ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:43:49.18 ID:iUKVpTCz0
第四十話『強くなる為に』

〜前回までのあらすじ〜

愛に歳の差なんて関係ない。
昔からある、使い古された陳腐な言葉。

お互い想う心があれば、
年齢なんて大した障害にはならない。

――そう、思っていた。

(,,゚Д゚)「しぃ、今度はいつ会える?」
射手由(いてよし)ギコ、17歳。
市立VIP高校に通う、どこにでもいる高校生。

ただ彼には、他の同年代の少年達とは少しだけ違うところがあった。
それは――

(*゚ー゚)「もうすぐ仕事に目処がつくから、週末なら大丈夫だよ」
羽二屋(はにや)しぃ、27歳。
したらばコーポレーションに勤める、どこにでもいるOL.

そして彼女も、他のOL達とは少しだけ違うところがあった。
それは――

二人は、10歳も歳の違う相手と付き合っているということだった。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:45:14.54 ID:iUKVpTCz0
(,,゚Д゚)「俺は、しぃさえいてくれればそれでいいよ」
(*゚ー゚)「私もだよ、ギコ君……」
積み重なる愛の日々。

このまま、何事も無く日常は繰り返されていく。
その筈だった。

(,,゚Д゚)「俺より仕事の付き合いの方が大事だってのかよ!」
(*;ー;)「違う! そうじゃない! 私はただ――」
徐々にすれ違っていく心。
学生と社会人の、視点の違い。

(,,゚Д゚)「糞ッ……! 子供のままじゃ、堂々としぃと会うことすら出来ないのかよ……!」
(*゚ー゚)「……私の方が先に歳をとって、おばさんになって。
    ギコ君の重荷になったりしないのかな……」
重くのしかかる歳の差という壁。
気にしないと決めた筈でも、どうしても心にひっかかってしまう問題。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:46:21.31 ID:iUKVpTCz0
从'ー'从「先輩! 私……ずっと前から先輩のことが好きでした!」
(,,゚Д゚)「!?」

( ・∀・)「しぃさん、よかったら今度食事でもご一緒しませんか?」
(*゚ー゚)「え……?」
突然現れる恋のライバル。

やっぱり、歳の近い者同士が付き合うのが、
お互いに幸せなのかもしれない――
揺れる二人の心。

( ・∀・)「? しぃさん、この少年は…・・・」
(,,゚Д゚)「……何なんだよ。 これは一体どういうことなんだよ!」
(*゚ー゚)「ち、違うのギコ君! 私はこの人とは――!」
最悪のタイミングで三人は出会った。

絶対に揺るがない筈だった二人の絆に、
今、亀裂が入っていく。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:47:46.24 ID:iUKVpTCz0
(*゚ー゚)「おかしいな…… そろそろ生理が始まる頃なのに――
    ――! うえぇッ! ゴホッ! げえェッ!」
突然しぃの体を襲う異変。

(*゚ー゚)「――! まさか、私ギコ君との――」
本来ならば喜ばれるべき筈の出来事が、二人の愛の障害となっていく。

愛があれば歳の差なんて関係ない。
その、筈だったのに――

(,,゚Д゚)「……俺は、俺はそれでもしぃを!!」
――理想だけとは付き合っていけない。
そう痛感させられたあの日。

いつまでも、子供のままでなんていられない――

新現代恋愛ドラマ、『彼女は年上』。
毎週月曜9時放送!



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:48:26.65 ID:iUKVpTCz0


          *   以下、何事も無かったかのように再開  *


イ从゚ ー゚ノi、「去らばじゃ、ドクオ」
ドス女がそう言って、踵を反して俺の前から去ろうとした。

駄目だ。
行かないでくれ。
俺を置いてきぼりにしないでくれ。

('A`)「待ってくれ!」
必死に走って追いかけるが、何故か追いつくことが出来ない。
どころか、どんどん距離が開いていく。

('A`)「待ってくれ!」
叫ぶが、ドス女は俺に振り返りもせず先に進み続けた。

('A`)「ドス女!」
俺は遠くへ行こうとするドス女に向けて腕を伸ばして――



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:49:17.97 ID:iUKVpTCz0



('A`)「うあああああああああああああああ!!」
自分の絶叫で目を覚ました。

ここは――
ロマネスクの秘密基地の、俺の部屋?

俺は外でドス女と話してた筈だったのに……
あれは、夢だったのか?

