ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:33:07.08 ID:qN7FBsXe0
第一部最終話『夜明け』

〜ネタ切れ〜

半壊し、あちこちから火の手が上がっている国会議事堂の中で――
ブーンは歯車王と対峙していた。

( 0ш0)「お前を……お前を倒せば、僕が正義のヒーローなんだお……」
ブーンが呻くように呟く。
その目は、どこか焦点が定まっていない。

( 0ш0)「悪を倒せば……悪を……僕が……正義のヒーロー……」
一歩一歩、ブーンが歯車王に近付く。

爪'ー`)「そう、君こそが正義のヒーローだ。
     さあ、やれ、ブーン。
     この惨劇を引き起こした、『悪の権化』を打倒し、今こそ真の正義のヒーローとなるのだ!」
ブーンの後ろにいたフォックスが、ブーンに告げた。
その言葉と同時に、ブーンが歯車王に向かって飛び掛かる。

( 0ш0)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:34:30.85 ID:qN7FBsXe0


            *              *              *


('A`)「……ここまで来れば大丈夫か」
国会議事堂から大分離れたところで、俺は腰をついた。

ミサイルが直撃する寸前、俺とドス女は倒れたロマネスクを抱え、
何とかその場から逃げ出すことが出来たのだ。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドス女が遠い目で国会議事堂を見つめる。

ミサイル攻撃により、国会議事堂は赤々と燃えていた。
併せて、連続する爆音と悲鳴。
どうやら、JOWの増援が怪人や戦闘員の残党を駆逐していっているらしい。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:35:20.95 ID:qN7FBsXe0
( ФωФ)「ぐッ……」
と、ロマネスクが呻き声を上げた。
どうやら、気がついたようだ。

( ФωФ)「――――! あいつらは!?」
と、気がつくと同時に、ロマネスクは跳ね起きた。

('A`)「……あいつらは、どこかへ逃げた。 もう、いない」
静かに、俺は言った。

( ФωФ)「おのれ……! このままで済ましてなるものか!」
('A`)「やめろ!!」
今にも国会議事堂まで戻りそうなロマネスクを、俺は必死に押し止めた。

( ФωФ)「放せ、マスク仮面!
       このままで終われるか!!
       今度こそ奴らを――」
('A`)「そんな体で何が出来るってんだ!
   それに、奴らはもういない! 残りの怪人も、JOWがやっつけている!
   もう、闘いは終わった! 終わったんだ!!」
そう、闘いは、終わった。
俺達のしてきたことなど、俺達の想いなど、一切の関係も無く。
終わっていこうとしている。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:35:44.90 ID:qN7FBsXe0
( ФωФ)「…………!」
ロマネスクは拳を握り締め、
唇を強く噛んでそれ以上進もうとするのを止めた。

分かっている。
あのロマネスクが、あんなに一方的にやられて――
黙っていられるわけがない。

だけど、もう、俺達が出来ることは、何もない。
何も――

('A`)「!!!」
いや、あった!
何よりも、大切なことが。
何でこんな大事なことを忘れていたんだ……!



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:36:56.63 ID:qN7FBsXe0
('A`)「渡辺のおばあちゃん……!」
( ФωФ)「!!」
ロマネスクも気づいたようで、はっと表情を強張らせる。

そうだ。
約束したんだ。
全て終わったら、渡辺のおばあちゃんのところへ戻ってくると……!

イ从゚ ー゚ノi、「渡辺が、どうかしたのか?」
一人事情を把握していないドス女が、俺達に訊ねてきた。

('A`)「ドス女、急いでロマネスクの基地まで戻ろう!
   渡辺のおばあちゃんが、大怪我をしてるんだ……!」
その言葉を聞いて、ドス女の顔が一気に青ざめた。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:38:02.54 ID:qN7FBsXe0



