ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:42:49.64 ID:1FqgUuqb0
第四十八話『血戦 その4 〜ドクオVS怪人トラ男〜』

〜前回までのあらすじ〜

さくら〜ふぶ〜きの〜

毎夏恒例のあの番組が今年もやって来た!
夏休み、夏休みの宿題に追われる学生達をとりこにしてきたあの番組!
テレビ離れが進む昨今、再び視聴率を取り戻すことが出来るのか!?

(,,゚Д゚)「亡くなった弟の為にこの飛行機を飛ばします!」
お涙頂戴の特別企画!
死んだ弟と飛行機と何の関係も無い気がするのは気のせいか!?

从 ゚∀从「あと10キロ……
     あと10キロでゴールだ!」
定番の100キロマラソン!

ラスト数キロで起こる『負けないで』の合唱!
走行距離がワープしたとしか思えない現象は今年もあるのか!?

(*゚ー゚)「募金お願いしまーす」
日本全国で行われる募金活動!
募金は全てスタッフがおいしくいただきました!

ドクオは正義のヒーローになれないようですは、24時間テレビを応援しています!



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:43:43.56 ID:1FqgUuqb0


         *  以下、何事も無かったかのように再開  *


( ▼w▼)「くああああああああああッ!!」
トラギコから放たれた炎を、命中する寸前に横っ飛びで回避した。

飛びのいた背後で、さっきまで俺のいた位置にあった瓦礫が一瞬にして残らず消し炭になる。
その恐るべき光景に、背中を冷たい汗が伝う。

(=゚д゚)「ラギイ!!」
避けた隙を逃さず、トラギコが更に火炎による追撃を繰り出してきた。

今度は、避けられない。
ならば――



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:44:36.19 ID:1FqgUuqb0
( ▼w▼)「おおおおおおおおおおおおおお!!」
正面から突っ込んだ。
両腕を顔の前で交差させて火炎を受けつつ、トラギコに向かって突進する。

( ▼w▼)「ぐううううッ!!」
神経が焼き切れる様な痛みと共に、周囲にタンパク質の焦げる匂いが充満する。
構わず全力で疾走。
一気にトラギコとの距離を詰める。

( ▼w▼)「らあァッ!!」
充分近寄った所で、渾身の右ストレートを繰り出した。

(=゚д゚)「くッ!!」
しかし、トラギコは右肩でそれを受け、直撃を防ぐ。
同時にその勢いを利用して後ろに跳躍。
再び俺との距離を離した。

(=゚д゚)「ラギ!!」
そこから、息つく間も無く再度炎による攻撃。

( ▼w▼)「チィッ!」
反射的に横っ飛びでそれを避ける。
炎が足先を掠め、肉の一部が焼け焦げるのが分かった。

――流石に、強い。
一筋縄でいくような相手じゃない。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:47:14.43 ID:1FqgUuqb0
( ▼w▼)「…………!」
俺はトラギコを睨んだ。

糞ッ。
早くこいつを何とかしないと。
俺は、こんなところで足止めをくらっている訳にはいかないのに。
こうしている間にも、どんどん傷ついている人は増えていってるってのに……!

(=゚д゚)「……その目、ムカつくラギね。
    いかにも自分が正義ですって感じラギ」
トラギコが吐き捨てるように言った。

(=゚д゚)「まあ、無理もないラギか。
   この惨状を生み出したのはこっち。
   それを阻止しようと闘うのはそっち。
   他の人が見れば、どっちを正義と思うかは明白ラギからね」
皮肉たっぷりの表情で、トラギコが続ける。

――正義。
俺は、本当に正義の為に闘っているんだろうか。

少なくとも、自分が正しいと信じていることをやっているつもりではある。
だが、自分が正しいと思っているからといって、それが本当に正義かどうかは分からない。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:47:58.97 ID:1FqgUuqb0
――いや、そんなことよりも。
こいつの――トラギコのこの表情。

こいつは、『正義』というものを憎んでいる。
だが、他の怪人達とはどこか、何かが違う。

今までの怪人のように、単なる快楽の為に人を苦しめ、殺している感じではない。
だとすれば、何がこいつを、闘いに駆り立てているのだ?
そして何故、これ程までに正義を憎んでいるのだ?