('A`)「…………」
ベッドから起き上がり、俺は部屋を出た。
そして、ドス女の部屋へと急ぐ。

あれが、夢であるように。
それを確認する為に。

('A`)「ドス女、いるか?」
ドアを数回ノックした。
しかし、中からは何の反応も無い。

('A`)「…………」
意を決し、俺はドアを開けた。
しかし――部屋の中には、誰も居なかった。

やっぱり、あれは夢なんかでは――



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:51:28.60 ID:iUKVpTCz0
( ФωФ)「起きたか」
('A`)「ロマネスク……」
気が付くと、ロマネスクが後ろに立っていた。

('A`)「ドス女は……?」
半ば答えを察してしながらも、俺は問わずにはいられなかった。
あの夜のことが夢でありますように。
そう、願っていたから。

( ФωФ)「あの女なら昨夜出ていったぞ。 倒れたお前を残してな」
('A`)「な――!」
しかしロマネスクの口から出た言葉は、非情な現実を痛感させられるものだった。

('A`)「だったら、どうして止めてくれなかったんだ!
   あいつを一人っきりで行かせるなんて――!」
それが、どれだけ辛いことか。

( ФωФ)「勘違いしてもらっては困る。
      我輩は別にお前達と仲間という訳ではない。
      故にここから出て行こうが行くまいが、関知する義理はない」
('A`)「…………!」
そうだった。

今でこそこうして匿ってもらってはいるが、
本来俺とロマネスクとは敵同士。
決して仲良しこよしの関係というわけではなかったのだ。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:53:03.91 ID:iUKVpTCz0
('A`)「くッ……!」
俺は秘密基地の出入り口へと向き直った。

ドス女を捜しに行かなければ。
このままじゃ、あいつは――

( ФωФ)「何処へ行く」
ロマネスクが後ろから声をかけてきた。

('A`)「決まってるだろ。 ドス女を捜しに行く」
( ФωФ)「止めておけ」
ロマネスクが俺の肩を掴んで引きとめようとした。

('A`)「うるさい! お前には関係無いだろう!
   俺は意地でもあいつを見つけに――」
そう言おうとした瞬間、俺の体が宙に浮いた。

('A`)「!!!!!」
直後、俺は背中から地面に叩きつけられた。
ロマネスクが片手で俺を持ち上げ、地面に落としたのだ。

('A`)「あッ……! がッ……!」
背中を強打し、まともに息が出来なくなる。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:54:07.10 ID:iUKVpTCz0
( ФωФ)「愚か者が…… お前はあの女のしたことを無駄にする気か?」
ロマネスクが静かに、しかし怒りの込められた目で倒れた俺を見下ろしてきた。

( ФωФ)「探しにここを飛び出して、それからどうする?
       外ではJOWが血眼になってお前とあの女を捜しているぞ?
       あの女ならば身を隠して動く技量はあろうが、お前など瞬く間に発見されるだろうな」
('A`)「…………」
( ФωФ)「それを承知で探しに行ってみるか?
       ああ――それなら確かにあの女に会うことは出来るだろうな。
       JOWに再び捕らえられたお前を、あの女が命懸けで助けに行って両者共々一網打尽になる、
       という形でな」
('A`)「…………!」
何も反論出来なかった。

馬鹿だ、俺は。
自分一人じゃ何も出来やしないってのに、
一人で勝手に熱くなって。

これじゃ、ただの駄々っ子と一緒じゃないか……!

( ФωФ)「これだけは理解しておけ。
      あの女がお前の下を去ったのは、全てお前の為。
      そしてそれは、お前の弱さがもたらした結果だとな。
      お前に今少しの力があれば、こんなことにもならなかっただろう」
その通りだった。
俺が、もっと強ければ、こんなことにはならなかった。

俺に力があれば――
ドス女を一人ぼっちで行かせることだって、無かった筈なんだ……!



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:55:03.17 ID:iUKVpTCz0
(;A;)「……くなりたい」
俺が、もっと強かったら――

(;A;)「強くなりたい……!
   自分の大事なものを護れるくらい、
   救えるようになるくらい、強くなりたいんだ……!」
今まで、ずっと諦めてきた。
届かなかった。

正義のヒーローに助けられたいという希望も。
誰かを助けたいという夢も。

だけど、だけどこれだけは。
自分の大切なものを護りたい。
その想いだけは、もう、諦めたり届かなかったりするのは嫌なんだ……!

( ФωФ)「……今の言葉に偽りは無いか」
(;A;)「…………?」
俺はロマネスクを見上げた。

( ФωФ)「その言葉が、その想いが偽りでないならば、ついて来るがいい。
       我輩が、強さというものを教えてやる」
ロマネスクは、はっきりした口調でそう言った。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:56:02.04 ID:iUKVpTCz0


            *            *            *


強くなりたい。
目的を達成したり、信念を貫き通すのには力が要る。
その為に強くなることは、必要不可欠なことだった。

( ^ω^)「……これで、ブーンはもっと強くなれるのかお?」
JOW日本支部、地下研究室――
そこの実験台の上に、ブーンは横たわっていた。

爪'ー`)「ああそうだ。
    先日ついに実現化した強化改造施術の進化型――
    この施術が成功すれば、君は更なる力を手にすることが出来る」
優しそうな声で、フォックスがブーンに語りかける。