イ从゚ ー゚ノi、「渡辺!!」
いの一番に、ドス女が渡辺のおばあちゃんを治療している医務室に飛び込んだ。
それに続けて、俺とロマネスクも部屋に入る。

从'ー'从「……犬神様……それに、マスク仮面さんにロマネスクさんも……」
渡辺のおばあちゃんの顔色は、
俺達がここを出発した時より更に悪くなっていた。

( ФωФ)「ヴィヴィアン!!」
ロマネスクがおばあちゃんの治療を担当していた猫に向かって叫んだ。
しかし、ヴィヴィンアン・ザ・ナイチンゲールは辛そうな顔で首を横に振るのみだった。

从'ー'从「ロマネスクさん……ヴィヴィアンさんを責めないであげて下さい……
     この子は、本当に一生懸命やってくれたのです……」
( ФωФ)「分かっている! だからもう喋るな……!」
ロマネスクがおばあちゃんに言った。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:39:15.15 ID:qN7FBsXe0
从'ー'从「……ロマネスクさん、酷い怪我……」
自分の体も顧みず、おばあちゃんはロマネスクの傷を心配そうに見やった。

( ФωФ)「……すまん、渡辺」
静かに、ロマネスクは告げた。

( ФωФ)「お前に言ったな。
       我輩がこの星を征服した暁には、日本を領土としてお前に与えると」
重々しい口調で、ロマネスクが続ける。
その声には、悔恨と、自責の念がこもっていた。

( ФωФ)「だが、実際にはこの様だ!
       かつて、誰にも負けないと、この宇宙の全てを征服すると誓ったのに、負けたのだ!!
       決して許せい相手に、手も足も出せず、負けてしまったのだ……!!」
ロマネスクは叫んだ。

あの赤い外装に身を包んだ女性――
あれはきっと、ロマネスクにとって、大切な人だったのだろう。

だからこそ、その姿を騙って闘う相手を、許すことなど出来なかったのだろう。
だが、ロマネスクは負けてしまった。
一太刀も浴びせることなく、惨敗してしまったのだ。
その悔しさは、一体どれほどのものだったろう。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:40:17.21 ID:qN7FBsXe0
从'ー'从「そう……負けてしまったのですね」
おばあちゃんは、ロマネスクをじっと見つめた。

( ФωФ)「…………」
ロマネスクは、何も答えない。

从'ー'从「良かったではありませんか……」
( ФωФ)「!!?」
予想もしなかったおばあちゃんの言葉に、ロマネスクは目を丸くした。

从'ー'从「……負けたということは、まだ頑張れることがあるということではないですか。
     あなたは、もっと強くなれるということではないですか。
     ……大丈夫。 あなたなら、次は、きっと勝てます……」
( ФωФ)「――――!」
ロマネスクは言葉を詰まらせ、口を閉ざしたまま俯いた。
固めた拳が、かすかに震える



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:41:40.91 ID:qN7FBsXe0
从'ー'从「……ゴホッ! ゴホッ……!」
('A`)「おばあちゃん!!」
おばあちゃんが苦しそうに咳き込んだ。

从'ー'从「……マスク仮面さん……」
おばあちゃんが、俺の顔を見る。
マスク仮面。
最後まで、おばあちゃんは俺のことをそう読んでくれた。

('A`)「ごめん、おばあちゃん……」
マスク仮面。
それは、俺の名前なんかじゃない。
その正義のヒーローの名前は、俺のものなんかじゃない。
俺は――

(;A;)「俺、嘘をついてたんだ。
    俺は、正義のヒーローなんかじゃないんだ。
    俺は――」
俺は、正義のヒーローにはなれなかった。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:42:24.23 ID:qN7FBsXe0
从'ー'从「……知っていましたよ」
(;A;)「!?」
知っていた!?
じゃあ、おばあちゃんは、知ってて、今まで――

从'ー'从「……だけど、それがどうだというのですか。
     あなたは、私が苦しんでいる時、来てくれたではありませんか……
     正義のヒーローは来なかったけど、あなたは、来てくれたではありませんか……」
(;A;)「――――」
从'ー'从「……自分を卑下する必要なんかありません。
     例え正義のヒーローなんかではないのだとしても、
     あなたは、そんなものなんかより、ずっと素晴らしい人間なのですよ……」
(;A;)「…………!」
違う。
俺は、あなたにそんな風に言われるような人間じゃない。

俺は、護れなかった。
こんな俺を、そこまで信用してくれるあなたを、護れなかったんだ……!



