ドクオは正義のヒーローになれないようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/13(水) 23:49:46.84 ID:OisC02pU0
- 第三十八話『闘いの果てに』
〜 更新遅れてすみませんでした 〜
(#^ω^)「がああああああああああああああ!!」
JOW屋上、ブーンは怒号を発し、荒れ狂っていた。
ロマネスクが去り、ブーン達が目を覚ましてから――
彼は、すっとこの様子だった。
(#^ω^)「ふざけるな――ふざけんなお!!
何であいつが正義のヒーローなんだお!!
何で!! 何で!!!」
あの宇宙大魔王と名乗った男――
杉浦ロマネスクは言った。
あの、無関係な者を犠牲にした化物が正義のヒーローだと。
自分が、そう認めていると。
そして、奴は同時にこうも言った。
ブーンは、正義のヒーローなどではないと。
単なる狗であると。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/13(水) 23:51:03.41 ID:OisC02pU0
- (#^ω^)「ふざけんな! ふざけんな!! ふざけんな!!!
何で、あいつがそんな――」
いつもなら、こんな戯言など聞き流している筈だった。
しかし――
あの男、杉浦ロマネスクの言葉には、
無視することの出来ない何かがあった。
そこまでの男が、
あの罪人を正義のヒーローと認め、ブーンを正義のヒーローと認めない。
それが、ブーンには堪えられなかった。
ξ゚听)ξ「ブ、ブーン……」
ツンがブーンに何か話しかけようとしたが、
その彼の余りの様子に圧倒され、声をかけることが出来なかった。
(#^ω^)「ブーンは正義のヒーローなんだお…・…
正義のヒーローなんだお……
ブーンは、ブーンは……」
そう、自分は正義のヒーローなのだ。
だからこそ、JOWにいるのだ。
なのに。
それなのに――
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/13(水) 23:52:23.58 ID:OisC02pU0
- 爪'ー`)「そう、君こそが正義のヒーローだ」
いつの間に現れたのか――
フォックスが、後ろからブーンの肩を叩いた。
( ^ω^)「長官……」
ブーンが、首だけフォックスに振り返る。
爪'ー`)「自信を持つんだ。 君こそが正義のヒーロー、そのことに、間違いはない」
優しげな笑みで、フォックスが告げる。
( ^ω^)「で、でも! あの男はブーンのことを……!」
爪'ー`)「あんな悪党の言うことなど気にする必要はない。
悪党はいくら足掻いても悪党――
そんな輩が我々を正義のヒーローではないと言った所で、誰が賛同する?」
( ^ω^)「…………」
ブーンは黙ったままフォックスを見つめた。
爪'ー`)「もしそれでも我慢が出来ないというのならば、あの男を消せばいい。
我々を正義のヒーローと認めない者――
そいつらを全て消し去り、我々を正義と認める者のみがいる世界が実現した時こそ、
我々は、唯一絶対の正義になれるだろう」
フォックスの瞳が、怪しく輝いた。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/13(水) 23:54:04.00 ID:OisC02pU0
* * *
JOWビルのすぐ横の歩道――
そこに、大きな人型の穴が開いていた。
クックルがビルから落下した時に出来た穴だ。
あの高さから落ちて、生きている生物など存在する筈がない。
それが、常識的な思考からの結論の筈だった。
だが――
( ゚∋゚)「…………」
クックルに、常識などという瑣末なものは通用しなかった。
淵に手をかけ、穴の中から這い出て来る。
( ゚∋゚)「…………」
穴から出た後、クックルは首を動かしコキコキと首の関節を鳴らした。
と――
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/13(水) 23:55:38.00 ID:OisC02pU0
- ( ゚∋゚)「――――!」
ガクリと、クックルの膝が崩れる。
ビルから落下したダメージからではない。
あの宇宙大魔王、杉浦ロマネスクのパンチが、
なおもクックルの体に深い爪痕を残していたのだ。
( ゚∋゚)「…………」
体勢を立て直した後、
クックルは黙ったまま、
その無機質な瞳をロマネスクのUFOが飛び去った方向へと向けていた。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/13(水) 23:56:25.68 ID:OisC02pU0
* * *
('A`)「すげえ! 空飛んでる!! UFOが!!
今! 俺! UFOに乗って空飛んでる!!!」
俺は完全に興奮しきっていた。
だって、そりゃあそうだろう。
こうやって現実にUFOに乗って――
興奮しない男がこの世にいるのか?
