ)「負けるな!
       お前は、間違ってなどいない!!!」
(;A;)「――――!」
俺は、走った!

ドス女の所に行く為に。
闘う為に。

ふっきれたと言えば嘘になる。
俺はこれからも自分を許すことなど出来ないのだろうし――
俺に殺された者の家族達は、俺を呪い続けるのだろう。

それでも――
それでもまだ、俺にはやることが残されている。
俺を、支えてくれる人がいる。

もし許されるのなら、
その人達の為に、
あと少しだけ闘いたい。

涙で視界が霞む。
体と心に、罪の意識が重くのしかかる。

それでも俺は、
ひたすらに走り続けた。


〜第三十五話『規格外対決、怪物VS怪物!』 終
 次回、『マスク仮面VS魔弾』 乞うご期待!〜



262: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/30(水) 22:19:46.47 ID:NBsKCTfs0
この番組は、

たまごっち
デジモン
ミニテトリス

の提供でお送りしました。



戻る第三十六話