( ▼w▼)「お前は――」
思わず、口が開いた。

こんなことを聞いている場合ではないことは分かっている。
だが、どうしても、俺は問わずにはいられなかった。

( ▼w▼)「お前は、何でこんなことをするんだ!
      沢山の人を傷つけて、苦しめて、それで一体どうしようっていうんだ!?」
大声で、俺は問いをトラギコに叩きつけた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:50:35.91 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「金ラギ」
迷いもせず、トラギコは、そう即答した。

金――だって?
じゃあ、こいつは、そんな、その程度の理由で――

(=゚д゚)「『神威師団』だの、復讐だの、セントジョーンズの思惑だの、正義と悪だの、
    俺には全く関係無いラギ。
    金――
    俺にとっては、それだけが問題ラギ」
そんな、そんな理由で、こいつは人を――

( ▼w▼)「ふ――ざけるな!!
       金だと!? 冗談を言うのも大概にしろ!!
       お前は――お前はそんな下らない理由で、人を殺したというのか!!!」
許せなかった。
そんな単なる紙切れの為に、人を殺すことなんて、あってはならない。
この惨劇で、一体どれだけの人が死んだと思ってるんだ……!



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:51:59.14 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「下らない、だと――?」
その瞬間、トラギコの様子が一変した。

全身の毛を逆立たせ、体から炎が溢れ出る。
文字通り、烈火のごとく怒り狂っていた。

(=゚д゚)「下らないだとオォォォォォォォォォォォォォ!!!」
直後、トラギコが猛スピードで突進してきた。

( ▼w▼)「!!!!!!」
避けようとしたが、間に合わない。
そのままトラギコに頭を掴まれ、地面に押し倒された。
そこから、丁度トラギコが俺に馬乗りになっている形になる。

(=゚д゚)「ざけんじゃねえラギ!!
    金が、下らないもんだと!?
    そっちこと冗談を言うのも大概にするラギ!!」
馬乗りの体勢から、トラギコが上から次々とパンチを打ち下ろしてきた。

( ▼w▼)「くッ!!」
必死に腕でガードするが、それでも何発かは被弾する。

――何だってんだ。
トラギコの、この豹変は。

金――
金を、下らないと言ったからか?
だけど、どうしてそんな事でここまで――



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:53:43.56 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「教えてやるラギ!
    俺の姉さんはなあ! 金で辛うじて生きているんだラギ!
    お前が今下らないと言った、金の力でなあ!!」
( ▼w▼)「――――!!」
そこでようやく、俺はトラギコの怒りの理由に気がついた。

金で生きている。
そこまで聞けば、いくら鈍感な俺でも、多少は察する。

植物人間か、重い病気か――
恐らくそういった理由で、大金が必要なのだろう。

だとすれば、
トラギコはその姉の為にこの惨劇に加担したというのか!?



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:54:23.97 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「俺は必死に探したラギ!
    金を手に入れる方法をなあ!!
    誰も、俺達を助けてくれるような奴は居なかったラギからなあ!!」
叫びながら、トラギコが次々とパンチを打ち下ろしてくる。

(=゚д゚)「そんな時ラギ、セントジョーンズが俺をスカウトしたのは!
    良い話だったラギ。 人を殺すだけで、金が貰えるラギからねえ!!」
俺はトラギコの拳を喰らいながら、黙ってトラギコの声を聞いていた。

(=゚д゚)「人を殺してはいけない!? 金の為に人を傷つけるなんて間違っている!?
    何とでも言うラギ!!
    俺は、金の為なら――
    姉さんを護る為なら、何だってやってやるラギ!!
    何一つ、後悔も、呵責も無い!!」
トラギコは叫んだ。
後悔などしていないと。
良心の呵責など無いと。

だがその叫びは、
どこか懺悔のようにも聞こえた。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:56:14.86 ID:1FqgUuqb0
――同じだ。
こいつは、俺と。