イ从゚ ー゚ノi、「うるさいぞ。 少し静かにしておれ」
ドス女が静かな声で俺を制する。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/13(水) 23:57:37.95 ID:OisC02pU0
- ('A`)「……てかさ、こんな白昼堂々と空飛んでて、尾行とか大丈夫な訳?」
ドス女の言葉を無視して、俺はロマネスクに訊ねた。
( ФωФ)「フン、心配無用。
この『漢祭り』には完全ステルス機能が施されている。
この星の科学力でのレーダー程度では影すら捉えることも出来んわ!」
ロマネスクが誇らしげに胸を張った。
( ФωФ)「それだけではない。
『漢祭り』には亜空間ワープシステム、
超光速粒子加速砲、対宇宙船艦ミサイルが搭載されているのだ!
どうだ! 凄いだろう!!」
('A`)「……そんな凄い兵器積んでるなら、それ使って宇宙征服すればいいじゃん」
至極真っ当な疑問を俺はロマネスクにぶつけた。
( ФωФ)「馬鹿なことを言うな。
武器に頼るなど二流三流のすること。
この拳一つで宇宙を支配してこそ真の一流!
この杉浦ロマネスク、飛び道具などという邪道な物など使いはせぬわ!!」
('A`)「いや、だったら何でそんな兵器UFOに積んでるんだよ!!」
( ФωФ)「かっこいいから」
('A`)「…………」
……もう深く考えるのはやめよう。
俺の常識で、こいつの行動を理解するのは無理だ。
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/13(水) 23:59:34.02 ID:OisC02pU0
- ( ФωФ)「ふむ、そろそろ着く頃だな」
ロマネスクはそう言うと、備え付けられた無線のようなものを握って、
( ФωФ)「今戻った。 格納庫のハッチを開けてくれ」
と、無線機に向かって吹き込んだ。
すると――
('A`)イ从゚ ー゚ノi、「!!!!!」
俺とドス女は自分の目を疑った、
UFOの外の風景を映し出しているスクリーン、
そこに映っている山の上部が、さながらサンダーバードの1シーンのように開いていく。
そこから、ロボットアニメにでも出てくるかのような格納庫が顔を覗かせた。
( ФωФ)「どうだ!
これが我輩が創り上げたこの星を征服する為の秘密基地、
『漢の園』だ!!!」
……だからそういうネーミングやめろって。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:01:01.87 ID:QtzK68/K0
- ('A`)「すげえ……」
名前とは裏腹、ロマネスクの秘密基地の内部はまさに圧巻としか言いようが無かった。
自分で山をくりぬいてこんな基地を作るなんて、やっぱりこいつの力は人智を超えているとしか言いようが無い。
('A`)「……てか、こんな基地あるならどうして渡辺のおばあちゃんちに居候してんだ?」
( ФωФ)「い、いや、植民地で原住民から食料を徴収するのは支配者の特権だからな!
決して我輩がいなくなったらあの老婆が寂しがるだろうなとか、
老年の一人暮らしは不安だろうなとかそういうことでは断じて無い!!」
はいはいツンデレ乙ツンデレ乙。
( ФωФ)「と、兎に角だ!
お前達はしばらくここに身を隠しているのがいいだろう。
恐らく、JOWはお前達の家など既に押さえているだろうからな」
そうだ。
それぐらい、JOWもやってきているだろう。
……これで、俺も立派な逃亡者ということか。
( ФωФ)「まあこの秘密基地はキッチン、バス、トイレ、エアコン完備だからな。
この中に篭っていても不都合はあるまい」
ロマネスクが基地内を案内しながら告げた。
('A`)「……ありがとう」
( ФωФ)「礼などいらん。
お前を倒すのは我輩である以上、勝手に死んでもらっては困るだけだ。
お前とは、いずれきっちり決着をつける」
照れ隠しか、ロマネスクは顔を背けて言った。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:02:29.03 ID:QtzK68/K0
- ( ФωФ)「――ああそうだ。
この基地を管理している我輩の配下達を紹介しておこう」
ロマネスクが向き直り、俺たちに告げた。
('A`)「配下?」
こいつ、いつの間に仲間なんか集めたんだ?
( ФωФ)「そうだ。
――来い、お前達。
こいつらが、これからしばらくここで暮らす者達だ」
ロマネスクが合図をすると、基地の奥へと続く扉が開いた。
そこから現れたのは――
「ワンワン!」
「チューチュー!」
「ニャーニャー!」!」
「チュンチュン!」
犬に猫に鼠に鳥に――
様々な動物達が、俺達の前に現れた。
何だこれは!?
ここはムツゴロウ王国かどっかか!?