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:44:07.92 ID:qN7FBsXe0
从'ー'从「……それに、あなたは、私にとても素晴らしい贈り物をしてくれました」
(;A;)「?」
从'ー'从「……もう一度犬神様に、会わせてくれたことです。
     あなたが、私と犬神様を、引き合わせてくれたんですよ……」
そう言って、おばあちゃんは愛おしそうにドス女へと顔を向けた。

从'ー'从「……すみません、犬神様。
     どうやら、ここでお別れのようです……」
今にも消え入りそうな声で、おばあちゃんは呟くように言った。

イ从゚ ー゚ノi、「ならぬ! 死ぬな、渡辺!!」
ドス女が、おばあちゃんの肩を強く掴んだ。

从'ー'从「……そんなに、哀しそうな顔ををなさらないで下さい。
     これは、いつか来ることだったのです……
     それが、たまたま今日だったというだけ……」
少し困ったような顔をして、おばあちゃんはドス女に言った。

イ从゚ ー゚ノi、「駄目じゃ! 死んではならぬ!!
      儂を置いていくな!!
      儂を……一人ぼっちにしないでくれ……!!」
縋るように、ドス女はおばあちゃんに告げた。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:45:04.06 ID:qN7FBsXe0
从'ー'从「……あなたは、一人ぼっちなどではありませんよ。
     あなたの隣には、ロマネスクさんや、マスク仮面さんが居てくれているではありませんか……
     それに……私も、居ます。
     あなたの心の中で、私は、ずっとあなたと共に生きていきます……」
そう言って、おばあちゃんがそっと、ドス女の頬に触れた。
ドス女が、黙ってその手を握り締める。

イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
从'ー'从「…………」
一分にも満たない、ほんの僅かな時間。
その短い間に、ドス女とおばあちゃんは、一言も喋らないまま見詰め合っていた。

――二人は、この時何を思っていたのか。
それは、俺には分からなかった。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:45:30.69 ID:qN7FBsXe0
从'ー'从「――私は……幸せ者です」
ふう、とおばあちゃんが静かに息を吐いた。
そして、ドス女、ロマネスク、俺と、順番に顔を向けて、
从'ー'从「最期に……こんな素晴らしい人達と……一緒にいられたのですから……」
それが、おばあちゃんの最後の言葉だった。
するりと、ドス女の手からおばあちゃんの手が滑り落ちる。
そのまま、二度と、おばあちゃんの目が開くことはなかった。

(;A;)「おばあちゃん!!」
( ФωФ)「渡辺!!」
イ从゚ ー゚ノi、「渡辺!!」
おばあちゃんの目は、二度と開かなかった。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:48:01.09 ID:qN7FBsXe0



イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ロマネスクの基地のある山の頂上、
ドス女は、渡辺のおばあちゃんの眠る土の上に、大きな石をそっと置いた。

おばあちゃんのお墓は、ドス女が一人で作った。
そうさせて欲しいと、ドス女が言ったからだ。

俺もロマネスクも、それで不満は無かった。
おばあちゃんが死んで一番哀しんでいるのは、きっとドス女だから。

('A`)「…………」
俺はただ、ドス女の背中を見ていた。
かけられる言葉なんてある筈もなかった。
何を言っても、気休めにすらならない。

……ロマネスクは、ここには来なかった。
きっと、俺達に、弱い顔を見せたくないからだろう。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:48:55.38 ID:qN7FBsXe0
イ从゚ ー゚ノi、「……初めて会った時は、あんなに小さな子供だったのにな」
不意に、ドス女が呟いた。