もし俺がトラギコと同じ立場だったとしたら、
間違いなく同じことをやっただろう。

いや、今だってそうだ。

ドス女の命を護る為なら、俺は誰だって殺す。
例えそれが、何の罪も無い人だろうと。
年端もいかぬ子供であろうと。
そう、何人だって。

俺は何ということをこいつに言ってしまったのだ。
金の為。
それは決して、下らない理由なんかじゃなかった。
それなのに、俺は――



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:57:28.35 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「何ラギか!?
    その哀れむような目はァ!!!」
トラギコが更に力の入った拳で俺を打ちつけた。

(=゚д゚)「大体、最初お前に会った時から気に入らなかったラギ!
    正義のヒーロー!?
    そんなもの、糞喰らえラギ!!
    姉さんが倒れた時――
    本当に、助けが必要だった時、正義のヒーローなんてものはやってこなかった!!
    そんなものの真似をしてる奴なんざ、見てるだけで反吐が出るラギ!!!」
( ▼w▼)「――――」
――そうか。
だからこいつは、正義を――正義のヒーローを、憎んでいたのか。

現実には、正義のヒーローは困っている人の前には現れたりなんかしない。
正義のヒーローなんか世界の何時何処にも存在しない。
正義のヒーローは、誰も救ったりなんかしない。

だからトラギコは正義のヒーローを憎悪した。

だから俺は、自分が正義のヒーローになろうと思った。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:58:06.85 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「誰も俺を! 姉さんを! 救いになんて来なかったラギ!!
    支えになるものは、金だけだった!!
    人を救うのが正義のヒーローだというのなら、
    俺にとっては金が正義のヒーローラギ!!
    その金を得る為なら、いくらでも人の道を外れてやるラギ!!!」
トラギコが、次々と俺に拳を振り下ろす。
パンチが命中するごとに、脳が揺さぶられ、意識が遠のいていく。

――出来ない。
俺には、こいつと、闘うなんて。

だって、こいつは俺と一緒じゃないか。

誰も助けに来てくれなくて、
それでも、必死に何かを護ろうとして、
それで、今まで一人ぼっちで闘い続けてきた。

そして今も、命を懸けて闘っている。

心の奥底で、救いの手を待ち続けながら。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 19:59:38.34 ID:1FqgUuqb0


『俺が苦しかった時、助けを求めていた時――
 正義のヒーローは来てくれなかった。
 誰も、俺を助けに来てはくれなかった。
 他の誰かに傷つけられるより、何より――
 助けに来てくれない、それが一番辛かった』

『だから俺は苦しんで、助けを求めている人を護る!
 俺と同じ思いなんて、誰にもさせたくないから、
 あの時の嬉しさが、忘れられないから!!
 偽善でも、独善でも、独りよがりな自己満足でもいい!
 助けが来ない苦しみを、俺は誰より知ってるから――
 だから、そんな人達を見捨てるなんて、俺には出来ない!!!』
この闘いに赴く前、俺はロマネスクにこう言った。
今も、その思いは変わっていない。

だから――
ああ、だから、トラギコと闘うなんて出来はしなかった。

だって、トラギコは、苦しんでいるんじゃないか。
助けを求めていたんじゃないか。

だけど、助けは来なかった。
そういう人をこそ、俺は助けたかったんじゃなかったのか……!



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:00:28.07 ID:1FqgUuqb0


『我輩達は神でも悪魔でもない。
 全ての人々を護ることなど出来はしない。
 さっきの渡辺が良い例だ。
 人間一人すら、満足に助けることすら難しい』


分かってる、ロマネスク。
そんなことは、分かっているんだ。
だけど……!