爪'ー`)「強くなれば、あのロマネスクも、ドクオにも、負けることは無い。
    君が正義のヒーローではないと否定する者達を、全て斃すことが出来る。
    そう、その時こそ、君は真の正義のヒーローとなるのだよ」
( ^ω^)「正義のヒーロー……」
ブーンは自分が正義のヒーローであると信じていたし、
そうであろうとしてきた。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:57:27.58 ID:iUKVpTCz0
しかし、その自分が、あの男達――
ロマネスクとドクオによって否定された。

そんなことがあってはならない。
自分は、正義のヒーローなのだ。
その為なら――
邪魔になる者は、全て排除してやる……!



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:58:22.07 ID:iUKVpTCz0
爪'ー`)「さあ、もう目を閉じたまえ。
    次に目覚めた時、君は新しい自分に生まれ変わっているだろう」
( ^ω^)「…………」
腕に麻酔が注射され、ブーンの意識が遠のいていく。

――自分は、正義のヒーローになりたかった。
その為に、あらゆることをやってきた。

闘い、救い、抗い続けてきた。
その自分が――
あんなことでつまづいていてはいけない。

だが――
正義のヒーローになるとは、こういうことだったのだろうか?

薄れゆく意識の中、ブーンはそうぼんやりと考えていた。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:59:30.85 ID:iUKVpTCz0


                *             *             *


(’e’)「……従来の怪人化施術は、
   人外の体組織を大量に人体に移植することによって起こる拒絶反応を、
   人間や人外以外の体組織――
   主に動物類の体組織を『つなぎ』として同時に移植することで抑えてきた。
   結果、怪人達は超常の能力を獲得することと引き換えに、
   最早人間とは呼べぬ姿になることとなった」
薄暗い部屋の中、セントジョーンズが一人ごちていた。

(’e’)「中にはそのような『つなぎ』――触媒を用いずとも、異能を得る実験体もいるにはいたが――
   そんなケースは稀。
   基本的に、動物との融合の形での改造でしか、施術は成功しなかった」
思案するように、セントジョーンズは椅子に座る。

(’e’)「しかし! 長年の研究の成果、ついに私は成功した!!
   無様な『つなぎ』を用いずとも、100%純粋な人外の体細胞のみで、
   拒絶反応を起こすことなく強化施術を行う手法を!!
   そしてそれにより、更なる力の増強が可能となったのだ!!!」
セントジョーンズが勢いよく椅子から立ち上がり、やおら大声で叫んだ。
反動で、椅子が床に倒れる。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:01:13.96 ID:8jAbyWZv0
从 ゚∀从「で、その成功例ってのがオレ達な訳だ」
一人の女が、セントジョーンズのいる部屋へと入ってきた。

――いや、一人ではない。
後ろに更に二人、計三人の女がそこにはいた。

(*゚ー゚)「フフフ…… 成功例、確かにそうね。
    いくら強くなれるからって、あんな醜い姿になるなんて真っ平御免だわ」
(*゚∀゚)「アーッヒャッヒャッヒャ! オレハコロシアイガデキレバソレデイイゼ!」
三人の女が邪悪な笑みを浮かべる。

(’e’)「来ていたのか。 思ったより早かったな」
セントジョーンズが三人に向き直った。

从 ゚∀从「オレ達にお呼びが掛かったってことは、いよいよ始めるってことだな」
女の一人がセントジョーンズに言った。

(’e’)「ああ、機は熟した。 兵隊も、兵器も、既に充分なだけ揃ったからな。
   いよいよお待ちかね、というやつだ」
(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ! ソイツハイイヤ!
    ヤットイッパイブッコロセルッテワケダ!」
三人の中でも一際狂気を目に宿した女が、楽しそうに笑う。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:13:44.78 ID:8jAbyWZv0
(*゚ー゚)「ッ! そこに居るのは誰!?」
と、女の一人が後ろを振り返った。

(???)「…………」
そこには、一人の男が立っていた。

从 ゚∀从「何だァ、手前?」
(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ! コロシテイイカ!?
   セントジョーンズ、コイツコロシテイイカ!?」
残りの二人も、合わせて後ろを向く。

(’e’)「おっと、殺してもらっては困る。 彼は私の旧い友人でね。
    今日、ここに来てもらう予定だったのだよ」
言いながら、セントジョーンズが男を招き入れた。

(’e’)「ようこそ。 いや、久し振りというべきかな」
(???)「…………」
(’e’)「まあ堅苦しい挨拶は抜きにして、早速本題に移ろうか。
   受け取りたまえ、60年前の報酬を」


〜第四十話『強くなる為に』 終
 次回、『冬の嵐 その1』乞うご期待!〜



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:15:23.35 ID:8jAbyWZv0
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