イ从゚ ー゚ノi、「いつの間にか、あんなに髪が白くなって――」
そこで、ドス女は言葉を詰まらせた。
肩が、小刻みに震えている。

イ从; ー;ノi、「駄目じゃな、儂は。
       こんな別れは、何度もしてきた筈なのに。
       もう泣かないと、決めた筈なのに……!」
俺に背中を向けたまま、ドス女は泣いていた。
きっと、今までずっと、親しい人と死別する度に、こんな風に泣いてきたのだろう。
そう、今まで、ずっと。
そして、これからもずっと。

イ从; ー;ノi、「儂は……」
ぽつりと、ドス女が口を開いた。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:49:53.89 ID:qN7FBsXe0
イ从; ー;ノi、「儂は、嬉しいと思ってしまった。
       モナーが、人外の肉体を手に入れたと知った時に。
       その為に、大勢の人を犠牲にしていることを知ってたというのに、
       嬉しいと思ってしまった。
       自分の知る人間が、自分と同じ時を歩んでくれる。
       もう、寂しい思いをしないでいい。
       そう思うと、嬉しかったのじゃ……!」
かつて、ドス女は俺に同じようなことを言っていた。
俺が人ならざる体になったことを、嬉しいと思ってしまった、と。

だけど――
そう思うことが、そんなに悪いことなのだろうか。

誰だって、一人ぼっちは嫌だ。
自分の好きな人が、自分より先に死ぬと哀しい。
そう思うのは、当たり前のことじゃないか。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:50:30.52 ID:qN7FBsXe0
イ从; ー;ノi、「どうして儂は老いない!? どうして死なない!?
       不老不死!? 人を超えた肉体!?
       冗談ではない!!
       こんな――こんな思いをしなければならないなら、
       こんな体などいらない!!」
堰をきったように、ドス女の感情が爆発した。
今まで積もりに積もってきた想いが、一気に溢れ出していく。

イ从; ー;ノi、「誰もが儂の横を通り過ぎて行く!
        誰もが儂を置いていってしまう!
        渡辺も、儂を残して死んでしまった……!!」
おばあちゃんの墓に向かって、ドス女は叫んだ。

きっと――ドス女にとって、渡辺のおばあちゃんはかけがえのない人だったのだろう。
その分だけ、ドス女の心に、埋められない大穴が開けられたのだろう。

イ从; ー;ノi、「儂は、怖い……!
       これ以上、自分の大切な者を失うのが!
       その恐怖に負けて、本当の化物になってしまうのが!
       もう嫌じゃ!! もう、一人ぼっちになるのは嫌……!!」
それは、ドス女が始めて俺に見せた、ドス女の弱さだった。

――いや、違う。
今までに、いくらでも気付く機会はあった。
ただ、俺が感じ取ってやれなかっただけ。
護ってやれなかっただけ。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:51:37.59 ID:qN7FBsXe0
('A`)「……ドス女」
一歩、俺はドス女に近づいた。

イ从; ー;ノi、「…………!」
ドス女は俺に背中を見せたまま、何も答えない。

('A`)「ドス女は、一人ぼっちなんかじゃない。
   俺が、ずっと傍にいる」
静かに、だけどあらん限りの力を込めて、俺はドス女にそう言った。

イ从; ー;ノi、「……馬鹿なことを言うな。
       お主にも、分かるじゃろう。
       永遠に生きることの苦痛が。
       こんな苦しみをお主にまで――」
('A`)「そんなの関係無い!!」
ドス女の言葉を遮るように、俺は叫んだ。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:53:05.20 ID:qN7FBsXe0
('A`)「……永遠に生きること。
   それは、本当に辛いことなんだと思う。
   だけど――それでも、構わない!
   お前を、一人ぼっちになんてさせやしない!!
   どんな苦しみだろうが、耐えてみせる!!
   だって――」
だって、
('A`)「――だって、二人なら、苦しみも半分こに出来る筈だろ?」
そう、一人ぼっちじゃなく、二人ぼっちなら、
これから先、どんなことがあっても乗り越えられる筈だ。

