ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:33:32.17 ID:1DppGPIr0
第二部第十話 『決戦前夜 〜夜更け〜』

〜前回調子に乗りすぎたので、あらすじ・提供共に自粛〜

「ワンワンワン!
 (ロマネスク様、敵の本拠地はここで間違い無いようです」
ロマネスクの部下である犬――
ジョナサン=ザ=ボーンイーターが大型コンピューターのキーボードを叩きながら告げた。

( ФωФ)「そうか。 ご苦労だった」
ロマネスクがジョナサンの背中をポンと叩いた。

既に日はとっぷりと暮れ、
JOW日本支部から脱出した後、
俺達は一旦ロマネスクの秘密基地まで戻っていた。

セントジョーンズから教えられたフォックスの逃げた先が、
本当かどうか確かめる為だ。

富士樹海の奥の奥――
ここに、フォックス達がいるのか。

詳しい方法は頭の悪い俺には分からないが、
ともかくセントジョーンズからの情報が正しかったことが確認出来たらしい。

となれば、いつまでもこんなところでじっとしている訳にはいかない。
今すぐに――



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:35:00.26 ID:1DppGPIr0
イ从゚ ー゚ノi、「どこへ行く、マスク仮面」
秘密基地から出て行こうとした俺を、ドス女が制した。

('A`)「決まってるだろ。
   奴らのアジトに突撃する。
   これ以上、あいつらをのさばらせてなんておけるか!」
そう、奴らがまた核兵器を使わないなんて保障はどこにもない。
いや、もしかしたらもう既に更に何発か使ってるかもしれないのだ。
一秒でも早く、奴らを止めなければ。

イ从゚ ー゚ノi、「馬鹿者。 
      不用意に儂らがアジトに攻めかければ、
      奴らは一気に核兵器で世界を滅ぼしにかかるぞ。
      奴らがそれをしないのは、まだフォックスが儂らがアジトの場所に気付いてないと思っておるからじゃ」
悔しいが、ドス女の言う通りだった。

もし俺がフォックスの立場なら、
敵に攻められそうになった瞬間核兵器で世界を一掃するだろう。

フォックスが核兵器を小出しにしているのは、
自分の隠れ家が発見されておらず、
じっくり時間を掛けて世界を破滅させることが出来るという余裕からに過ぎない。

俺達がフォックスのアジトに殴り込みをかけることは、
ゲームオーバーの時間を早めるだけに過ぎなかった。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:35:52.06 ID:1DppGPIr0
そしてそれは同時に、
セントジョーンズが俺達にフォックスのアジトの場所を漏らしたことが、
まだバレてはいないことを証明していた。

上に挙げたのと同じ理由で、
もしセントジョーンズの漏洩にフォックスが気付いているのなら、
躊躇せず核兵器を残らず使って世界を滅ぼしているだろうからだ。

それをしないということは、
まだフォックスは何も気付いていないということ。

これが、こちらの最大にして唯一のアドバンテージだった。

('A`)「だからって……じゃあどうすればいいんだよ!」
しかし、このアドバンテージを有効に活用する方法が俺には分からなかった。

アジトに突っ込めば、なりふり構わなくなったフォックスが核兵器を使って世界が終わる。
しかし、何もしなければ結局ゆっくりと世界が終わっていくだけ。
完全に、手詰まりだった。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:36:36.05 ID:1DppGPIr0
( ФωФ)「焦るな、マスク仮面。
       今、その為の準備をジョナサンが整えている」
('A`)「…………?」
俺は首を傾げつつロマネスクの方を向いた。

「ワンワンワンワンワン!
 (ロマネスク様、フォックスのアジトのマザーコンピューターの回線を発見しました)」
( ФωФ)「分かった。 作業を続けてくれ。
       慎重に、しかし迅速にな」
「ワンワン!(承知しております)」
任せてくれ、と言いたげな顔つきで、ジョナサンが答える。

('A`)「ロマネスク、一体何を……?」
俺はロマネスクに訊ねた。

( ФωФ)「奴らのアジトのコンピューターをハッキングする。
       そうすれば、一時的にではあるが遠隔操作による核兵器の使用を妨害出来る筈だ。
       アジトの位置さえ分かれば、それぐらい造作も無い」
('A`)「! じゃあ!!」
正面からフォックスのアジトに乗り込めるということか。
これならば、いけるかもしれない。
よし、すぐに――



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:37:38.25 ID:1DppGPIr0
( ФωФ)「焦るな、と言っただろう。
       まだハッキングの途中だ。 しばらく時間が掛かる」
('A`)「…………」
まだ動けない、ということか。
糞、こうしている間にも、どんどん人が死んでいってるかもしれないってのに……!

