ドクオは正義のヒーローになれないようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:43:45.05 ID:LRFK3Wrg0
- 第二部 第八話『終わっていく世界』
〜前回までのあらすじ〜
――それは、銃と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。
それはまさに鉄塊だった。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:45:22.86 ID:LRFK3Wrg0
- (´・_ゝ・`)「いらっしゃい、お客さん。
うちはどんな銃でも取り扱ってるぜ。
……何だって? ドラゴンでも殺せる銃?
悪いなお客さん。 さっきの言葉は訂正だ。
ドラゴンでも殺せる銃以外なら、何でも取り扱ってるぜ」
遥か昔――
この世界は、剣と魔法が支配していた。
しかし、その剣と魔法は、
とある武器の出現によって姿を消すことになる。
銃。
引鉄を弾けば、呪文詠唱も特殊能力も必要無く、
子供であっても大の大人を一撃で殺傷し得る武器。
それが、剣と魔法を世界から駆逐していった。
――だが、ドラゴンだけは、滅びなかった。
その固い鱗が、灼熱の息が、常識外れの巨躯が所有する暴力が、
銃という概念を真っ向から打ち砕いたのだ。
銃ではドラゴンは殺せない――
それが、この世界の常識だった。
――しかし、その常識に真っ向から立ち向かい、
ドラゴンを狩り続ける男がここに居た!!
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:47:16.05 ID:LRFK3Wrg0
- (,,゚Д゚)「全てのドラゴンは俺の敵だ!!」
ギコ=バーンランド
異名 ギコ・ザ・ドラゴンキラー
種族 混血種(アウトサイダー)
クラス 砲撃士(カノンウォーリア)
ウェポン 超大型パイルバンカー『龍殺し』
シングルアクションリボルバー『ファング』
ダブルアクションリボルバー『クロウ』
アビリティ 怪力 再生 早撃ち 二丁拳銃
ドラゴンを求め、ひたすら荒野を渡り歩く男、ギコ。
彼は何故、そこまでしてドラゴンと闘うのか。
その理由が、彼の口から語られることは決して無い。
そして、そんな彼を取り巻く3人の男女!
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:48:05.81 ID:LRFK3Wrg0
- (メ._凵j「……教えてくれ。 真の強者は、何処に居る?」
三月ウサギ
異名 ラビット・ザ・ソードマスター
種族 人間・極東種(イエローモンキー)
クラス 侍(キーンエッジ)
ウェポン 太刀『百鬼斬丸』
アビリティ 居合い 縮地 心眼
強い相手と死合う為、
生まれた国を捨てて別の大陸へと辿り着いた男、三月ウサギ。
彼の剣舞は、ドラゴンすら斬り伏せるのか!?
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:48:39.62 ID:LRFK3Wrg0
- (*゚ー゚)「精霊が、ざわついています」
シィ=グリーンウィンド
異名 無し
種族 人間・先住民(ネイティブ)
クラス 精霊使い(シャーマン)
ウェポン 呪杖(ホワイトオーク)
アビリティ 精霊魔術 アストラルダイブ 動物会話
精霊と心を通わせ、様々な奇跡を起こす先住民の少女、しぃ。
大いなる意思(グレートスピリット)からの啓示を受け、
故郷から旅立った彼女を待ち受ける運命とは!?
(´・ω・`)「あなたにも神の御加護があらんことを。 ――AMEN」
ショボン=K=バーボン
異名 ショボン・ザ・グレイブキーパー
種族 人間・白色種(ホワイト)
クラス 牧師(プリースト)
ウェポン 棺桶収納型ガトリングガン『グレイブキーパー』
狙撃用ライフル『エンジェルホルン』
ダブルアクションリボルバー『ゴスペル』
アビリティ 狙撃 神学 精密射撃
どこかで見たことのある関西弁に設定がクリソツな謎の男、ショボン。
時には敵に、時には味方に、立場を変えながらギコ達に付きまとう。
果たして、その目的とは!?
