ドクオは正義のヒーローになれないようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 21:53:07.42 ID:9jsh+rSN0
- 冬の嵐 〜その2〜
〜 『夏だ! 触手だ! 中出しだ!
ドキッ☆ 人外だらけの水泳大会!! 〜(内臓)ポロリもあるよ〜』
完成まで前回までのあらすじと提供は停止します〜
そして時は来た。
混沌と混乱と狂乱と狂熱と厄災と災禍と汚泥と恐怖と恐慌と怨恨が満ち満ちて、
全ての準備は整って、
ついに時は来た。
そこでは誰もが加害者で、誰もが被害者。
誰もが咎人で、誰もが処刑人。
無関係な人間などそこにはいない。
誰も無関係でなどいられない。
彼らは闘う。
己の意思で。
彼らは闘う。
己の意思とは裏腹に。
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 21:54:18.54 ID:9jsh+rSN0
- 最後に生き残るものは誰か。
それは誰にも分からない。
分かる筈がない。
闘って、闘って闘って――
果たして、その果てに何が残るのか。
誰にも、分からない。
孤独に怯える銀色の獣。
宇宙大魔王。
正義を名乗る組織。
第二次世界大戦時の亡霊。
肉親の為に修羅に堕ちた虎。
過去の激情を追い続ける魔弾。
邪悪なる科学者。
そして――
――そして、ハリボテヒーロー。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 21:55:39.30 ID:9jsh+rSN0
- 彼らが、己の全てを懸けて闘い、勝利し、敗れる。
正しいのは誰か。
間違っているのは誰か。
誰にも――分からない。
だがきっと、彼らはそれでも闘わずにはいられないのだろう。
それでしか、自分を表現出来ないから。
そうしなければ、自分ではいられないから。
時は休むことなく進み続け、
彼らを戦場へと誘う。
彼らを戦場へと向かわせる。
――そして時は来た。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 21:57:03.20 ID:9jsh+rSN0
* * *
('A`)「…………」
俺は何をするでもなく、ただぼうっとテレビを眺めていた。
朝起きて、飯を食って、ロマネスクにボコられて。
そして夜こうして自分の部屋でテレビを見ているのが唯一の安らげる時間だ。
口の中が切れて痛い。
今日もまた、派手にやられてしまったもんだ。
('A`)「あー…………」
思わず溜息が出る。
こうやって毎日ボコボコにされて、一体俺は何をやってるんだろうか。
こんなことしてる間にも、ドス女は危険に晒されてるかもしれないってのに。
無茶とか、してなきゃいいんだが。
……余計なお世話か。
あいつは熱くなるタチではあるけれど、
相応に分別もある筈だ。
俺が出て行ったところで何も影響は無い――
どころか、状況を悪くするだけだろう。
兎に角、今俺が出来ることは、
今のうちに少しでも強くなること――
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 21:58:10.12 ID:9jsh+rSN0
- ('A`)「――――!?」
と、テレビの映像がいきなり真っ暗になった。
何だこりゃ?
故障か?
いや、このロマネスクの秘密基地にある機械が、故障するなんて考えにくい。
とすればこれは、テレビではなく電波の方がおかしくなってるのか?
そういえば、
今のと似たようなことが前にも一度――
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 22:00:14.90 ID:9jsh+rSN0
- |::━◎┥「コンバンワ。 暗愚ナ日本国民ドモ」
テレビに、見覚えのあるロボット男が映った。
その後ろに、山積みの死体。
何だ、これは?
奴は一体どこからこの映像を流している?
いや待て。
後ろのこの風景、見覚えがある。
確か、国会議事堂――
|::━◎┥「イママデ、タップリ安穏ナ日々ヲ堪能スルコトハデキタカナ?
シカシ、ソノ日々モ今日デ終ワル。
ドウイウコトカ分カラナイト言ウナラバ、コレヲ見ルガイイ」
と、テレビの画面が切り替わった。
そこには――
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 22:02:08.05 ID:9jsh+rSN0
- ('A`)「!!!!!」
東京湾いっぱいに、ずらりと戦艦が並んでいた。
馬鹿な。
これら全て、神威師団のものだというのか!?