イ从゚ ー゚ノi、「……それで、どれぐらいの時間核兵器を無効化出来るのじゃ?」
今度はドス女がロマネスクに質問した。

( ФωФ)「ジョナサン、どうなのだ?」
「クゥン……(それは、その……)」
ジョナサンが口ごもる。

( ФωФ)「正直な意見を聞かせてくれ。
       どれだけ短い時間だろうと、我輩はお前を責めはしない。
       ここで困るのは、嘘の時間制限を教えられることだ」
ロマネスクが静かな口調で言った。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:38:55.59 ID:1DppGPIr0
「ワンワンワン……(3――いや、どれだけ頑張っても、2時間が限界です)」
イ从゚ ー゚ノi、「二時か――」
ドス女がそこで言葉を止めた。

( ФωФ)「…………」
ロマネスクも、黙ったまま何も言わない。

2時間。
これは、あまりにも短い時間といえた。

アジトには、恐らくフォックスの部下の怪人達がいる。
加えて――恐らく、棺桶死オサムと、しぃと、モナーと、セントジョーンズと……
それから、ブーンも。

ただの怪人達だけならば、物の数ではないのだろうが、
奴らも同時に相手するとなると、どれだけ時間がいるか予想もつかなかった。

だが――



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:40:39.92 ID:1DppGPIr0
('A`)「……上等だ。 なら、その2時間で奴らを全員ぶっ倒せばいいってだけだな」
だが、それでも諦める訳にはいかない。
闘わなければならない。

必死に掴んだ、2時間というほんの僅かな希望。
奇跡を起こす為に勝ち取った時間。
それを手にして、諦めることなど許されない。

イ从゚ ー゚ノi、「……そうじゃな。 その通りじゃ」
( ФωФ)「だな」
ドス女とロマネスクも頷く。

やってやる。
どれだけ時間が短かろうと、やらなければならない。
可能性は、決して0ではないのだから。

( ФωФ)「ジョナサン、ハッキングまでには後どれぐらいかかりそうなのだ?」
「ワンワンワン(夜明け頃には完了すると思います)」
( ФωФ)「分かった。 任せる」
「ワンワン!(委細承知!)」
ジョナサンが大きな声で吠えた。

いつも思うが、こいつらどうして普通に話が通じるのだろう。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:41:44.25 ID:1DppGPIr0
「――ワンワン!(ロマネスク様、テレビ放送用電波を受信しました!)」
と、ジョナサンがキーボードを叩き、
演算装置の大型ディスプレイに映像を映し出した。

フォックスが核兵器を使用してから、
テレビはほとんどその昨日を停止しており、
世界で何が起こっているのかを把握することは出来なかった。

その為もあって、
俺達は食い入る様にその映像を覗き込む。

そこに映っていたのは――

イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
('A`)「なッ……!」
人々を次々と虐殺して回る、怪人達の軍団の姿だった。

男も女も子供も大人も戦闘員も非戦闘員も関係無い。
目に付いた人間を、片っ端から殺して回っている。

甘かった。
何も、人を殺す方法は核兵器だけじゃなかったのだ……!



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:43:27.11 ID:1DppGPIr0
('A`)「…………!」
反射的に、飛び出そうとした。

やめさせる。
これ以上、こんなことを許してなるものか……!

イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面!!」
ドス女が、俺の腕を掴んで動きを止めた。

イ从゚ ー゚ノi、「今、お前が行ってどうなる。
       世界中の怪人を倒しにいくか?
       ハッキングも完了していないまま、フォックスのアジトに乗り込むか?
       それが犬死ににしかならんことは、お前も分かっておる筈じゃろう?」
ドス女が、諭すように告げる。

分かってる。
そんなことは分かってるんだ。

だけど。
それでも。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:44:43.66 ID:1DppGPIr0
('A`)「それでもよお……!
   今、苦しんでる人がいるってのに……!」
助けを求めている人が、こんなにもいるのに。

自分は何て無力なのだろう。
何てちっぽけなのだろう。

こんなことになってても、
黙って見ているだけしか出来ないなんて……!

イ从゚ ー゚ノi、「……辛いのは、お主だけではない。
       堪えろ、マスク仮面。
       今自分が成すべきことを、見失うな」
それだけ言って、ドス女は俺から手を放した。

('A`)「…………」
俺は何も答えられなかった。

今自分が成すべきこと。
それは、世界の破滅を防ぐ為、フォックスを斃すこと。

しかし、その為に、
今死んでいっている人を、救えるかもしれない人を、
自分は確実に見捨ててしまっている。

かつて、発電所で殺してしまった人達のように。

何て道化なのだ、自分は。
もう二度と、あれと同じことは繰り返さないと、
あれ程誓った筈なのに……!