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:50:27.65 ID:LRFK3Wrg0
- (,,゚Д゚)「――試してみろよ。
お前が銃を抜く前に、勝負は決まるぜ」
(メ._凵j「一つ教えておいてやる。
この距離なら、銃(そっち)より刀(こっち)の方が速い」
(*゚ー゚)「お願い! 力を貸して、火精霊(サラマンダー)!」
壮絶なる戦闘!
武器(えもの)は普通の銃だけじゃない!
刀、魔法、素手、パイルバンカー……
通常の銃撃戦では考えられないような際物(キワモノ)ばかり!
常識外れのガンアクション!!
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:51:10.46 ID:LRFK3Wrg0
- (,,゚Д゚)「……親の仇だ。
理由はそれだけで、充分だろう?」
(*゚ー゚)「この気配……!
まさかギコさん、あなたは……
――ッ! これが、大いなる意思(グレートスピリット)の言っていた厄災ということなの!?」
(´・ω・`)「塵は塵に――
我が使命は、全ての不浄なる者共を滅すること。
さよならだ、ギコ……いや、『迫害されし混血(アウトサイダー)』」
明かされる過去!
交差する思惑!
全ての秘密が明らかになった時、
悲劇の火蓋は切って落とされる!
向き合う銃口。
最早銃弾でしか、全てを解決することは出来ないのか!?
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:51:52.35 ID:LRFK3Wrg0
- / ,' 3 「諦めろ、矮小なる存在よ。
銃で、我らドラゴンを殺すことは出来ぬ」
(,,゚Д゚)「……そうかい。 じゃあ、よォく覚えておけ。
これがドラゴンを殺す、初めての銃だッッ!!!」
銃声と口笛が木霊する、無限の荒野の物語。
新感覚ファンタジック厨ニ病西部劇、
『(,,゚Д゚)ギコはドラゴンキラーのようです』
近日公開!!!(嘘)
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:53:11.72 ID:LRFK3Wrg0
* 以下、何事も無かったかのように再開 *
('A`)「…………!」
JOW日本支部の廊下を、ひたすら走る。
許せない。
フォックス。
どういう理由だか知らないが、
怪人達を裏から操り、罪も無い人達を殺してきたなんて。
お前だけは、絶対に許せない……!
('A`)「…………!」
しかし、走りながら、
俺はある不安を感じていた。
JOW日本支部内に突入してから、
一度も敵の襲撃を受けていないのだ。
恐らく敵が俺を進ませまいと次々と向かってくるだろうと覚悟していたのだが、
怪人や戦闘員はおろか、人っ子一人建物の中にいる様子が無い。
つまり、ここから導き出せる結論は一つ。
既にここはもぬけの空で、フォックス達はどこか別の場所に行ってしまっているということ。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:09:49.48 ID:LRFK3Wrg0
- ('A`)「くッ!」
考えるな。
今はそんな不安を気にしていてもしょうがない。
今は――
フォックスの奴を倒すことだけに全てを集中しろ……!
('A`)「…………」
驚くほどあっさりと、俺は長官室の前まで到着した。
ドス女、ロマネスク。
あいつらは、まだ来ていない。
大丈夫だろうか。
いいや、信じろ。
あいつらが、そう簡単にくたばるものか。
だとすれば、あいつらが俺に追いつくのを待ってから突入するか。
いいや、駄目だ。
そんなことを待っている暇は無い。
今は、一刻を争うのだ。
ままよ。
乱暴に、扉を蹴り開ける。
その中に、待っていたのは――
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:10:34.03 ID:LRFK3Wrg0
- ( ^ω^)「…………」
今や世界中で知らない者のいない『正義のヒーロー』、
ブーンが、部屋の中に一人、立っていた。
( ^ω^)「来たかお……」
ブーンがゆっくりとこちらに顔を向ける。
最初こいつと出会った時と何も変わらない、
純粋で、真っ直ぐなその顔。
('A`)「お、お前――」
そこで、俺は言葉を詰まらせた。
言いたい言葉、言うべき言葉が洪水の様に溢れ出して来て、
脳の処理が追いつかなくなったからだ。
フォックスはどこへ行った!?
何故お前がここにいる!?
怪人騒動はお前達の仕業だったのか!
JOWが全ての黒幕だったんだな!