こいつら、いつの間にこんな――
('A`)「!!!!!!!!!!!!!」
次の瞬間、戦艦から一斉にミサイルが放たれた。
どこに向けて?
考えるまでもない。
それは――
('A`)「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
連続する轟音と地響き。
どこにミサイルを発射するのか。
そんなもの決まってる。
近くの、最も命中させ易い場所。
そして、国の中枢がある都市。
そう、東京に向けて撃つのが最も効果的なのだ。
そして、VIP市も当然その攻撃範囲内に入っている。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 22:03:50.77 ID:9jsh+rSN0
- ('A`)「ロマネスク!!」
俺は部屋から飛び出した。
冗談じゃない。
こんな馬鹿なこと、このまま黙って放ってなどおけるか。
なんとしてでも、すぐに止めなければ……!
( ФωФ)「分かっている」
ロマネスクも先程の映像を見ていたようだ。
せわしく鎧とマントを装着し、出撃の準備を整えている。
( ФωФ)「出るぞ、マスク仮面。
時間が経てば経つ程、奴らの思う壺だ」
('A`)「分かってる。 一刻も早くあいつらを倒して――
――――!!!」
そこで、俺の頭を嫌な予感がよぎった。
( ФωФ)「どうした、マスク仮面?」
ロマネスクが訊ねてくる。
VIP市も攻撃を受けている。
ということは、つまり……!
('A`)「渡辺のおばあちゃん……!」
( ФωФ)「!!!!!」
俺とロマネスクの顔が、一気に青ざめた。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 22:07:02.49 ID:9jsh+rSN0
走る。
走る。
走る。
炎の中を。
悲鳴の中を。
街は既に、煉獄と化していた。
瓦礫があちこちに散乱し、周囲から火の手が上がり、
死体と怪我人が道端に倒れ、
悲鳴と苦痛の呻き声がそこら中から聞こえてくる。
歯を食いしばりながら、俺とロマネスクはそれらの横を通り過ぎた。
何なんだこれは。
何だというんだこれは。
ついこないだまで、
平穏な、ありふれた日常が続いていた筈なのに――
どうして、いきなりこんなことになってしまったんだ……!
('A`)「!!!!!」
渡辺のおばあちゃんの家は、見る影もなく倒れてしまっていた。
どうか、この家の中にいないでくれ。
心の底から神にそう祈った。
だが、そんな祈りも虚しく――
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 22:08:45.92 ID:9jsh+rSN0
- 从'ー'从「う、うぅ……」
瓦礫の下から、渡辺のおばあちゃんの呻き声が聞こえてきた。
( ФωФ)「どいていろ!! マスク仮面!!!」
ロマネスクが俺を押しのけ、両腕で瓦礫を吹き飛ばした。
あれだけの大きな瓦礫がまるで紙の様に吹っ飛び、
その下から渡辺のおばあちゃんが姿を現す。
('A`)「おばあちゃん!!」
俺は我を忘れて、渡辺のおばあちゃんに駆け寄り、
倒れていたおばあちゃんを抱きかかえた。
瓦礫に下敷きになっていたせいで、渡辺のおばあちゃんのふくはズタボロになっており、
所々に血が滲んでいる。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/05(木) 22:09:25.51 ID:9jsh+rSN0
- ('A`)「おばあちゃん、しっかりしてくれ!!」
从'ー'从「う…………」
必死に呼びかけるも、渡辺のおばあちゃんは弱弱しい呻き声を上げるだけで、
こちらからの呼びかけには応えない。
このままでは、
命を落としてしまうことは火を見るより明らかだった。
('A`)「ロマネスク……!!」
俺はすがるようにロマネスクの名を呼んだ。
( ФωФ)「分かっている!
マスク仮面、すぐに渡辺を基地まで運ぶぞ! 急げ!!」
ロマネスクの支持に従い、俺は渡辺のおばあちゃんを背中に背負い、
ロマネスクの基地へと急いだ。
背中で、渡辺のおばあちゃんが見る見る弱っていく。
それなのに、俺は何もしてやれないまま、ただ走ることしか出来なかった。
〜第四十二話『冬の嵐 その2』 終
次回、『冬の嵐 その3』乞うご期待!〜
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