『お前は選ばなければならない。
 誰を助け、誰を助けないのかを。
 人間の命を切り捨てる、お前にはそれが出来るのか?』


その問いに、俺は「出来る」と答えた。
だけど、何だ、この様は。
あの答えは、あの誓いは、嘘だったのか。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:01:47.66 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「その目で俺を見るなラギ!!
    俺は、お前に同情される程落ちぶれちゃいねえ!!!」
トラギコの叫びが、拳が、俺の体と心を苛む。

この気持ちは、同情なのか。
偽善にしか過ぎないのか。

だけど、それでも俺はこいつに言ってやりたかった。
お前は間違ってなんかいないと。
お前の気持ちは、当然のことなのだと。

だけど、それが何になる。
何を変えられる。

そんな言葉は最早役には立たない。
あまりに時間が経ち過ぎ、犠牲が増えすぎてしまった。
もう、何の救いも残されてはいない。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:03:09.11 ID:1FqgUuqb0
( ▼w▼)「――――」
視界が真っ白になっていく。

ああ、このまま、俺は死ぬのか。
結局、誰一人助けられないまま――


『お前が本当に護りたいもの、護るべきものを忘れるな。
 何を護るのか分からないまま闘っても、誰も護れはしない』


俺は、何を護ろうとして――


イ从゚ ー゚ノi、


( ▼w▼)「――――!」

――そうだった。
俺はまだ、ここで斃れる訳にはいかない。
俺にはまだ、護りたいものがある……!



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:04:32.17 ID:1FqgUuqb0
( ▼w▼)「うおおおおおおおお!!」
(=゚д゚)「!!!」
腹筋の力でトラギコの体を浮かし、右足で蹴り飛ばした。

(=゚д゚)「くッ!!」
トラギコが吹き飛ばされ、右膝から着地する。

( ▼w▼)「――ハァッ……! ハァ、ハァ、ハァ……!」
何とか脱出出来た――とはいえ、こちらも満身創痍に近かった。
頭を何度も激しく揺さぶられ、視界は歪み、立っていることすらままならない。

――だけど、倒れるわけにはいかない。
ここで俺が倒れたら、この惨劇を止められる者はいなくなる。

――いや、そんなのは綺麗事だ。
ただ、ドス女を助けたかった。
護りたかったんだ。

だから、俺は――



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:06:01.74 ID:1FqgUuqb0
( ▼w▼)「……お前は――」
何故か、涙が溢れていた。

トラギコ。
お前は、間違ってなんかいない。

いや、俺にお前を間違っていると裁くことの出来る資格なんて無い。
だって、俺も、お前と同じなのだから。

( ▼w▼)「…………!」
だから、これは正義の為の闘いなんかじゃない。

ちっぽけで、弱い人間の、エゴを通す為の闘い。
道義も大義も何も無い、醜い闘い。
何も生まない、何も変えられない、どうしようもない闘い。

闘わなければ、こいつを斃さなければ、先には進めない。
誰も、護れない。

分かっているのに。
分かっている筈なのに――



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:07:07.97 ID:1FqgUuqb0
( ▼w▼)「…………!」
どうして、体が動かない!
どうして闘えない!
どうして――

(=゚д゚)「何をぼさっと突っ立ってるラギ!!!」
トラギコが、全ての力を注ぎ込んだ必殺の炎を繰り出す。

今までの中で一番の、全てを焼き尽くす煉獄の焔。
それが、一直線に迫ってくる。

あれを喰らえばやられる。
一目見ただけで分かる程の威力。
だけど、俺はそれでも全く動け――



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:07:52.34 ID:1FqgUuqb0


          *             *            *


(=゚д゚)「ハッ――
    ハハハ! ハハハハハハハハハハハ!!」
トラギコは笑っていた。

今のは、会心と言っていい程の一撃だった。
そう確信出来る程の、自分のありったけの力を込めた焔。

いくらあいつが化物とはいえ――
あの直撃を受けては、生きてはいまい。

(=゚д゚)「ハハハハハハハハハ!!」
まずは一人。

あと、セントジョーンズが話していた狼に変身する銀とかいう女と――
あの本物の怪物、ロマネスク。
注意すべき相手はそれぐらいだ。

もうすぐ、もうすぐ全てが終わる。
そうすれば、まとまった金も手に入る。
そうすれば、姉さんも――



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:08:53.98 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「――――!」
そこで、トラギコの表情が凍りついた。

見たからだ。
焔の中に、ドクオ――ネガティヴアヴァターの姿を。

馬鹿な。
あの焔を受けて、何で消し炭になっていないんだ。
どうして――

(=゚д゚)「!!!?」
赤いマントが――
ドクオを護っている!?