どれを最初に声という形にすればいいのか、
分からなくなる。
違う。
こんなものじゃない。
こんなものとは別に、こいつには聞かなければならないことがあった筈だ。
何だったか。
どういう言葉だったのか――
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:11:46.96 ID:LRFK3Wrg0
川 " -゚)「JOWが……怪人騒動の全ての黒幕だ……
ツンも……ショボンも……二人とも、殺された……」
突然、あの女――素直クールの最期の言葉が脳裏に甦る。
……そうだ、これだ!
('A`)「何でお前は、まだJOWの味方をしてるんだ!
お前の仲間は、JOWに殺されたんだぞ!?」
それが、考えに考えた末、
俺が最初に叩きつけた言葉だった。
こいつやその仲間である素直クール達との付き合いが長いわけではない。
どころか、殆ど接点が無いと言っていい。
それでも、短い時間関わっただけでも、
こいつと素直クール達とが、大切な仲間同士だったということは感じて取れた。
それだけは、分かった。
なのに――
なのにどうしてこいつは、
その仲間を殺した連中と共に行動しているんだ……!
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:12:49.62 ID:LRFK3Wrg0
- ( ^ω^)「仲間じゃないお」
そんな俺の懊悩を他所に、ブーンは短く、しかしはっきりとそう言い放った。
('A`)「な、ん――」
俺は二の句が継げなかった。
仲間じゃない、だと?
あれだけ親しくしていて、仲間なんかではなかっただと!?
( ^ω^)「あいつらは、JOWの――ブーンの正義を認めなかったお。
そんな連中なんか、断じて仲間なんかではないお。
ただの敵だお」
何の迷いも見せず、ブーンはそう言った。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:13:51.37 ID:LRFK3Wrg0
- ('A`)「何言ってやがるんだ!
JOWが正義だと!? あんな酷いことをやってて、正義な訳がねえだろうが!
お前の――お前の夢は、『正義のヒーロー』になることじゃなかったのか!!!」
俺は叫んだ。
ブーンの言っていることが、全く理解出来ない――
理解したくない程、捻じ曲がったものだったからだ。
あれだけの人を殺しておいて、
なおこいつは正義と言った。
正義とはそんなものなのか。
それが、俺の目指してきた、憧れ続けてきたものだったのか。
違う。
断じて違う。
そんなものが、『正義』であっていい筈が無い……!
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:15:03.10 ID:LRFK3Wrg0
- ( ^ω^)「ふう……やっぱりお前は僕を否定するのかお。
なら、お前も僕の敵だお」
汚らしいものを見るような目で、ブーンはこちらに視線を向けてきた。
だがそれは、お互い様だろう。
俺がブーンを見る目も、同じようなものになっているだろうから。
( ^ω^)「敵である以上、
ツン達と同じように僕達が殺すしかないお」
('A`)「手前ェェェェェェェェェェェェェ!!!」
その言葉を聞いた瞬間、俺の感情は爆発した。
怒りに顔を歪めながら、一直線に殴りかかる。
敵だから殺すしかないだと?
お前はそんな――
それだけの理由で、仲間まで手にかけたというのか。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:15:53.77 ID:LRFK3Wrg0
- 人はそれぞれ考え方も違うし、感じ方も違う。
いくら心を許し合った仲間でも、同じ方向を見ているとは限らないのだ。
俺だって、ドス女やロマネスクについていけないことだってあるし、嫌いな部分もある。
口には出せないような感情を抱いたことだってある。
だけど、それを認め合うことは出来る。
理解し合うことは出来る筈なんだ。
なのに、それを、自分を肯定してくれないから――
それだけで、敵とみなして殺したというのか。
間違っている。
そんなものは、絶対に間違っている。
さっき、こいつの顔を初めて会った時と変わっていないと思ったが、とんでもない。
こいつは、全く違う。
出会った時とは全く別の、
歪でおぞましい何者かに変質してしまっている……!