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:45:52.11 ID:1DppGPIr0
( ФωФ)「……兎も角、後はジョナサン達に任せるしかあるまい。
       お前達は今のうちに休んでおけ。
       今は、体調を万全にしておくことがお前達の務めだ」
ロマネスクがそう促した。

('A`)「…………」
今更俺が何を言える訳でも、何を出来る訳でもない。
俺はただ、重い足取りで自分の部屋に戻って行った。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:48:08.48 ID:1DppGPIr0


            *              *             *


爪'ー`)「ハハハハハ!
     やっぱり怪人は凄いなあ! ただの人間なんかでは全く相手にならない!!」
怪人の網膜に備え付けられたモニターから送られてくる画像を見ながら、
フォックスは高らかに笑っていた。

爪'ー`)「核も悪くは無いが、矢張りアナクロに直接手を下す、というのは、独特の良さがある!
     そうだ! 殺せ! 私を認めないものは全て消してしまえ!!」
フォックスは、狂った様に笑い続けた。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:49:02.12 ID:1DppGPIr0



(*゚ー゚)「あら、セントジョーンズ」
フォックスのアジトの廊下で、しぃは向かいから歩いて来たセントジョーンズに声をかけた。

(’e’)「ああ、しぃか。
    どうだ、フォックスの様子は」
(*゚ー゚)「相変わらずよ」
(’e’)「そうか」
特に興味は無い、といった風に、セントジョーンズは答える。

(*゚ー゚)「ところでセントジョーンズ、本当に大丈夫なのかしら。
    怪人達をこのアジトから、世界中で虐殺をさせる為に出発させてしまって。
    少しは、警護の為に残してた方が良かったんじゃない?」
(’e’)「あまり人数が多いと、この場所に勘付かれかねない。
    それに――君達がいれば、他の兵隊など必要ないだろう?」
表情一つ変えず、セントジョーンズは告げた。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:50:22.78 ID:1DppGPIr0
(*゚ー゚)「…………」
しぃは心殺術でセントジョーンズの心を読もうと試みたが、案の定上手くいかなかった。

この男の心の中を覗いても、
怖気が立つ様な闇が広がるばかりで、それ以外に何も見えてこない。
しぃにすら、セントジョーンズの真意は掴めないのだ。

(*゚ー゚)「……ま、いいわ。
    どうせ近いうちにこの世界は終わる訳だし。
    それにあなたの言う通り、私達だけでも充分だろうしね」
しぃは肩を竦めた。

(*゚ー゚)「じゃ、私はもう行くわね。
    オサムがまた粗相しちゃって、お仕置きしなきゃならないからね」
(’e’)「そうか」
そう言って、セントジョーンズは立ち去るしぃを見送るのだった。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:52:03.52 ID:1DppGPIr0



( ´∀`)「……君達だけで充分だ、か。
      大した役者だなァおい」
しぃが立ち去って少しした後、セントジョーンズの背後からモナーが声をかけた。

一体いつから彼はそこに居たのか。
しぃが去ってからか。
それとも、セントジョーンズとしぃが話していた時からか。
微塵も、彼の気配は無かったのである。

(’e’)「お世辞などではないよ。 私の本音さ」
( ´∀`)「今更すっとぼけんなよ。 そういやちょっと前、お前の姿が見えなかったな。
      どこで、何をやってたんだ? 怪人をここから追っ払ったのも、それと関係があるんだろ?」
腕を組んだまま、モナーが訊ねる。

(’e’)「君のことだ。 大方察しはついているのだろう?」
セントジョーンズがモナーに向き直って答えた。

( ´∀`)「ハッ。 まあな――」
吐き捨てる様に、モナーが言う。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:53:12.44 ID:1DppGPIr0
(’e’)「それで? どうする。
    フォックスにこのことを報告するかい?」
( ´∀`)「まさか。 フォックスが何をしようが、お前が何を企んでようが、これっぽっちも興味無ェよ。
     俺の目的は、『銀獣』だけだ」
セントジョーンズの問いに、モナーは腕を解いて答えた。

(’e’)「だったら、どうしてここで私に声をかけた?
    ――そっちこそ、何か企んでいるのだろう?」
( ´∀`)「お見通しかよ。 ま、それなら話は早ェや。
      ……取引だ。 口止め料代わりに、やって欲しいことがある」
モナーはそう言って、口の端に笑みを浮かべた。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:55:04.10 ID:1DppGPIr0


               *            *           *


( ФωФ)「…………」
ロマネスクの基地のある山の頂上の渡辺の墓の前で、ロマネスクは佇んでいた。

( ФωФ)「…………」
持ってきた花を墓前に供え、目を瞑ってしばし黙祷する。
まぶたの裏に映るのは、短くも、暖かい思いで満たされていた渡辺との日々。
二度と戻ってくることは無い日常。