だって――
誰かが、自分の傍に居て、自分を受け入れてくれるということは、
それだけで素晴らしいことなんだから。

イ从; ー;ノi、「……うッ……ぐッ……!」
ドス女が肩を大きく震わせ、嗚咽を漏らす。

イ从; ー;ノi、「あああッ……がッ……うああああああああ……!!」
膝を折り、子供のように、ドス女は泣いていた。
今まで溜め込んでいた涙を、残らず出してしまうかのように。

イ从; ー;ノi、「うあああああああああああああああああああ……!!」
ドス女の慟哭だけが、山に響き渡っていた。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:54:12.12 ID:qN7FBsXe0



イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ひとしきり泣いたところで、ドス女は立ち上がった。
そして、ゆっくりと振り返る。

その顔に、もう涙はない。
憂いと哀しみを湛えながらも、
目の奥にいつもの強さを取り戻していた。

('A`)「ドス女……」
イ从゚ ー゚ノi、「……みっともない姿を見せたな、マスク仮面。
       もう、大丈夫じゃ。
       ……大丈夫」
ドス女の言葉に、俺は頷いた。

……本当は、まだ泣いていたいのだろう。
当たり前だ。
渡辺のおばあちゃんが死んだ。
その哀しみが、すぐに無くなる筈なんて、ない。

でも、ドス女は大丈夫と言った。
ならば俺はその言葉を信じるだけだ。
あいつがそう言うなら、きっと大丈夫。

――もし、まだ傷つき、倒れそうなのならば、
俺が支えてやるだけだ。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:54:57.12 ID:qN7FBsXe0
イ从゚ ー゚ノi、「……そろそろ戻ろうか。
       ロマネスクが、待ちくたびれておるかもしれんからの」
('A`)「ああ」
……ロマネスクも、きっと深く哀しんでいるのだろう。
あいつのことだから、決して表には出さないのだろうけど。

でも、それでいい。
強がることで、本当に強くなれることだってある。
多分、あいつはそうやって、強くなってきたのだろうから。

イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面!」
歩き出そうとしたところで、ドス女が俺を呼んだ。

イ从゚ ー゚ノi、「……ありがとう」
ドス女が微笑む。
それは、胸が締め付けられそうになるくらい、
哀しい――そして、透明な笑顔だった。

('A`)「……ああ!」
はっきりと、俺はそう答えた。

大丈夫だよ、おばあちゃん。
俺も、ドス女も、ロマネスクも、ちゃんとやっていける。
きっと、頑張っていくことが出来る。

だから――
だから、安心して、空から見守ってくれ。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:58:11.12 ID:qN7FBsXe0
('A`)「――――!」
と――
俺の瞳に、一筋の光が飛び込んできた。

その一筋の光は瞬く間に光の奔流となって、
俺とドス女を包み込む。

――夜が明ける。
長かった、悪夢の様なあの夜が終わり、新しい一日がやってくる。

あの夜――
沢山の人が死に、傷ついた。
それでも、朝は再びやってくる。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:58:52.40 ID:qN7FBsXe0
まだ、何も終わってなどいない。
今この時にだって、助けを待っている人はいるだろうし、
何より――セントジョーンズ達は、またどこかで何かを企んでいる筈だ。
何も終わってなどいやしない。

ああ、だけど。
だけど今はこの一時を静かに感じていよう。
生きていることを、感じていよう。

次の闘いは、きっとすぐにやってくる。

そう、きっと。
俺達の本当の闘いは、これからなのだから。


〜第一部最終話『夜明け』 終
 次回、『第一部総集編』乞うご期待!〜



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/31(金) 18:59:16.68 ID:qN7FBsXe0
この番組は、

オレはようやく登りはじめたばかりだからな。 このはてしなく遠い男坂をよ!
プリンセスハオ
痛みを知らない子供が嫌い。心をなくした大人が嫌い。優しい漫画が好き。バイバイ

の提供でお送りしました。



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