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:16:34.68 ID:LRFK3Wrg0
- ('A`)「!!?」
だが、俺がブーンの顔に拳をめり込ませようとした瞬間、
ありえない事が起こった。
俺の拳が、ブーンの体をすり抜けたのだ。
('A`)「何!?」
続けてもう一度殴ってみようとするも、結果は同じ。
ブーンの姿は確かにそこに見えるのに、
俺の攻撃は悉くブーンの体を通過する。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:17:42.78 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「立体映像(ホログラム)相手にいくらやっても無駄ですよ」
突然、俺の横にフォックスの姿が現れた。
('A`)「てめ――」
慌てて押しのけようとしたが、
フォックスの体もブーンと同じように、手応えも無しにすり抜けてしまうだけだった。
爪'ー`)「残念だったね。
私達は既に、別の場所へと移動させてもらった。
だがまあ挨拶も無しにどこかへ行くのは失礼だと思ってね。
立体映像で恐縮だが、こうして君の前に姿を見せることにしたのだよ」
鼻につく笑みを浮かべたまま、フォックスが言った。
('A`)「お前ら! 一体どこに逃げた! 答えろ!!」
立体映像のフォックスとブーンに向かって叫んだ。
畜生。
一足遅かったか。
みすみす、こいつらを逃がしてしまったのか……!
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:18:29.42 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「そんな質問に私達が答えないことくらい、君でも分かるだろう。
それともそんな簡単なことも分からないくらい、愚鈍なのかな?」
フォックスが笑ったままの顔で告げる。
('A`)「うるせえ! お前ら、自分のしたことが分かってんのか!?
怪人騒動を陰から操って、罪も無い人達を沢山犠牲にして、一体なんのつもりなんだ!!
覚えてろ、お前らがどこに逃げ隠れしてようが、
必ず見つけ出してぶっ殺してやるからな!!!」
こいつらのせいで、多くの人達が死んだ。
渡辺の、おばあちゃんも。
絶対に許せない。
このことは、奴らの死で償ってもらう……!
爪'ー`)「そう興奮しないでくれ給えよ。
それもこれも、『正義』の為には必要なことだったのさ」
表情一つ変えず、フォックスは言った。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:20:08.19 ID:LRFK3Wrg0
- ('A`)「『正義』だと――!?
あんなことをしておいて、お前らは『正義』の為だというのか!
あんなものが、『正義』だとでもいうのか!!」
爪'ー`)「その通り、『正義』の為だよ。
君も知っているだろう。
神威師団を壊滅させたということで、今や全世界が我々JOWを『正義』と認めている。
これは、紛れも無い事実だ」
得意気に、フォックスは喋る。
('A`)「ふざけるな!
それもこれも、お前らの自作自演じゃねえか!!」
自分で神威師団という火を煽って、
良く燃え上がったところでさもタイミング良く駆けつけたかのように鎮火する。
全く、マッチポンプもいい所だ。
爪'ー`)「その通りだ。 だが、事実を知らないものにとっては、我々こそが『正義』に映るだろう。
世界中が我々を『正義』と認めるならば、過程の如何に関わらず、正真正銘の『正義』さ。
そしてその為に『悪』が必要だったから、我々自身で『悪』を創り上げ、利用した。
君なら、それが分かってくれると思ったんだがね」
('A`)「どういうことだ……?」
俺は怪訝な表情を浮かべてフォックスに訊ねた。
爪'ー`)「君も、『悪』である怪人達と闘ってきたじゃないか。
『正義』は分かりやすい『悪』がいてこそその存在が光り輝く。
楽しかっただろう?
今までの『正義のヒーロー』ごっこは」
共犯者を見るような目つきで、フォックスは俺に言った。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:20:41.41 ID:LRFK3Wrg0
- ('A`)「違う! 違う、違う、違う!!
俺はそんなものが欲しかったんじゃない!!
そんなものになりたかったんじゃない!!
俺が憧れていたものは、『正義のヒーロー』は、
決して、そんなものなんかじゃない!!!」
ピンチになったらやってくる『正義のヒーロー』。
それが、俺の全てだった。
強くて、優しくて、かっこいい、本物の『正義のヒーロー』。
そんなものは現実には存在しないことは、分かっていた。
だから、自分でその真似をして、自分自身を救おうとした。
そう、『正義のヒーロー』は、みんなの希望なのだ。
それは――
JOWみたいな、フォックス達みたいなことをして、
生まれるようなものでは絶対にない……!