有り得ない。
あんな薄っぺらいマントで、どうして――!?

(=゚д゚)「!!!!!!!」
トラギコは、見た。

ネガティブアヴァターの胸部が開き、
そこから砲門のような内臓器官がこちらに向けて照準を合わせている。

(=゚д゚)「しまッ――」
あれはとてつもなくヤバい。
トラギコの本能が全力で危険を伝えるが、遅かった。

砲門から、幾重もの暗黒の虹が放たれる。
そして虹は瞬く間にトラギコの体を包み――



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:09:55.43 ID:1FqgUuqb0


             *            *            *


「やーい。 やーい」

「えーん。 おねえちゃーーん!」

「こらー! あんた達、何やってるの!」

「やべ。 鬼女が来たぞ。 逃げろーーー!」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:10:31.43 ID:1FqgUuqb0



「えーん。 えーん」

「ほら、いつまでも泣かないの。 男の子でしょ?」

「でも、でも……」

「いつまでも、私があなたを護ることは出来ないのよ。
 お姉ちゃんがいなくなったらどうするの?」

「!! いやだ! おねえちゃんがいなくなるなんて、そんなのいやだ!!
 いやだ!! いなくならないで、おねえちゃん!!」

「こ、こら。 馬鹿ねえ。 今のは例えばの話よ。
 私が、あなたを置いてどこかへいくわけないでしょ?」

「ほんと? ほんとにいなくなったりしない?」

「ええ、本当よ。
 だからあなたも約束して。 強くなるって」

「うん、わかった! ぼく、つよくなる!
 つよくなって、こんどはぼくがおねえちゃんをまもるんだ!!」

「ふふ、それは頼もしいわね。
 じゃあ、楽しみに待ってるわね、トラギコ」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:11:21.69 ID:1FqgUuqb0



そうだ。
だから護りたかった。

他でもない、姉さんを。

護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。
護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。
護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。
護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。
護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。
護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたかった。護りたk――


               *            *             *


(=゚д゚)「ヒューッ―― ――ッ――ヒュー――……!」
トラギコは、生きていた。

下半身の全てと左上半身を暗黒の虹に蝕まれ、
体の大部分を跡形も無く失ってもなお、
トラギコは生きていた。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:15:19.54 ID:1FqgUuqb0
(=゚д゚)「ヒュー……! ヒューー……!」
駄目だ。
ここで死んだら、姉さんはどうなる。

俺が金を稼がなければ、誰が姉さんを護ってくれる。

(=゚д゚)「ゴボッ……! ガッ……!」
立ち上がろうとした。
しかし、地面につけるべき脚は、最早ありはしない。

(=゚д゚)「ね……さん……!」
もがくように、残された右腕を宙で泳がせる。

何かを掴もうと。
何かにしがみつこうと。

(=゚д゚)「――さん…… ――えさん」
姉の為、何人もの血で汚してきた手。
その腕を空に向けて伸ばし、必死に動かす。

(=゚д゚)「ねえさん…… ねえ……さん……!」
しかし、その腕が何かを掴み取ることはついになかった。

右腕がゆっくりと地面に落ちていき――
そして、トラギコは息絶えた。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:16:29.13 ID:1FqgUuqb0


                *            *            *


薄暗い病室――
そこに、一人の少女が横たわっていた。

体を生命維持装置に繋げられ、生きているのがやっとの状態であり、
勿論、意識などあろう筈も無かった。

「…………」
意識などありはしない。
その筈なのに――
少女の目から、一筋の涙が零れ落ちた。

――直後、生命維持装置の心拍を表示する機械が、少女の心停止を告げる。
一筋の、あまりに哀しい涙を残し、少女は静かに永遠の眠りにつくのだった。


〜第四十八話『血戦 その4 〜ドクオVS怪人トラ男〜』 終
 次回、『心殺術の脅威! 危うしネガティヴアヴァター!!』乞うご期待!〜



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/01(水) 20:17:06.97 ID:1FqgUuqb0
この番組は、

ぼとむれすの
「おまかせ!とらぶる天使」
っていつまで延期するの?

の提供でお送りしました



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