( ФωФ)「……我輩らしくもない」
こうして、誰かの墓の前で感傷に浸るのはこれで二回目か。

あの、熱く、純粋で、誰よりも強かったあいつ――
素直ヒートの墓の前でも、確かこんな気持ちだった筈。

――そして、間違い無く、
次の決戦では、あいつの偽者ともう一度拳を交えることになるだろう。

というより、相手を出来るのは自分だけだ。
自分が、ケリをつけなければいけない。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:55:38.83 ID:1DppGPIr0
勝算は、限り無く薄い。
事実、前回は全く歯が立たなかった。

それでも、闘わなければいけない。
そして、闘う以上は必ず勝つ。
あいつの魂を、あんな下種どもに冒涜させる訳にはいかないのだ。

( ФωФ)「――クッ」
思わず、笑い声が漏れた。

全く――妙な事になったものだ。

どういう因果か、この星を征服しに来た筈の自分が、
正義のヒーローを倒し、悪の大魔王になろうという自分が――
今こうして、この星を救う為に、正義のヒーローと共に闘っている。

だが、不思議と不快感は感じない。
どころか、どこか楽しくさえ思っている。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:56:24.81 ID:1DppGPIr0
いや、どうでもいい。
こんな風に考えるのは、自分の性分ではない。

この星を救うだとか、どうとか、そんな難しい話ではない。
単純に、自分の邪魔をする奴らがいて、
そいつらが気に入らないからぶちのめす。
それだけのことだ。

馴れ合っている訳ではない。
ただ、共通の敵がいるから一時的に共闘しているだけ。

――それだけだ。

( ФωФ)「……それではな、渡辺。 また来るぞ」
空から見ているがいい、渡辺よ。
お前の仇は、必ず討つ。

――だから、安心してそこで眠っているがいい。

ロマネスクは振り向くことなく、渡辺の墓を後にするのだった。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:58:10.19 ID:1DppGPIr0


            *            *            *


('A`)「――――」
目が覚めると、既に深夜の3時を回っていた。

あんな精神状態で眠れるわけがない、なんて思っていたのだが、
肉体は予想以上に休息を必要としていたみたいで、
ベッドに横たわるなりすぐに熟睡してしまったみたいだ。

('A`)「んー……」
軽く伸びをして、半分眠っている頭をゆっくりと起動させていく。

明け方頃ハッキングの準備が完了するって言ってたから、
まだ作戦開始までには少し時間がある。

もう一度眠ろうかとも思ったが、
起き抜けの状態で戦闘というのもアレな気がしたので、
起きておくことにした。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 00:59:19.64 ID:1DppGPIr0
('A`)「…………」
あと数時間後には、全てが終わる。

俺達が勝つにせよ、負けるにせよ、
全部決まってしまう。

――いや、こんな弱気でどうする。
俺達が勝つ。
今まで、そして今も犠牲にしてきた人達の為にも、
俺達は勝たなければならない。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:00:02.66 ID:1DppGPIr0



('A`)「…………」
気がつくと、渡辺のおばあちゃんの墓の前に来ていた。
理由は、色々あり過ぎて分からない。

でもやっぱり一番の理由は、
決戦の前に渡辺のおばあちゃんに挨拶しておきたかったからなんだと思う。

('A`)「これは……」
お墓の前には、花が供えられていた。

どうやら先客が来ていたらしい。
ドス女か、ロマネスクか。

――いや、きっとロマネスクだろう。
誰よりも真っ先にこんなことをするのは、きっとあいつだ。

本人は、「ジョナサンが勝手にやったことだ」とか言って否定するんだろうけれど。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:01:52.27 ID:1DppGPIr0
――そういえば、あいつとも奇妙な縁が続いたな。

正義のヒーローと宇宙大魔王、
本来なら敵同士の肩書きなのに、
こうして今、共に闘っている。

――それはきっと、俺もロマネスクも、
本物の正義のヒーローや宇宙大魔王なんかではなくて、
不完全な出来損ないだからなのだろう。

だけど、それでもいい。
そう断言出来る。

不完全で、出来損ないだからこそ、
こうして肩を並べて歩くことが出来るのだから。
それはきっと、とても尊いことだと思うから。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:02:41.99 ID:1DppGPIr0
('A`)「…………」
――そう、そして、
俺と一緒に歩き、闘ってくれる奴はもう一人いる。

後ろから聞こえる足音。
それが誰かなんて、見るまでもなく分かっている。

今まで、ずっと俺を支えてきてくれた奴。
俺の闘う、一番の理由――

('A`)「ドス女」
振り返り、足音の主に声をかける。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドス女は俺を見て、少しだけ微笑んだ。


〜第二部 第十話『決戦前夜 〜夜更け〜』 終
 次回、『決戦前夜 〜夜明け前〜』乞うご期待!〜



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