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:22:31.82 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「あくまで私達を否定するか……
まあ、予想はしていたがね」
('A`)「俺だけじゃない! お前らの悪事に気付く奴は、必ず出てくる!
お前らを『正義』と認めない奴らは、絶対に生まれてくるんだ!!」
そうだ。
世界には、馬鹿ばかりではない。
こいつらの野望に気付く奴だって、
必ず出てくるだろう。
爪'ー`)「……そうだろうね」
以外にも、フォックスはあっさりとそれを認めた。
爪'ー`)「人々も、衆愚ばかりではないだろう。
いずれ我々の行ってきた事の真相に辿り着く者も現れるだろう。
そうでなくとも、人が十人いれば、十通りの『正義』がその心にあるのだ。
その中には、君のように我々の『正義』否定するものもあるだろうね」
ふっと溜息をついて、フォックスが言葉を止めた。
こいつ――
いきなり何を言い出してるんだ?
そこまで分かっていながら、
どうして、怪人を使っての自作自演なんか――
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:23:37.53 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「そう、この世界には、『正義』が多過ぎる。
ならば――」
フォックスが懐から、テレビのリモコンのようなものを取り出した。
爪'ー`)「邪魔な正義は、残らず消してしまえば良いと思わないかね?」
フォックスが、リモコンのスイッチのうちの一つを押した。
('A`)「!?」
直後、部屋の壁が横にスライドを始め、
そこから大型のモニターが姿を現す。
そこには、どこかの都市が映し出されていた。
('A`)「!!!!!!!!!?」
次の瞬間、テレビ画面の中に閃光が走り、
巨大な火球がその都市をあっという間に飲み込んだ。
吹き荒れる爆風と爆炎。
それが、建物とその中にいるであろう人間をゴミのように消し飛ばしていき、
上空には大きなキノコの形の雲が上がる。
俺はその余りの光景に、何が起こっているのか全く判断がつかなかった。
いや待て、あのキノコ雲、どっかで同じようなものを見たことがある。
確か社会科の時間に教科書で見た、第二次世界大戦の時の――
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:25:33.35 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「ハハハハハハハハハ!!
ワシントンが一瞬にして消し炭と化したぞ!!!
流石は核ミサイル、惚れ惚れする破壊力だ!!!」
狂ったようにフォックスが笑う。
核――ミサイルだって!?
そんなものを、こいつは使ったというのか!?
('A`)「なん――だ。
お前、一体何をやってるんだ!!!」
俺はフォックスに向かって叫んだ。
目の前の現実に思考が追いついていなかった。
こいつは、こいつは一体何をやっているんだ!?
爪'ー`)「怪人を使って自作自演を行ったのは、人々にJOWを『正義』と思わせる為だけではない。
そうやって我々を信用させ、各国の奥深くにまでJOWの腕を伸ばすことにあったのさ。
実に上手くいったよ。
一旦国の内部に取り入れば、怪人や戦闘員を侵入させて軍事的中枢を掌握することも難しくはない。
核ミサイルの発射システムを奪取することも、それを迎撃する為の戦力を沈黙させることも、含めてね」
満足そうに、フォックスは語った。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:26:47.86 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「さて、今度はどこを消し飛ばしてやろうか」
言いながら、フォックスが別のスイッチを押す。
すると、モニターが次々と別の都市に切り替わり、
先程と同じように、一瞬にして都市が閃光と共に灰の山へと姿を変えていく。
恐らく先程のアメリカと同じように、
他の国にもJOWの工作員を潜入させていたのだろう。
爪'ー`)「ロンドン、ベルリン、モスクワ、北京、ニューヨーク――そうそう、ソウルも忘れてはいけないな。
どうだ、素晴らしいショーだとは思わないかね!?
億単位で人が死んでいく光景など、滅多に見れるものではないぞ!!」
- 86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:27:30.29 ID:LRFK3Wrg0
- ('A`)「やめろーーーーーーーーーーーーー!!!」
俺は半狂乱でフォックスに掴みかかろうとした。
しかし、立体映像相手にそんなことをしても意味などあるわけがなく、
俺は虚しくフォックスの体をすり抜けるだけだった。
爪'ー`)「これだ! これが私の求めていたものだ!