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:04:09.33 ID:QtzK68/K0
- ( ФωФ)「紹介しよう。
これが我輩の忠実なる家臣、『WAN=HO=NYANS』だ」
('A`)「いや単なるペットじゃねえか!!」
俺は突っ込まずにはいられなかった。
大量に動物集めて何が『WAN=HONYANS』だ。
( ФωФ)「見くびって貰っては困る。
この者達には、ここで食料の調達、基地内の清掃、機材の管理、
全てをこなして貰っているのだ。
それだけではない。
囚われた貴様を見つけたのもこの者達だぞ?」
('A`)「…………」
どうやってロマネスクが俺の捕まってた場所を探し出したのかずっと疑問だったが、成る程そういうことか……
「ワンワン!」
( ФωФ)「『礼には及びません』と、ジョナサン・ザ・ボーンイーターは言っている」
('A`)「犬の言葉分かるの!?」
何だその便利だけど微妙な特殊能力。
てかこいつ、妙なところで信頼厚いんだな……
( ФωФ)「さて、取り敢えずお前達の寝床を用意させよう。
これからどうするかは、一先ず休んでから決めるとするか」
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:05:24.78 ID:QtzK68/K0
夜になって――
俺は何をするでもなく、ロマネスクの基地の中をうろついていた。
体は疲れ果てている筈なのだが、
何故だか、どうにも寝付くことが出来なかった。
……これから、俺はどうすればいいのだろう。
JOWの力からして、警察に働きかけて、
俺を殺人犯とでもいうことにして指名手配するようなことも充分に考えられる。
もう外に、俺の居場所など有りはしないだろう。
……それも当然か。
だって、俺は汚れた人殺し――
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:06:13.49 ID:QtzK68/K0
- ('A`)「…………?」
と、壁に、何かがかけられているのが目に入ってきた。
これは――マント?
随分と大切そうに飾られているが……
ロマネスクの物だろうか?
('A`)「…………」
もう一度、マントを見てみる。
真っ赤な、燃えるような赤色。
かなり昔の物みたいだが――
丁寧に手入れが行き届いているからか、古汚れた感じは全くしない。
しかしロマネスクには、このマントはどうにもイメージに合わない気がする。
これはどちらかと言うと、悪と言うより正義のヒーローのものだ。
そんな風に思いながら、
何気なくマントに触れてみると――
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:07:16.33 ID:QtzK68/K0
- (;A;)「――――!」
突然、涙が溢れてきた。
何だ、これは!?
このマントに触れた途端、様々なものが俺の中に流れ込んできた。
気高さ。
優しさ。
力強さ。
このマントをつけていた者が、どれ程凄い人物だったのか、
マントに触れただけで理解出来る。
だが――
この、張り裂けそうな程の哀しさは、一体何なんだ!?
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:08:02.28 ID:QtzK68/K0
- ( ФωФ)「それは、かつて『正義のヒーロー』が身につけていたものだ」
不意に、ロマネスクが後ろから声をかけてきた。
('A`)「ロマネスク……」
( ФωФ)「眠れないようだな」
ロマネスクが俺に近づいてくる。
( ФωФ)「まだ、発電所のことを気に病んでいるのか?」
('A`)「当たり前だろ!? だって、俺は――」
何の罪も無い人達を、殺したんだ。
( ФωФ)「悩むならそれも良かろう。
だがこれだけは言っておこう。
罪の意識からお前が命を絶ったり、闘う事を止めたりしたところで、
何も変わりはしないとな」
('A`)「…………」
それは、分かっている。
だけど、だからって、どうすれば良いって言うんだ。
許されない罪を犯して――
これから、どうやって生きていけというんだ……!
( ФωФ)「まあ、最終的な答えを下すのはお前だ。
納得いくまで考えてみればいい。
まだ、考える時間は残されているのだからな」
それだけ言うと、ロマネスクは部屋から出て行った。
……自分なりの答えを考えろ、か――
だけど、人殺しの俺に、そんな答えなんてあるのだろうか。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:09:15.10 ID:QtzK68/K0
('A`)「…………」
ロマネスクと別れた後、俺はまだふらふらとうろついていた。
と――
('A`)「ドス女?」
同じように、基地内を歩いているドス女を発見した。
あいつも、眠れないのだろうか。
イ从゚ ー゚ノi、「……マスク仮面か」
ドス女もこちらに気付き、近付いてくる。
イ从゚ ー゚ノi、「眠れぬか?」
('A`)「……ああ」
多分これから先、
俺がぐっすり眠れることなんてありはしないだろう。
イ从゚ ー゚ノi、「眠れぬなら――
少し、付き合ってはくれぬか?」
('A`)「…………?」
イ从゚ ー゚ノi、「……昔話を聞いて欲しい。
60年前の――下らない昔話をな」
そう言って、ドス女はまっすぐに俺を見つめた。
〜第三十八話『闘いの果てに』 終
次回、番外編『『魔弾』VS『銀獣』、真夏の夜の夢』 その2
乞うご期待!〜
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/14(木) 00:10:25.12 ID:QtzK68/K0
- この番組は
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