私を『正義』と認めないものなど全て不要!!
ならば否定するもの全てがいなくなってしまえばいい!!
そうすれば誰も我々を『正義』と認めない者などいない!!
『正義』!!!
JOWが、私こそがこの世で唯一にして絶対の『正義』だ!!!!!」
フォックスが笑いながらそう叫んでいた。
狂っている。
自分達以外の存在を全て消し去ることで、『正義』を証明しようとするなんて。
そんなことで、
そんなことでしか存在出来ない『正義』に一体何の意味があるというのだ……!
- 89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:28:11.52 ID:LRFK3Wrg0
- ('A`)「お前!! 何考えてやがんだ!!
地球が滅茶苦茶になったら、お前らだって生きていけなくなるんだぞ!?」
核兵器の恐ろしさはその威力だけではない。
使用した際に付随して発生する、大量の放射能だ。
放射能は人の命をむしばみ、大地や水を汚染して、
文字通り死の世界を創り上げる。
そんなことをすれば、人間が生きていくことなんて――
('A`)「…………!」
恐ろしい考えが頭をよぎった。
まさか。
それじゃあ、こいつらはその為に――
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:29:15.41 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「気付いたようだね。
そう、人間ならば生きてはいけないだろう。
『人間』ならば。
だが、怪人――人外の存在ならばどうだ?
人外の超常的な生命力なら、どんな過酷な環境でも生存が可能。
そうは思わないかね?」
ニヤリと、フォックスが邪悪な笑みを浮かべた。
つまりは、こいつらが怪人を製造していたのは、
生物兵器として使用する為なんかじゃない。
放射能が渦巻き、草木の枯れた死の世界でも、生きていく為。
その為の、怪人だったのだ……!
- 95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:30:01.44 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「さあ! どうする『正義のヒーロー』、マスク仮面!!
困っている人々が沢山いるぞ!?
助けてやったらどうかね!
運良く――いや、運悪く生き残った人間には、
かつて無い程の病魔や飢餓が襲いかかってくるだろう!!
病気に苦しむ人々を、餓えに死んでいく人々を、
君の『正義』は、どう助ける!?」
('A`)「…………!」
俺は何も言い返すことが出来なかった。
不可能だからだ。
一人や二人なら、どうにかなるかもしれない。
だが、何億といる人間を同時に助けることなんか、
神でもない限り出来る訳がない……!
- 99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:31:08.27 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「フハハハハハハ! 答えられないか!
そうだろう。 それが君の『正義』の限界だ!!
これからじっくりと、じわじわと時間をかけて残りの人間を死滅させてやる。
その後で、絶望に打ちひしがれた君を殺してやろう。
世界が滅んでいく様を、精々指を咥えたまま見ているがいい!!!」
俺にはもう、フォックスに何かをいう気力は残されていなかった。
どころか、フォックスに立ち向かおうという気持ちすら消えていた。
だって、そうだろう。
例えフォックスを殺したところで、
核兵器によって穿たれた傷跡はどうにもならない。
これからどんどん、
鼠算式に多くの命が失われていく筈だ。
そして、それを防ぐ手立てはもう何も残されていない。
もう、俺が護りたかったものは、護るべきものは、存在しない。
どんなに強いパンチでも、
どんなに固い意志でも、
放射能に汚染された大地を癒すことなど出来ないからだ。
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:31:45.88 ID:LRFK3Wrg0
- 爪'ー`)「ハハハハハハハ!!!
ハァーハッハッハッハッハッハッハッハァーーーーーーー!!!!!」
高らかと、勝ち誇った笑い声を残しながら、
フォックスとブーンの立体映像が姿を消した。
もう、後を追おうとも、
奴らを探そうという考えも浮かばなかった。
完全な、無力感と絶望。
それだけが、俺の心を覆い尽くしていた。
('A`)「…………」
俺はただ、その場で俯いて、立ち尽くしていることしか出来なかった。
〜第二部第八話『終わっていく世界』 終
次回、『希望の残骸』 乞うご期待!〜
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:32:09.15 ID:LRFK3Wrg0
- この番組は、
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